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昔、にのに聞いたことがある。



『にのの一番大切なものってなに?』
『・・・さぁ?何でそんな事聞くの?』
『取材でさ、よく聞かれるでしょ?でもさ、おれ分かんないんだよね。自分にとって一番大切なものが、なんなのか』
『・・・そんなの、分かる人のが少ないんじゃない?』
『そうなの?』

『だって、今自分がそれを大切だと思っても、それ以上に大切なものだってあるかもしれないでしょ?それに、そばにあるときには案外分からないんじゃないかな?』
『・・・・よく分かんない』

『本当に大切なものは、きっと失くして初めて気づくんだよ』
『えー・・・そんなの寂しいじゃん!!』
『んふふ・・・そうだね。でも、失くしてみなきゃ分からないこともあるんだよ』



そう言ってにのは笑った。





一番大切なものって、失った時に初めて気づくんだ。



*****


「にぃの!今日、暇?ちょっとさ、付き合ってもらいたいところがあるんだけど!」


相葉は、楽屋のソファーでゲームに夢中な二宮に、後ろから抱きついて声をかける。
二宮は一瞬だけ、相葉をチラリと見るとすぐに画面に視線を戻した。



「えー・・・めんどくさい。帰りたい」


今日中に終わらせたいんだよ、これとゲーム機を掲げてみせる。


「もう!なんだよぉ、ゲームはいつだって出来るだろぉ。おれに付き合ってよ!ね?おねがい!!」
「えー・・・あんたに付き合うとろくな事ねぇもん」

なおも渋る二宮の前に回りこみ、相葉はゲーム機を取り上げた。

「あっ、ちょっと!!何すんの!」


返せよ酷いなと、相葉を睨む。


「ひどいのはお前だろ!なんだよ、ろくなことねぇって!!」
「だってホントの事だもん、しょうがないでしょ?あんたがお願いしてきて俺が得することなんてねぇじゃん、いつも」
「そ、そんなことねぇだろ!おまえ、薄情なヤツだな。友達が困ってんのに助けてくんねぇの?親友だろ、おれたち」

「・・・・・」


相葉の言葉に二宮は急に黙りこみ、相葉を見据えた。


「な、なに?」


急に真剣な表情に変わった二宮に相葉は戸惑う。


「・・・・べつに。で?何処に付き合えば良いの?」


しばらく相葉を見つめていた二宮だが、ひとつため息を吐くと相葉から視線を外し、承諾した。


「良いの?」
「・・・・しょうがないですからね。これ以上喚かれても迷惑だから。だから、返せよ」


そう言って相葉の手に取られていた「モノ質」を要求した。


「あ、うん。はい・・・って、おまえ、何気にひどいこと言ったろ!だから返しません!!」
「は?ふざけんなよ、返せって」

「やだ。おれもコレやりたい」
「ダメだよ、俺がやってんだから!」
「いいじゃん!にの、いつもやってんだから貸してよ」

「あんたこそ、人のもんばっかに頼らねぇで買えよ!」
「にのが持ってんのに、買ったらもったいないじゃん!」

「はぁ?意味分かんないんですけど」
「にののモノはおれのモノでしょ?」
「お前はジャイアンかよ!」

「それが友達だろ!」
「友達の基準がおかしいだろ!」
「なにがだよ?ジャイアンとスネ夫は友達じゃねぇか!」
「俺はスネ夫か!?」

「のび太がいいのかよ?」
「誰がそんなこと言ったよ!話がズレてんだよ」




「お前ら、うるせぇ!!いい加減にしねぇと追い出すぞっ!!」




ぎゃあぎゃあと喚き出した2人についに松本がキレた。
一瞬にして静かになった2人だが、すぐに騒ぎ出す。



「ほらぁ!にのがわがまま言うから、松潤に怒られたじゃん」



相葉が二宮の背中を押した。



「人のせいにすんなよ!あんたが意味不明なことばっか言うからだろうが!!」



二宮が相葉の頭を叩く。



「なにすんだよぉ、ばかにの!」
「うるせぇ、また怒られんだろうが。喚くな馬鹿」
「あ、ばかって言った方が、ばかなんだもんね!!」
「だったらお前が馬鹿だろ?先に行ったのお前だからな!」
「あーっ!うるさい、うるさい、うるさーい!!」
「お前が一番うるせぇよ!」




いつまでも続く言い合いに再び松本がキレて、2人が追い出されたのは言うまでもない。


*****


「もう疲れた。帰りたいんだけど」
「だめだよ、付き合ってくれるって言ったじゃん!」


騒ぎすぎて楽屋を追い出された後、遅れてやってきた櫻井に助けを求めて何とか楽屋に入れてもらい、仕事をこなした。


仕事よりも、松本の説教に二宮は疲れていた。
同じように怒られていた相葉はいたって元気に二宮の隣を歩いている。
そんな相葉を恨めしげに見ながら、二宮は先ほどからの疑問をぶつけた。



「で、何処に行くんです?まだ聞いてないんだけど」
「え?あ、うん・・・食事?」
「何で疑問系?」


急にしどろもどろになる相葉に、二宮は明らかな不審を覚える。
嫌な予感。


「まぁさ!着いてのお楽しみってことで・・・ね?」
「お楽しみねぇ・・・」


言葉を濁す相葉にますますの不審を募らせながら二宮は後をついて行く。


「あ、ここだ!」


相葉が入ろうとしたお店は、オシャレな感じのイタリアレストラン。
相葉が知っていたとは到底思えないようなところだ。


「何?ここ」
「なにって、レストラン」
「分かってるよ!何でこんなところに?」

「いいから、入ろうぜ!!」


そう言って相葉は、半ば強引に二宮を店へと引っ張りこんだ。



「・・・・・」


目の前にある光景に二宮は言葉すら出てこなかった。
テーブル越しに圧迫感にも似た視線が二宮へと向けられている。



店内に入った二宮を待っていたのは数名の女性陣。
見たことのある人物もチラホラいた。


相葉は何の躊躇もなくその群れの中に混じる。
お前は女かよ!と心の中で突っ込んだ。


このシチュエーションはまさしく・・・・。


合コン?


それにしては人数が偏っている。
男は二宮と相葉だけだった。
最早、相葉は彼女たちに同化していて男は二宮1人だけのようなものだったが。


「にのっってば!聞いてる?」
「は?ああ、何?」


あからさまに不機嫌な声が出た。
もちろんそれを隠すこともしない。
それを聞いた相葉が焦りの表情を浮かべたが気にしない。


自分の考えが正しければコレは明らかに・・・・。





「・・・・トイレ行ってくる・・・」
「え?ちょっ、にの?」


立ち上がった二宮は、相葉に目で合図する。


「あ・・・。お、おれもいく!」


相葉が慌てて立ち上がって彼女たちに断りを入れ、二宮に続いた。



相葉がトイレに入ると、壁にもたれて腕組みをしている二宮。
その表情はやはり怒っているようだ。



「・・・・どういうこと?」
「えっと・・・ですね。紹介して欲しいってせがまれて・・・・」



二宮の顔をチラチラ窺いながら小さい声で答える。



「・・・・・」



何も答えず相葉を睨み付ける二宮に、相葉は言葉を詰まらせながら説明を続けた。



「どうしても一度会ってみたいって言われてさ・・・・あの子、左から3番目の」


見たことない?可愛い子だったでしょ?
相葉の言葉にそこにいた彼女を思い出す。



確かに可愛らしい感じの子だった。
相葉が出ている番組で何回か見たことはある。



「・・・・はあ。俺がこういうの嫌いなの知ってんだろ?興味ねぇよ」
「で、でもさ、にの彼女いないだろ?」
「いないけど」
「好きな子・・・いるの?」

「・・・・・」

「あの子の話聞いてるとさ、すごいにののこと好きだって伝わってくるし・・・」



何も答えない二宮に相葉はなおも彼女の話をかぶせる。
相葉の言葉に、二宮の苛立ちは増すばかりだった。



「俺の・・・俺の何を知ってて、好きだって言うの?何にも知らねぇじゃん・・・」
「にの?」



二宮の呟きは小さく、相葉には届いていなかった。
二宮は深く息を吐き、相葉を見る。



「相葉さんはさ・・・・、あんたは俺にあの子と・・・どうなって欲しいわけ?」
「え?」


「付き合えば良いとか・・・思ってんの?」



二宮の真剣な顔に、相葉は何故だか恐怖にも似た感情を覚えた。



「に、の・・・?」
「・・・・まぁ、そんな事かなって思ってたけどさ。だから、あんたに付き合うとろくな事がないんだ・・・」



壁に凭れたまま天井を見上げ、自嘲気味に笑う二宮は、今までに見たことのない人のようで。
相葉はどう言って良いのか分からなくなる。


「にの・・・怒ってるの?」
「・・・別に。怒ってるわけじゃねぇよ・・・。ただ、ちょっと思い知らされた気分なだけ・・・。戻ろうか」



そう言って二宮は店内へと戻っていく。
その後ろ姿に、相葉は妙な不安を感じていた。



*****


「ちょっと、リーダー!それ俺の弁当だよ!何であんたが食ってんだよっ!!」
「お、そうかぁ?ここにあったから食って良いのかと思った」
「もう、良いよ!もう一個もらってくっから!」



楽屋には、相変わらずきゃいきゃいと、騒ぐ大野と二宮の姿。
相葉は、それをぼんやりと眺めていた。






あの日、トイレから戻った二宮は人が変わったように明るく話し始めた。
紹介した彼女とも、他のみんなとも。


相葉はその変貌ぶりに驚いたが、安心もした。


二宮が怒っていないことに。
彼女が嬉しそうなことにも、二宮が楽しそうにしていたことにも。
2人がいい感じになっていたことにも。



ただ、それを見て胸がチクリとした。
ザワザワと身体を妙な感覚が駆け巡る。


2人の仲良さそうな雰囲気を見るたびにそれはひどくなった。
気のせいだとやり過ごし、盛り上げ役に徹したが。



無事に食事会も終わり、二宮と帰っている時に相葉はお礼の言葉を述べた。



「別に。友達として、あんたの顔を潰すのも悪いから」



それだけ言うと相葉から視線を外してしまい、その後はひと言も話さなかった。
どこか棘のある言い方に、相葉もそれ以上話しかけることが出来なかった。




あの日から、二宮は特に変わらない。


変わらないんだけれど・・・。



相葉には違和感があった。
二宮の自分に対する態度だけが違うような気がする。
別に無視されているわけでもなく、いつもどおりに接してくれるが何かが違うのだ。


どこがって言われると言葉では上手く説明できないが、何となく線を引かれているような感じがしてならない。


「ほら、リーダー!!あんたも来いよっ。あんたが俺の弁当食ったんだから、あんたがもらいに行くのが筋だろ!」


そう言いながら、二宮はめんどくさがる大野を連れて楽屋を出て行った。


その様子を見ていた相葉は、2人が出て行ったドアに向かって大きなため息を吐いた。


「・・・飲み物でも買ってこようかな」



気分転換に飲み物でもと立ち上がった時、相葉の携帯にメールが届いた。
何気なく読んだその内容に相葉は愕然とする。



「・・・どういうこと?」



*****



二宮は大野の背中に凭れかかり、文句を連ねる。



「あんたのせいで、ハンバーグ弁当なくなっちゃったじゃん」
「ニノ重い、離れろよ」
「ヤダよ、罰としておぶってけ」


「・・・・・」


背中に張り付く二宮に、大野は無言だ。


「何?急に黙って」
「・・・・ニノさぁ、相葉ちゃんと何かあった?」
「・・・・何でですか?」
「んー・・・何となく。ニノの甘え方がおかしい」
「あんた、以外と鋭いね」
「おう、リーダーだからな!ケンカでもした?」



大野の背中から離れた二宮に先ほどまでのふざけた雰囲気がない事に、大野は事の重大さを感じていた。



「ケンカ・・・の方が、まだましかな?」
「ケンカじゃねぇんだ。ま、2人がケンカするところなんて見たことねぇしな。お前ら、ホントに仲良しだもんなぁ。大親友って感じで」


「・・・大親友ね」
「ニノ?」



大野の言葉に二宮が鼻で笑った。



「俺はさ、思ったことないんですよ・・・・」
「え?」


「相葉さんのこと、親友なんて思ったことねぇっつってんの」
「ニノ・・・・」
「そろそろさ・・・・限界なんだよね・・・友達でいるの」


「お前・・・・あっ・・・」



大野が何か言いかけたが、二宮の後ろを見て、まずいという顔をした。
二宮が振り返ったそこには。




「・・・あいばさん」



*****


何か、とんでもない事を聞いた気がする。


頭がついて行かない。



二宮は今、何と言った?



思い出すなと、頭が警鐘を鳴らす。



あれ、おれ・・・なんでここに来たんだっけ?



