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「うそっ」
ニノの高い声が、こわんと空気を振るわせた。
俺は突っ伏して顔を上げれない、自分の囲んだ腕の中は、気温が上昇している。
ああ、とうとう言ってしまった。
なんかきまじいから、相談なんてきっとしないだろうと思っていた。
それがこのザマ。おいおい、俺達、まだ付き合って2ヵ月とかじゃね?
なんかもー、情けない。



3  竹本  2008/02/26(Tue) 02:08



「だってアンタら、さんざんべたべた、してるでしょうに。
それで、よく翔ちゃんも我慢できるねぇ」
ニノは予想していた以上には、からかいの言葉を述べなかった。
氷の鳴る音がする。からん。
あー・・・なんかもう、ヤダ。今、すべてが嫌になってきた。
ゆっくりずるずると顔を上げると、すかさずニノは言う。
「どーせおじさんが、釣りに行ったり釣りに行ったり、
フィギュア作ったりしてるんでしょう?」
テーブルに肘をのせ、その腕に顔をだらんとのっけて笑っている。
二人とも帽子をしたままで、格好から見れば、
もしかしたら補導されてしまうんじゃないかってぐらいの、ラフな服装だ。
元々は、ラーメンを奢らされるだけのつもりだった。




4  竹本  2008/02/26(Tue) 02:09



「ちげーよ。あっちが忙しいんだよ。ニュースキャスターだの、
それの勉強だの、友達だの。
アイツ、昔っからずっとそうじゃん。休みの日も、家にぜってーいねーんだ、」
そう言って、グラスに残る大きな氷をからころ鳴らしていじけてみせた。
そうだ。俺が今の今まで自由に過ごしていた時間分、アイツだって、
仕事したり遊んだりで、なんだかんだで動き回っていた。
だから、別に、俺のせいってわけでもない。



5  竹本  2008/02/26(Tue) 02:09



「でもねぇ、大野さん。俺にわざわざ言ったってことは、これって相談でしょ?」
ニノの言葉はまっすぐでストレート、うって言葉が詰まるぐらいに、的確だ。
グラスに浮き出てくる冷たい水分を、指ですくって、恐る恐る隣を見た。
「くちびる、とがってますけど」
ニノがくふふ、と、いつものように笑う。
「あんだよ。そうだよ、相談だよ。どう考えたっておかしいだろ」
はんばやけくそになって言った。あー、もう。
解けた氷で少し薄くなっているカクテルを、一口含む。
ニノは相変わらずのにやにや顔で、もう一度口にしてみると、
本当恥ずかしいことこの上ない俺の相談事を、あのかわいい声で言った。
「つまり、もう付き合って2ヵ月たつのに、2回しかエッチしてない、っと」
とたん、本当に本当に、心のそこから本当に情けなくなって、
うう、と声を漏らしてまた顔を腕の囲いへとうずめなければならなかった。
「おじさん!元気ダシテヨ!」
宮Kの言葉にも、笑えねーよチクショー!




6  竹本  2008/02/26(Tue) 02:09



(まずは、相手の行動と、表情をよく見てみなさいよ)
「智くん、今日さ、少し遠回りして送っていってもいい?」
「・・・・・・」
「智くん?」
「あ、ごめ。別にいーよ、」

ニノの言葉を思い返しながら、隣の翔くんをまじまじと見てみる。
今日は個人の仕事の後で、迎えに来てくれた翔くんの運転で外食に出た。
というよりも、こういう仕事柄、
何かをするといったらもう、食事ぐらいしか選択肢がないのだ。
翔くんは色々と遊びを知っていそうだけど、きっと自分が行きたがらないと
初めから考えてくれてるんだろう。
俺だって、いくら翔くんと付き合っているからといって、
いきなり「友達のDJのイベントがあってさ、一緒に行こうよ!」とか言われても、
なぁ。そういうところは、説明も補足も譲り合いも、なんもいらなかったな。

もうずっとずっとずっと側にいた翔くんと、最近、付き合い始めた。





7  竹本  2008/02/26(Tue) 02:10


俺の中での自覚は早いほうだったと思う。
女の子を普通に好きになって、普通にそれなりの恋愛とか交際は、
していた。
でも結局は、最後の彼女の次に気になったのが翔くんだった、というだけで、
後は何も変わらない。
笑顔がかわいいし、面白いし、でも時々へたれだし、一緒にいて楽。
気付いたときは、肩を組み合ったりするのなんて日常茶飯事だし、
ものすごい至近距離で詰めて話をすることも慣れっこだったし、
ホテルの同じ部屋で寝泊りするのも、朝っぱらからロケバスで2人きりってのも体験済み。
何もかも慣れきった後で、そういえば全然手は繋がないなぁなんて、
思い始めていて。
たまたま、何かきっかけがあって、一瞬繋いだ時に、
はっと気付いた。ああ俺、翔くん好きなんじゃない?って。



