小説の再編集とか、資料とか、必要な諸々を置いておくブログ
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大野くんの、元気がすこぶるない。
嵐って不思議な感覚がある。
俺らの世代の皆、それこそグループ同士でも何でも、
仲が悪い奴らってのはさほどいない。
いくらなんでも、20歳を過ぎた頃から皆、大人になって、
互いが互いにとっていい位置をきちんと見つけて、
仲良くやっていた。
3 竹本 2008/07/17(Thu) 22:56
でも嵐は、20歳を過ぎた大人の距離じゃなくて、
本当にあの昔のレッスン室で、
昼の休憩をもらってみんなでたわいのない話で盛り上がって、
レッスン終わった後もフローリングの地べたに座ってぐだぐだ話すような、
体験したことはないけど学校の部活動の仲間のような、
そんな雰囲気がいつでもあって。
かと思えば互いに踏み込めない位置や、気を使う部分も多いようで、
なんとも絶妙な5人だなと、他人事のように思うこともあった
(って他人だけどさ)
4 竹本 2008/07/17(Thu) 22:57
ずっとずっとずっとずっと、それこそ兄弟よりも家族よりも恋人よりも、
とほうもないぐらいに長い時間ずっと一緒にいる5人は、
年を重ねるほどにおおらかで、子供っぽくて、嵐らしい。
そんな空気になっていっていた。
何度か邪魔したことのある、楽屋の雰囲気。
大野くんはいつだってぼけーっとしていたけど、
話をしている輪から外れることなく、たまにぽつぽつ会話に参加したり、
俺らの話を聞いて首の後ろの髪をいじっていたりした。
かと思えば手をいじりだしたり、色々だ。
その時の表情は「無心」って感じで、なんか面白かった。
5 竹本 2008/07/17(Thu) 22:58
ドラマの役が抜けないのか、
大野くんはいつだって、1人座って出番を待っていた。
共演者が話しかけると、きちんと顔を上げて大野くんとして接している。
色濃く残る疲れの色は、さすが嵐だ。
レギュラー3本かかえて、新曲リリース決まって。
(つり、行きたいんだろうな)
やっと時間のつくれた日、CDをどさどさ買っていたら、
大野くんのぼんやりした顔が頭について離れなかった。
自分のこの趣味のようには、気軽にいけない事を楽しみにしている彼だ。
(明日は、ご飯さそって食べよう)
6 竹本 2008/07/17(Thu) 23:00
7 竹本 2008/07/17(Thu) 23:01
「めし、いらねーやおいら」
(おいら、って言った)
勝手にほっとしながらも、そういったぼんやりした顔を見て、思わず顔をしかめた。
最近、大野くんと会話を交わすとき、
大野くんの事を探してしまう。
スーツ姿でぼんやり佇む大野くんは、半分役につかっているみたいだ。
それは自分の勝手な意見であって、
大野くんは役につかっているわけではないだろうけど。
「食べないの?ダメだよ、ちゃんと食べないと」
今日は弁当ではなくて、せっかくのそろったロケだったから、
共演者と皆で近くにご飯を食べに行こうと言っていた。
もう、皆は衣装のままだけど、ちらほら準備をしている。
時計は午後2時をさした。遅い昼だ。入りはほぼ2人同時。
朝から今までずっと。
8 竹本 2008/07/17(Thu) 23:02
「なんか、弁当は食べれそうにないからさ、マネージャーに頼んだ」
ただぼんやりと、そう答える大野くん。
「外は行かない?軽いものもあるような場所だよ。」
「うーん。いいわ。もう頼んじゃったよ」
簡素なパイプ椅子に座っている。
スーツジャケットを脱いで、ネクタイもゆるい格好ならよかった。
今の大野くんは、成瀬のスーツをきっちり着込んでいて、
首の後ろの髪をいじった。
大野くんのくせ。上に上げた腕、
スーツから見える手首の細さに口を尖らせた。
9 竹本 2008/07/17(Thu) 23:03
大野くんは、まわりを見ていないようで、結構見ている。
「だいじょうぶだって。行ってこいよ。いいよ、おいらは」
渋い顔をした俺に軽く笑いながらいって、目をそらさない。
10 竹本 2008/07/17(Thu) 23:05
「大野さん、いかないんですか?」
少し成り行きを見守っていた声がした。
ジャケットを脱ぎ、眼鏡を外した圭だった。
それでも大野くんはますます明るく、
行きたかったけど、頼んじゃったよ。と言う。
「いいよ、ごめん。俺、マネージャーにもう頼んだからさ、」
圭はその言葉と大野くんの笑顔を見て、少し心配そうな顔を覗かせた。
(おーちゃんは本当に、人に好かれるのがうまいな)
2人の表情と、少し止まってしまった空気に口をつぐむ。
その時。
11 竹本 2008/07/17(Thu) 23:06
「こんにちはー。」
なんとも落ち着いた声がした。聞き覚えのある声に、
俺も、大野くんも、圭もいっせいにそちらを見る。
「、翔くん、」
「いやー。皆さんお疲れー。」
12 竹本 2008/07/17(Thu) 23:08
翔くんは、Tシャツにジーパンというラフな格好で、
サングラスを外しながら笑っていた。ていうか、いきなり現れた。
手ぶらだ。なんでここに?