ああ、そうだ。
飲み物を買いに行こうとしたら、メールが来て。
その内容を読んで、二宮を探していたんだった。



で、二宮と大野を見つけて話しかけようとしたら・・・・。




ああ・・・思い出しちゃった。




『俺は・・・・相葉さんを親友なんて思ったことねぇっつってんの』



「なんだよそれ・・・・」



上手く声が出せない。
身体が震える。


二宮は相葉を真っ直ぐに見つめていた。
大野は隣で心配そうに2人を見比べている。



「リーダー・・・・先に楽屋、戻っててもらえます?」
「・・・おう。大丈夫か?」


「ええ・・・。相葉さん場所変え
ましょうか?」



二宮が相葉を促し歩き出す。



*****


誰も来ないだろう倉庫に身を滑り込ませ、対峙する2人。


しばらくの沈黙を破ったのは相葉だった。


「あ、あのさ・・・にの」
「・・・何ですか?」
「あの子と・・・会ってんだって?」
「・・・・・」


先ほど相葉に来たメールは、例の彼女からだった。
所謂、お礼のメール。


あれから何度か二宮と会っているという内容だった。
相葉は二宮から何も聞かされていなかった。

ショックだった。
それと同時に湧いてきたのは、怒りよりも悲しみに近かい感情。
それから、あの時と同じ妙な感じ。


胸がチクリとして、体中をザワザワとした感覚がして落ち着かない。
それを振り払うように相葉は笑った。



「何で言ってくんねぇの?水臭いじゃん!」
「別に、言うことでもないかと思って」



相葉に視線を合わせることなく答える二宮。
そんな二宮に、相葉は努めて明るく話しかける。


先ほどの言葉を否定して欲しかった。
聞き間違いだと思いたかった。



「な、なんでだよぉ・・・照れてんの?俺たち親友だろ?」
「・・・・って言ってんだろ」
「え・・・?」


「さっきの話聞いてたんだろ?俺は・・・・お前のこと親友なんて思ったことねぇよ」


二宮のはっきりとした言葉が聞えた。



「な・・・なんだよ、冗談でも、きついよそれ・・・やめてよ」



震える声で何とか返す相葉に、二宮は決定的な言葉を繰り返す。



「冗談じゃないよ。本当のことですから。俺は・・・・一度だってあんたに友情を感じたことなんてないですから・・・・」



相葉が目を見開く。



「相葉さんの期待を裏切って悪いですけど、コレが俺の真実なんです。もう限界なんだ。これ以上、友情ごっこには付き合えません。
彼女のことはすいません、言わなくて。ただ、別に付き合ってるわけじゃないですから」



そうなったらちゃんと報告しますよ。



「ね、ねぇ・・・じゃあさ、おれたちの関係って・・・なに?」
「・・・さぁ、同僚?」
「どうりょう・・・」



「・・・・何も変わらないですよ、今までと。少なくとも俺にとっては、今までもこれからも・・・・あんたが俺を親友だと思ってる限りは・・・」




何も変わらない。




二宮が何かを話しているが、相葉にはもう分からなかった。


視界が歪む。
目が熱い。



「・・・・もう、戻りましょうか。みんなが待ってますよ」
「・・・ごめん、さ、先に戻ってくれる・・・?」



「そうですか・・・じゃ、先に行きます」



二宮は今にも泣きそうな相葉をその場に残し、出て行った。



それと同時に相葉の頬を大粒の涙が流れた。



壁に背を預け、ズルズルと崩れ落ちる。



「うっ・・・・く、ふっ・・・・え・・・」



止めたいのに、止まらなかった。
涙ってどうやって止めるんだったっけ?




おれは嫌われてたんだ・・・・にのに。


いつから?
最初からか。


だって、友達と思ったことないって。
俺はただの同僚だって。



「うぇ・・・くっ、に・・・のぉ」



いつも泣きたい時には、にのがいた。
必ず隣にいて、いつも言ってくれた。




『泣きたきゃ泣けば良いんだよ。泣いた分だけ、その後に良いことがあるんだから』

『あんたはホント泣き虫だね。でも、俺が泣かない分あんたが泣いてくれれば良いんだよ』

『それ以上泣くと、不細工だぞ。不細工は嫌われるよ?』





次々に溢れ出てくる涙と、二宮の言葉。
どれにも励まされ、慰められた。




なのに、今は全部が痛い。
二宮のくれた言葉の、どれも自分を慰め、励ましてはくれなかった。



「ぶさいくじゃなくても・・・嫌われてるじゃん・・・・」



いくら二宮の言葉を思い出しても、二宮がいないんじゃ意味がない。
二宮の存在が自分をいつも支えてくれたのだから。
言葉じゃなくて、二宮自身が。




おれには、こんなにもにのが必要なのに。


にのは違うの?



おれは・・・こんなにもにのが好きなのに・・・・。



自分の考えに愕然とした。



すき?



ああ、おれ・・・にのが好きだったんだ。




本当は何となく分かってた。


にのが他の人と楽しくしてると胸が痛い。
身体の奥から変な感情が湧き上がる。


無性に不安になった。
にのを盗られるんじゃないかって。



でも、そんなのおかしいって分かってた。


にのはおれのものじゃない。
友達だって・・・・。
いつも心の中で思ってた。



間違えるな。
間違えるな。



にのはおれのものじゃない。



にのは友達。



そう思い込もうと必死になって。




彼女の頼みも引き受けた。
本当は嫌だったのに。
おれはにのが好きだったから。




やっと気付いたのに。
にのに嫌われて、気付くなんてあんまりだね。





「うぇ・・・・く、ふっ・・・・なくなっ・・・」




いたい、いたい。
胸が痛いよ。




何故だか急に、昔のことを思い出した。
昔にのが言ってた言葉。
ほんとだね。




次から次へと溢れ出る涙を相葉は止めることは出来なかった。






一番大切なものって、失った時に初めて気づくんだ。


*****




二宮は倉庫から出ると廊下に座り込み、天井を仰いだ。



「あーあ・・・」



やっちゃったな。




ずっと、ずっと相葉のことが好きだった。

出逢った時から何一つ変わらない自分の気持ち。

純粋に自分を慕ってくれる相葉に、いつも抑えきれない欲を抱え込んできた。



彼の無邪気な言葉はいつも胸に突き刺さる。




『にのは一番の親友だよ』
『おれたち、ずっと友達でいようね?』



その度に思い知らされた。
自分のこの気持ちは、届くことはないと。


それでも彼を傷つけたくないと、気持ちを押し殺してきた。
隣で彼が笑ってくれていることが、本当に嬉しかったから。
なろうと思った。



彼の理想の親友とやらに。



しかし、時が経つにつれ膨らんでいく感情はすでに押さえの効かないところまで来ていて。
そこに、あの出来事だ。



『紹介して欲しいって・・・』



頭を殴られたような衝撃。
自分の全てを否定されたようだった。



そして、俺は一番してはいけないことをしてしまった。
彼を傷つけた。



そうでもしないと、俺はもう立っていられなかったんだ。




彼の理想に、俺はなれなかった・・・・。



*****



数日後、相変わらず二宮の態度は変わらなかった。
あの時の事などなかったかのように、相葉とも接していた。
それこそ、あれは夢だったのではないかと思うくらいに。



その態度がまた、相葉を悲しくさせた。
少しでも気まずい雰囲気があれば、相手が意識していると分かるのに。
二宮の態度には、それすらも感じなかった。



自分の事など全く関心がないと言われているようで、胸が押しつぶされそうだった。





楽屋で大野と二宮のじゃれあいを見ているだけで、涙が出そうになる。
ついこの間まで、自分がいた場所。
もし自分が今、後ろから抱きついたら・・・彼はやっぱり以前と同じように接してくれるだろうか?


でも、今ではそれをする勇気すらない。


自分は嫌われているから。



思考が重くなっていくと同時に、目頭が熱くなる。


最近は、涙ばかりがよく出る。
気付かれないよう、そっと楽屋を出た。



*****



「ちょっと・・・・リーダー、何してんですか。ゲーム出来ないでしょ?」



ひとしきり大野とじゃれ合った後、ゲームをしようとした二宮だが、大野に止められ、二宮は眉根を寄せる。


大野はしばらく無言で二宮の様子を見た後、切り出した。



「・・・俺は、お前と相葉ちゃんが・・・どんな関係であろうと今までとは変わらないけど、ニノはそれで良いの?」



先ほど楽屋から相葉が出て行ったのは知っている。
いつだって、彼の行動は把握できるんだ。



大野はきっといろんな事に気付いているのだろう。
普段から何も言わないけど、敏感な人だから。



「俺にはこれ以上無理なんですよ・・・。相葉さんお願いできますか?」



きっと泣いてる。



「・・・それは俺の役目じゃねぇだろ?」
「・・・あんたも意地悪ですね。俺に行けって?」



今、彼を泣かせているのは俺なのに。


「泣き止ませられるのもお前だろ?俺が行っても何も変わらねぇもん。」
「・・・・酷なこと言うね。俺にまた彼のお守りをしろって?もう、限界なんだよ!」



二宮は声を荒げて、大野を睨み付けた。
そんな二宮を、大野は穏やかな表情のまま諭すように言う。



「別に、今のニノで良いんじゃねぇ?今のお前のままで、相葉ちゃんと話して来い」
「は?あんた言ってる意味分かってんの?俺が言ってること理解してんだろ?」

「分かってるよ。相葉ちゃんが好きだから、友達でいるのが辛いんだろ?」
「・・・・なら、俺が行ったらどうなるか分かるだろ?」



嵐崩壊の危機だぜ?



「・・・嵐はそんなことじゃ崩壊しねぇよ」
「すごい自信ですね・・・」
「おう!リーダーだからな!!」
「説得力ないですけど」
「うるせぇ!早く行けよ。リーダー命令。相葉ちゃん連れて帰って来い。それが出来なきゃ帰ってくるな!!」
「無茶言いますね・・・」




「ニノ。相葉ちゃんはお前の気持ち聞いて、引くような子か?そんな事お前が一番知ってるだろ?それに、このままじゃお前の心が可哀相だ」


「何ですか、それ・・・」
「そのままの意味だ。大丈夫!相葉ちゃんもお前も幸せになれるよ。
俺が保障してやる!お前の気持ちを言って来い!!そんで、相葉ちゃん連れてこい!!」



二宮の背中を押した。



「・・・・言っても、良いんですか?」



自分の気持ちを。



「おう!」
「・・・どうなっても知りませんよ?」
「おう!」
「何ともならなかった時は、責任取ってくれますか?」
「無理!!」



気持ちよく言い切った大野に、思わず笑ってしまった。
反面、気持ちがスッキリしている自分がいた。



「・・・・ははっ!あんたらしいや・・・・。何か、踏ん切りついた」
「そうか!じゃあ行け!!あ、翔君と松潤が来る頃にはちゃんと相葉ちゃん連れてこいよ?あと、帰ってきたときに相葉ちゃんが泣いてたら、楽屋に入れないからな!!」
「さっきから無茶ばっかですね・・・まぁ、行ってくるよ」
「おう!骨は拾ってやる!!」
「あんたね・・・でもサンキュ。やっぱあんたはリーダーだ」



そう言って笑って楽屋を出て行った二宮に、大野は満足気に頷いた。



*****



「うっう・・・・・くっ、はぁ・・・」


楽屋を出て、人が来ない部屋へとやって来た相葉は思う存分に涙を流す。


どれくらい時間が経ったのか、そろそろ戻らないとまずいだろうとは分かっているのに、相葉はその場から動けずにいた。



早く戻らないと・・・後から来る2人が到着したら、収録始まっちゃうよ。
みんな心配しちゃうよね。


みんなか・・・にのも心配してくれるのかな?
そんなわけないか・・・。



そう思ったら涙が止まらない。




「うぇ・・・にっ、のぉ・・・」
「何ですか?」


呟いた言葉に返事が返ってきた事に驚いて、声のした方を見上げた。



「に、にの・・・!?」
「はい」
「な、なんで・・・?」



ここにいるの?



「ここ、教えたの俺ですから。もう、こんなに泣いて可愛い顔が台無しだねって・・・・泣かせたのは俺ですね。すいません」



笑いながら、相葉の頬を流れる涙を拭った。


そう、この場所を教えてくれたのは二宮だった。
昔から泣き虫だった相葉が、人知れず泣ける場所として。



『ここだったら、誰も来ないから思いっきり泣けるよ。でも、泣きたい時はまず俺を呼ぶこと!』



そう言って二宮が教えてくれた。



「あっ・・・・」



しばらく二宮のなすがままだった相葉だが、突然二宮の腕を振り払って、逃げようとした。
二宮はそれを腕を掴んで制止する。



「逃げるなよ」
「は、離して・・・・おれ、やだっ!」



なおも逃げようとする相葉を、二宮は壁際に押し付けた。
動けなくなった相葉は抵抗をやめたが、二宮を見ようとはしない。
相葉は僅かに震えていた。



「相葉さん・・・」
「うぇっ・・・・、にのぉ・・・俺やだよぉ。にの・・・に嫌われたら・・・・」
「・・・相葉さん、聞いて?」



二宮が話そうとするが、相葉は耳をふさいで首を振る。



「お・・れを・・・きらいに、なら・・・ないでよぉ。に、の・・に嫌われたら・・・おれ・・・いきていけない・・・」
「相葉さん!」


「おれ、なんでもするよ・・・近づくなって、言うなら・・・ちかづかないし・・・話かけない・・・だから・・・だから・・・・」
「もう!黙れよっ!」



二宮の大声に相葉はビクッと肩を震わせ、黙り込んだ。
涙に濡れた瞳が揺れて、二宮を映す。


「・・・・ごめん。でも、違うんだ・・・違うんだよ相葉さん」
「に、の・・・?」



相葉が見た二宮は、とても辛そうな顔をしていた。
どうして二宮はこんなに辛そうなのか。

相葉は何も言えなくなる。



そんな相葉の頬を包み込み、愛おしそうに撫でた。



「相葉さん・・・ごめん。俺の身勝手で傷つけて。でも、違うんだ。俺はあんたの事、嫌いなわけじゃない・・・。」


相葉の頬を撫でる手を止め、目を合わせる。
ひとつ息を吐くと、自分の気持ちを口にした。


「俺は・・・・あなたが好きなんです」



相葉は大きく目を見開いた。
その瞳から一滴の涙が零れる。



「ごめん・・・・あんたが好きなんだ。ずっと一緒にいたかった。だから、頑張ったよ。あんたの親友になろうって・・・」



その雫をすくい取り、二宮は切なげに笑った。



「でも、やっぱり無理なんだ。友達になんてなれない・・・あんたに彼女を紹介されたとき、それを思い知らされたよ。もう限界だったんだ」



だから、あんなひどいことを言ってあんたを傷つけた。



好きで好きで、堪らないんだ。
ごめん。



謝り続けて俯いてしまった二宮の手に、相葉は自分の手を重ねた。




「にの・・・なんで、謝るの?」



重ねた手に力を込めた。



「あいばさん・・・?」
「なんで謝るの?おれ・・・こんなに嬉しいのに」



二宮の手に自分の頬を擦り付けた。


「うれし・・・い?」
「うん・・・だって、おれも・・・にのがすき・・・」


相葉の言葉に二宮が目を見開いた。



は?



