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小説の再編集とか、資料とか、必要な諸々を置いておくブログ
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 重苦しい眠りから覚めて最初に視界に入ったのは、明るさを弱めた天井だった。人の気配を感じて痛む身体を無理矢理動かせば、オレンジのライトを柔らかく受けた人の姿がある。
 俺が目覚めた事に気付いたのか、ライトより柔らかくその人は笑った。そして、記憶を失う前の映像がフラッシュバックする。
 この男に救われた。馬鹿みたいに綺麗な顔が近付いて来て、「良かった」と至近距離で呟く。世の中にはまだまだおせっかいな人間がおるもんやな。腹を刺されて倒れ込んだ人間なんてヤバいに決まっているのに。
 俺の意識があるのを確かめながら、医者から受けた説明を辿々しく話している。何度も噛みながら喋っていたら、途中で訳が分からなくなったのだろう。「とにかく、絶対安静」と言うと、拗ねた素振りで黙り込んでしまった。
 その表情が幼かったせいだろうか、それとも単純に傷付いた身体が睡眠を欲したのだろうか、深い安堵感に包まれて眠りへと落ちて行った。



+++++



 もうすぐ日付が変わろうとしている。二十四時間体制のホテルも静かになる頃、光一は明日の確認の為にフロントに立っていた。
 秋頃アシスタントマネージャーになって以来、仕事の量は格段に増えている。それでも苦痛じゃないのだから、この仕事は合っているのだろう。ふと人気のない筈のロビーに誰かいる気がして、視線を上げた。
「義父さん、こんな時間に何処行くん」
 このホテルの経営者である叶を、勤務中には呼ばない名で呼ぶ。こっそりと出掛けるつもりだったらしい義父は、しまったと言う顔を見せた。まさかこんな時間に息子がフロントにいるとは思わなかったのだろう。
「まぁた呉野さんのとこやろ。呉野さんやって忙しいんやから、毎晩行ったら迷惑やで。客でもないのに」
 クラブを経営している呉野に会うのは、営業中の夜が一番捕まり易いと言うのは分かる。昼間の事務作業をしている時間より夜に客として行った方が会い易いのも。結局いつも通り「あんま迷惑掛けんなや」と言って、叶を送り出してしまった。
 光一がこの街に来たのは、もう随分と昔の事になる。十歳の時に両親を事故で亡くし、叔父である呉野を訪ねたのが始まりだった。
 呉野の他に親族のいなかった光一はそのまま彼に引き取られる筈だったが、何故か叶の養子になってしまった。その経緯を光一は知らない。思い当たる理由はなくもないのだけれど。
 それからずっとこの街で育った光一は、周囲の人間に本当に大事にされて来た。近くに港のある古くからの歓楽街だったこの街は排他的な所があるから、異質とすら言える光一を馴染ませるのは大変かも知れないと、叶と呉野は懸念していたと言う。
 けれど、光一が見た目やイントネーションの違う喋り方とは裏腹に、優しく大人し過ぎる子供だったからだろうか。気が付けば、街の何処へ行っても大切に扱われるようになっていた。
 光一が来た時既にホテルの経営者だった叶は、急に出来た子供を恐る恐るながらも一生懸命育ててくれた。潮の香りのするこの街で、光一は真っ直ぐ成長して来たのだ。
 だから、寂しいと思う事がなかった。寂しさを知らなかった。
 剛に会うまでは。



 光一の部屋として使われているホテルの一室で剛と一緒に食事をする事は、最近の光一の楽しみの一つとなっていた。普段全く食欲のない彼が「食べたい」と言ってくれるのが嬉しいのだろう。賄い以上の豪華な食事をシェフ達は作ってくれる。