13 竹本 2008/07/17(Thu) 23:10
「とうま、おー、久しぶりー。あ、どうも始めまして。櫻井です。」
翔くんは軽く手をあげながら俺に、そして初対面の圭に挨拶した。
「どうも、初めまして」
「翔くん、どうしたの。いきなりだなー。」
動いた空気にすがるように大き目の声を出してしまった。
大野くんは、翔くんを見て、なぜか何も言わない。
眉にしわをちょっとだけ寄せて、
びっくりしているのか、何なのか分からない表情だった。
「マネージャーから連絡入ってさ。今からちょっと急用で、別行くみたい」
「マジで?誰?」
「松潤かなぁ。智くん、携帯今持ってないでしょ。電話したんだけどって、
俺、ちょうど智くんのとこ行く予定って言ってあったからさ。」
たんたんと交わされる会話。
そっか、と大野くんは下を見て、考え込んだ。
その手はまた、首の後ろにある。
14 竹本 2008/07/17(Thu) 23:11
「ね、じゃあ翔くんも一緒にさ、ご飯いかない?
今、皆と外行こうっていってたんだ」
思い切って、切り出してみた。
共演者の中に1人だけ、っていうのも、翔くんだったら絶対大丈夫だ。
なんだかんだ、認識ありの人も1人ぐらい、いるかもしれない。
「そうだね、ぜひ」
圭も翔くんの顔をみて誘った。
今日の昼休憩は、少し長めになったのだ。
今から皆で出かけても、きっと急いだ昼にはならない。
15 竹本 2008/07/17(Thu) 23:12
大野くんは、顔をあげて、でも立っている俺らまでは上げないで、
「じゃあ・・・」ともらした。
そして翔くんを見上げると、伺うような目になる。
(あれ?)
その時、笑顔で翔くんが言った。
16 竹本 2008/07/17(Thu) 23:13
「あ、ごめん。実は俺、智くんと話すことがあるんだ。」
大野くんの表情が、別のものに変わる。
でも、その表情が何を意味するかは、とっさには分からなかった。
「ライブのことで、まぁ急ぎじゃないんだけどさ。
ごめん、誘ってくれたのに。」
翔くんは本当に申しわけなさそうに言う。
「・・・そ、っか。分かった。」
もうこれで、大野くんは今日の皆とのお昼には不参加だ。
自分から誘ったのに、一緒に行きたいと思ったのに、
なぜだかほっとした自分がいて、
「でも!ちゃんと昼あとには返してよ?俺らの魔王なんだから」
ふざけて、翔くんに返した。
「そりゃもう、ちゃんと日焼けさせないように帰すよ」
ははは、と笑いながら翔くんが返す。
「田中さんも、今度機会があればぜひ。」
笑顔で言われて、圭もこちらこそ、と返した。
外に向かって歩きだすと、すぐ後ろで翔くんの声がする。
「じゃ、俺らも行きますか。ラーメンにしようか、智くん」
大野くんの立ち上がる音がした。でも、返答がなくて。
耳に少しだけ神経をとがらせると、次に聞こえたのも翔くんの声だった。
「それとも他のがいい?近く、あまり知らないけど」
2人も、離れて自分達と同じ方向に向かってくる音がする。
その、かすかな足音にもかきけされそうな、
大野くんの返答をかろうじて聞き取った。
「ラーメンでいい」とだけ、小さく答えていた。
「どうしたんだよ、いきなり」
こんな深夜に掴まってくれるとは思わなかった、と思いつつ、
翔くんの言っていた事を思い出した。
「いや、なんかさー、今日おーちゃんのお昼がラーメンだったから。食べたくなって」
「んだよ、それ」
笑いながらサングラスを取り、松潤はコップに注がれた水を飲む。
深夜1時を回っていた。そんなことを忘れさせるこってりとした匂いが、
店に立ち込めていて、でもクーラーが涼しくきいていて、
おなかがぐうとなった。
「リーダー昼飯ちゃんと食ってる?」
「・・・・・・」
黙ってしまった俺を見て、松潤が唇を少しつきだして、?という表情を作る。
誰が言ったんだっけ。ファンの子だっけ。
今の松潤は、髪型のせいか、犬みたいだ。