「いま・・・何て?」


信じられない言葉に二宮は耳を疑った。
そんなはずがないと思っていた事。

しかし相葉は、はっきりと二宮を見つめて言った。



「おれも・・・にののことが、すき。友達じゃない、すきなんだ。今まで一生懸命友達だって思い込もうとしてたの。
でも、それでにのを傷つけちゃったんだね・・・ごめんなさい・・・」


「相葉さん・・・・ホントですか?それ・・・」


「うん・・・。おれ、やっぱりばかだね。だから、自分の気持ちにも気付かなかった。気付いたのはにののおかげ」


「俺の・・・?」



不思議そうな二宮にクスッと笑う。


「昔、にのが言ってたでしょ?一番大切なものって、失った時に初めて気づくんだ・・・って。おれはね、にのに友達じゃないって言われて・・・・嫌われたと思ったの。
そしたら、涙が止まらなくて。涙の止め方忘れちゃったみたいにさ。それで、いつも涙を止めてくれたのはにのだったなって。ああ、にのがいなきゃだめだって思った」



相葉は二宮の手を頬から離し、自分の胸へと持って行く。
自分の心臓の音を聞かせるように。



「にのが・・・必要だなって・・・すきだなって、気づいたの」



失って気づいた大切なひと。
相葉は二宮を見つめ、微笑んだ。



「相葉さん・・・俺は、あんたを抱きしめて・・・いいの?」


こんな醜い俺があんたに触れてもいい?
こんな俺を好きだって、言ってくれるの?



「うん・・・にの、だいすきだよ?」



言い終わらないうちに相葉は、二宮の腕に包まれた。
力強く抱きしめる腕に身を任せ、目を閉じる。




「くふふっ・・・」
「あいばさん?」



しばらく抱き合っていると、相葉が二宮の腕の中で笑い出した。
それを聞いた二宮が少し身体を離し、相葉の顔を覗き込む。



「ふふっ、なんか変な感じ。今までは感じなかったのに、なんか嬉しい」



心底嬉しそうな相葉に二宮も笑った。
そして、ふと真剣な表情に戻ると、相葉の顔を両手で包み込む。



「相葉さん・・・好きです。もう、あんたなしじゃいられない。一歩だって進めやしない。こんな俺と一緒にいてくれる?」


「にの・・・。うん、おれの方こそお願いだから・・・・もうおれから離れていかないで?もう・・・涙の止め方なんて考えたくないよ・・・大切なものはもう失いたくない」


「絶対に・・・離れません。俺にとって大切なものはいつだってあんただから・・・」



見つめ合い、自然に近づく2人の影。
神様じゃなくて、あなた自身に誓いのキスを。



やっと気づいた自分の気持ち。


やっと通じた2人の想い。



それを確かめるように何度も唇を重ね、強く強く抱き締めた。




そして2人で手を繋いで戻ってきた楽屋。
2人の顔を見た大野が、満足気に笑った。








おわり
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世界でも有数の夜景の街を水面に映し、ゆらゆらと揺れる美しい光たち。
都会の喧騒から離れ、聞えてくるのは一定のリズムでやってくる波の音。


そして、それを遮るほどに高鳴るのは心音。
比例して熱くなる顔。


それらがこの後の展開を否でも感じさせているようで。


相葉はこの緊張感がたまらなくて、窓を開けた。
潮風が顔に当たり、頬の熱を奪ってくれる。

遠くに見える都会の夜景を見つめ、ひとつ息を吐いた。



「相葉さん・・・」



奥から聞えた声にビクッと肩を揺らす。
その声は相葉の後ろまで来ると、身体をそっと抱き寄せた。


「にの・・・」


潮風で冷ました頬はあっという間に熱を戻す。
それに気づかれないよう、わざと明るく振舞う。


「ね!見て!きれいだね・・・」
「ええ」
「ココからでも東京タワーって良く見えるんだね!」
「うん・・・・ねぇ相葉さん・・・シャワー・・・あなたの番ですよ」
「う、うん・・・・」


俯いて二宮のバスローブの袖をぎゅっと握った。



*****


少し熱めのシャワーを頭からかぶり、気持ちを収めようとする。



二宮を好きだと意識したのはもう随分前のこと。
自分の気持ちに愕然としたけど、二宮が同じ気持ちだと知って嬉しかった。

気持ちが通じて初めて交わしたキスは、絶対に忘れられないだろう。
嬉しくて嬉しくて・・・・その時は、その先のことなんて考えてなかった。



ただ、二宮が好きだった。
一緒にいたいと思った。



『俺、相葉さんを抱きたい』



二宮からそう言われたのは、1ヶ月前。
いつものように二宮の部屋でゲームをしたり漫画を読んだりしていた時だった。
驚いて顔を上げると、強く抱きしめられて心臓が跳ね上がる。


付き合うってことは、つまりそういうことで。
抱きしめる二宮の体温が急にリアルに感じられた。


俯いて固まってしまった相葉に、二宮は困ったように笑った。


『今すぐじゃなくて良いよ・・・それだけが目的じゃないし。ただ・・・あんたの気持ちがそうなった時には・・・』


抱かせて?


そう言った二宮はひどく真剣で。
笑ってごまかすこともできずに、ただ頷いたんだ。


あれからずっと考えてた。


『抱きたい』と二宮は言った。
ならば、自分は抱かれるのだろう。



それが自然なのかなんて分からないけど。



でも、二宮がそうしたいと言うなら・・・・。


一番それが自然な気がする。


相葉はシャワーの雫が伝い落ちていく自分の指先を見た。
それは小刻みに震えていて。


「にの・・・気づいたよね?」


嫌な訳じゃないんだ。
この1ヶ月、ずっと考えて出した答えだから。


にののこと、本当に大好きだし。
にのが望むならって、思ってる。



ただ、怖いんだ。



この先に待っているのは未知の世界。
そこに足を踏み入れること。
何よりも、自分がどうなってしまうのか。
そんな自分を、二宮はどう思うのか。


二宮に、嫌われたりしたら?


そう思うと、怖くてたまらないんだ。




震える指先を握り締め、心の迷いを払拭するように思いっきり頭を振った。



*****



シャワーから上がり、バスローブを纏うと二宮の元へと進む。


今日のために二宮が選んでくれたホテル。
都心から少し離れてはいるが、オーシャンビューとその向こうに見える都会の灯り、閑静な環境が売
りで、予約を取るのも大変だと聞いたことがある。
そしてこのホテルの中でも、おそらくかなりグレードの高い部屋だろうと一目で分かる上階の一室。

広いリビングルームにダイニングキッチンが続いて、その奥にはベッドルーム。
壁の一辺が全てガラスとなっていて、抜群のロケーション。



『相葉さんと過ごす初めての日だからね、俺がこうしたかったの』



感激と共に、こんな部屋高いでしょ?と動揺した相葉に、二宮はそう言って笑った。




二宮は先ほどの相葉のように、窓辺に腰掛けて外を見ている。
そんな姿を相葉は少しの間見つめていた。


二宮も緊張しているのだろうか?
自分と同じように、怖いなんて思っているのか。


静かに近づくと、先ほどの二宮がしたように後ろから抱きついた。


「にぃの・・・」


前に回された相葉の手を取り、二宮は自分のそれと重ねた。
その相葉よりも小さな手は、僅かに震えていた。


「相葉さん・・・俺って情けないですね。あんたが俺のものになってくれるのが嬉しいのに・・・怖いんだ」


二宮は重ねた手にそっと口付けた。


「にの・・・」



ああ、一緒なんだ。
そう思うと、安心した。
そして、どうしようもないくらいの愛おしさがこみ上げる。


「うん・・・にの。おれも怖いよ・・・。でも、にのと・・・こうなることが怖いんじゃない・・・にのに嫌われるんじゃないかってことが怖いの・・・」


二宮が身体を反転させ、相葉と向き合う。
相葉は二宮の肩口に顔を寄せて囁いた。


「おれ・・・自分がどうなっちゃうのか・・・わからないから・・・」


それでにのが俺から離れちゃうんじゃないかって。


「何があったって、俺があんたから離れる事なんてないよ」


相葉の頭に手を回し優しく撫でる。


「あんたを嫌いになる事なんてない・・・。俺はね、自分が怖いんだ・・・」

「じぶん・・・?」

「ええ・・・。あんたの事考えずに、めちゃくちゃにしてしまうんじゃないかって・・・」



きっと、抑えが利かなくなる。
それが怖いんだ。


二宮は相葉の頭に自分の顔をすり寄せた。
それに応えるように相葉の手が二宮の背中に回る。


「にの・・・。おれは大丈夫だよ?にのがいれば、なにがあっても・・・大丈夫」



にのとなら、何があっても・・・きっと、すごく幸せだから。



背中に回った手に力を込めた。
二宮は顔を上げると、両手で相葉の顔を包み込み、見つめる。


愛おしくて愛おしくて堪らないひと。


「相葉さん。あなたを・・・抱いていい?」


二宮の言葉に相葉の瞳が揺れた。
一度その瞳を閉じると、二宮の手に自分の手を添え、頬をすり寄せる。


恋しくて恋しくてどうしようもないひと。


「うん・・・抱いて・・・?」



その手を取って、ベットルームへと誘う。
手から伝わってくる相手の熱と、緊張感。


それ以上の愛情。


言葉でなんて言い表せない気持ち。


だからきっと、身体を重ねるんだ。
言葉にできない想いを伝えるために。




そう思うと自然な気がした。



*****


ベッドルームは落ち着いた灯りに包まれていて、窓に揺れる都会の灯りを映す。


相葉の手を引いてベッドへ座らせると、顔を上向かせて、キスを贈る。


「ん・・・・」


そのまま肩を押してベッドへと沈んだ。

触れるだけのキスを唇、頬、瞼へと移す。
くすぐったそうに受け止めていた相葉が、二宮の胸を押してそれを制した。


「んっ・・・・ね、ねぇ、にの・・・?」
「何ですか?」


「あ、あのね!えっと・・・そう!夜景!!夜景がきれいだね・・・?」


そう言って、窓を指さす。


「・・・・ええ、そうですね」
「ね・・・・・えっと・・・あのね?」
「うん?」

「ね!ほんとにさ・・・高いんでしょ?この部屋。こんな豪華な部屋泊まったことないし・・・。あ、なんだったらおれも半分だそう・・・・」
「相葉さん」
「え?」
「もう、黙って・・・」


相葉の唇に指を当てて、言葉を遮る。
言葉を紡ぐことが出来なくなった瞳が不安そうに揺らいだ。
それすらも美しく、二宮を魅了する。

相葉が安心できるよう、そっと口付けた。


「ん・・・、にの・・・おれが・・・もしおれが変でも・・・・」


嫌いにならないでね。


「心配性ですね。絶対に嫌いになんかならないよ」


ほんと?と聞いてくる相葉に優しく微笑む。
しかしそれはすぐに意地悪な笑みに変わって。


「それに・・・元々変なんだから、それ以上にはなりようがないでしょ?」


「・・・・もう!!」


相葉が頬を膨らます。


「あら、可愛い顔が台無し」


二宮がその頬の空気を手で押しつぶして抜くと、2人で笑った。




「・・・相葉さん好きだよ」
「うん・・・おれも」



どちらからともなく寄せられた唇。
それは次第に深くなっていく。



相葉のふくよかな下唇を吸い、舌で刺激して開かせる。
少し開いたそこから自らの舌を滑り込ませ、相葉の口腔内を犯していく。



「んっ・・・んあっ・・・ふ・・・・ん」


歯列をなぞり、奥に潜む相葉の舌を捕らえる。
反応して相葉の舌がビクリと震えた。
舌を吸い、自分のそれと絡める。


「ふっん・・・んちゅ・・はっ・・・」



何度も繰り返される口づけに相葉は必死に付いていこうとする。


「んんっ・・・ぁ・・・はぁ」


長く深いキスに息苦しさを覚えた相葉が、二宮の袖を引っ張ると、ようやく唇が離される。


相葉の目はいつもにまして、潤んでいた。
その瞳に、二宮の欲望は膨らむ。
耳の裏側にキスを落とし、耳元でうっとりと囁いた。


「あいばさん・・・綺麗」
「は、ん・・・・にぃの・・・あっ!」


二宮はバスローブの袷から手を差し入れると、相葉の滑らかな肌を楽しむように撫でる。
その手は何度か肌を滑った後、相葉の胸の突起に触れた。


「んあっ!あ、なにぃ・・・?」


痺れるよな感覚に相葉は戸惑い、二宮の手を掴む。


大丈夫だよという想いを込めて相葉の頬にキスをすると、戸惑いながらも頷いて二宮の手を離し、代わりにバスローブの袖を握り締めた。


「んっ、ん・・・あ」


胸の突起を指で刺激しながら、首筋を唇で伝っていくと、相葉の身体がふるっと震える。

わき腹まで下りた唇が再び上へと上がり、胸の突起を包み込んだ。
舌先で転がされ、吸われるたびに身体に電流のような痺れが走る。


「あっん・・・」


相葉の反応を確かめるようにしながら、ねっとりとそこを何度も舐め上げる。
そして、胸の突起の少し横の辺りに強めに吸い付いた。


「あっ!いたっ・・・・なに?」


ピリっとした痛みに相葉の顔が歪んだ。


「んふふ・・・ごめんね?つけてみたかったの」


俺のもの。
その証をあなたのカラダに。
赤く色づくそれは相葉の白く透き通る肌にきれいに咲いた。


その花を愛おしそうに撫でると、優しく口付ける。


「ん・・・・あ・・んっ」


二宮の手が相葉の体に沿って下へと滑っていき、太腿を撫で上げた。
そして、その手は相葉自身へと伸ばされてそっと擦られる。


「ああっ!んっ・・・やっ・・・まって・・・んっ」


そこは既に反応し始めて熱を持っていた。



思わず上げてしまった自分の声に驚いて動揺する相葉の瞳から一滴の涙が零れた。
その涙を唇で吸い取ると、二宮が笑う。


「んふふ、かぁわいい・・・下着はいてきたんだ・・・?」
「んっ、だってぇ・・・」


さすがに何も纏わないのは恥ずかしくて、バスローブ以外に1つだけ身につけたもの。
その上から反応し始めている自身に触れられて、顔が赤くなる。
二宮の顔が見られずに目を逸らした。


