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小説の再編集とか、資料とか、必要な諸々を置いておくブログ
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I×V 2


→[Stage-2]


熱い。酷くアツい感覚。

全身が心臓になっちゃったみたいな・・・・ていうかオレ、心臓動いてないんだけど。例えね、例え。

熱にうかされたような原色の光の中で、オレの肌を這い回る手が妙にリアルで。

その指が触れるごとに、身体が震えて追い詰められてゆく。

どこに?なんてそんなのわかんない。ただ、そんな気がするだけ。

眼下に広がるのは眩く煌くネオンの灯り。

向かいのビルの航空障害灯の灯りが近いような遠いような、変な遠近感で迫ってくる。

ソコに人はいない筈なのに、誰かに見られてるみたいな。

熱と、あるはずの無い視線から逃れようと額を押し付けた硝子が、オレの荒い息で白く曇る。

かたちの良い爪で先端を引っ掻かれて、でも堰き止められてるから解放は出来なくて・・・・・さっきから繰り返されるそんな凌虐に気が触れてしまいそう。

窓に縋って立ってるのだってやっとだ。

「イキたい?」

甘い棘を持つ声が耳を嬲る。オレはただコクコクと頷いた。

ほっぺが、熱くて冷たい。泣いてんのかな。

自分のカラダなのに、そうじゃないような感覚。神経の一本一本が支配されてるっていったらいいのかな。何か、そんな感じ。

オレの腰元にまわってるヤツの腕をぎゅっと掴んで無言でせがむと、後ろで笑う気配がした。

「まだダメ。」

だったらさいしょからきくなっ!

と悪態をつく前に、オレを襲った灼熱の楔に貫かれる感触と、狂いそうな絶頂の予感。

「ぅあ!・・ぁああっ・・・・」

自分の声とは思えないような悲鳴を聞いて、消えてしまいたいと思った。

目を背けたくなるくらい淫靡なカオが硝子に浮かび上がる。これ、ホントにオレ・・・・?

後ろからぎゅっと身体を密着させてくるヤツの吐息が、耳にかかる。それがもう息が詰まるくらいに気持ち良くって、

心底色魔というのはコワイ魔物なのだと震えた。

だって、じゃなきゃこんな風に抱かれて感じてるなんて・・・・・それこそ末代までの恥だって。

ぐ、といきなり腰の角度が変わって、目の前がチカチカした。

思わず衝撃から硝子に爪を立てる。

「・・・・爪、割れるよ」

思いがけなく囁かれた言葉に顔を上げると、ヤツの手が労わるようにオレの指を包んだ。

少し驚いて振り向けば、思いのほか優しい瞳。紫色の、発情した色魔の目になってたけど・・・・何だか妙に安堵する自分が居た。

「アンタ、名前なんてゆーの?」

まるで世間話でもするかのような口振り。突然のことに面食らっていると中心を掴んだ指に力を込められて、慌てて口を開く。

「雅紀・・・・」

何でそんなことを訊くのかと目で訴えると、ヤツは紅い唇を綺麗に歪めた。

「イク瞬間に呼んだ方がイイかなって思って。雅紀ね。」

確かめるように、何度もオレの名を囁く。それを耳元でやるもんだから、そのたんびにオレは肩を竦めるハメになる。

「・・・おまえは・・・・?」

何となく訊くと、ヤツはびっくりしたような顔でオレを見た。でっかい目が零れ落ちそう。

「・・・・んだよ」

「いや・・・・襲われてるのによくそんなこと言ってくるなあと思って」

うるせーな、訊きたかったんだからいいじゃん。それとも他のヤツの名前呼んで欲しいわけ?

軽く睨み付けると、ヤツはごめん、と苦笑してオレの頬にキスをした。

「潤って呼んで。」

とびっきりエロい低音で、耳たぶを食みながらのその言葉に、思わずびくりと震える。同時に動きを再開されて、オレは壊れたみたいに頷いた。

ものすごい浮遊感と、どろどろに蕩けている繋がった部分のアツさ。

「ん・・・・じゅん・・・・っ」

「そ。」

優しい優しい声が、低い響きで鼓膜に浸透する。まるで自分が彼の、トクベツになったかのような錯覚。声だけで感じてるみたいだ。

それに気付いた潤がさらにぐっと腰を押し付けてきて、カラダが前に押し出される。

「やっ、・・・・も、おちちゃう・・・・っ」

途端に、ナカに居た潤の質量が増した。

「―――ひゃ!・・・・・・あ、」

それに伴って潤を締め付けてしまって、内壁で感じたそのリアルなカタチに羞恥する。

ぞくぞくと背筋を浸蝕する快感。眼前に迫るような錯覚をもたらす硝子の向こうの夜景。

「堕ちればいい。」

低い嗤いとともに深さを増す注挿に合わせて蠢く自分の腰が、もう自分のものではないようで。

オレは迫り来るサイゴに逆らわず理性と意識を手放した。






背中越しに感じる潤の肌の熱が、やたらと鮮明で――――





それから、潤が囁いた言葉も。








       おちよう。いっしょに・・・・・・













てっぺんから。















*  *  *  *  *  *  *  *  *


→[Reset]






ふと目覚めると、そこはシーツの海だった。

独りじゃ余りあるほどの大きなベッド。目の前には見慣れない天井。

・・・・・・・ああ、そっか。あの後・・・・あの路地で逆に色魔に捕まって、連れてこられたんだっけ。でもこのだるさは一体何?