8  竹本  2008/02/26(Tue) 02:10


そこからも普通だった。
特権は、ほぼ毎日会えること。大事な瞬間に一緒にいること。思い出が増える一方だということ。
近くに寄れること。何もかもさらけ出していること。
向こうも俺を、嫌いではないと知ってること。
別に性欲は、人並みだったと思うけど、それでこそ毎日さんざん会えるから、
ただ近くにいることで、適当に幸せだった。

それが、ほんの1年前ぐらいのことだ。


9  竹本  2008/02/26(Tue) 02:10


翔くんは年を追うごとに俺より大きくなって、逞しくなった。
そして笑顔がやさしくなって、へたれがよりキャラ付けされてきて、
でも皆のお母さんみたいになった。
俺が年上なのもあって、いつでも俺にやさしかったし、
笑って「智くん」って呼ぶときは、とても好かれてると思えた。
すっかり今の関係が築かれた後に、はっと思い出すように始めた恋だ。
だから俺も実は自分で手一杯で、翔くんの変化に、あまり気付けなかったみたいだ。




10  竹本  2008/02/26(Tue) 02:10



告白を受けた時は衝撃的だった。
たまに収録が押したりして遅くなると、翔くんが車で家まで送ってくれたりする。
それがここしばらく頻繁になってきてて、
必然的に二人でいる時間も増えた。
俺はただ単純に楽な幸せにつかっていて、
緊張することもない、ただただ楽しい時間を嬉しく思うばかりだった。
でも翔くんは違ったみたいで、
俺の表情を探ったり、甘い雰囲気を作ってみたり、
それとなく手に触れたり、色々してみてくれたみたい。




11  竹本  2008/02/26(Tue) 02:11



だって俺はまさか、翔くんまで俺の事を恋愛対象として好き、と自覚してくれてるなんて
全然まったく思ってなくて、
だから誘われれば笑顔でついていったし、話も弾んだし、酒も呑んだし、
その酔いと一緒につながれた手をぎゅっと握って、
えへへ~なんて馬鹿みたいに笑ってられたりしたのだ。
ラッキーなんて軽く思うぐらいで、
そんなに印象として残ってなくって。
だから翔くんが、本当に心底困った顔をしながら、
「俺、智くんのこと、違う意味で好きだから。だから、このままじゃ、つらい」なんて
ゆっくり沈黙作って気まずい空気の中で言った時は、
ぽかーんとした顔をしてたに違いない。



12  竹本  2008/02/26(Tue) 02:11


その時は重苦しい車内の沈黙を破り、
手を握りながら、「俺も翔くんのこと、好きだ」って言って、
そのまま信じようとしない翔くんのかわいい長い髪をひっぱってキスしてやった。
おでこをこすりつけて、息のかかる距離で、「・・・な?」って低く呟くと、
翔くんはやっと手を動かして、もう一度、しっかりキスをしてくれたんだ。



13  竹本  2008/02/26(Tue) 02:11


(もしかしたら、翔ちゃんは小さいサイン、送ってるかもしんないよ?そういうのを察知して、こっちも大丈夫だって、サイン送り返してやんなきゃ。あの子へタレだもん)
そうだよなぁ。俺がもし逆の立場だったとして、
送ったサインスルーされたら、踏み込めないかも。
ていうか、サインてなんだよ。
ぐるぐる考えていると、運転席でいつもとおり、かっこよくハンドルを握りながら、
翔くんがくすっと笑った。
無言で顔をそっちに向かせる。何?っていう言葉は、発しない。
だけど翔くんはちゃんと分かってくれて、「なんか難しい顔してるなぁと思って」と言った。
「どこ行くの?」「うーん。なんとなく。今日さ、結構時間早くない?」
時計を見ると、まだ夜の10時過ぎだった。
「あーほんとだ。」「収録さ、始まりは遅かったけど、その割りに早く終わったよね?」
「あー。」「でも明日は月曜なんだよなー。」「ZEROか」「そう、ZEROです」



14  竹本  2008/02/26(Tue) 02:12



日曜日の夜の街は、案外空いていて、
翔くんの運転する車はするすると進んでいく。
たまに俺も分かる道を曲がったりしながら、ぐるぐるしているみたいだ。
夜の冷たさと、外灯がきれい。
翔くんと一番長くいる場所は、もしかしたらここかもしれないぐらいに
車には乗せてもらってるから、
何時間でも入れそうだな、と思った。