ちらほら集まっていた皆のもとへいくと、
俺らの乗り込もうとしていた車の後ろから、ガチャリと音がした。
待っていてくれた共演者にあやまりながら少し振り返ると、
翔くんがこちらに向かって礼をしていた。
大野くんが助手席に乗り込む。笑顔で軽くあいさつを投げた翔くんも、
運転席に収まった。
「大野さんも?」
「ううん、大野さんは、櫻井さんが少し用事あるから、別でとるって」
聞かれて、圭が答える。
2台になるから、場所が分かるか、じゃあ先に出るから後からついてきて、
そんなやり取りをしている間に、後ろにいた翔くんの車の方が先に発進した。
そばを通り過ぎる時、ちゃんとあけた窓から、翔くんが声をかけた。
「じゃあ、すいません。少しの間、うちのリーダー借りますね。」
誰にでも好かれる人だ。初めての人ばかりなのに、
しかも翔くんめっちゃ私服なのに、
皆もいえー、という感じで軽く会釈した。
(・・・おーちゃん、)
思わず、地面を見てしまった。
「翔くん行ったんだ」
「うん、そう。俺さ、なんか、おーちゃんに何にもできてないんだよ。」
選ぶのに時間がかかったラーメンはまだ到着していない。
おーちゃんは、一体何味のラーメンを食べたんだろう。
どこにつれていってもらったんだろう。
突然現場に現れた翔くんに。
「リーダーきつそう?」
「・・・きついんだろうと思う。朝はやいし、夜遅いし。でもそれだけじゃなくて、
おーちゃん最初で言ってたけど、役のことあるから、あんまり話せないね、って。
だから、おーちゃんご飯もあんまり皆とは食べないし、会話にも入ってこないし、
でも話しかけたら当たり前だけどおーちゃんだから、なんか・・・
俺が何かしたいんだけど、何もできなくてさ」
つりに行くのを我慢していた大野くんは、
でも現場ではつり雑誌なんて読まなかった。
嵐の楽屋では最近ずっとそうしていると聞いていたのに、
少しの時間休む為の部屋にも、鞄からも、
そういった類のものは一切出てこなかった。
体力的な疲れもあるんだろうけど、
スーツ姿でぼんやりしている大野くんは、
ただじっと耐えているみたいだった。
今日、翔くんの車の助手席に座る大野くんの表情は、見えなかった。
ただ、笑顔で挨拶をする翔くんごし、
少しだけ確認できた大野くんは、
少しシートを倒して、何かジャケットを上からかけて、
顔は帽子で隠れていた。
眠っているみたいに、シートに収まっていたのだ。
「翔くんがラーメン食べに連れ出したんでしょ?」
「そう」
「今はね、皆がリーダー甘やかしたいんだよ。
翔くんなんて、久しぶりのオフ、しかも午前中だけだよ多分。」
「すごいね」
「翔くんはまぁ、特別っていえば、特別だけどね。」
話は聞いていて、不思議に思いつつも
2人が揃う場面に出くわす機会が、そう思えばなかったんだ。
大野くんの今まで見たこともない表情や、
いつもと変わらない翔くんや、
倒された助手席のシートで眠るように収まる大野くんを見て、
なんだか複雑な気分になった。
翔くんにとっての大野くんは、なんとなく分かる。
大野くんにとっての翔くんは、どんな感じなのだろう。
あの大野くんがみせた、表情が忘れられなかった。
「ニノの時も思ったけどさ。おーちゃん、嵐の誰かがいるとき、
すげーほっとしてる気がする。動きがのびのびしてるし、
ぼーっとしてても、安心できる。」
ははっ、と声を出して松潤が笑った。
「俺も行っちゃおうかな、ドラマ現場。
ぼーっとしてるのに安心できないリーダー、見てみたい」
ラーメンの味は、リーダーが最近ハマってるっていってたよ、
と松潤が漏らしたとんこつにした。
深夜のラーメン屋は、不思議な特別感、
こんなこと深夜にやってやってるぜ、的な空気がして、
すがすがしかった。
(明日もお昼さそうぞ、)
決意して、起床時間を想定しつつ、水を頼んだ。
(圭くんとか松潤も書いてしまいました。皆、大野さんが心配!