 今日も光一と剛の間には、温かい食事が並んでいた。
「そういや、お前」
「ん?」
 オムライスを食べていた剛は、光一の言葉にぱっと顔を上げる。
「この前来た時、声掛けんかったやろー」
「やって、お前メッチャ寝とったんやで。あんな疲れてる光一さん、僕が起こせる訳ないでしょ。それも剛君の優しさやん」
「全然優しないわ。終わったらお前に会える思うて一日頑張ってんのにー」
 いきなりの甘い台詞に心臓を打ち抜かれた気分になる。無意識でこんな言葉を零されては、こっちの身が持たない。
「……ほとんど毎日会ってるやないですか」
「そうやけど」
 剛が自分の所に来る以外に会う術を持たない光一は、毎日毎日焦がれるように待っていた。恋人と言う位置を確かに占めている筈なのに、光一は余りにも剛の事を知らない。
 週に一、二度呉野のクラブで歌っている他に何か仕事をしているのかとか、剛の部屋はどんな風になっているのか。そんな、恋人なら知っていて当たり前の生活の事すら分からなかった。それでも今此処に剛がいてくれると、それだけで良いと思ってしまう。
 知る事が愛する事にはならないと知っているから。
 再び二人の間に沈黙が落ちると、光一は箸を置いて窓の外に視線を遣る。いつの間にか季節が秋から冬へと移行しようとしていた。
 一年中クーラーによって室温を保たれているこの空間に身を浸していると、季節を忘れそうになる。けれど、この一年は日々の過ぎ方に敏感になっていた。剛がいるからだろう。
「また、冬になるな」
 優しい声音に誘われて光一の顔を見た剛は、その言葉に特別な響きを捕える。この街に来て二度目の冬がもうすぐ訪れようとしていた。ゆっくりと視線を光一の口許に落として、去年の記憶を手繰り寄せる。
 この、果実のような唇に最初に触れた時の事は良く覚えていた。
 光一の部屋に運ばれてどれ位経った頃だろうか。起き上がれる程には回復していなかったから、そんなに時間は経っていなかったと思う。
 毎日毎日飽きもせず、光一は剛の看病をしていた。見ず知らずの人間にこれだけ真剣になれる彼が面白くて、剛もまた飽きる事なくそんな光一を見詰める。
 タイミングが合った、としか言いようがなかった。完璧な、用意されたような瞬間。
 剛はベッドの上で光一を引き寄せた。そして、柔らかな唇を奪ったのだ。頬に掛かる髪の繊細さや引き寄せた肩の薄さ、戸惑ったまま見開かれた真っ黒の瞳に。
 思い掛けず夢中になってしまった剛は、光一の心情にまで考えが及ぶ筈もなく、思うまま貪ろうとした。
 しかし、自分の舌に他人の舌が絡まると言う事態になって、漸くされるがままの光一が剛を引き剥がそうと抗う。肩を押された剛は必然的にベッドへ戻された。
 光一は頭の回転が追い付かないのだろうか、瞳をうろうろと彷徨わせて戸惑いを隠す事が出来ない。何か言葉を発したいのに何を言ったら良いのか分からない。そんな表情だった。
 剛は光一の瞳をじっと見上げ、彼の表情と同じ戸惑った声を出した。余りにも、光一が可哀想な目をするから不安になる。
「え、男、駄目なん……?」
 剛にしては当然の、光一にしてみれば全くの予想外の問いだった。そう言う問題じゃない、と叫びたかったけれど、吃驚し過ぎて結局剛の瞳を見詰めるばかりになってしまう。
 剛は初めて光一を見た瞬間から、彼の事を気に入っていた。愛等と言う感情ではなく、唯単純に見た目がタイプだと言う理由で。儚げな輪郭や見詰める度に深さを増す黒目がちな瞳、清廉な雰囲気を裏切る魅惑的な唇、その細過ぎる腰。全てが剛を惹き付ける。
 この傷が癒えたら抱こうと思っていた。今まで抱いたどの女もこれ位の思いで抱いて来たのだ。なのに。