15  竹本  2008/02/26(Tue) 02:12


(しかしもしかしたら、今のは翔くんなりのお誘いだったかなぁ)
しかし翔くんも、運転をすごく楽しそうにしていて、
別におどおどしている様子もない。
明日はZEROだって言ってたから、俺は午後からの予定だけど、
翔くんはきっとその予定の仕事を朝からおわらせて、
そのニュースキャスターとしての準備を早いうちに始めるのだろう。
大体月曜日は、5人は5人でもソロで進行できるものが多かった。
それがなければ、俺は大抵は休みの日。夜なら、確実に家にいれる時間。



16  竹本  2008/02/26(Tue) 02:12

(キスしてぇなぁ、)横顔を観察しながら思う。
最後にしたのはいつだっけ。二人でこうしていた時が最後だから、
多分4、5日前ぐらい?
そのまま整った顔立ちを見ていると、翔くんがちらっと目線をよこして、
ふっくらした感じで笑った。
「なーに見てるの?なんかおかしいなぁ。お酒飲んでないよね?」
「うん」
照れたように笑った目じりのしわが、すごくかわいい。
滅多にいじらない携帯をズボンのポケットから無理矢理取り出して、
カメラモードにして、ずいと近づけた。
「マジで何やってんの?あっはっは、」翔くんが馬鹿笑いをする。
「おらー」その崩れた顔を激写しても、暗くてよく写らなかった。
しかもブレてるし。ライトってどこだ?
普段はつけないからわかんねぇや。
「翔くん、ちょっと止まってよ、車」
「ていうかいきなりどしたの。うけるんだけど」顔がすごく嬉しそうだ。
「いや、翔くんの写真って、携帯にいっこもなかったなと思って」
「俺は智くんのあるよ。変なのばっかりだけど」
翔くんはまだ笑いながら、右と左を確認している。
隣を走ってる車も少ない通りに来ていたので、
かちかちと合図を出して、左側によって止まってくれてた。


17  竹本  2008/02/26(Tue) 02:13


「俺もニノのならあるよ。ニノの母ちゃんのもあるな、」
ちくちく携帯をいじりながら、ライトを探す。
「あー俺もあるなぁ。マジうけるけど、なぜかあるなぁ。なんでだろ?」
翔くんも携帯を探り出して、ちくちくしはじめた。
俺のほうに携帯を向けて、真剣な表情をしばらくして、
ぱっと眩しいライトが光る。
「おお、何処にある?ライト」
「分からないの?」
「あんま使わねぇから、暗いところでは」
先についた翔くんの携帯の眩しさに顔をしかめると、
翔くんはそれを膝のほうに一旦置いて、
俺の携帯を取った。
同時に手も握りこまれて、引き寄せられる。





18  竹本  2008/02/26(Tue) 02:13



何度目かの、車でのキス。
狭くて、間にある色んなものが邪魔だけど、
絶対に二人きりだという空間が、すごく好きだ。
暗い車内に、翔くんと二人きり。
反対側の腕が動いて、かぶっていた帽子を落とされた。
そのまま、耳の後ろを撫でられる。
(舌、欲しい)
前は、ただのキスだった。帰り際に、名残惜しくて、ちゅってしただけだ。
でも、唇は何度かやわらかく押し付けられただけで、
頬に、目元にうつっていった。
眼を開けて、キスしてくれている翔くんの表情を見る。


19  竹本  2008/02/26(Tue) 02:13



(・・・俺が見る限りでは、絶対幸せそうに見えるんだ、)
ぼんやりしていると、笑顔をくれた。ほら。俺のこと、好きだって顔してるよ。
「俺も智くんの普通の顔は、ないかもなぁ」
そのまま至近距離で、翔くんは笑顔で、俺の携帯をちくちくいじる。
反対の手を、絡めて握ってくれて。
俺は物足りないキスの余韻でぼうっとしてしまって、
なんだか急激に眠くなっていた。
そして、ますます翔くんが分からなくなってた。
「あ、ついた」
ランプがついた自分の携帯。覗き込むと、
画面右端に移る時刻は、午後10時37分。
(まだあるのに、)
翔くんは笑顔で、そこには、ただ俺との時間がすごく嬉しいってしか書いてなくて、
ニノの言うサインは、結局見つけられないままだった。








20  竹本  2008/02/26(Tue) 02:13


月曜日はレギュラー番組の放送がある。翔くんのZEROも。
マメなニノは、腕時計を確認しては、
今頃頑張ってるんだろうねって言っていた。
だけどもう見つけきれないんだ。だってアイツ、すんげー幸せそうな、
満ち足りた顔してるんだぜ。
ニノはもうはたからみたらノロケだろう俺の話を聞いてくれて、
一緒に真剣に悩んでくれた。
でも実はぜってー面白がってるんだ、
だってそんなの、この話には関係なくね?