次から大野さん視点ですー)
疲れると甘いものが欲しくなると聞いたことがあるけど、
俺は翔くんばかりが欲しかった。
どんなに忙しいときでもかまってくれたあのやさしさを、
ただ受け取れる時間さえあればよかった。
(なんで翔くんなんだろう、)
翔くんは時折、多分信号待ちのたびに、
俺の手にふれてくれる。
自然に息が吸える気すらするような、ただやわらかいもの。
(泣いちまいそう、)
体の力が抜けて、そのまま眠りたかった。
向かう場所は2人きりになれるところがいい。
少しでもいいから、体全体をぎゅっと抱きしめて欲しかった。
(大野さんは疲れると甘えたになっちゃうね)
ニノが最近言っていた言葉を思い出しながら、そのまま眠ってしまった。
「・・くん、智くん。」
呼びかけに気付いて、浅い眠りから目を開けると、
どこか薄暗い場所に車は停止していた。
隣には、翔くんの笑顔。
眉がちょっとさがってるし。
(きっと、心配させてるんだろうな)
でも、本当に本当に、本当に体力的に限界で、
今は翔くんしかいないから、ただぼんやりとした目だけで起きた事を伝えた。
「・・・大丈夫?」
前髪にふれながら問いかけてくる声に、また眠くなってしまう。
うん、と頷くだけで返すと、
翔くんはドアを開けて運転席からおり、
わざわざ助手席に回ってきて、ドアを開けて、体を潜りこませてきた。
「つれてってあげる」
腕に腕をさしいれて、腰を引き寄せられる。
キザだって笑ってやりたいけど、声が反則的に低くて、穏やかで、
途方もなくやさしくて、不意に泣き出したくなってしまった。
自分が本当に疲れているのだ、と自覚してしまうような、
ものすごい甘い声だった。
本当は断りたいのに、
まだ安静にしていてほしい右手を握るだけでいいのに、
泣きたくなった顔を見られたくなくて、自らすがって首に腕を回した。
首元に顔をおしつけるように、しがみつく。
真昼間から、スーツ姿の男をお姫様抱っこするジーパン野郎って、
なんかこう色々すごすぎるだろ。
だけどそんなこと言えずに、
翔くんのにおいがとたんにして、たまらなくなる。
ベッドにそのまま座らされて、翔くんは車を閉めに行った。
ただぼーっとしている。
ここがどこかも知らないし、自分がどれだけ寝ていたかも、
(そういえば、休憩何時までなんだろ)
ドアの閉まる音。翔くんも隣にきて、
ジャケットを脱がしてくれた。
ネクタイまでゆるめて、何してくれるんだろ。
「・・・っ、翔くん」
翔くんて本当に何がしたいんだろ。
知ってる、翔くんだってしぬほど忙しくて、
その中でやっととれた休日だったはずなんだ。
明日からもまた朝から5人そろっての仕事がつまっていて、
何かするなら今日の今の時間しかないはずなんだ。
なのにどうして俺の現場に現れて、俺を連れ出して、
わけわかんねー事に腕枕で寝かせようとするんだろうか、
バカじゃねーの、キザかよ、俺以外にしたら絶対ひくよ、
(だから俺以外の人になんか絶対やらないで、)
少しでもいいなんて大嘘。
ずっとこうしてたい。
「ていうかここ何処だよ・・・」
説得力なく、必死に翔くんのシャツにすがりながら言えば、
押し付けた俺の髪に頬をすりよせて、翔くんは腕を回した。
「智くん、寝ていいよ。」
肩をゆるく引きよせて、ぎゅっと全体を抱き込まれる。
朝早く起きて、ずっとスーツを着込んで、集中して演技して、
深夜遅く帰宅して、また朝起きる。
その繰り返しで、先が長くて、
鉛のように蓄積される疲れを、どうやってほぐせばいいのか、
自分の体なのだから自分が一番よく知っている。
ただ、人肌の温かみを感じて、そのまましばらくくっついていたかった。
嵐の現場にいる時はほっとできた。
皆がいて、ただいるだけでよくて、ニノは手を繋いでくれたし、くっついてくれた。
自分の中の疲れと向き合えて、それを癒そうと力を抜ける。
だから翔くんしばらくこのまま、離れないで欲しい。
「眠っていいよ・・・起こしてあげる。」
(翔くんが好きだよ。)
こめかみに落とされたキスと、近づかないと聴こえない音量の声で、
体の奥底に沈んでいた疲れが、じわりとにじみ出た。
重いだろうに、俺の肩を一層引き寄せて、
深いため息を吐き出して、翔くんは俺の前髪をひとたば撫でる。
(頑張ってるから、少しだけ休ませて。)
翔くんにだって声ではいえない気持ちを、
いつも俺からすくい上げてくれて、ありがとう。
嵐って不思議な感覚がある。
俺らの世代の皆、それこそグループ同士でも何でも、
仲が悪い奴らってのはさほどいない。
いくらなんでも、20歳を過ぎた頃から皆、大人になって、
互いが互いにとっていい位置をきちんと見つけて、
仲良くやっていた。