「相葉さん・・・こっち見て?」
「・・・いや」
「どうして?」
「・・・」


自分だけが二宮に触られてこんなになって、恥ずかしくて堪らなかった。


「大丈夫、あんただけじゃない・・・・」
「あっ・・・・に、にのっ」


顔を横に向けたままの相葉の頬にちゅっと口付けると、二宮は自分の下半身を相葉の太腿辺りに押し付ける。
そこは、バスローブ越しでも分かるほどに熱を持っていた。


「俺だって、あんたに触っただけで・・・こんなにも感じてるんだよ・・・あんただけじゃない・・・」


そう言って再び頬に口付けた。
相葉が二宮を見る。
その瞳は真っ直ぐに自分に向けられていて。


ああ、そうだ。
二宮とこうなることを望んだのは自分。
恥ずかしいけど。
怖いけど。


それ以上に彼が好きだから。


相葉自身に伸ばされた二宮の手に自分の手を添えて二宮を見つめる。


「んっ・・・にの、続きして?」
「・・・はい」


二宮は微笑むと、相葉自身を刺激し始める。


「んっ!はっ、ん・・・」


二宮の愛撫に次第に大きくなっていく欲望。
どうしていいか分からずにいる相葉は、足をすり寄せてその感覚に耐える。
口をぎゅっと引き結んで。


そうしないとどうにかなりそうだから。
あられもない声を張り上げてしまいそうだった。



「あいばさん・・・声聞きたい。我慢しないで?俺に・・・あんたの全てを見せてよ・・・」


二宮の指が相葉の唇を割って、口腔内に入り込む。
歯を食いしばって声を耐えていた相葉は、二宮の指を噛むわけにもいかずに、口を開けるしかなかった。


声を抑えることが出来なくなった相葉は、甘く高い声を上げる。


「んふっ・・・ん、あっ・・・」


二宮は相葉の身体を抱き起こすと、肩からバスローブを抜いて取り去る。
そして下着に手をかけると一気に脱がせ、自らも着ているものを脱ぎ捨て、一子纏わぬ姿となった。


そして直接相葉の欲望に触れると、高みへと誘うようにその手を動かす。
完全に起ち上がったそれは、更なる刺激を求めるように口から先走りを滴らせた。


「あぁっ、あ、あっ・・・やぁっ・・・」


上ずる相葉の声に限界が近いのだと知る。


「相葉さん・・・イキそう?」
「うっん・・・・だめぇっ・・・にのぉ・・・んっ」


二宮の手首を掴んで、必死に首を振る相葉。
それを見て手の動きを速める。

「いいよ・・・、イって?」

「んっ!あっ、あ・・・やっ、でちゃ・・・ああっ!」


一際大きく声を上げたのと同時に、相葉は二宮の手に白濁を吐き出した。



熱を吐き出し、ぼんやりと天井を見つめる相葉の顔を覗き込んで、触れるだけのキスをする。


「気持ち・・・良かった?」
「うん・・・・えっ!?いや、ううん!や、うん・・・」
「んふふ、どっちだよ・・・」


そう言った二宮は、手に吐き出された白濁をしばし見つめたかと思うと、おもむろにそれに舌を這わせた。


「・・・にの?って!!なにしてんの!?」


慌てて二宮の手を掴んだが、時既に遅く。


「ん・・・苦いね・・・でも、あんたのだから」


おいしいよと笑ってみせる。


「もう・・・信じらんない」


顔を真っ赤にして二宮を恨めしそうに見上げた。
ホントのことなのにと、二宮は肩を竦めて微笑んだ。


そして再び相葉の身体を愛撫する。


「んっ・・・・ね、にの・・・」
「んー?」
「にのは・・・?その・・・しなくて・・・いいの?」



「・・・してくれんの?」
「え・・・う、うん・・・だって、おれだけなんて・・・」


相葉は二宮の固くなったものに目を向けると、顔を赤くしてすぐに目を逸らす。


「んふふ、今日はいいよ・・・。俺はあんたの中でイキたいから・・・」
「なっ!もう、ばか・・・」
「照れてんの?可愛いんだから」


そんな可愛い顔してさ、どうなってもしらないよ?


一度熱を知った身体は少しの愛撫で、すぐに反応を始める。



「あっ、ん・・・」



身体を舌でなぞって下へと進んでいき、頭をもたげ始めているそこに口付けると、口腔内へと誘い込んだ。


「ちょっ!や、まって!ああっ・・・」


突然の出来事に相葉は身体を起こして二宮を止めようとするが、あっさりと二宮に制されてしまった。

二宮の口内に入って舌で刺激されたそれは、あっという間に体積を増していく。
相葉は二宮の頭を押し返そうとするが、あまりの刺激の強さに力が入らず、撫でるのが精一杯だった。



「んあっ!あぁ・・・に、のぉ・・・んっ」
「んっ・・・はっ、あいばさん・・・気持ちいい?」
「やっん、しゃべら・・ないでっ・・・あっ」


相葉の反応を見ながら口での愛撫を続け、その奥に潜む蕾へ触れる。
入り口を指で押すと、そこは収縮して、まるで何かを期待しているようにさえ思えた。


「んっ!に、にの!」


誰にも触れられたことのない、見られたことさえないその部分に二宮が触れている。
それだけで、どうしようもないくらいに恥ずかしい。
なのに、それ以上に感じていた。



相葉自身に這わせた舌をそのまま最奥へとしのばせ、その入り口を刺激する。


「ああっ!あ、んっ。に、にのぉ・・・ふんっ」


二宮が舌で押したり舐め上げるたびに、相葉の秘部は意志を持ったように蠢いた。



「ふっ、はぁん・・・・ん、にの・・・にのぉ」


初めての感覚に、恐怖にも似た感情が相葉を襲う。
それを振り払うかのように、相葉は二宮の名前を呼び続けた。


相葉の動揺を感じて、二宮は一旦顔を上げると相葉と目を合わせた。
不安と快感が入り混じった相葉の瞳が揺らめく。
相葉を安心させるように頭を撫でる。



「あいばさん・・・すきだよ。どんなあんたでも、相葉雅紀である限り・・・ずっと愛してる・・・」
「にの・・・おれも。どんな・・・にのでもだいすき。だから・・・」


大丈夫だよ。
心配しないで。
ただ、初めてだからちょっと恥ずかしいだけ。
どうしようもなく緊張してるだけ。
にのを受け入れることに、抵抗なんてない。


その気持ちを込めて、二宮にキスをした。


唇を離すと、二宮が微笑んだ。




二宮は、自分の指を相葉の口腔内に滑り込ませる。


「しっかり・・・舐めて?」
「ンふっ・・・んちゅ・・・はっむ・・・・」


相葉は言われたとおりに夢中で二宮の指を舐めた。


そんな相葉にどうしようもないくらいに欲情する。
今すぐにでも自分の欲望を相葉の中に押し入れて、めちゃくちゃに動いてやりたい。
相葉が泣き喚いて許しを請うくらいに激しく貫きたい。


でも、そんなことをして彼を傷つけることは本意ではないから。
身体を繋げることだけが目的ではないから。

自分の恐ろしい感情を、奥歯を噛み締めてやり過ごす。

 

「・・・ありがと、もういいよ」


お礼のキスを相葉に贈ると、嬉しそうにはにかんだ。

二宮は充分に湿った指を相葉の秘部へと這わせて、1本の指を埋め込んでいく。


「んっ!あぁ・・・・」

「痛い?」
「ふっ・・ん、ううん・・・いたくない・・・けど、変なかんじがするぅ・・・」


秘部は入り込んできた異物を排出しようと締め付ける。
内壁を傷つけないようゆっくりと指を奥へと進めた。
奥まで入ると、相葉に痛みの表情がないことを確認して、埋め込まれた指を動かす。


「んっ、はっ・・・あ」


中で回したり、曲げたりするたびに相葉の口からは声が漏れる。
それは、快感というよりは異物の侵入による圧迫感からのようだった。


二宮は相葉の表情を見ながらゆっくりと解してゆく。



「ふっ・・・あっん!ああっ・・・」


指を曲げて回転させた時、二宮の指がある場所を掠めた。
その瞬間、相葉の身体がビクンと跳ね上がる。
同時に甲高い声を上げた。



それは明らかに今までのものとは質の違う反応で。
相葉自身も突然の衝撃に驚いているようだった。


「はっぁ・・・な、なに?ああっ!」


もう一度先ほどの場所を探り、そこに触れてみる。
すると、相葉は再び高い声を上げて身体を反らせた。
間違いない。


「・・・ここ?ココがいいの?」
「んっ!ああっ、はっん・・・いやっ、そこ・・・やだぁっ」


味わったことのない感覚に、相葉の瞳から涙が零れた。
二宮は、涙を拭ってやりながら内壁を刺激する。


「んっ!ああ・・・ふぁっ、にのぉ・・・」



中で指が動くたびに大きな反応を返す相葉。
すでに苦しさはなくなっているようだ。
解れてきたそこは、増えた指を簡単に受け入れた。
その腰は快感に揺れている。




うつろな瞳で二宮に快感を訴える相葉は、この世のどんなものよりも綺麗だ。




本当に愛おしくて堪らなかった。
何をおいても最優先だった。

手に入れたくて、でも出来なくて。

拒まれたら生きていけないから。

頭の中で何度も彼を穢した。
頭の中の彼に欲望をぶつけて、自分の手を汚すことなんてしょっちゅうだった。
そして、何度も後悔し、彼に詫びた。

離れようと思った。
でも出来なかった。


それでも傍にいたかったから。
傍にいられるなら、今のままでも良い。
そう思い込ませて。


彼が自分を好きだと言った時、本当にどうにかなりそうだった。
嬉しくて嬉しくて。




その彼が今、自分を受け入れようとしてくれている。
これ以上の幸せなんて・・・・ない。




「んあっ・・・あ・・・?にぃのぉ?・・・・」


涙に濡れて、キラキラ光る瞳が二宮を捉えて不安そうに揺れた。
手を伸ばして、二宮の顔に触れる。


「・・・あいばさん?」
「・・んっ、にの・・・どうしたの?」


相葉に言われて自分の頬を触ると、一筋の涙が流れていた。


相葉の顔がくしゃりと崩れる。



「にのぉ・・・おれ、が・・・だめだから・・・・?」
「違うよ。違う・・・そうじゃない。」


相葉の手に自分の手を重ねた。


「ごめん・・・。不安にさせたね。でも、あんたのせいじゃないんだ・・・。俺はただ、嬉しくて堪らないんだ」
「うれしい・・・?」
「うん・・・あんたが俺の事好きになってくれたこと、俺のものになってくれたこと、俺を・・・・俺を受け入れてくれようとしてくれてることが・・・・嬉しくて」



堪らないんだ。



二宮の頬をもう一筋、涙が伝った。



その涙を相葉は愛おしそうに拭う。



「にの・・・・おれだって。にのが好きになってくれて、愛してくれて・・・必要としてくれてることが本当にうれしいの・・・にのを・・・受け入れられることが、本当に・・・」



幸せ。




「あいばさん・・・・」

「ねぇ、にの・・・こんな幸せ・・・2人だからだね?」


相葉が綺麗に微笑んだ。


「・・・そうですね。ホントにそう・・・」


二宮も微笑んだ。



その表情に相葉は頬を赤らめた。
そして・・・。



「ねぇ、にの。もう・・・おれ・・・」
「あいばさん?」


相葉が二宮の下で腰を揺らした。




「ねぇ・・・もう・・・にのがほしい・・・」
「え・・・?」
「だって!もう、にののこと考えたら・・・・もう、はやく1つになりたい・・・」


潤んだ瞳で訴える相葉に、二宮の欲情が再び増幅する。
相葉の唇にキスをして、昂ぶった自身を相葉の秘部にあてがった。


「相葉さん・・・いくよ?」
「うっん、きて・・・?」


相葉が安心できるようにキスをしながら、自らを押し進めた。



「ひっ!あ、あ・・・いたっ・・・ああっ、くっ」


指とは比べ物にならない質量が相葉の秘部に入り込もうとする。
あまりの痛みに相葉の顔が歪んだ。


「くっ、あいばっさんっ・・・力抜いてっ・・・・」
「あぁっ、んっ・・・いた・・・いたい、んっ、はぁ・・・」


涙を流しながら、一生懸命に力を抜こうと、大きく息を吐く。
痛みに、相葉の顔からは血の気が引いていた。


二宮の方も、相葉の締め付けに痛みが走る。
相葉の力が少しでも抜けるように顔中にキスを落とし、涙を拭う。



「あ、にのぉ・・・・んっはぁ・・・いた・・いっ・・」



二宮の先端の太い部分を飲み込むことがなかなか出来ずに、痛みだけが相葉を襲った。


「くっ、ん・・・。相葉さんっ・・・大丈夫?」


痛そうにする相葉に二宮は身を引こうとしたが、相葉が二宮の腕を掴んで制した。
二宮を見て、必死に首を振る。


「相葉さん・・・?」
「やっ・・・やだっ!にの、続けてぇ・・・おれ、大丈夫だかっら、んっ」


お願いと、涙で溢れる瞳が懇願する。


「相葉さん・・・前にも言ったでしょ?これだけが目的じゃないって。無理して傷つけたくないんだ・・・」
「ちがっ・・・違うの!んはぁ・・・にのの為とかじゃなくって・・・・おれが・・・続けて欲しいの・・・にのを受け入れたいのっ・・・」

「あいば・・・」
「ねぇ・・・おねがぁい。おれ、ニノと・・・・繋がりたいっ。ああっ!!」


そう言って自ら腰を浮かせて、二宮に身体を押し付ける。


「ばっ!何してんの!」


一層の痛みに顔を歪めた相葉だが、再び腰を押し付けようとする。
二宮が肩を抑えて止めさせ、ため息を吐いた。


「だってぇ・・・」
「・・・俺がするから・・・・俺にさせて?」
「うん・・・」


二宮は相葉の萎えてしまった部分へ手を伸ばし、ゆっくりとしごいた。


「んっ、ん・・・はっん・・・ああ・・・」


その刺激に次第に立ち上がってくる相葉を、なおも愛おしそうに愛撫する。
完全に相葉の意識がそちらに向き、きつく締め付けられていた部分の力が緩んだ。
それを見計らって、二宮が身体を進める。