 まさかこんなに嵌まるなんて、思ってもみなかった。気が付けば自分の感情は間違いなく恋情で。
 いけない、と思った時にはもう手遅れだった。今の自分にこんなにも執着する人間がいてはならないのに。
 手放そうと思えば思う程、愛しさが募る。どうしようもなかった。



+++++



 クラブで歌った翌朝、剛はオーナーと共に光一のホテルへ向かっていた。大体、この呉野と言う男は働き過ぎだと思う。
 夜も昼も働いて、いつ休んでいるのか。彼の所で歌い始めた頃、それを聞いた事がある。すると呉野は「叶と話している時が、僕の休憩時間」と曖昧に笑った。
 優しい表情の意味を剛は痛い程に理解したけれど、何故か言葉にする事は躊躇われて。それ以来、剛は彼の事が少し気に入っている。
 この小さな街では、街全体がご近所のようなものだった。街の人間も似たタイプが多い。見た目は悪そうだけど中身は善人、なんて人間がごろごろいた。
 昔悪い事を散々やり尽くして、今はもう真っ当に生きて行こうとしているのだろう。塀の中にいた、なんて話も聞いた事がある。
 だから、自分と同じ匂いがするのだろう。そして、光一みたいな人間を大切にしたくなる。当たり前の感情の流れだった。
 呉野はホテルに着くまでに会う人全てと挨拶を交わす。けれど一様に、剛への対応は素っ気なかった。此処に来てもう一年になろうとしているのに、最初の頃からこの街の男達に優しさは見えない。余所者だったし、別に仲良くする気もないから良いのだけれど。
 どうやら余所者だと言う理由からではなく、光一の特別な存在と言う事で敵視されているらしい。ホテルの敷地内に入っても挨拶されない剛を見て、呉野が小さな笑いを漏らす。
「大丈夫だって。もう一、二年経てば皆認めてくれるよ。この辺の人間は、光一が大切でしょうがないんだ」
「……そしたら、俺認められんわな」
「え?」
 小さく呟いた声は呉野に届かなかった。自分が此処にいられる時間は、そんなに長くない。今だってもう、充分過ぎる位なのだから。
 入口で呉野と別れ、剛はロビーを通り抜ける。誰よりも最初に光一が視界に入った。フロント内で従業員の一人と話をしている。仕事中の顔だった。
 剛はこの時間の彼の表情も好きだ。甘さを感じさせない大人の男の顔。それを遠くから眺めているのはお気に入りの一つだった。
 不意に光一が従業員の襟元へ手を伸ばす。ネクタイが曲がっていたのか、決して器用ではない手付きで直していた。あーあ、あの男顔真っ赤やで。
 近過ぎる距離に戸惑ったのか、困ったように光一を見下ろした。他の従業員が出て来て、その顔の赤さを笑う。光一本人は分かっていない様子で、それでも一緒になって笑っていた。
 宝物、やな。
 そんなやり取りを、余裕の表情の下に嫉妬を隠しながら見詰めた。何処まで行っても幸せが見えないたった一人の恋情と、沢山の優しい愛情のどちらが良いかなんて、自明の理だ。
 どれだけ剛が光一を愛しても、自分は何一つ彼に渡せないのだから。あるのは唯、優しさだけ。宝物なんて言葉じゃ、きっと足りない位。
 光一の指先一つでさえ、剛にとっては自分の命より大切な物だった。自分だけに見せる甘い瞳も身体も声も全部、剛の物だ。
 誰にも触れさせたくない。例え自分がいなくなったとしても、光一の肌に触れて良いのは自分だけだと、抱く度に思う。最初に触れた時から変わらない、暗く重い感情。
 光一に救われて、彼の部屋で動けるようにまで回復した頃だった。キスが挨拶程度になり、光一自身が既に剛の行為に慣れてしまった。そんな時、剛は強引に光一を抱いたのだ。彼の態度が自分を拒絶していないと充分に分かっていたから、慣れた手付きで光一の服を剥がして行った。