3 竹本 2008/07/17(Thu) 22:56
でも嵐は、20歳を過ぎた大人の距離じゃなくて、
本当にあの昔のレッスン室で、
昼の休憩をもらってみんなでたわいのない話で盛り上がって、
レッスン終わった後もフローリングの地べたに座ってぐだぐだ話すような、
体験したことはないけど学校の部活動の仲間のような、
そんな雰囲気がいつでもあって。
かと思えば互いに踏み込めない位置や、気を使う部分も多いようで、
なんとも絶妙な5人だなと、他人事のように思うこともあった
(って他人だけどさ)
4 竹本 2008/07/17(Thu) 22:57
ずっとずっとずっとずっと、それこそ兄弟よりも家族よりも恋人よりも、
とほうもないぐらいに長い時間ずっと一緒にいる5人は、
年を重ねるほどにおおらかで、子供っぽくて、嵐らしい。
そんな空気になっていっていた。
何度か邪魔したことのある、楽屋の雰囲気。
大野くんはいつだってぼけーっとしていたけど、
話をしている輪から外れることなく、たまにぽつぽつ会話に参加したり、
俺らの話を聞いて首の後ろの髪をいじっていたりした。
かと思えば手をいじりだしたり、色々だ。
その時の表情は「無心」って感じで、なんか面白かった。
5 竹本 2008/07/17(Thu) 22:58
ドラマの役が抜けないのか、
大野くんはいつだって、1人座って出番を待っていた。
共演者が話しかけると、きちんと顔を上げて大野くんとして接している。
色濃く残る疲れの色は、さすが嵐だ。
レギュラー3本かかえて、新曲リリース決まって。
(つり、行きたいんだろうな)
やっと時間のつくれた日、CDをどさどさ買っていたら、
大野くんのぼんやりした顔が頭について離れなかった。
自分のこの趣味のようには、気軽にいけない事を楽しみにしている彼だ。
(明日は、ご飯さそって食べよう)
6 竹本 2008/07/17(Thu) 23:00
7 竹本 2008/07/17(Thu) 23:01
「めし、いらねーやおいら」
(おいら、って言った)
勝手にほっとしながらも、そういったぼんやりした顔を見て、思わず顔をしかめた。
最近、大野くんと会話を交わすとき、
大野くんの事を探してしまう。
スーツ姿でぼんやり佇む大野くんは、半分役につかっているみたいだ。
それは自分の勝手な意見であって、
大野くんは役につかっているわけではないだろうけど。
「食べないの?ダメだよ、ちゃんと食べないと」
今日は弁当ではなくて、せっかくのそろったロケだったから、
共演者と皆で近くにご飯を食べに行こうと言っていた。
もう、皆は衣装のままだけど、ちらほら準備をしている。
時計は午後2時をさした。遅い昼だ。入りはほぼ2人同時。
朝から今までずっと。
8 竹本 2008/07/17(Thu) 23:02
「なんか、弁当は食べれそうにないからさ、マネージャーに頼んだ」
ただぼんやりと、そう答える大野くん。
「外は行かない?軽いものもあるような場所だよ。」
「うーん。いいわ。もう頼んじゃったよ」
簡素なパイプ椅子に座っている。
スーツジャケットを脱いで、ネクタイもゆるい格好ならよかった。
今の大野くんは、成瀬のスーツをきっちり着込んでいて、
首の後ろの髪をいじった。
大野くんのくせ。上に上げた腕、
スーツから見える手首の細さに口を尖らせた。
9 竹本 2008/07/17(Thu) 23:03
大野くんは、まわりを見ていないようで、結構見ている。
「だいじょうぶだって。行ってこいよ。いいよ、おいらは」
渋い顔をした俺に軽く笑いながらいって、目をそらさない。
10 竹本 2008/07/17(Thu) 23:05
「大野さん、いかないんですか?」
少し成り行きを見守っていた声がした。
ジャケットを脱ぎ、眼鏡を外した圭だった。
それでも大野くんはますます明るく、
行きたかったけど、頼んじゃったよ。と言う。
「いいよ、ごめん。俺、マネージャーにもう頼んだからさ、」
圭はその言葉と大野くんの笑顔を見て、少し心配そうな顔を覗かせた。
(おーちゃんは本当に、人に好かれるのがうまいな)
2人の表情と、少し止まってしまった空気に口をつぐむ。
その時。
11 竹本 2008/07/17(Thu) 23:06
「こんにちはー。」
なんとも落ち着いた声がした。聞き覚えのある声に、
俺も、大野くんも、圭もいっせいにそちらを見る。
「、翔くん、」
「いやー。皆さんお疲れー。」
12 竹本 2008/07/17(Thu) 23:08
翔くんは、Tシャツにジーパンというラフな格好で、
サングラスを外しながら笑っていた。ていうか、いきなり現れた。
手ぶらだ。なんでここに?