「あっん!あぁっ・・・」


先端部分が相葉の中に入り込むと、前への刺激を続けながら、奥までゆっくりと入り込んでいく。


「くっ、はぁ・・・・あいばさん、入ったよ・・・・分かる?」


押し広げられた痛みと圧迫感に、浅い呼吸を繰り返していた相葉だが、二宮の言葉に綺麗に微笑んだ。


「うんっ・・・・はぁ。にのが中にいる・・・・繋がってるんだね。ふっ、ん・・・うれしい・・・」


相葉は下腹部に自らの手を置いて涙を流した。
それは、けっして痛みから来るものではなく。


1つになれた喜び。



二宮を受け入れた内部は、その異物を確認するかのように収縮を繰り返した。


二宮は自身が相葉の中に馴染んで痛みが引くまで、動かずにキスを繰り返し、頭を撫でる。



「ん・・・にのぉ・・・」


しばらくすると、相葉が小さな声で二宮を呼んだ。


「何?」
「・・・う、ん。あの、もう・・・いいから・・・動いて?」


相葉の表情を窺うと、その顔色は先ほどまでと違って赤みが差し、浅かった呼吸も今では熱を持った吐息に変わっていた。


腰が僅かに揺れている。


「いいの?」
「うっん・・・もう、だいじょ・・・ぶ・・だから、おねがい・・・んっ!」
「・・・・痛かったら、言えよ?」


相葉が頷いたのを確認してから、二宮はゆっくりと動きだした。


「あっ、あ、んっ・・・」


二宮の律動に合わせるように腰を揺らす相葉。
痛みがないのを確認しながら、相葉の感じる場所を探し、そこを目掛けて自らの抽出を繰り返す。


起ち上がりかけている相葉自身にも手をかけ、同時に刺激した。


「ああっ!あ、んっ、にのぉ・・・あっ」
「あいばさんっ・・・・く、はっ」


完全に二宮を受け入れたそこは、二宮を捉えて離すまいとするかのように絡みつき、二宮を快感の渦へと誘い込んだ。


激しく動きたい衝動を抑えて、相葉の負担にならないようにゆっくりとした律動を繰り返す二宮に、相葉が潤んだ瞳で訴える。


「んぁっ、に、のぉ・・・」
「なっに・・・?」
「おれ・・・おれ、大丈夫だからぁ・・・・もっと、動いてっ」
「でも・・・・」
「いいからぁ・・・もっと、にのを・・・感じたいっ」


シーツを握り締めていた相葉の手を自分の背中に回させると、額に口付ける。


「辛かったら、爪立てても良いから・・・いくよ?」
「うんっ!」


二宮が激しく動き出した。
その突き上げと内壁を擦られる感覚に、二宮の背中に回った手に力が入る。

激しく動きながらも、二宮は相葉の良い所ばかりを狙って突いてくる。

痛みに勝る快感。


相葉の口からは絶えず声が漏れていた。



「あっ、はっん!あ、あぁっ・・・にっ、の」



二宮が再び前への愛撫を始めると、それは一層高く、大きな声となった。
限界が近い。


相葉は、自分の中が熱く溶けてしまうような感覚に陥る。



二宮と一緒ならそれも構わない。
一緒に溶けてドロドロになって、どっちがどっちか分からなくなるくらいに混ざり合ってしまえばいいのに。



二宮もそう思ってくれているだろうか?
自分に感じてくれている?


涙に濡れた瞳で二宮を見つめた。



「ふっ、ん・・にの、きもち・・いいっ?」
「んっ、はっ・・・もう、気が狂いそうなくらい・・・」


気持ちいいよ。


「よかっ・・・た、んっ!はぁん・・おれ、もう・・・あっ」


「うん、俺もっ・・・一緒にイこうか?」


相葉が頷くと、二宮は最後に向かい一層激しく突き上げる。


「にのぉ・・・すきっ、だいすきっ!ふっ・・・ん!」
「俺もっ、愛してるよ・・・」


二宮に縋りつき、「好き」を繰り返す相葉に応えるように言うと、唇に噛み付いた。



何度も押し寄せる快感に、相葉の目の前がスパークする。


「ああっ!にのぉ・・・あっ、いっ、くぅ・・・・あぁっ!!」
「く、はっ・・・あいばっ!!」


相葉が自らの腹を汚したのとほぼ同時に、自分の奥で二宮が弾けたのを感じた。
自分の中に感じる二宮の熱に、相葉の頬を涙が伝う。



なんて、幸せ。


*****


「・・・相葉さん?大丈夫?」
「・・・・」


涙を拭ってくれる二宮をぼんやりと見る。
二宮は困ったように相葉から目を逸らした。


「・・・参ったな」
「え・・・?」



その言葉は相葉を不安にさせた。
自分は何か失敗しただろうか。



「・・・そんな目で見ないでよ」
「え?」
「無理させたくないのに・・・」


意味が分からない相葉は二宮を不安そうに見つめた。


「もう・・・負担かけたくないのに、そんな風に見つめられたら俺が我慢できないって」
「なっ!なに言って・・・・」
「しないよっ。今日はね、もうしないよ。初めてだし、辛かったでしょ?」

「あ、ううん!最初は恥ずかしかったし、痛かったけど・・・でも、してって言ったのはおれだから・・・それに・・・な、なんでもない!」


「何?言ってよ」
「ううっ・・・。おれ、にのと繋がった時ね・・・本当に幸せだった。もうこのまま離れられなければ良いと思ったの。痛かったけどね、それもにのがくれたものだから・・・」



顔を赤くして言う相葉に二宮は言葉をなくす。



あんなに痛そうに顔を歪めて、なお幸せと言えるあなた。
俺を受け入れることを嬉しいと、涙まで流して。



本当に奇跡のような存在。



「あいばさん・・・本当にあなたって人は・・・」




何処まで俺を惚れさせるんですか?




「にの?」



不思議そうに首を傾げた愛しい人を抱きしめる。
しばらくなすがままに抱きしめられていた相葉だが、二宮の背中をポンポンと叩くと、気になっていたことを聞いた。


「ねぇ、にの?おれ・・・おれ、気持ちよかった?ちゃんと・・・」



感じてくれた?



「当たり前です。あんた以上に気持ちいい人なんていないよ。それにあんたが一番よく分かったでしょ?」


ココで・・・俺のモノを受け止めたんだから。


そう言って相葉の下腹部を撫でた。


「あ・・・うん、そうだね・・・」
「照れてんの?かぁわいい」
「もう!うるさいっ」


「んふふ、相葉さん・・・愛してる。ありがとう」



こんな俺を好きになってくれて。
俺のものになってくれて。



「にの・・・、うん。おれも、愛してる。ありがとう」



おれを愛してくれて。
あなたのものに・・・してくれて。





触れ合うだけのキスを何度も何度も繰り返す。







抱き合うことで知ったこと。


相手を受け入れることの幸せ。
1つになれる感覚。

そして、言葉では伝えきれない愛情。



想われていること。



想っていること。




「ねぇ、にの。こんな幸せ・・・」




2人だからだね。






おわり
俺はクリスマスが大嫌いだ。


昔はそんなことはなかった。
というより、クリスマスなんて関心がなかっただけ。


プレゼントをもらったりケーキを食べたりと、まぁそれなりには楽しかったし、嬉しかったけど。


街はキラキラして、どこか浮ついていて。
でも行き交う人全てが笑顔で。
そんな雰囲気は嫌いじゃなかった。


そんな俺が、クリスマスが何よりも嫌いになった理由。


それはあの人が俺の前に現われたからだ。



『ねぇ、にの。もう、いいよぉ。おれは大丈夫だから。それに、こんなこと慣れっこなんだよ?』


そう言って相葉さんは笑った。


困ったような、諦めたような淋しい顔で。



相葉さんと過ごした彼の初めての誕生日。


何が欲しいって聞いた俺に、彼が言ったのは「2人っきりでお祝いして欲しい」という、とんでもなく可愛らしいお願いだった。

舞い上がった俺は、最高の誕生日にしてやりたいって張り切って、色々考えたんだけど・・・。

何しろ若かった俺には何の知識もなくって。



世間はクリスマス。
何処もかしこも予約でいっぱいで。


結局は全てが行き当たりばったりになってしまった。


空いてる店は安い居酒屋ばかり。
安い食事に安い酒。


せめてケーキだけでもでっかいものを買おうと2人でやって来たケーキ屋。
しかし、クリスマスの時期にあるのはどれもクリスマス仕様のケーキばかりで。


『あの・・・誕生日のケーキなんですけど・・・』
『あいにく、本日はクリスマス用のケーキしか・・・・このクリスマスのプレートを誕生日のものに変えることは出来ますけど・・・』


店員は、忙しいのに迷惑な客だと言わんばかりの顔をする。


生クリームの雪の上にイチゴとサンタとトナカイ。

そこに『ハッピーバースデイ 雅紀』はないだろう。


そもそもキリストの生誕を祝う日だろ?
何で誕生日のケーキがねぇんだよ!!
おかしいと思わねぇのかよ!


次の店を探す。
店員に聞いては断り。
また聞いては断った。


何軒目かで相葉さんが俺の服の裾を引っ張って申し訳なさそうに言ったんだ。


『ねぇ、にの。もう、いいよぉ。おれは大丈夫だから。それに、こんなこと慣れっこなんだよ?』


いつだってそうなんだから。
昔から、クリスマスと誕生日は一緒なの。

だから平気と相葉さんは笑った。




違う。

違うだろ?


少なくとも、俺にとっては。


あんたが生まれた大切な日なんだよ。


クリスマスなんかより、もっともっと特別な。


あんたが生まれた日なんだ・・・・。




小さいケーキを2つ買って、俺の家でこじんまりと食べた。



何とも情けない気分だった。



相葉さんはそれでも喜んでくれたけど。


『にのと2人で誕生日を迎えられたんだからうれしいよ?大好きな人と2人だもん』


なんて笑う相葉さんに、余計に惨めな気持ちになった。



彼は本当に嬉しかったんだと思う。
気を使ってるわけじゃなく、俺といられることが本当に。


だからこそ、もっと喜ぶことをしてあげたかった。
喜ぶ顔を見たかった。
最高の笑顔を。


俺の、どうしようもないくらいに愛おしい人の生まれた日。

彼をこの世に授けてくれたこと、俺と出逢わせてくれたことには感謝するけど、こんな日に彼を誕生させたことは恨むよ神様。

あんたを。



この日を境に俺はクリスマスが大っ嫌いになったんだ。


「・・・の!にぃの!!」
「・・・はいっ?」


愛しい人の声で我に返る。
そこにはお酒が入って潤んだ瞳で、俺を見つめる相葉さんがいた。
ほっぺたまで膨らませて。

本当に25歳なのかと疑いたくなるような仕草。
それがたまらなく可愛いと思える俺も相当イカれてるけど。


「もう!なにボーっとしてんのぉ?」
「ああ、すいません・・・」


あの日から何年も経った相葉さんの誕生日。
今でも俺の隣に彼が居て、2人でお祝いできることが本当に嬉しい。

詰め寄る彼を抱きしめてキスを贈れば途端にへにゃっと崩れる顔。
俺の顔も一緒に崩れる。


あんな惨めな思いは2度としたくなくて。
次の年からはそりゃもう必死だったよ。


どんな雑誌の取材も、テレビのインタビューもクリスマスのことを聞かれる度に同じ答え。


『クリスマスは相葉さんの誕生日。その認識しかありません』
『クリスマスの予定?特にないですね。相葉さんの誕生日ですから、そのお祝いですよ』


だって、それが本音なんだ。




何ヶ月か前からケーキ屋を巡った。
クリスマスに誕生日ケーキを作ってくれる店を探すために。

忙しいクリスマスに、誕生日ケーキ1つだけのために承諾してくれるところはなかなかなかったけど。

それでも何とか用意することが出来た彼だけのためのケーキに、彼は瞳をキラキラ輝かせた。


あの時は本当に嬉しかったな。





今ではすっかり慣れたもんで。
お店もケーキ屋も全てが頭の中にインプットされてる。
それからは毎年、こうして充実した誕生日を迎えられている。



「もう!にの!!またぁ、聞いてんの!?」
「ああ、すいません。ちょっと昔をね、思い出してて」
「むかし?あーっ!まさかぁ、俺の誕生日にほかのこと考えてんのぉ!?」


信じらんない!と俺の胸をポカポカと叩く。


「ごめんごめん。痛いよ、相葉さん」


酔いが回って、呂律が回らない彼の攻撃を頭を撫でて収めた。


「むー、にのが悪い・・・おれのことほったらかしで、ほかのこと考えてぇ!!」
「そんなわけないでしょう?俺の思い出すことなんて全部があんたの事だよ」
「・・・おれのことぉ?」
「そう、あんたの初めての誕生日をね・・・思い出してたんだ」


そう言うと、相葉さんは潤んだ瞳を輝かせた。


「あー、あれ!あれは本当に良い思い出だよねぇ。」
「・・・・良い思い出?あれが?」


何にもしてあげられなかったあの日が?


「うん!!だってぇ、初めてなの。おれのこと・・・・おれの誕生日だけを想ってくれたひと・・・にのが初めて」


嬉しかったなぁと、遠い記憶の向こうを見つめる瞳は本当に幸せそうだった。


「おれはね、あの日から・・・おれの生まれた日が本当に特別な日だって思えるようになったの。
もちろんクリスマスだって嫌いじゃないよ?お祭りごと大好きだし。でもね?いつも少しだけね、淋しかったのもほんと」


「あいばさん・・・」


「ふふっ、でもにのってばムキになっちゃって可愛かったなぁ。おれね、ケーキ屋の店員さんに噛み付いちゃうんじゃないかって、ひやひやしたの!」

「・・・噛み付かねぇよ」
「うひゃっひゃ、うん。でも・・・それだけおれのこと想ってくれてんだって・・・感動しちゃった。泣きそうになったもん、おれ。
あの時、にのと出逢えて本当に良かったって、この日に生まれて良かったって思ったの」


おれのことだけを考えてくれる初めてのひと。
出逢わせてくれてありがとうって、神様に感謝したの。


そう言って笑う彼を力いっぱい抱きしめた。


「にのぉ?苦しいよぉ・・・」
「うん・・・」
「うんって・・・・。どうしたの?」
「うん・・・」

何を言っても「うん」しか言えずに彼を抱きしめ続ける。
彼の温かい手が俺の背中に回されて、触れられてるのは背中なのに胸が締め付けられた。


「にの・・・」
「うん・・・」
「おれのこと・・・想ってくれてありがとう・・・にのが、おれにとっての一番のプレゼントだよ。
それはあの時から、今も変わらない。にの以上のプレゼントなんてないんだ」


相葉さんの言葉に不覚にも涙が出そうになった。
かろうじて抑えたけど。



「相葉さん・・・」
「んー?」


ベタなことだけど言わずにはいられなかった。


「生まれてきてくれて・・・・俺の元に来てくれてありがとう。愛してる」
「ふふっ・・・おれもぉ、大好きだよ」



体温が上がる。
カラダが、ココロが互いを求める。





「相葉さん・・・愛してる」






ねぇ、神様。

さっき言ったこと取り消すよ。


相葉さんをこの日に授けてくれてありがとう。
この日だからこそ、俺達の想いは深く繋がったのかもしれない。


そう思ったら、クリスマスも悪くない。


所詮、相葉さんさえ幸せなら何だって良いんだよ、俺なんて。





彼の生まれた日に感謝を。

そしてこれからも、彼の人生全てが俺と共に在ることを。




願って、愛しい人を抱きしめた。








Happy Birthday  MASAKI AIBA       

and ……A Merry Christmas to you!!
《恋人達以外のクリスマス》





クリスマスはカップルだけのもんじゃねぇだろ?