21  竹本  2008/02/26(Tue) 02:14


「関係大有りだよおじさん。最初のエッチと、二回目のエッチで、
何かしちゃったんじゃないの?
それで翔ちゃん、踏み切れないとか。
ほら、だから教えなさいよ」
・・・カンベンしてくれよ。
けれどニノは、もう一つレモンスライスを俺のグラスに絞って、
酒と水と氷を継ぎ足してしまった。
ああ、俺が悪かった。こんなに頻繁に、
気まずい相談事なんてしてゴメンナサイ。



22  竹本  2008/02/26(Tue) 02:14



「ああー・・・」
からりとマドラーを回す音。ニノの作ってくれる水割りは、いつもおいしい。
「・・・・・・言いたくねー」
「いいじゃん、いいじゃん。今更じゃん」
ニノは、外した自分のマフラーをひきよせて、
枕のようにした上に、腕をくんで頭をのせている。
かわいいなぁ。じゃなくって。コイツ、ほんと、こうしてみると
高校生ぐらいに見えるよな。
「おーじーさーんー」
ため息を一つついて、心底恥ずかしい話を始めた。




23  竹本  2008/02/26(Tue) 02:14


俺と翔くんが初めてエッチしたのは、
なんと告白されてオッケー!した、その瞬間だった。
もっと最悪な事を言えば、なんと俺はちょっくら酔っていて、
翔くんはきっと、そんなつもり全然なかったと思う。
だけど俺はすごく嬉しくて、翔くんがしてくれたやさしいキスに舌からませて、
もーものすごい翔くんを求めてしまったわけです。
いくら毎日会える平穏的な幸せの中にいたからといって、
俺だって男だ。もちろん、翔くんのことを考えて、そういう処理もしていた。
そんな事が続くんだろうなぁとぼんやりしていた時に、
翔くんも俺のことそういう意味で好きだと言ってくれて、
しかもキスまでしてくれたんだ。俺の気持ちも、少しはくんでもらいたい。


24  竹本  2008/02/26(Tue) 02:15



場所がちょうどホテルの個室で飲めるバーとかだった。
翔くんははじめ、少しおどおどしてたけど、
俺が短い息を漏らしたらぎゅっと腰を引き寄せてきて、
ゆっくり頬を撫でながら、すごく温かいキスを長くしてくれた。
強く感じるいつものコロンの匂いにぼんやりして、
少しアルコールの入った体がどんどん熱くなっていく。
翔くんはきっと、俺の表情を覗き込もうとしたんだろう。
長いキスの後で、翔くんの肩に顔を乗せて息を整えている俺を、
少し離して覗き込もうとした。
だけど俺はもうたまんなくなって、
ぎゅってますます密着して、こう言ったんだ。
「俺、帰りたくない。」って。



25  竹本  2008/02/26(Tue) 02:15



(今思い出しても顔から火が出るぜこれマジで、ありえねー俺!)
でも翔くんは、俺の髪をすいて、ぎゅっと抱きしめてくれて、
耳にそれはそれはやさしくキスをしてくれたんだ。
「うん。」って、とけそうなくらい小さな声で、言ってくれた。
それに安心して、今度は力に抵抗せずに少し体を離して、
翔くんの表情を見る。
翔くんは俺のまぶたにそっと寄って、ちゅってキスをして、
あの眉の下がった笑顔で、笑った。



26  竹本  2008/02/26(Tue) 02:15


それから、バーの会計を済ませて、そのままロビーでさっと手配してくれた翔くんは、
俺の手をしっかり握って、部屋まで連れて行ってくれた。
部屋に入るなりキスをされて、帽子とダウンを脱がされて、
ばっと抱きかかえられてベッドにのって、
後はそのまま、だ。
部屋に入った翔くんは少し性急ではあったけど、
行為はとても丁寧で、愛に満ちていて、ひたすらやさしかった。
俺はただ翔くんに任せて、手を握ってもらったり、
キスをせがんでしてもらったり。
そしてただかみ締めていた。ああ、翔くんも同じだったんだ。
俺のこと、好きでいてくれたんだ。
その事を信じきれる、だって今ほら、まさに、俺と翔くん、
恋人同士でしかしないこと、してる。してもらってるんだ、俺。
不安よりも、その嬉しさが大きかった。
もちろん、予想外で痛くてとまどってでも気持ちよくて、大変だったけど。