13 竹本 2008/07/17(Thu) 23:10
「とうま、おー、久しぶりー。あ、どうも始めまして。櫻井です。」
翔くんは軽く手をあげながら俺に、そして初対面の圭に挨拶した。
「どうも、初めまして」
「翔くん、どうしたの。いきなりだなー。」
動いた空気にすがるように大き目の声を出してしまった。
大野くんは、翔くんを見て、なぜか何も言わない。
眉にしわをちょっとだけ寄せて、
びっくりしているのか、何なのか分からない表情だった。
「マネージャーから連絡入ってさ。今からちょっと急用で、別行くみたい」
「マジで?誰?」
「松潤かなぁ。智くん、携帯今持ってないでしょ。電話したんだけどって、
俺、ちょうど智くんのとこ行く予定って言ってあったからさ。」
たんたんと交わされる会話。
そっか、と大野くんは下を見て、考え込んだ。
その手はまた、首の後ろにある。
14 竹本 2008/07/17(Thu) 23:11
「ね、じゃあ翔くんも一緒にさ、ご飯いかない?
今、皆と外行こうっていってたんだ」
思い切って、切り出してみた。
共演者の中に1人だけ、っていうのも、翔くんだったら絶対大丈夫だ。
なんだかんだ、認識ありの人も1人ぐらい、いるかもしれない。
「そうだね、ぜひ」
圭も翔くんの顔をみて誘った。
今日の昼休憩は、少し長めになったのだ。
今から皆で出かけても、きっと急いだ昼にはならない。
15 竹本 2008/07/17(Thu) 23:12
大野くんは、顔をあげて、でも立っている俺らまでは上げないで、
「じゃあ・・・」ともらした。
そして翔くんを見上げると、伺うような目になる。
(あれ?)
その時、笑顔で翔くんが言った。
16 竹本 2008/07/17(Thu) 23:13
「あ、ごめん。実は俺、智くんと話すことがあるんだ。」
大野くんの表情が、別のものに変わる。
でも、その表情が何を意味するかは、とっさには分からなかった。
「ライブのことで、まぁ急ぎじゃないんだけどさ。
ごめん、誘ってくれたのに。」
翔くんは本当に申しわけなさそうに言う。
「・・・そ、っか。分かった。」
もうこれで、大野くんは今日の皆とのお昼には不参加だ。
自分から誘ったのに、一緒に行きたいと思ったのに、
なぜだかほっとした自分がいて、
「でも!ちゃんと昼あとには返してよ?俺らの魔王なんだから」
ふざけて、翔くんに返した。
「そりゃもう、ちゃんと日焼けさせないように帰すよ」
ははは、と笑いながら翔くんが返す。
「田中さんも、今度機会があればぜひ。」
笑顔で言われて、圭もこちらこそ、と返した。
外に向かって歩きだすと、すぐ後ろで翔くんの声がする。
「じゃ、俺らも行きますか。ラーメンにしようか、智くん」
大野くんの立ち上がる音がした。でも、返答がなくて。
耳に少しだけ神経をとがらせると、次に聞こえたのも翔くんの声だった。
「それとも他のがいい?近く、あまり知らないけど」
2人も、離れて自分達と同じ方向に向かってくる音がする。
その、かすかな足音にもかきけされそうな、
大野くんの返答をかろうじて聞き取った。
「ラーメンでいい」とだけ、小さく答えていた。
「どうしたんだよ、いきなり」
こんな深夜に掴まってくれるとは思わなかった、と思いつつ、
翔くんの言っていた事を思い出した。
「いや、なんかさー、今日おーちゃんのお昼がラーメンだったから。食べたくなって」
「んだよ、それ」
笑いながらサングラスを取り、松潤はコップに注がれた水を飲む。
深夜1時を回っていた。そんなことを忘れさせるこってりとした匂いが、
店に立ち込めていて、でもクーラーが涼しくきいていて、
おなかがぐうとなった。
「リーダー昼飯ちゃんと食ってる?」
「・・・・・・」
黙ってしまった俺を見て、松潤が唇を少しつきだして、?という表情を作る。
誰が言ったんだっけ。ファンの子だっけ。
今の松潤は、髪型のせいか、犬みたいだ。