なんて、いいがかり。
ただ単に面白そうだから着いて来ちゃったんだ。


隣で目を潤ませて、いい感じに酔ってる彼はやっぱり綺麗で。
友人がうらやましくなったりもする。


まぁ、内緒の話だけど。


彼が誕生日だったって知ったのはもうちょっと後のこと。
そして、俺が帰った後は大変に激しく情熱的だったとニノが語ったのも、もうちょっと後のこと。


結局俺は良い仕事したんじゃねぇか。
2人の熱い夜を演出したんだから。


なぁ、ニノ?


*****



「スッキリをご覧の皆さん、クリスマスなんて大ッ嫌いだ!小栗旬です」




「お疲れ様でした~」


コメント撮りが終わり、小栗はスタジオを後にする。


世間はすっかりクリスマス。
なのに俺は仕事がぎっしりだ。
口を吐いて出るのはため息と愚痴。


さっきのコメントは本音だ。
まぁ、彼女のいないヤツの恨み言と言われりゃそれまでだが。


そう思いながらテレビ局の廊下を歩いていると。


「あれ?あそこにいるの・・・・」


見覚えのあるシルエットに見覚えのあるシチュエーション。
前と違うのは、どうやら電話中みたいだ。


『うん・・・後ちょっとで終わる。にのは?もう終わってるんだ?え?迎えに来てくれんの?うへへ・・・うん、待ってる。ありがと!くふふっ、うん。じゃあね、あとでね。ばいばい』


電話を切ると嬉しそうに携帯を握り締めた。


「デートのお誘い?」
「ひっ!あ、おぐりくん・・・?びっくりしたぁ。今日は仕事?」
「うん。相葉君も?」
「うん。どうぶつ園の収録なんだ。小栗君は?」


首を傾げて上目遣い。
相変わらずツボをついてくる人だな。


「俺はね・・・番宣のためのコメント撮りと取材。相葉君、にのとはどう?」
「え?う、うん・・・まぁね」


あ、赤くなった。
可愛いな。


「終わったら会うの?さっき約束してたよね?飯でも食いに行くの?」
「うん・・・。迎えにね来てくれるって」
「へぇ・・・」


嬉しそうにはにかむ。

明日はクリスマスイブ。
今日はお泊りですか?
うらやましいことで・・・・。


・・・・・よし!


邪魔しちゃお♪


「相葉君、何時に終わんの?」
「えっと・・・5時かな?あ!おれ、そろそろ行かなきゃ。小栗君またね?」
「ああ、うん・・・また」


笑顔で手を振って去っていく相葉君を見送った。




「・・・・・で、何でお前がいるわけ?」
「えへ」
「『えへ』じゃねぇ!!」
「まぁ、固いこと言うなよ。飯、行こうぜ!」
「はぁ!?」
「いいじゃん。ね、相葉君?」
「え・・・?う、うん」


断りきれないことは一目瞭然。
ごめんね相葉君、俺って意外と嫌なやつでしょ?


これ見よがしにため息を吐いたニノに近づき、囁いた。


「淋しい1人者にも愛を分けてくれよ」
「・・・・・」
「飯食ったらちゃんと帰るよ。それくらいいいだろ?」
「・・・・当然です。」


迷惑そうに承諾する友人に、苦笑いを返した。



そしてやって来た居酒屋の個室。


「相葉君、飲んでる?」
「うん、飲んでるよぉ。くふふ、この間ね、小栗君のドラマ見たんだぁ。ね、にの!」
「・・・ええ」
「カッコ良かったよね。おれもあんなのやってみたいなぁ」
「相葉君にはヒロインのが似合いそうだよ」
「へ?」


良い所でニノの邪魔が入る。


「相葉さん、それ取ってくれる?」
「え?うん、はい」
「どうも・・・」


「ニノ・・・・どいてくんない?」
「嫌です」
「俺、相葉君と話したい」
「どうぞ」
「お前挟んでじゃ話しづらいっての!」


そう言ったら睨まれた。
よっぽど警戒してんのね、俺の事。

まぁ、しょうがないんだけど。


そんなこんなで時間が過ぎて。
友人と飲むのはやっぱり楽しくて飲みすぎた。


「俺、ちょっとトイレ行ってくる」


ニノが席を立ったので、ちゃっかり相葉君の隣に移動。
お酒が入ってぽやーっとしてる相葉君は何だか色っぽい。


パーカーから少し覗いてる肩が色気を醸し出していて・・・。
俺の悪い癖がムクムクと疼き出す。



ああ・・・・噛み付きたい。



「あいばくん・・・・」
「ふぇ?」
「ちょっと良いかなぁ?」
「え?な、なに・・・・お、おぐりくっ・・・ひゃぁっ!」


おもむろに相葉君のパーカーをズラすと、肩口に噛み付いた。


あ、良い声。
感じちゃったの?


「あっ、ちょっ!はなしてっ!んっ」
「何やってんだよ!!」


首根っこを掴まれて引き離された。


ちっ、帰ってきたか。
相葉君の肩気持ちよかったなぁ。


「お前・・・死にたいの?」
「えへ」
「だから、『えへ』じゃねぇっ!」


「に、にのぉ・・・」
「・・・あんたも、俺以外のヤツには警戒しろっていつも言ってるでしょ?」
「ごめんなさい・・・」



ニノが超怒ってる。
何だか笑えて来た。



「・・・お前完全に酔ってんな。だから隣にしたくなかったんだよ。帰れよ、もう」
「はいはい・・・そろそろね、邪魔者は消えますよ。相葉君ごめんねぇ、びっくりさせて」
「え・・・うん。小栗君・・・吸血鬼かと思った」


噛まれた肩口を擦りながら、真っ赤な顔で言う相葉君にまた笑った。


「ははっ。ホント可愛いね相葉君は」


そろそろホントに帰らねぇと、ニノが切れるかな。
じゃあ・・・最後に。


「んじゃ、帰るわ。あ、相葉君・・・・」
「なに?」


手招きする俺に、なんの疑いもなく耳を差し出す。
だからホッペにキスしてやった。


ちゅっ


「へっ!?」
「あーっ!!おまっ・・・・」


ニノが叫ぶが気にしない。


「じゃあね。良いクリスマスを・・・・」


固まってる相葉君に囁いて、店を出た。



後は知らない。





おわり



《大好きな手》




「ねぇ・・・せんせい?」
「何?」
「おれが・・・助かる確率って・・・・どのくらい?」



小さい頃から心臓が悪かった。
運動もほとんどしたことなくて。
成長するにつれ、症状はひどくなる一方で。
早急な手術が必要だった。

でも、難しい手術を引き受けてくれる医者はなかなかいなくて。
ようやく見つけたせんせい。

若いけど、腕は最高でおれにとってはこの世でたった一人の頼れる人。


「んー・・・、25%かな?俺が執刀しない場合はね」
「じゃあ・・・せんんせいが、しゅじゅちゅしたら?」
「んふふ、『しゅじゅつ』だろ?まぁ、限りなく100%に近いよ」
「ほんと?」
「ええ・・・」


髪を梳いてくれる小さな手。
気持ちよくて安心する。
この手がおれを救ってくれるの?


大好きな大好きな手にそっと自分の手を重ねた。


「相葉さんは・・・治ったら何がしたい?」
「おれはね・・・・せんせいとえっちがしたい」
「んふふ・・・それは是非治ってもらわないとね」


笑って、せんせいがキスしてくれる。
そうするとおれは幸せで、なぜだか泣きたくなるんだ。


「せんせい・・・おれのこと、すき?」
「・・・うん、愛してる」
「おれが・・・死んだら、悲しい?」
「俺がやる限り、あんたは死なないよ。でも、もし・・・・」


せんせいがおれのホッペを撫でてくれる。
 

「もし、あんたが死んだら・・・・俺も一緒に逝ってあげる」
「・・・・もし、助かったら?」
「そん時は、一緒に生きていこう?」


せんせいが笑うと、胸が痛い。
これは病気のせいじゃなくって。
嬉しいからだね。


「うん・・・・。じゃあ、頑張らなくちゃね。せんせい死なせるわけにいかないもん」
「んふふ、俺はどっちにしたってあんたと一緒だよ。だから安心して・・・おやすみ」


せんせいの言葉にだんだん眠くなる。


「次に目を開けたら、きっとあんたは元気に走り回れる。その時は・・・さっきの願い叶えようね」

「う、ん・・・にの・・・みや、せん・・・せい。だい・・・すき・・」
「・・・おやすみ。愛してるよ・・・・」


にのみやせんせい。
大好きな大好きなにのみやせんせい。


次に目覚めた時には恋人にしてね。


それまで・・・・おやすみなさい。




おわり



《教えて先生》



いつの時代にも問題児ってのはいるもので。


「はぁ・・・また・・・」


穢れを知らない少女のように真っ白なそれをひらひらと振ってはみても、どうなるわけでもないと、相葉はため息を吐いた。


「今日は白紙か・・・。もう・・・なんでかなぁ?あ!もしかしてあぶり出しとか!?」
「そんなわけないでしょう?馬鹿ですか、あんた」


相葉のささやかな現実逃避を、ばっさりと切りつけたのは紛れもなくその張本人だ。



「お前ね、先生に向かって「あんた」って何だよ!ちゃんと先生って呼びなさい」
「先生ね・・・あんたの事先生なんて思ったことないし・・・」


しれっときつい事を言うのは二宮和也、高校2年生。
相葉の担当するクラスの問題児。


相葉が担任になってから、テストで一度もまともな答案を出してこない。

しかも相葉の担当する英語だけだ。
いつも白紙か、デタラメな答え。


白紙はまだいい。
もう一方の答えが相葉を悩ませていた。


その答えは決まって、いつも。


『It loves.(愛してる) You want it.(あなたが欲しい)  Only you are necessary.(あなたしか要らない)
It is not possible to live without you. (あなたなしでは生きていけない)』



そんな言葉が並ぶ答案を前に何度崩れ落ちたことか。


それからというもの、毎回こうやって呼び出している。
それでも一向に改める気配もなく、相葉は困り果てていた。



「なんで・・・・お前はいつもおれの時だけそんななの?本当は英語だって出来るんでしょ?おれが嫌いでも、英語はちゃんとやりなさい。」



どこか悲しそうに言う相葉に、二宮はこれ見よがしにため息を吐く。



「・・・はぁ、ホントつくづく馬鹿だよね、相葉先生って」
「なっ!おれはお前の将来を思って・・・・」

「・・・・将来ねぇ。先生・・・俺にやる気出してほしいの?」
「え?う、うん」
「何で?」
「だってお前やれば出来るのに、もったいないじゃん」



二宮の英語以外の成績は、ほぼトップクラスだ。
現に1年の時は英語も成績が良かった。


それなのに。
担当が相葉になった途端。


自分の何が気に食わないのか、さっぱり検討がつかない。
相葉は頭を抱えるしかなかった。


「頼むよ二宮・・・」
「・・・・俺がやる気出したら・・・先生、何してくれます?」
「・・・は?」

「俺ね、目の前にニンジンぶら下げないと頑張れないタイプなの」


だからご褒美下さいよ。


「ニンジンって、お前ね・・・・勉強は自分のためにするもんでしょ?何で俺がご褒美やらなきゃいけないの!」
「・・・ふーん。じゃあ、いいや。英語出来なくても何とかなるし。」
「ちょっ、二宮!どうしてお前はそういうこと言うの!!自分の将来が掛かってんだぞ!?」


もっと真剣に考えろよ!


「・・・俺は至って真剣ですよ。自分の将来が掛かってるからこそ、先生に聞いてるんです。今までのこと、ただふざけてるなんて片付ける気じゃないですよね?」



「な、なにがだよ・・・?」
「ほら、とぼけた。これだから大人はずるいんだよ・・・分かってるくせに」
「・・・・・」

図星だから何も言えなかった。


二宮は苦手だ。
時々ひどくオトコの顔をする。
いつもはあどけない少年のような可愛らしさが、一瞬にして大人のそれに変わる。
そして、おれが目を背けてることを直視しろと責めるんだ。


「俺の事、心配してくれんでしょ?だったら・・・俺がやる気になって、もしテストでいい点取ったら・・・先生は俺の言うこと、聞いてくれます?」
「言うことって・・・・なんだよ?」

「・・・今は秘密。ねぇ、せんせ。ニンジンくれるよね?」



「・・・分かった。そこまで言うんなら、その条件呑んでやる。ただし、満点取ったらな!!」
「・・・望むところです」


そう言って笑う二宮は、やっぱり高校生とは思えないくらいに大人びていた。



そして行なわれたテスト。
その答案用紙を前に、満面の笑みの二宮と顔を曇らせたおれ。


結果は言わずと知れたこと。


「約束覚えてますよね?」
「やっぱり、やればできんじゃん・・・」
「んふふ、そりゃ俺の将来掛かってますから」
「で?おれはどうすればいい?」



最初から負け戦。
だって分かってたんだ。

二宮が出来るってこと。
なのに話に乗ったのはおれ。


それが意味すること。


おれが目を背けていたことを直視するべきか・・・。
教師としてどうかと思うけど。


教師だって人間だ。


満面の可愛らしい笑みを、大人びた妖しい笑みに変えた二宮がおれの耳元で甘く囁いた。




「I love you....You are mine.」



もう、どうにでもなれ。






おわり


《想いの重さ》



自分の生まれた日をこんなにも恨んだことはない。


生まれて12年、自分の誕生日は大好きだったし、その日は当然のごとく俺が主役だった。
それが一瞬にして崩れ落ちた日。


幸せそうなアイツとあいつ。


神様、どうして俺とアイツを同じ日に授けたのでしょうか?
どうして、俺とあいつと出会わせたのでしょうか?


