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小説の再編集とか、資料とか、必要な諸々を置いておくブログ
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俺はクリスマスが大嫌いだ。


昔はそんなことはなかった。
というより、クリスマスなんて関心がなかっただけ。


プレゼントをもらったりケーキを食べたりと、まぁそれなりには楽しかったし、嬉しかったけど。


街はキラキラして、どこか浮ついていて。
でも行き交う人全てが笑顔で。
そんな雰囲気は嫌いじゃなかった。


そんな俺が、クリスマスが何よりも嫌いになった理由。


それはあの人が俺の前に現われたからだ。



『ねぇ、にの。もう、いいよぉ。おれは大丈夫だから。それに、こんなこと慣れっこなんだよ?』


そう言って相葉さんは笑った。


困ったような、諦めたような淋しい顔で。



相葉さんと過ごした彼の初めての誕生日。


何が欲しいって聞いた俺に、彼が言ったのは「2人っきりでお祝いして欲しい」という、とんでもなく可愛らしいお願いだった。

舞い上がった俺は、最高の誕生日にしてやりたいって張り切って、色々考えたんだけど・・・。

何しろ若かった俺には何の知識もなくって。



世間はクリスマス。
何処もかしこも予約でいっぱいで。


結局は全てが行き当たりばったりになってしまった。


空いてる店は安い居酒屋ばかり。
安い食事に安い酒。


せめてケーキだけでもでっかいものを買おうと2人でやって来たケーキ屋。
しかし、クリスマスの時期にあるのはどれもクリスマス仕様のケーキばかりで。


『あの・・・誕生日のケーキなんですけど・・・』
『あいにく、本日はクリスマス用のケーキしか・・・・このクリスマスのプレートを誕生日のものに変えることは出来ますけど・・・』


店員は、忙しいのに迷惑な客だと言わんばかりの顔をする。


生クリームの雪の上にイチゴとサンタとトナカイ。

そこに『ハッピーバースデイ 雅紀』はないだろう。


そもそもキリストの生誕を祝う日だろ?
何で誕生日のケーキがねぇんだよ!!
おかしいと思わねぇのかよ!


次の店を探す。
店員に聞いては断り。
また聞いては断った。


何軒目かで相葉さんが俺の服の裾を引っ張って申し訳なさそうに言ったんだ。


『ねぇ、にの。もう、いいよぉ。おれは大丈夫だから。それに、こんなこと慣れっこなんだよ?』


いつだってそうなんだから。
昔から、クリスマスと誕生日は一緒なの。

だから平気と相葉さんは笑った。




違う。

違うだろ?