ちらほら集まっていた皆のもとへいくと、
俺らの乗り込もうとしていた車の後ろから、ガチャリと音がした。
待っていてくれた共演者にあやまりながら少し振り返ると、
翔くんがこちらに向かって礼をしていた。
大野くんが助手席に乗り込む。笑顔で軽くあいさつを投げた翔くんも、
運転席に収まった。
「大野さんも?」
「ううん、大野さんは、櫻井さんが少し用事あるから、別でとるって」
聞かれて、圭が答える。
2台になるから、場所が分かるか、じゃあ先に出るから後からついてきて、
そんなやり取りをしている間に、後ろにいた翔くんの車の方が先に発進した。
そばを通り過ぎる時、ちゃんとあけた窓から、翔くんが声をかけた。
「じゃあ、すいません。少しの間、うちのリーダー借りますね。」
誰にでも好かれる人だ。初めての人ばかりなのに、
しかも翔くんめっちゃ私服なのに、
皆もいえー、という感じで軽く会釈した。
(・・・おーちゃん、)
思わず、地面を見てしまった。
「翔くん行ったんだ」
「うん、そう。俺さ、なんか、おーちゃんに何にもできてないんだよ。」
選ぶのに時間がかかったラーメンはまだ到着していない。
おーちゃんは、一体何味のラーメンを食べたんだろう。
どこにつれていってもらったんだろう。
突然現場に現れた翔くんに。
「リーダーきつそう?」
「・・・きついんだろうと思う。朝はやいし、夜遅いし。でもそれだけじゃなくて、
おーちゃん最初で言ってたけど、役のことあるから、あんまり話せないね、って。
だから、おーちゃんご飯もあんまり皆とは食べないし、会話にも入ってこないし、
でも話しかけたら当たり前だけどおーちゃんだから、なんか・・・
俺が何かしたいんだけど、何もできなくてさ」
つりに行くのを我慢していた大野くんは、
でも現場ではつり雑誌なんて読まなかった。
嵐の楽屋では最近ずっとそうしていると聞いていたのに、
少しの時間休む為の部屋にも、鞄からも、
そういった類のものは一切出てこなかった。
体力的な疲れもあるんだろうけど、
スーツ姿でぼんやりしている大野くんは、
ただじっと耐えているみたいだった。
今日、翔くんの車の助手席に座る大野くんの表情は、見えなかった。
ただ、笑顔で挨拶をする翔くんごし、
少しだけ確認できた大野くんは、
少しシートを倒して、何かジャケットを上からかけて、
顔は帽子で隠れていた。
眠っているみたいに、シートに収まっていたのだ。
「翔くんがラーメン食べに連れ出したんでしょ?」
「そう」
「今はね、皆がリーダー甘やかしたいんだよ。
翔くんなんて、久しぶりのオフ、しかも午前中だけだよ多分。」
「すごいね」
「翔くんはまぁ、特別っていえば、特別だけどね。」
話は聞いていて、不思議に思いつつも
2人が揃う場面に出くわす機会が、そう思えばなかったんだ。
大野くんの今まで見たこともない表情や、
いつもと変わらない翔くんや、
倒された助手席のシートで眠るように収まる大野くんを見て、
なんだか複雑な気分になった。
翔くんにとっての大野くんは、なんとなく分かる。
大野くんにとっての翔くんは、どんな感じなのだろう。
あの大野くんがみせた、表情が忘れられなかった。
「ニノの時も思ったけどさ。おーちゃん、嵐の誰かがいるとき、
すげーほっとしてる気がする。動きがのびのびしてるし、
ぼーっとしてても、安心できる。」
ははっ、と声を出して松潤が笑った。
「俺も行っちゃおうかな、ドラマ現場。
ぼーっとしてるのに安心できないリーダー、見てみたい」
ラーメンの味は、リーダーが最近ハマってるっていってたよ、
と松潤が漏らしたとんこつにした。
深夜のラーメン屋は、不思議な特別感、
こんなこと深夜にやってやってるぜ、的な空気がして、
すがすがしかった。
(明日もお昼さそうぞ、)
決意して、起床時間を想定しつつ、水を頼んだ。
(圭くんとか松潤も書いてしまいました。皆、大野さんが心配!
