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小説の再編集とか、資料とか、必要な諸々を置いておくブログ
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「にの!見て見て。ちょーキレイ」
 お湯の中に勢いよく入って、窓まで駆け寄る相葉に二宮は苦笑した。
「んふふ、あんたちょっとはしゃぎすぎ。テンション上げすぎてぶっ倒れないでよ?」
「だぁいじょうぶだって!」
 二人はロケで、ある温泉町に来ていた。昼間のうちに今日のロケを終え、食事を済ますと後は自由時間だ。食事から宴会へと突入していくスタッフたちを尻目に二人で抜け出した。
「くふふ。ホントきれい」
 ホテルの最上階にある一面ガラス張りの展望風呂からは、この地の夜景が一望できる。相葉はこの夜景がいたく気に入ったようだった。ホテルは大きな湖に面していて、暗い水面に湖の向こうの町の灯りが映りゆらゆら揺れて何とも幻想的だ。相葉はそんな夜景を、うつ伏せに身体を投げ出し、湯船の淵に肘をついて眺めていた。
 その体勢はすなわち・・・
「・・・・・ちょっと、あんたお尻が浮いてんですけど」
「んぁ?だって浮いちゃうんだもん。いいじゃん誰もいないし」
 貸切でしょ?
「ねぇ、泳いでいい?」
「どうぞ、ご自由に」
「にのも泳ごうよぉ」
「俺はいいよ。見てるから。相葉さんの可愛いお尻がプカプカ浮いてんの」
「・・・・・やっぱいい」
「何でよ。泳いでいいって言ってんのに」
「だって、にのの目妖しい」
 自分の身体を縮め、隠すようにお湯の中へ沈める。
「失礼な。俺はただ、見てるって言っただけじゃん」
 何なら、背泳ぎでも良いよ。
「ぜったいやらない!」
 そう言って、二宮から離れた窓へ移動した。
「んふふ。残念」
 そう言って、二宮は窓の外に目をやった。本当にキレイな景色にため息が漏れる。キラキラと水面に映る灯りが自分を別世界へと誘っているようで、不思議な感覚に陥る。二宮は、この日常とはかけ離れた静寂の中に相葉と二人で居られる幸せを噛み締めていた。
「ねぇ、にの!」
 二宮とは反対側に移動していた相葉が突然、怒ったように二宮を呼んだ。
「何ですか?」
「淋しいからこっちきて!」
「あんたが離れてったんでしょうが」
 突然のワガママに突っ込みながらも笑みがこぼれる。
「いいから、きて!」
 両手を前に出しておねだりをはじめた。本当に可愛い人だ。
「相葉さんがおいで」
 にっこり笑って両手を広げ、迎えるポーズ。
「うー・・・」
 しばらく迷っているように唸っていたが、そろそろと二宮の元へと寄って来ると胸に飛び込んだ。二宮に抱きつくと、頭を胸に擦り付ける。
「んふふ、どうして急に淋しくなっちゃったの?」
 頭を愛おしそうに撫でながら問う。
「・・・なんでもない・・・・」
 二宮の胸で小さく答える相葉。二宮は相葉を自分から離すと、顔を覗き込み見つめる。
「ちゃんと答えなさい」
「う・・・だってにのが・・・」
「俺が?」
 上目遣いで二宮を伺うように見て、しどろもどろに相葉が答える。
「にのが、外ばっかり見てるんだもん・・・」
「・・・はい?」
「だからぁ!おれのこと見てるって言ったのに、外の景色ばっかり見てた!!」
 頬を膨らませ、二宮を睨む。予想もしなかった理由に二宮は目を見開いた。つまりは、夜景に嫉妬したということか。
「そんなことで怒ってたんですか?本当に可愛い人ですね!!」
 もう一度相葉を抱きしめ直す。何でこんなに愛しいのか分からない。しいて言うならば、それが相葉雅紀だからだろうか。
「そんなことじゃないもん!!大事なことだもん!」
「んふふ、そうですね。とっても大事なことだね。俺が相葉さん意外に目を奪われちゃったんだもんね?」
「うー・・・にののばか・・・」
 二宮の背中に腕を回し、再び胸に顔を埋める。
「はいはい、ごめんね?もうよそ見はしないよ」
 あんただけ見てるから。だからあんたも、俺だけを見て。
 相葉の顔を上向かせ、唇に優しくキスを落とした。二人の姿を、眼下に広がる湖と暖かな町の灯りが優しく見守っていた。

おわり
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