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小説の再編集とか、資料とか、必要な諸々を置いておくブログ
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 レギュラー番組の収録後、俺の苛立ちは最高潮に達していた。カメラが回っているうちは何とか抑えることが出来た。本当なら、あの場ですぐに喚き散らしてやりたかったのだが。
 誰のモンに手ぇ出してんだと。俺のモンに触るなと。
 しかし、そこは演技派戦士。ハリウッドにも進出した男、二宮和也。
 グッとこらえて、笑顔の演技。されど心の中はまさに嵐。
 おっと、怒りのあまり思わずヘタレラッパーのごとく韻を踏んでしまいました。おかげで顔の筋肉がつりそうですよ。うまくやっていたつもりなんですが、収録の途中で隣のキャプテンがひと言。
「にの、目が笑ってない」
 案外鋭いね、あんた。その言葉に笑顔を崩さず、言ってやりましたよ。
「うるせぇよ、バカ」
 もちろん他の人には聞えないように。キャプテンは片眉を上げただけで、それ以上は何も言わなかった。おそらく、他の2人も気付いていただろう。
 張本人は全く気付いてないだろうけど。まぁ、そこが相葉雅紀が相葉雅紀たる所以なのだからしょうがない。しょうがないと頭では分かってるんだけど、心が納得しない。
 俺の心の中でどす黒い感情が渦巻いている。
 彼の眼が俺以外を見るなんて許せない。そんな眼ならいらないでしょう? 
 俺以外の声を聞くなんて許せない。そんな耳なら必要ないでしょう?
 俺以外の人間に触るなんて許せない。そんな手ならあってもしょうがないでしょう?
 これが俺の本音ですから。所詮俺なんて、相葉さんが絡むと非常に心が狭くなる男ですよ。さぁて、このイラつきどう解消いたしましょう?

*****

「おい、相葉ちゃん!お前大丈夫かよ?」
 収録後、楽屋に戻るとすぐに櫻井が相葉に駆け寄った。
「なにがぁ?」
 首をかしげて何のこと?と櫻井を見る相葉。
「何がって・・・・分かっってねぇの?」
「だから!なにが分かってないの?」
 答えが見えない質問に相葉は、顔をしかめた。櫻井はそんな相葉に本気で驚いていた。
「大変だとは思ってたけど、ニノもホント苦労するね・・・」
 そんな櫻井に相葉の顔が更に険しくなる。
「もう!翔ちゃん、意味わかんない!!なにがどうで、にのがなんなの!?」
 翔ちゃんは頭が良すぎて、まわりくどい!!頬を膨らませて櫻井を睨んだ。
「ちょ、落ち着けって相葉ちゃん。だからさ・・・・その、今日の収録だよ!しずちゃんとのさ・・・・」
「しずちゃんとの?それって、告白のこと?」
「そう。あそこはさ、いくらバラエティとはいえ、その・・・仮にも恋人の前でまずいんじゃねぇ?」
「なんでまずいの?」
「なんでって・・・。ほら、やっぱ恋人が自分の目の前で迫られてるのなんて、見たくないじゃん普通」
「だって、あれ冗談でしょ?なのにまずいの?」
 またしても首を傾げる相葉。
「いや・・・冗談なのか?まぁ、冗談だったとしてもさ、お前ちょっと肯定してたじゃん?あん時のニノ、尋常じゃないくらい怖かったぜ?」
「翔ちゃんって、ばかだねぇ」
「なっ!お前に言われたくないんですけど」
「だって、にのはそんな事で怒んないよ。そんな小さいヤツじゃありませ-ん」
 笑って答える相葉に櫻井は呆れた。
「お前は、ホントに幸せものだなぁ・・・・」
 恋は盲目とはよく言ったもんだ。あんな黒いオーラが見えないなんて。
「どうも!!」
「ほめたんじゃねぇよっ!」
「そうなの?うひゃひゃひゃっ」
 そんな2人の会話を楽屋の外で聞いていた人間がいたことには、櫻井も相葉も気付いてはいなかった。