次から大野さん視点ですー)
疲れると甘いものが欲しくなると聞いたことがあるけど、
俺は翔くんばかりが欲しかった。
どんなに忙しいときでもかまってくれたあのやさしさを、
ただ受け取れる時間さえあればよかった。
(なんで翔くんなんだろう、)
翔くんは時折、多分信号待ちのたびに、
俺の手にふれてくれる。
自然に息が吸える気すらするような、ただやわらかいもの。
(泣いちまいそう、)
体の力が抜けて、そのまま眠りたかった。
向かう場所は2人きりになれるところがいい。
少しでもいいから、体全体をぎゅっと抱きしめて欲しかった。
(大野さんは疲れると甘えたになっちゃうね)
ニノが最近言っていた言葉を思い出しながら、そのまま眠ってしまった。
「・・くん、智くん。」
呼びかけに気付いて、浅い眠りから目を開けると、
どこか薄暗い場所に車は停止していた。
隣には、翔くんの笑顔。
眉がちょっとさがってるし。
(きっと、心配させてるんだろうな)
でも、本当に本当に、本当に体力的に限界で、
今は翔くんしかいないから、ただぼんやりとした目だけで起きた事を伝えた。
「・・・大丈夫?」
前髪にふれながら問いかけてくる声に、また眠くなってしまう。
うん、と頷くだけで返すと、
翔くんはドアを開けて運転席からおり、
わざわざ助手席に回ってきて、ドアを開けて、体を潜りこませてきた。
「つれてってあげる」
腕に腕をさしいれて、腰を引き寄せられる。
キザだって笑ってやりたいけど、声が反則的に低くて、穏やかで、
途方もなくやさしくて、不意に泣き出したくなってしまった。
自分が本当に疲れているのだ、と自覚してしまうような、
ものすごい甘い声だった。
本当は断りたいのに、
まだ安静にしていてほしい右手を握るだけでいいのに、
泣きたくなった顔を見られたくなくて、自らすがって首に腕を回した。
首元に顔をおしつけるように、しがみつく。
真昼間から、スーツ姿の男をお姫様抱っこするジーパン野郎って、
なんかこう色々すごすぎるだろ。
だけどそんなこと言えずに、
翔くんのにおいがとたんにして、たまらなくなる。
ベッドにそのまま座らされて、翔くんは車を閉めに行った。
ただぼーっとしている。
ここがどこかも知らないし、自分がどれだけ寝ていたかも、
(そういえば、休憩何時までなんだろ)
ドアの閉まる音。翔くんも隣にきて、
ジャケットを脱がしてくれた。
ネクタイまでゆるめて、何してくれるんだろ。
「・・・っ、翔くん」
翔くんて本当に何がしたいんだろ。
知ってる、翔くんだってしぬほど忙しくて、
その中でやっととれた休日だったはずなんだ。
明日からもまた朝から5人そろっての仕事がつまっていて、
何かするなら今日の今の時間しかないはずなんだ。
なのにどうして俺の現場に現れて、俺を連れ出して、
わけわかんねー事に腕枕で寝かせようとするんだろうか、
バカじゃねーの、キザかよ、俺以外にしたら絶対ひくよ、
(だから俺以外の人になんか絶対やらないで、)
少しでもいいなんて大嘘。
ずっとこうしてたい。
「ていうかここ何処だよ・・・」
説得力なく、必死に翔くんのシャツにすがりながら言えば、
押し付けた俺の髪に頬をすりよせて、翔くんは腕を回した。
「智くん、寝ていいよ。」
肩をゆるく引きよせて、ぎゅっと全体を抱き込まれる。
朝早く起きて、ずっとスーツを着込んで、集中して演技して、
深夜遅く帰宅して、また朝起きる。
その繰り返しで、先が長くて、
鉛のように蓄積される疲れを、どうやってほぐせばいいのか、
自分の体なのだから自分が一番よく知っている。
ただ、人肌の温かみを感じて、そのまましばらくくっついていたかった。
嵐の現場にいる時はほっとできた。
皆がいて、ただいるだけでよくて、ニノは手を繋いでくれたし、くっついてくれた。
自分の中の疲れと向き合えて、それを癒そうと力を抜ける。
だから翔くんしばらくこのまま、離れないで欲しい。
「眠っていいよ・・・起こしてあげる。」
(翔くんが好きだよ。)
こめかみに落とされたキスと、近づかないと聴こえない音量の声で、
体の奥底に沈んでいた疲れが、じわりとにじみ出た。
重いだろうに、俺の肩を一層引き寄せて、
深いため息を吐き出して、翔くんは俺の前髪をひとたば撫でる。
(頑張ってるから、少しだけ休ませて。)
翔くんにだって声ではいえない気持ちを、
いつも俺からすくい上げてくれて、ありがとう。
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