あいつと・・・・相葉ちゃんと出会わなければ、アイツと・・・ニノと出会わなければ・・・俺は自分の誕生日を恨んだりはしなかったのに。



*****


『ごめん、風間。その日はちょっと・・・・約束あって。あ、でも!次の日とかなら大丈夫だよ?それでもいい?』
『外せない・・・用事?』
『う、うん・・・ごめん』
『ううん!いいよ、気にしないで。ただ、ちょっとどうかなって思っただけだから』


本当に申し訳なさそうに、相葉ちゃんにそう言われた日。



俺は知っていた。
ニノと過ごすんだろ?


誕生日だもんなぁ。
アイツの。


そして、俺の・・・。



きっとこれから、俺は一生自分の誕生日を愛せないだろうと感じた日。



『風間ぁ、これ誕生日プレゼント!お前財布欲しいって言ってたでしょ?高いのなんて買えなかったけど・・・』
『俺に?ありがとう・・・大切にするよ』


笑ったあいつは可愛くて綺麗で。
抱きしめたかったけど、出来なかった。


その代わりに財布をぎゅっと抱きしめたんだ。






『風間ぁ、まだそれ使ってんの?ボロボロじゃん』
『ああ、でもまだ使えるし』
『おれは嬉しいけど、こんなにも使ってもらえて。プレゼントした甲斐があったていうかさ』


そんなこと言われたらまた、捨てられなくなっちゃうじゃん。
ボロボロで汚くて、愛しいそれをまた、抱きしめた。


『おめでとう!!すごいじゃん!やったね、風間ぁ。おれ毎週見るよ。欠かさず見るよ!くふふ、楽しみだなぁ。風間はどんな役なの?』
『相葉ちゃん、喜びすぎ。俺より興奮してんじゃん』
『だって!!すげぇことだろ?風間頑張ってたもん。おれ絶対受かると思ってたよ!風間も金八ファミリーかぁ』


俺が金八のオーディションに受かった時、自分の事のように喜んでくれた相葉ちゃん。


俺はこの時、1つの事実を隠していた。
いや、俺だけじゃなくアイツも。


ニノもオーディションを受けていたということを。
俺と同じ役。
受かったのは俺。


相葉ちゃんは本当に嬉しそうで。
俺はニノの事は言わなかった。

言ったら、一瞬にしてこの時が終わると分かっていたから。
俺の事を喜ぶより、きっと彼はアイツの事を気遣うだろうから。


もう少し彼を・・・彼に俺だけのことを考えてほしかったから。



*****


―数年後、6月初旬


「相葉ちゃーん!」
「おう、風間ぁ。久しぶり!元気だった?」
「ああ。相葉ちゃん、全然連絡くんねぇんだもん」
「はは・・・、ごめんねぇ。ちょっと忙しくって」



嘘だ。
分かってるよ。
アイツのせいだろ?


何時からかなんて知らない。
知りたくもない。


ニノと相葉ちゃんの関係が変わったことに気づいてた。
アイツを想って笑う相葉ちゃんは本当に綺麗で。
笑い合って、寄り添う2人は幸せそのもの。


勝ち目なんかないと、入り込む隙はないと分かってた。



それでも諦める事なんて出来ないんだ。
彼を想う気持ちはきっと、ニノにだって負けないから。



「ねぇ相葉ちゃん・・・」
「んー?なぁに?」
「今年の・・・俺の誕生日、一緒に祝ってよ」
「・・・え?」


ほら、その顔。
昔と全然変わらないね。
そして俺も、あの頃と全く変わらない。



「あの・・・ごめんね?その日は・・・・」
「・・・・分かってるよ。ちょっと言ってみただけ。」


困った相葉ちゃんの顔を見て後悔。
だったら、言うなって話だけど。


「ねぇ、相葉ちゃん。俺の誕生日・・・祝ってくれる?」
「も、もちろん!当日は無理だけど・・・でも、ちゃんと祝うよ!!」



そう言ってくれるだけでも、俺は嬉しいんだよ相葉ちゃん。
でも、それじゃあまりにも俺の誕生日が可哀想だろ?

だから、ちょっとだけ・・・・いいよな?


「じゃあさ・・・・今年の12月23日の夜を、俺に頂戴?」
「え・・・・?」


自分の誕生日よりも大切な相葉ちゃんの誕生日。
その日を迎える瞬間を俺に下さい。


多分、相葉ちゃんは深く考えない。
そして、俺への申し訳ない気持ちも相まって・・・・彼はきっと。


『うん!いいよ?約束ね!』


そう言うんだ。
間違いなく。


分かってて言う俺はやっぱり性質が悪いでしょうか?


でも、ちょっとくらい許してくれよ。



「どうかな?相葉ちゃん。12月23日予約入れて良い?」
「・・・うん、分かった!いいよ、約束ね!!」
「・・・ありがと」



どうせ、心までは貰えやしないんだから。
せめて、彼を祝う時間くらいくれたって良いだろ?


なぁ、ニノ?




おわり
ここは二宮の部屋。




相葉はベッドの上で寝転んで雑誌を読んでいる。



二宮はベッドの横の床に座り、テーブルの上にノートパソコンを置いてインターネット配信のテレビを見ていた。




「ねえ、相葉さん。これ超面白いよ。ちょっと見てよ」




「んー、どれぇ」



二宮の言葉に相葉は体を起こし、二宮の肩越しにパソコンを見る。




「うひゃひゃっ。ホントだ、超おもしれぇ!!」



「・・・・」



楽しそうに見ている相葉を愛しそうに眺めていた二宮だが、何かに気づき突然口の端を吊り上げた。



「相葉さん、そのまま見てて」




「うん?」




そう言って二宮はベッドに上がって相葉の後ろに回った。



相葉は気にせず、パソコンに夢中だ。



「んふふ・・・」




後ろからは何やら怪しげな笑い・・・・





「・・・・・ちょっと、にの。なにしてんの?」




「んふふ、ばれちゃいました?」





「当たり前でしょ!なに人のケツ撫で回してんの!?」




二宮はパソコンに夢中の相葉のお尻を撫でていた。




「だって、相葉さんのお尻がすっごく可愛いんですもん」




「なっ、なんだそれ!」




どんな理屈だよっ




「俺の前でそんな格好するのが悪いんですよ」



我慢できなくなるでしょ?



相葉はベッドより低い位置にあるパソコンを見るために



ベッドの上で四つん這いになって、ひじをついている格好だった。




所謂、女豹のポーズというやつだ。




「でしょ?じゃなーい!!俺のせいかよ!」




「そうです。相葉さんのせいなんです。俺がおかしくなるのは、いつだってあなたが原因」




今までのふざけた顔ではなく、真剣な顔で二宮が言う。





「にの・・・・って、まだ撫でてるっ!!」




「いたっ。叩かなくてもいいじゃん」




「にのが悪い」





「はいはい、俺が悪かったですねー。すいませんでしたねー」





「ちょっと、あやまりながらなにしてんの?」





「んー?ふふっ。ちょっと愛を確かめ合おうかとね。嫌なの?」




「・・・・いや・・・じゃない・・」





「あーっ、本当になんでこんなに愛しいのかな!」





「もう、恥ずかしいこと言わなくていいから、はやく!」





「はい、すいませんでした。大好きですよ、相葉さん」






「もう、分かったってば・・・おれもすきだから・・・」







言わなくていいから、行動で示してよ?







おわり
あー、相葉さんに触りたい・・・。



と思っていたときには、すでに手が出ている自分はすごいと思う。




「ちょっと、にの!なにしてんの!?」




「何って・・・言わせるんですか?」




分かってるくせに。





「今日はだめだって言ったでしょ?明日早いんだから、もう寝るの!」




やっぱり分かってんじゃん。





「だって、相葉さんのココ、とってもおいしそうなんだもん。俺に食べてほしいって言ってる」




スウェットの裾から手を差し入れ、肌を撫でる。




「こらっ!!乳首を触るんじゃない!」




第一、乳首がしゃべるわけねえだろっ!




「まあ、乳首だなんてはしたない。もっと可愛らしく言えないの?『胸の飾り』とかさ」




「言えるか、ばか!!乳首は乳首だろうが・・・って、ケツを撫でるなぁ!!」





「ココも熟れてておいしそう。俺、食べたいなあ・・・」





「っ!!ケツが熟れたらびっくりするだろ!!そんなことば、どこで覚えてくんだよ、えろばか!!」






「もう・・・ホントに情緒のない人ですね。もっとこう・・・官能的に出来ないかなあ」






「かんのーってなんだよ?わけわかんない。とにかくおれは寝るの!!」




ちっ!




おっと、いけない、いけない。





危うく舌打ちしちゃう所でした。




こうなったら・・・・。




「・・・・・・」





「な、なに急に黙っちゃって・・・」




「・・・分かりました。相葉さんは俺に触られたくないって事ですね」





声のトーンを暗くして、俯く。





「え?ちょっと、にの?」




俺の態度の急変に、ついて来れないで、パニクッてる。




もう少しかな?





「もういいです。俺、今日は帰りますね。ここに居たら、もっと嫌われる事しちゃいそうですから・・・」





「まっ、まって!!やだよ、にの。どこいくの?」





「相葉さんのいないトコ」




「どうしてぇ?」





あ、泣きそう。





歪んで不細工になった顔が、これまたかわいい・・・じゃなくて、あと一押しだな。





「だって相葉さん、俺に触られたくないんでしょ?」





「そんなこと言ってない!!」




「でも、今日はダメだって・・・。俺、相葉さんの事好きだから、一緒にいて触らないでいる自信ないし・・・」





だから、帰るよ。





「にっにの!!」





ベッドから立ち上がった俺の腕を相葉が掴んだ。




9割成功。




ここで、何も気づいていないふりで一言。





「相葉さん、離して?帰れないよ」




「・・・から!」




「え?」





「触ってもいいから、そばにいて!!」





はい、落ちた。




でも、もう少し・・・




「ホントにいいの?明日つらいかもよ?」





「いいっ!!にのがいない方がつらいの!」





「あいばさん・・・」




心の中でガッツポーズ。




「にの、はやく」





「はい、相葉さん。愛してます」




柔らかい花びらのような唇に口付ける。





「ん、おれもぉ・・・」





もちろん相葉さんにはきっちり、官能的な世界ってやつを見せてやりましたよ。





んふふ。




お馬鹿でかわいい俺の恋人。





ごめんね、相葉さん。





所詮俺なんて、こんな奴ですよ。








おわり
「ふえー、疲れたぁ」



雑誌の企画で、クッキー作りを終えて帰宅してきた相葉は、ソファーに身を沈めて大きく息を吐いた。




その隣に一緒に帰宅した、これまた一緒にクッキー作りに挑んだ大野が座る。




「くふふ。今日楽しかったねぇ、キャプテン」




大野に身を寄せ楽しげに笑う。




「うん。楽しかったし、うまかった」




「ね!そうだ、おれの作ったキャプテンクッキーどうだった?」




「うまかった!」




「もう。そうじゃなくてさぁ」




大野の服の裾を引っ張る。





「あ、相葉ちゃんもうまかった」




「え?おれのクッキー食べてないよ?」





持って帰ってきたもん。




ほら、と自分の顔型クッキーを大野に見せる。




「それのことじゃなくて、相葉ちゃん自身がうまかったんだよ」





そう言って、相葉の唇に指で触れた。




クッキー作りで、メンバーの顔型クッキーを作り、最後に大野の顔を二人で食べた。




その時、顔の端と端をポッキーゲームのように同時に食べたのだが
それほどの長さがなかったために最終的に唇が触れてしまったのだ。



大野の言わんとすることを理解した相葉は頬を染める。



「やだぁ、キャプテン。なんか言い方がスケベっぽいよぉ」




「おう!おれはスケベなんだぞ!」




「うひゃひゃ。キャプテンが開き直った!かっこいい!!」




「おう!俺はかっこいいスケベなんだ!」




「うひゃひゃ。なにそれぇ」




「だから今から相葉ちゃんを食べるんだ」



へ?