*****

 あの後、次の仕事がある3人と別れ、相葉は二宮の運転する車に乗り込んだ。この収録以外に予定のなかった2人は、一緒に過ごそうと約束していたのだ。
「今日も楽しかったねぇ」
「・・・・・そうですね」
 心底楽しそうに話す相葉に二宮のイライラは更に加速していく。それに気付かず相葉は話を続ける。
「でね、翔ちゃんってば、変なこと言うんだよ。あの人、ホントに頭いいのかなぁ?ねぇ、そう思わない?」
「あの人、基礎は得意だけど、応用力がないんですよ」
「そっかぁ!応用力ね!!うひゃひゃっ、確かにないかもー」
「でもね、相葉さん。翔君の言うこと、間違ってないかもよ?」
「へ?にの?」
 信頼されすぎてるってのも、結構辛いわけよ。
「相葉さんが思うほど俺は出来た人間じゃないんですよ・・・」
 そう言ったきり、二宮は黙り込んでしまった。そんな二宮に、違和感を覚えた相葉だが、自分のない頭では彼が何を考えているかなんて、思いもつかない事も自覚していた。自分はまた何か、彼を怒らせてしまったのだろうか・・・。二宮の横顔を盗み見ることしか出来なかった。
 何ともいえない沈黙が続く中、二宮の運転する車は、ホテルの駐車場へ入っていく。
「あれ?ねぇ、にの。ご飯は?どっかで食べるって言ってなかったっけ?」
 それは、いつもの2人のお決まりのコースではあったが、収録前に約束したときは、どこかでご飯を食べていこうと言っていたのだ。
「予定変更。嫌?」
「嫌じゃないけど・・・」
「じゃ、いいよね?」
 そのままホテルの駐車場へと進んだ。部屋に入るなり、二宮は相葉を抱きしめ、ベッドへと倒れこんだ。
「うわっ!に、にの?どうしたの?」
「俺はそんな出来た人間じゃないって、言ったでしょう?」
 組み敷いた相葉の顔に手を添える。いまだ何が起こっているのか分かっていない顔の相葉に、二宮は顔を歪めた。
「俺はさ・・・いつだって、あんたに関わる全てが俺だけであったらって思ってるんだ。あんたの世界が俺で埋め尽くされてしまえばいい・・・」
「にの・・・」
「分かってるんだ、そんなことは無理だって。だけど・・・この眼が、俺以外を見ることが我慢できない」
 相葉の瞼を指でなぞる。そのままその手を相葉の耳、唇へと滑らせた。
「この耳が俺以外の声を聞くことが、この口が俺以外の名前を呼ぶことが、この手が俺以外に触れることが・・・・我慢できない」
 相葉の手に自分の手を絡め、キスを落とした。
「他の事だったら、全く気にならないんだ。でも、あんたのことになるとダメ。俺以外のあんたに関わる何もかもが許せない。」
 絡めた手を自分の頬に当て、愛おしそうに頬ずりをする。今だって本当は、すぐにでも白い肌を露にして、その首筋に噛み付きたいと思っている。綺麗で、純粋なその顔を俺の欲望で汚して、俺のものだと感じたい。無茶苦茶にしてやりたいと。
「ね、俺なんて全然出来たヤツじゃないでしょ?」
 こんなにも心が狭くて汚い。自由に美しく飛ぶあなたを、温かく見守ることなんて出来ないんだ。自嘲気味に笑った。それまで黙って二宮の話を聞いていた相葉が、穏やかに口を開いた。
「にの・・・。ううん、そんなことない。おれ、嬉しいよ。にのがそう思ってくれてること。だって、にのがそう思ってるときは、にのの世界は俺でいっぱいなんでしょ?」
 二宮が頬に当てていた手を自分の方へ引き寄せると、二宮がしたようにキスを落とし、じっと見つめる。
「おれだって、いつも不安だよ。にのの周りには綺麗な女優さんがいっぱいいて、俺なんか全然敵わない。でも、にのがそう思ってくれてるって分かって、おれだけじゃないんだって分かって、こんなにもうれしい!」
 そう言って相葉は笑った。
「相葉さん・・・」
「ねぇ、にの。もっと言って。もっとにのの世界を俺でいっぱいにしてよ。にのがしたいようにしてくれていいから・・・」
 そう言って手を伸ばし、二宮の頬に触れた。
「あいばさん・・・だめだ。今日は手加減できない。きっと、あんたにひどい事をするよ・・・」
 抑えていた感情が、相葉のひと言で爆発しそうだ。
「いいの。おれがそうされたいんだ。何をされたって、それがにのならきっと嬉しい」
 その微笑みは二宮の理性を飛ばすには充分だった。
「もう・・・知らないよ?相葉さん」
「・・・うん。にの、あいしてる。おれにはにのだけ」