 本当は。本当は、触れる前に気付かなければならなかったのだ。出会ってからのこの月日の中で、多分剛は完璧に恋をしていた。こんな甘い感情を久しく持っていなかったせいかも知れない。剛自身が自分の感情に鈍感になっていた。
 軽い気持ちで触れた肌にどんどんのめり込んで行く自分に眩暈すら覚える。
 嫌がって泣いた光一は、本当の意味で拒絶していなかった。幾ら体勢的に不利と言っても立派な成人男性なのだから、抵抗しようと思えば出来た筈だった。絶対に本人には言わないけれど、それをしなかったと言う事は彼もまた抱かれる事を望んでいたのだ。
 白い陶磁器の肌は、掌や唇が触れる度に色付いて行った。きっと先に理性をなくしたのは剛だ。乱れ等知らないその整った顔が痛みに喘ぐ度、押し退けるように置かれた手が剛の肩を強く掴む度に。我を忘れる程懸命に彼の身体を開いて行った。
 抱き締めた皮膚の温度がお互い日常を取り戻す頃、光一が掠れた声で「なんで」と呟く。今まで一度も聞いた事のない、不安を強く乗せた声だった。
「一目惚れや、言うても信じない?」
 光一の声音に答えるべく真剣に渡した筈の言葉は、思った以上に軽く響いた。これでは信用されなくて当然だ。そう思ったのに。
「ものには順番っちゅーもんがあるやろ」
 柔らかな声音とやけに大人びた顔で、剛の言葉を受け取った。
 一生に一度の、真剣過ぎる恋をしている。今までの人生で執着したのは、唯一音楽だけだった。他の何もいらなかったのに、
 初めて、欲しいと思う存在だった。留まる事は出来ないと知っていながら、決して短くはない時間をこの街で過ごしていた。



+++++



 冬になっていた。
 光一と迎える二度目の冬、もう限界だと言う事は充分に分かっている。頭より先に肌が危険を察知していた。本能かも知れない。
 離れる準備を始めなければならなかった。と言っても、そんなにやらなければならない事はない。
 元々部屋には何もなかった。この街にあるのは光一だけ。自分の物として大切なのは彼だけだった。光一の他に何かある筈がない。今では、大切な音楽すら光一がいなければ意味のない物になっていた。
 最近彼の部屋に行く回数が明らかに増えている。会えば会う程離れがたくなると分かっているのに。今日が最後かも知れないと考えると、どうしても会いたくなってしまう。
 そろそろ居場所を嗅ぎ付ける筈だ。光一と接点がある事を気付かれる訳にはいかないのに。弱味を掴まれる事よりもすぐに会える距離にいて触れられない事の方が恐怖だった。
 光一の部屋に置きっ放しのギターで適当なコードを辿りながらメロディーを口ずさむ。ベッドに背中を預けて、たった一人の為に繰り返しラブソングを奏で続けた。
 微睡みの淵で聞いている恋人は、ベッドの上に白い身体を投げ出している。剛は手許に視線を落とす事なく、唯ひたすら光一を見詰めながら歌っていた。
 光一は自分の腕に頭を乗せて剛の視線を分かっているのかいないのか、うっすらと微笑んでいる。彼は剛の声が好きだった。自分の声一つでどうにでもなってしまう光一は、本当に可愛いと思う。
 零れて広がる茶色い髪が綺麗だった。綺麗過ぎた。毎日毎日確実に光一は綺麗になっている。剛が触れる度に花開くように成長していた。
 緩慢な動作でゆっくり身体を動かすと、光一が剛の手に腕を伸ばす。指と指を絡め弦の音が途切れると、光一はゆったり笑った。
「剛の指、きれーやな」
 その言葉に剛の動きが止まる。柔らかい表情が微かに強張った。光一は知らない。この手がどんな事をしたかなんて。