少なくとも、俺にとっては。


あんたが生まれた大切な日なんだよ。


クリスマスなんかより、もっともっと特別な。


あんたが生まれた日なんだ・・・・。




小さいケーキを2つ買って、俺の家でこじんまりと食べた。



何とも情けない気分だった。



相葉さんはそれでも喜んでくれたけど。


『にのと2人で誕生日を迎えられたんだからうれしいよ?大好きな人と2人だもん』


なんて笑う相葉さんに、余計に惨めな気持ちになった。



彼は本当に嬉しかったんだと思う。
気を使ってるわけじゃなく、俺といられることが本当に。


だからこそ、もっと喜ぶことをしてあげたかった。
喜ぶ顔を見たかった。
最高の笑顔を。


俺の、どうしようもないくらいに愛おしい人の生まれた日。

彼をこの世に授けてくれたこと、俺と出逢わせてくれたことには感謝するけど、こんな日に彼を誕生させたことは恨むよ神様。

あんたを。



この日を境に俺はクリスマスが大っ嫌いになったんだ。


「・・・の!にぃの!!」
「・・・はいっ?」


愛しい人の声で我に返る。
そこにはお酒が入って潤んだ瞳で、俺を見つめる相葉さんがいた。
ほっぺたまで膨らませて。

本当に25歳なのかと疑いたくなるような仕草。
それがたまらなく可愛いと思える俺も相当イカれてるけど。


「もう!なにボーっとしてんのぉ?」
「ああ、すいません・・・」


あの日から何年も経った相葉さんの誕生日。
今でも俺の隣に彼が居て、2人でお祝いできることが本当に嬉しい。

詰め寄る彼を抱きしめてキスを贈れば途端にへにゃっと崩れる顔。
俺の顔も一緒に崩れる。


あんな惨めな思いは2度としたくなくて。
次の年からはそりゃもう必死だったよ。


どんな雑誌の取材も、テレビのインタビューもクリスマスのことを聞かれる度に同じ答え。


『クリスマスは相葉さんの誕生日。その認識しかありません』
『クリスマスの予定?特にないですね。相葉さんの誕生日ですから、そのお祝いですよ』


だって、それが本音なんだ。




何ヶ月か前からケーキ屋を巡った。
クリスマスに誕生日ケーキを作ってくれる店を探すために。

忙しいクリスマスに、誕生日ケーキ1つだけのために承諾してくれるところはなかなかなかったけど。

それでも何とか用意することが出来た彼だけのためのケーキに、彼は瞳をキラキラ輝かせた。


あの時は本当に嬉しかったな。





今ではすっかり慣れたもんで。
お店もケーキ屋も全てが頭の中にインプットされてる。
それからは毎年、こうして充実した誕生日を迎えられている。



「もう!にの!!またぁ、聞いてんの!?」
「ああ、すいません。ちょっと昔をね、思い出してて」
「むかし?あーっ!まさかぁ、俺の誕生日にほかのこと考えてんのぉ!?」


信じらんない!と俺の胸をポカポカと叩く。


「ごめんごめん。痛いよ、相葉さん」


酔いが回って、呂律が回らない彼の攻撃を頭を撫でて収めた。


「むー、にのが悪い・・・おれのことほったらかしで、ほかのこと考えてぇ!!」
「そんなわけないでしょう?俺の思い出すことなんて全部があんたの事だよ」
「・・・おれのことぉ?」
「そう、あんたの初めての誕生日をね・・・思い出してたんだ」


そう言うと、相葉さんは潤んだ瞳を輝かせた。


「あー、あれ!あれは本当に良い思い出だよねぇ。」
「・・・・良い思い出?あれが?」


何にもしてあげられなかったあの日が?


「うん!!だってぇ、初めてなの。おれのこと・・・・おれの誕生日だけを想ってくれたひと・・・にのが初めて」


嬉しかったなぁと、遠い記憶の向こうを見つめる瞳は本当に幸せそうだった。


「おれはね、あの日から・・・おれの生まれた日が本当に特別な日だって思えるようになったの。
もちろんクリスマスだって嫌いじゃないよ?お祭りごと大好きだし。でもね?いつも少しだけね、淋しかったのもほんと」


「あいばさん・・・」


「ふふっ、でもにのってばムキになっちゃって可愛かったなぁ。おれね、ケーキ屋の店員さんに噛み付いちゃうんじゃないかって、ひやひやしたの!」

「・・・噛み付かねぇよ」
「うひゃっひゃ、うん。でも・・・それだけおれのこと想ってくれてんだって・・・感動しちゃった。泣きそうになったもん、おれ。
あの時、にのと出逢えて本当に良かったって、この日に生まれて良かったって思ったの」


おれのことだけを考えてくれる初めてのひと。
出逢わせてくれてありがとうって、神様に感謝したの。


そう言って笑う彼を力いっぱい抱きしめた。


「にのぉ?苦しいよぉ・・・」
「うん・・・」
「うんって・・・・。どうしたの?」
「うん・・・」

何を言っても「うん」しか言えずに彼を抱きしめ続ける。
彼の温かい手が俺の背中に回されて、触れられてるのは背中なのに胸が締め付けられた。


「にの・・・」
「うん・・・」
「おれのこと・・・想ってくれてありがとう・・・にのが、おれにとっての一番のプレゼントだよ。
それはあの時から、今も変わらない。にの以上のプレゼントなんてないんだ」


相葉さんの言葉に不覚にも涙が出そうになった。
かろうじて抑えたけど。



「相葉さん・・・」
「んー?」


ベタなことだけど言わずにはいられなかった。


「生まれてきてくれて・・・・俺の元に来てくれてありがとう。愛してる」
「ふふっ・・・おれもぉ、大好きだよ」



体温が上がる。
カラダが、ココロが互いを求める。





「相葉さん・・・愛してる」






ねぇ、神様。

さっき言ったこと取り消すよ。


相葉さんをこの日に授けてくれてありがとう。
この日だからこそ、俺達の想いは深く繋がったのかもしれない。


そう思ったら、クリスマスも悪くない。


所詮、相葉さんさえ幸せなら何だって良いんだよ、俺なんて。





彼の生まれた日に感謝を。

そしてこれからも、彼の人生全てが俺と共に在ることを。




願って、愛しい人を抱きしめた。








Happy Birthday  MASAKI AIBA       

and ……A Merry Christmas to you!!
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