*****

「うっ・・・・ん、んっ。にっ・・・のぉ、あっ・・・」
 二宮の激しい突き上げに、相葉はただ喘ぐことしか出来ない。何かに縋りたくても、今の相葉には不可能だった。何故なら、相葉の腕は後ろ手に縛られているから。
「俺以外に触れないよう縛ってしまおうか・・・・?」
 そう言って二宮に縛られた。
「んん・・・はっん・・んあ、あ・・・もう・・・あっ」
 後ろから攻められているその衝撃を、シーツに顔を埋めて受け止める。相葉の瞳からは、止め処なく涙が溢れてくるが、それが流れることはなかった。相葉の目はタオルで隠されていたから。
「俺以外を見つめるそんな目は、見えなくたって良いでしょ?」
 そう言って、二宮に目隠しをされた。何も見ることが出来ず、縋ることも許されない状況は、相葉にとって恐怖だった。しかし、自分にそれを強いたのが二宮だと思えば何も怖くはない。肌のぶつかる音と水音の中に、二宮の声が、吐息が聞えることが嬉しくてたまらない。
「はっ・・・・ん、あいばっ・・・んっ」
 この衝撃を与えているのは二宮なのだ。
 にの。にの。にの。いま、にのの心は俺だけを見てる?にのの世界にいるのは、おれだけ?
 だったら嬉しい。ああ、にのの顔が見たいな。にのに思いっきり抱きつきたいな。
 そう思っていたら、急に身体を反転させられた。
「あっん・・・・・に、にの?」
 窮屈だった手が開放され、視界が明るくなった。そこに見えたのは大好きなにの。
「あいばさん・・・一緒にイこうか?」
 ああ、こういうのを“いしんでんしん”っていうのかな?
「うん。にの・・・・だいすき!」
 二宮は微笑んで、相葉にキスを送った。
「・・・いくよ?」
 見つめ合い、2人動きを合わせて目指す絶頂は、幸福への道標。

*****

「ごめんね、相葉さん。きつかったでしょ?」
 涙の痕と、手首に付いた赤い痕に優しく口付けた。
「ううん、だいじょうぶ。言ったでしょ?相手がにのなら、どんな事だって嬉しいって」
 泣き腫らした真っ赤な眼を細めて、幸せそうに微笑む相葉。
「おれね、本気でそう思うの。そりゃ、目隠しも、手縛られたのも怖かったし、ちょっと痛かったけど、いつだってにのの目は優しかったから。
おれのだいすきなにのだったから。そんなにのが、おれにすることなら、怖いことなんてないって思うの」
「相葉さん・・・」
 あんな一方的な抱き方を嬉しいだなんて、あなた。
「でもね、さっきこうも思ったの。おれね、にのが要らないって言うなら、この眼だって耳だって腕だって全部なくたっていいって思うけど、それでにのが俺だけを見てくれるんなら、悪くないなって。でも、この眼があるからにのと見つめ合えるし、耳があるからおれを呼ぶにのの声が聞けるし、この腕があるからにのを抱きしめ返せるんだなって。にのと愛し合えるんだなって。そしたらね、にのの顔が見たくなって、声が聞きたくなって、抱きしめたくなってどうしようもなくなっちゃったの。もうこれはね、おれの希望とか、にのの為とかそんなことじゃなくて、もう衝動なの。ずっと奥の方から湧き出てくる衝動」
「衝動・・・?」
「うん、衝動。だからやっぱり、おれは眼も耳も腕も全部ないと困るなって思うの。だめかなぁ?」
 相葉は二宮の胸に顔を埋め、二宮を見上げる。実は俺なんかよりずっといろんな事を考えている相葉。俺のこんなにも黒い感情を、それよりもはるかに綺麗なそれで包んでくれる。
 俺の考えなんて、彼の前では戯言にしかならなくて。だからこそ、俺は正気でいられるんだ。こんな俺を彼が好きだと言ってくれるから。
「ダメ・・・じゃない。俺もやっぱり相葉さんの全てが好きだから」
「くふふ、ありがと。にの、だいすき!!」
「ホント、あんたにゃ敵わないよ。あ、でもちょっとは気をつけてもらわないと!今日みたいなことがある度に、俺はこんな事したくなっちゃうんで・・・」
 嫉妬深いのよ、二宮君は。そう言って、再び相葉の赤くなった手首に口付ける。
「ひゃっ・・・・、はぁい!!」
 一瞬驚いた相葉だったが、すぐに笑顔になり元気に返事をした。
「ホントに分かってるのかなぁ。不安・・・」
 胸に顔をすり寄せる相葉の頭を撫でながら、二宮は呟いた。
 これからも、自分の醜さと彼の偉大さを思い知らされることは何度だってあるんだろう。だけど結局は彼の全てが好きだから。
 離さないし、離れられない。
 俺の望みではなく、彼のためでもなく。
 それは、愛という名の衝動。

おわり
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