 本当は触れてはならない程汚れ切っている。そして、自分が汚れて行く程、光一が綺麗になる程、思い知らされた。
 自身の汚れを省みない程に、光一を愛しているのだと。
「……俺の手は、汚れとるよ。お前まで汚しそうでいっつも怖い」
 笑って流せるような軽い言葉ではなかった。変な所で繊細な剛の杞憂でもないだろう。真っ直ぐに見詰めて来る剛の瞳。底にあるのは暗い暗い色。この指はきっと本当に汚れている。それでも。
「そんな事ない。俺、剛の手好きや」
 渡した言葉は不自然な程真摯に響いた。二人の間に僅かな沈黙が落ちる。
「『俺の手』だけ、好きなん?」
 指先をきゅっと握り締めると、雰囲気を取り戻そうと明るい声音で剛が言った。意地の悪い笑みを見せる男の顔が凄く悔しいけれど。
「……お前の手、まで、好きなんや。全部、好きや」
 少し怒った表情と、それでも素直に言葉を発する光一を見詰めて、剛は不意に決心した。見た目以上に強い精神と見た目通りの壊れそうに優しい心を持つこの人に。
 打ち明けてしまおうと思う。本当は何も言わずに去ろうと思っていた。光一の為には、果たしてどちらが良かったのか。
「なあ、光一」
 二人指先を絡めたまま、ゆっくりと愛しい名を呼ぶ。誰よりも何よりも愛しい存在。幸せにすると言えない代わりに、真実を置いて行こう。
「俺は昔、人を殺した事があるんや」
 剛の重い告白は、この部屋の時間を僅かに止めた気がする。少なくとも剛にはそう思えた。すると光一は眠そうな瞬きを繰り返した後、「ふうん」と一言呟いて。
 それだけだった。繋いだ指先も全く表情を変えていない。
「光一?」
「聞いとるで」
「いや、そぉやなくて……」
 光一が今の台詞をちゃんと理解したのかどうか不安になった剛は、ギターを足許に置く。横になっていた彼の身体を起こして、自分もベッドに乗り上げた。光一は不満そうに唇を尖らせる。
「剛は人を殺した事があるんやろ? ちゃんと聞いてる。で、殺した人の家族だか恋人だかに腹刺されてこの街に辿り着いたんやろ。それでも今、此処にいる。違う?」
 何でもない事のようにあっさり言い放つと、首を僅かに傾げ上目遣いに剛を見詰めた。剛は叶に似ているから。声には出さず光一は思う。
 義父は此処に来る前、随分と後ろ暗い道を歩いていたのだと、呉野に聞いた事があった。今はこうしてまともな職に就いているけれど、昔は関東の方で相当の実力者だったらしい。
 そんな義父と剛は同じ匂いがした。優しい声と少年らしさすら残る笑顔で上手く隠してはいるけれど。その瞳が彼の本質をきちんと表していた。大体、刃物で刺された状態で現れておいて、普通の人間だと思う訳がない。
「……大体、合っとる」
 純粋な瞳とあどけない表情で大胆な事を言った光一に、剛は苦々しく笑う。絹糸の髪をくしゃくしゃに掻き混ぜると、諦めに近い音で零した。
「お前は、俺の事好きなんやなあ」
 その言葉に意地悪な響きはなくて、本当に感心したみたいに呟くから、光一は嬉しくなった。
「あ、そうや! あんな、来週やっと休み取れたんやで」
 どれ位前の事だろうか。剛は光一と約束をしていた。誰にも邪魔されない場所で二人きり過ごそうと。
 どうしても仕事優先の彼はなかなか有休を取ろうとせずにいたから、半分以上諦めていた。ずっと光一は、約束を忘れず楽しみにしていてくれたらしい。
「楽しみやね。うち、掃除しとかんと」
 嬉しそうに見上げる光一の眼差しを笑顔で受け止める。来週、と言う響きが剛を切なくさせた。
 やっと叶えられるたった一つの約束なのに。俺はその日まで、此処にいられるだろうか。


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