「トウッ!」




掛け声とともに相葉をソファーに押し倒す。




「ひゃあっ」





驚いた相葉は悲鳴に近い声を上げた。




そして・・・




「きゃぷてん・・・・くふふ」




「なに笑ってんの?」




「んー?だって、ホントにかっこいいから」




下から見上げる大野は本当に男らしく、格好が良くて。




「おれってば、メロメロだぁ」




「俺も。相葉ちゃんにメロメロだよ」




額にキスを落とす。




「ねぇ、キャプテンクッキーはおれが作ったけど、今度はきゃ・・・智がおれをつくって?」




智の好きなように・・・おれを作り上げて欲しい。




「・・・うん。俺のサイコーの作品を作るよ」




俺の一生をかけてね。






おわり
実験スペシャルのスタジオ収録後、相葉と二宮はそろって、相葉宅へ。


「うひゃひゃ、楽しかったねぇ」


相葉は収録時のテンションを引きずり、いまだハイテンションだ。


自室のベッドにダイブすると、手足をバタつかせた。


それとは正反対な二宮のローテンションぶりは凄まじい。


「にの?どうしたの?なんか怒ってる?」


ようやく二宮の様子に気付いた相葉が問う。


「そういえば、さっきから喋ってんのおればっか」


収録後からほとんど話してるのは相葉だけで、二宮は「ええ」とか「そうですね」くらいしか発していなかった。


「にの?」


ベッドから起き上がり、黙っている二宮の顔を覗き込もうとした瞬間、強い力で押し戻された。


「うわっ!!に、にのっ!?」


急のことに驚いて二宮を見上げる。


「あんたさぁ、何考えてんの?」


「へ?」


何のことか分からない相葉の顔が、二宮を更にイラつかせる。


「実験だよ!実験!!」


相葉を睨み付けた。


「じ、実験?スペシャルでやったやつ?アレがどうしたの?」


「俺、聞いてないんですけど。あんな実験したなんて!」


「あんなって・・・・無重力実験のこと?言ってなかったっけ?」


「聞きましたよ。キャプテンと一緒で、たいそう楽しかったってね。そんなことで怒ってんじゃねぇんだよ!!」


珍しく本気で怒っている様子の二宮に、相葉は戸惑いを隠せなかった。


自分がやった実験の何が彼を怒らせてしまっているのか、全く検討も付かず、相葉は瞬きを繰り返す。


「おもしろく・・・なかった?」


「だから!んな事で怒ってんじゃねぇって言ってんだろ!?」


押さえつけられている肩が痛い。


「じゃあ、なにに怒ってんの!楽しかったなら良いじゃん!!」


逆切れし、下から二宮を睨み付けた。


「・・・あんたって、本当にバカですね。俺は、楽しくたって、身体壊したら意味ないって言ってんだよ!!」


「にの・・・?」


「無重力実験は楽しかったよ、確かにね!ロケの事も知ってたよ。だけどさ、あんなに何回もやるなんて聞いてねぇんだよっ!!」


相葉の上から怒鳴る。


「あんな何回も急上昇と急降下繰り返して、身体にいいわけないだろ?
それに、あのシャボン玉?苦しくなるまでやってんじゃねえよ!!お前、昔、病気やってんだろ?再発したらどうすんだよ!
全く、スタッフは何考えてんだ!?キャプテンもさ、最初からお前がやれっつーの!!」


まくし立てる二宮に相葉はしばし呆然としていたが、突然笑い出した。


「くふふふっ」


「何笑ってんだよ!」


更にきつく睨む二宮。


「だってぇ、にの、心配してくれたんでしょ?ふふっ、嬉しい!!」


言って、相葉は二宮の首に腕を回し、抱きついた。


「でもね、おれ、あの時よりも体重増えたし大丈夫だよ?」


「・・・分かってるよ!でも、心配なんだよっ!!」


強い力で抱きしめ返す。


「にの・・・苦しいよ?」


「もう少し!!」


「はぁい。くふふ、にの子供みたい。よしよーし」


二宮の背中を撫でながら、ゆらゆらと身体を揺らす。


「お前ね・・・・そういうこと言うと、子供じゃできない事するよ?」


「うん・・・。いいよ、して?」


「あいば・・・」


離れて相葉を見下ろす。


「おれ、いつもにのに心配ばっかりかけちゃうね。ごめんね?ありがとね。大好きだよ」


相葉からキス。


「俺もごめん。あまりの無茶ぶりに、ちょっと取り乱しちゃったけど、無事で良かった。よく頑張りましたね。お疲れ様」


二宮もキスを返す。


「まぁ、考えてみれば、心配かけない相葉さんなんてちょっと嫌だよね」


「しっつれいだな、もう!!」


見つめ合い、笑い合う。


そんな何気ないことが、2人の愛を深めるんです。





おわり
1ヶ月なんてすぐだと思ってた。


今までだって、1ヶ月とは言わないまでもそれに近いくらい会わないことはあったから。


あっという間に過ぎて、あれ、もう帰ってきたのーなんて。


そんな感じだろうと思ってたんだ。


だけど・・・・。




仕事が終わり、家に帰ったのは日付が変わる頃。


お風呂に入って、ベッドに身を沈めた時には1時を回っていた。


最近、とても夜が長い。


身体はそれなりに疲れているのに眠りは浅く、寝付けない。


こんなこと、今までなかったんだ。


何故かなって考えて、行きついた答えは・・・


にのがいないから。


にのがいないことにこんなにも打ちのめされている自分に驚いた。


いつからか、おれはこんなにも彼に依存していたのだろう。





長い夜を過ごすアイテム。


読みかけの漫画。


やりかけのゲーム。


たくさん溜まったDVD。


どれも、楽しめない。


だって、にのが貸してくれた漫画。


にののお勧めのゲーム。


にのが観たいからって買ってきたDVD。


どれにもこれにも、にのがいる。


だから余計に楽しめない。


もう一度ベッドに横たわった。


シーツからにのを探す。


とっくに匂いなんてしなくなってるけど。





「・・はやく、かえってきてね・・・・にぃの」





今夜もまたひとりで、長い夜を過ごしている。




おわり
なに、なに、なんなの!!


一体あれはなんなんだよ!?


今日はね、宿題くんの撮りで、今まさに収録中なワケですよ!


で、なんでおれが怒ってるのかっていうと・・・・あ、おれ相葉雅紀ね。


だってさ!!


今日のゲストは香里奈さん。


女優さんだけあって、超かわいいし、細くて柔らかそうで、良い匂いがして。


気さくな感じで、良い人っぽい。


それはいいんだ。


たださ・・・・なんなの、今日のにのの食いつきようは!!


なんだか異様に盛り上がって、彼女に質問しまくってんの!


収録中だけならまだしも、収録の合間にまで話し込んでる。


なんで!?


今までどんな子が来たって、にのから積極的に話しかけることなんてなかったじゃん・・・。


「相葉ちゃん?どうしたの、ボーっとして」


セットのソファーでボーっとにのたちを見ていたら、松潤が話しかけてきた。


「まつじゅんのばか・・・・」


「何だよ、急に」


「だってぇ、まつじゅんがバンビーノだから・・・・」


「はぁ?どういうことだよ」


「まつじゅんがバンビーノだから、ゲストに香里奈さんが来たんでしょぉ・・・・」


「ああ・・・そういうこと。相葉ちゃん、妬いてんだ。香里奈ちゃんに」


話し込んでるにのたちを見て、ニヤリと松潤が笑った。


なんだよぅ、その顔。


憎たらしい。


「ちがうもん。ばかじゅん」


「バカ潤って・・・お前なぁ。でも、心配することねぇよ。ニノは面白がってるだけだから。
俺が香里奈ちゃんがお前に似てるって言ったから、共通項見つけて楽しんでるんだよ」


「うー」


「そんなに睨むなよ。なに?そんな自信ねぇの?」


自信なんて・・・あるわけないだろ。


いつだって、綺麗な女優さんと仕事してるにの。


俺なんかが敵う相手じゃねぇじゃん・・・。


ただでさえ、男だという絶対的に不利な立場にいるのに、俺と同じような価値観持ってる
女の子なんて・・・・圧倒的におれ、勝ち目ないじゃん・・・。


俯いて唸っていたら、松潤が頭を撫でてくれた。


ああ、それ落ち着く。


「なぁ、相葉ちゃん。もっとさ、自信持ったら?ニノはそんなに馬鹿じゃねぇし、軽い男でもねぇだろ?
それにさ、俺は確かに相葉ちゃんと彼女は似てるって言ったけど、彼女は似てるだけで、お前じゃないんだからさ」


そんなこと、ニノは分かってると思うぜ?


「うん・・・」


おれだって分かってる。


にのはそんなヤツじゃない。


分かってたけど、誰かに言って欲しかったの。


心配するなって。


ちょっとだけ心が晴れた気がした。


「ありがと、松潤。だいすき」


松潤の肩に頭を預けてお礼を言った。


「そりゃどうも。でもさ、離れてくんない?でないと、俺の命がない」


は?なに言ってんの、松潤。


不思議に思って松潤の顔を見ようとしたら、すごい力で松潤から引き剥がされた。


誰だよって思って見ると、そこには思いっきり不機嫌そうなにの。


「あれ?にのがいる。なんで?」


今さっきまで向こうで話してたのに。


「なんで?じゃねぇだろ。ずっといるでしょうが、撮りの最中なんだから」


顔をしかめたまんまのにの。怒ってる?


「にの、こわい。なんか怒ってる」


「・・・だって、あんた。潤君といちゃついてるんですもん。ちょっと目を離すとこれだから」


そう言ってため息を吐いた。


む。


なんだよ、自分だって楽しそうに話し込んでたくせに。


文句でも言ってやろうとしたら、松潤が割り込んできた。


「どうだったニノ?随分お話、弾んでたじゃん」


松潤てば、面白そうに聞いちゃって。


やっぱり、ばかじゅんだ。


「ええ、まぁ・・・でも相葉さんじゃないからね」


後ろから、にのにぎゅっとされた。


「観点が似てたって、本人には敵わないでしょ?やっぱり相葉さんじゃなきゃね?」


「にの・・・」


さっきまでの怒りや不安が、にののひと言でスーってなくなっちゃうから不思議。


残ったのはふわふわした心地よい感覚と、にのを大好きな気持ち。


松潤を見たら、「良かったね」って優しく笑ってた。


えへへ。


「松潤、松潤。」


「何?」


「くふふ、だいすき!」



「サンキュ」



「ちょっ!何?どういうこと!?あんた、何潤君好きとか言ってんの!?」


にのが慌ててる。


「にのには内緒!ね?」


松潤と顔を見合わせて笑った。



それを見て、またにのが大声を出した。





おわり
「わん、つー、すりー、ふぉー・・・・」

発音の悪いカウントが部屋中に木霊している。

「・・・・」

「いえーい!わん!つー!」

そのカウントはどんどん大きくなり、その人物のテンションが上がっていくのが分かった。

「あっ・・・・はっ・・・ふっ・・・ん」

やがて、妖しい息遣いに変わる。

「・・・・すてき」

それをうっとりとした瞳で見つめ、呟く男がひとり。

「えー?にの・・・、なんかっ・・はっ・・・言ったぁ?」

「いいえ、何も。良く頑張るなぁと思って」

先ほどから、テンション高くカウントをしているのは相葉。

それを妖しい目つきで見つめているのは二宮だ。

「にのも・・・やろうよっ、びりーっ!!はっ・・・楽しいよ?わん、つー・・・」

二宮の方を振り返り、一緒にと誘う。

相葉はビデオの中の男の号令に従って体を動かす。

相葉が行っているのは、今話題のビリーズ・ブート・キャンプ。

「俺はいいよ。疲れるもん。それより相葉さん見てる方がよっぽど楽しいvv」

「えー?おれ、動きへん?間違ってる?」

どうやら、自分の動きがおかしくて楽しいと言われていると勘違いしたらしい。

「変じゃないですよ?ちゃんと出来てる」

「ほんと?」

「うん、あ、ほら次スクワット!!」

「あ、うん!はいっ、わん!つー・・・」

再び画面に集中し始めた。

「んふふ・・・ホントに素敵。いい眺め・・・ああ、おしりが可愛いっ・・・」

二宮が見ているのは、相葉の上気した顔と動きに合わせて揺れている腰と、おしり。

そんなこととは知らない相葉は、一生懸命だ。

二宮の前で、惜しげもなく腰やお尻を揺らしてみせる。

そのたびに二宮の顔はだらしなく緩む。

「ヴィクトリー、いぇい!」

相葉が両手を挙げて叫んだ。

どうやら終わったみたいだ。

「あー楽しかったvv」

手で汗を拭いながら、二宮の隣に座る。

「・・・あいばさん」

「んー?」

「俺、もうダメだ」

「へ?」

何を言っているのかと二宮の方を見ようとした途端、相葉の視界が反転した。

「ちょ、に、にの?」

上には二宮。

「どれくらい筋肉ついたか、俺が確かめたげるvv」

「えっ?あっ・・・ん・・・にのぉ・・まって・・・」

Tシャツを捲り上げ、横腹を撫で回す。

「あ、ここら辺ちょっと絞まって来てんじゃない?」

ペロッ。

「やっん・・・もぉ・・・やだ!まって!」

二宮の頭を叩く。

「何でよ?」

愛撫する手はそのままに、二宮は少し眉を寄せた。

「んっ・・・だってぇ、おれ汗くさい・・・」

恥ずかしそうに言う相葉に、二宮から笑みが漏れる。

「・・・んふふ。そんなの気にしなくていいの。相葉さんの匂いと味が濃くなって、いい感じよ?」

「なっ!もう、へんたい!!あんっ・・・・」

「その変態が大好きなくせにぃ」

「ばかっ・・・んっ・・・ああ・・・にのぉ・・・・あっ、あっ・・・」


2人でいれば幸せ。
「すごいねぇ・・・山田太郎。笑顔で人を失神させちゃうなんてさ」


相葉は画面から目を離すことなく呟いた。


「んふふ、なんてったって王子様ですからね」


画面の中では、太郎の笑顔に次々と女子生徒たちが倒れている。


「でもさ、実際にこんなふうに失神する人なんているのかなぁ?」


「・・・何言ってんの?したことあるでしょ、失神」


「・・・だれが?」


「あんたが」


「・・・ないよぉ。いつ?にのに?」


「俺以外に誰がいんのよ?俺見て、失神したことあるでしょうが」


「覚えがないんですけど?」


首を傾げて思い出そうとするが、全く思い当たる節がない様子の相葉。

それを見て、二宮がニヤリと笑った。


「・・・試してみる?」


「へ?」




*****

「・・・んっあぁ・・あっ・・・・あっ・・・にぃ・・・のぉ・・」


「何?相葉さん・・・・」


呼ぶ事に意味はないのだと分かっていても、二宮は意地悪く応える。


それを恨めしそうに見上げるが、その瞳は欲情に濡れていて、更に二宮を煽るだけだった。


「あぁっん・・・ん・・・はっ・・・だめぇ・・・あっ」


「んっ・・・はっ・・・そろそろ・・・?」


「うっん・・・もう・・・・おねがぁい・・・」


「んふふ・・・かわいい・・・ねぇ、俺を見て?」


相葉の頬に手を当てて、目線を合わせる。


「あっ・・・に、にのぉ?」


「・・あいば・・・・愛してるよ・・・・」


相葉にしか聞かせない極上のボイス。

甘くしっとりと絡みつくような声と視線に相葉はたまらなく感じた。

それを悟った二宮が激しく突き上げる。


「あぁっん・・・・あっ、あっ・・・・んっ・・・にのぉっ・・・・・あぁっ!」


強すぎる刺激に相葉の目の前がスパークし、真っ白になった。

そして静かに闇が訪れる。

その中で相葉が見たのは、大好きな二宮の顔だった。





隣で眠る愛しい人の頭を優しく撫でる。


「んふふ・・可愛いなぁ。いっつも経験してんのにねぇ、失神」


気付いてないんだもの。

ホント、素敵な子だわ。

意味が違うって?

俺の顔見て失神してんだから、同じ事でしょ?

さて、俺も寝ましょうか。



眠るお姫様に王子のキスを。



おわり
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