何か重要なことを忘れてる気がする。

あちこちが痛む身体をゆっくりと起こして、薄闇の部屋を見回す。窓はカーテンが引かれていた。良かった。朝陽浴びたら灰になっちゃう。

一箇所だけ明かりが漏れているのは・・・・・バスルームだろうか。

ぼんやりと眺めているとやがて水音が止んで、バスローブ姿のヤツが出てきた。手にはタオルを持ってがしがしと髪を拭いている。

その手がちょっと止まったのは、オレのことを見つけたから。

「おはよう。」

さらりと言って、ベッドの端っこに色魔が座る。そのまんまヤツをじっと見ていると、怪訝そうな顔でこちらを覗き込んできた。

「・・・・まさか目開けて寝てんの?」

起きてるよっ。いくらなんでもそこまで抜けてねーっての。

むっとしてぷいっと顔を背ける。するとやけにゴキゲンな笑い声が背中に降ってきた。

「やっぱ噂はホントだったね。」

ウワサ?

その言葉が気になって振り返る。ヤツはタオルをベッドサイドに放り投げ、ベッドの上のオレににじり寄ってきた。

「オイシかったよ?ゴチソウサマ。」

ちゅ。という音と、頬に濡れた感触。

・・・・・・・・なっ!

「な、何だよおまえっ!なにがごちそうさまなわけ!?」

意味わかんなくて(わかりたくなかったからかもしれないけど)飛び退いたオレを、ヤツの長い腕が引き寄せる。

「ココも、ココも、このナカも、すっげぇ美味かった。」

ニヤニヤ笑うヤツの指が示したのは、オレの唇と、ムネと、・・・・・・下半身。

熱っぽくオレを見てくるヤツの目に、昨夜の記憶が断片的に蘇る。一気に顔に熱が上がった。

「はっ、離せっ!!」

腕の中でじたばたと暴れると、苦笑しながら解放してくれる。なんだ、案外そんなに厄介なヤツでもないのかも?

なんて思いながらそれでもオレはベッドの端っこまで這って行ってヤツから距離を取って、更に枕を二つ抱えて全裸な身体をガードした。

この色魔、オレのこと喰いやがったのかよ・・・・!

オレが腹ペコだったってのに、自分だけイイ思いしやがって・・・・・って、あれ?

「・・・・・・腹、いっぱいになってる・・・・」

昨夜あれだけオレを苦しめていた空腹感がキレイさっぱりなくなっている。どういうこと・・・・?

「アンタ、俺の生気貰ってったじゃん」

繋がりながら。というヤツの言葉に思わず耳を塞ぎたくなったけど、確かにこの充実感は生気をもらった後のモンだ。

「で、俺はアンタの精気を貰ったわけ。」

いつのまにやらまた近くまできていたヤツに腕をとられ、ゆっくりと唇の上から牙の辺りを撫でられた。

「ギブアンドテイクってやつだろ?そんな怒るなって」

だからってどさくさにまぎれてキスすんなー!

牙を剥きそうなオレの頭をよしよしと撫でて、ヤツは極上の笑みでにっこりと微笑んだ。

「これで俺ら、一蓮托生なわけだ。」

「はっ?」

開いた口がそのままのかたちで固まってしまう。そのせいで力の抜けた腕から枕を奪って排除し、ヤツが間合いをつめてくる。

ぎゃー、腰抱くなよ!

「意味わかる?一生一緒ってことね」

「うるせーな、そんくらいオレだってわかるっての」

ってか、そうじゃなくて、何でイチレンタクショウなのかってことだろ問題は!

「色魔と交わった奴は死ぬまで虜だろ?」

そうだけど・・・・・・あ・・・!

「で、アンタは吸血鬼だから死ねない。つまりアンタはずっと俺のモノってわけ」

何だよそれー!!

あんまりなショックに口をパクパクさせるしか出来ないオレに、ヤツの唇が再び迫る。

「ん・・・・ふ、・・・ぁ」

ねっとりと絡め取られた舌が熱い。そのままベッドにそっと押し倒されてしまったことに気付いて慌てて、オレはヤツの肩を押しのけた。

「アンタもう、俺以外に抱かれらんないようになってるハズだぜ?」

キスだけで息が上がってしまってるオレにそんなことを言って、ヤツは心底嬉しそうに首筋に吸い付いた。

「・・・・・・・。」

悔しいけど、反応してるよこのやろう。

「・・・・生気。」

「ん?」

「くれんなら、一緒にいてもいい。」

睨みつけながら言った台詞に、ヤツは満足そうに頷いて笑った。




「・・・・あ。」

「どうしたの?」

「たまには血も飲ませろ」

「気が向いたらね。」

ヤツの唇がムネに寄せられる。ぎゅっと髪を掴んで、名前を呼ぼうとして・・・・・オレは半開きの唇で停止した。

「おまえ、名前は?」

「昨日教えただろ?」

昨日?昨日・・・・・飛んじゃっててよく覚えてないんだよ残念ながら。

頭を捻っているオレをよそに、ヤツの標的はどんどん下っていって。

徐に、その紅い唇がオレを包み込んだ。途端に襲う、爪先まで痺れるような感覚。

「ぁっ、じゅ、・・・」

・・・・・・思い出した。潤だ。条件反射ってやつだろうか。こんなことされて思い出すなんて、ちょっと自分が恨めしい。



一晩ですっかり『潤用』に変えられてしまったカラダを嘆きつつ、それでも心地よい愛撫に身を任せてオレは、そっと目を閉じた。





end.
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