27  竹本  2008/02/26(Tue) 02:16





二回目は、・・・言いたくねーけど。ゴメンナサイ。
ほんと、申し訳ないと思ってます。
実は、車でやっちゃいました。
もうニノがこわいからがっと説明するとさ。



28  竹本  2008/02/26(Tue) 02:16


結局互いに忙しいけど毎日会えるから、
俺と翔くんは、普通通り、今まで通り、変わらずいれた。
これは俺にとっては予想通りで、
とても嬉しかった出来事だ。
普通にいままで通り、何ら変わらない日常。
でも、もう通じ合ってるっていううきうき感。
早朝集まるようなときのロケバスで、
笑顔で手を握ったりね。言うと気持ち悪いけど、
本当に嬉しかった。そんなささいなことが。




29  竹本  2008/02/26(Tue) 02:16


ですが、自分が未熟なせいで、
少しムラっときた収録がありまして。
翔くんがゲストにやたら好感もたれていた日に、
車で送ってもらえた。
その時に、ちょっと機嫌が悪いっぽく振舞っていた俺を気遣って、
翔くんがドライブにつれてってくれた。そのまま、
夜の街を。
ぽつりと話しながら、夜の夜景を見ながら、助手席にいるうちに、
なんだか気分はすっかり晴れて、
車の運転止まったらとにかくキスしてほしいと思っていた。
車が止まったのは、翔くんが教えてもらったという穴場で、
人どころか車もひとつもない、高台だった。
星が綺麗だよって言って、外に出てみない?と言った翔くんの
手をさっと握って、ちゅっとキスしたんだ。俺から。
翔くんは、ちょっとびっくりした顔してたから、
俺は何か言わなきゃかなと思って、「翔くん」と呼んだ、
でもその呼びかけの「しょうく、」ってところで、
翔くんが自分を引き寄せて、またキスをしてくれたんだ。





30  竹本  2008/02/26(Tue) 02:16


ほんと、その時も絶対俺が悪かった。
翔くんのキスも深かったけど、穏やかで、
手もずっと肩とか頬とかにしかいかなかったんだ。
でも俺がなんだか夢中になっちゃって、
その物足りないところにしかいかない腕を取って、手を絡めて、
ぎゅっと握ったんだ。
指と指を絡めて、強弱を込めてふれた。
すると翔くんは一瞬でキスを一旦止めて、
離れて覗き込めるぐらいになった俺の顔を見た。
俺はきっとものすごい情けない顔をしていたと思う。
眉がハの字になってたよきっと。眼も、うるんでいたと思う。
なんだか必死だったんだ。あまりにも、翔くんにふれている場所が、
気持ちよくって嬉しかったから。



31  竹本  2008/02/26(Tue) 02:17



「翔くん、」
なっさけない声だった。今でも笑える。きっと、震えてた。
自分がこんな声出すんだ、って声だった。
抱いてくれよって言ってる声だった。
「あ、」
ごめん、となぜか謝ろうとした言葉を、飲み込まれるキス。
翔くんはぐいと腰に手を回して、俺の体を持ち上げようとした。
それが、嬉しくて嬉しくて仕方が無かった。
翔くんが、抱いてくれるって分かったから。
スイッチは確実に俺が入れたんだ。



32  竹本  2008/02/26(Tue) 02:17



「・・・おじさんたら、大胆デスネ。」
おあ、ちょっと呆れてる。そりゃそうか。
でも俺ってば、こういう恋愛しか、してこなかったんだ。
好きならキスしたいし、そうしたらしたくなっちゃうし、
場所が可能であれば、ね。しちゃってもいいじゃん。
「やっぱり、原因は分かんねーよ」
ニノのおいしい水割りを飲みながらこぼす。
今話してみても、何にも思い浮かばない。
翔くんてもしかして、俺が誘わなきゃ出来ないのかな。
未だに遠慮してるんだろうか。
遠慮って何だよ・・・と、ぶつくさいってると、
ニノが少し考え込んでいる。
「どした?」
呆れただろうな。ほんとだよな。
最年長組みで、何で即エッチで車内エッチ済みなのに、
三回目が無いとかで悩んでるんだろうな。
いやでも、さすがに無いよな・・・




33  竹本  2008/02/26(Tue) 02:17


「ねぇおじさん」
ニノが枕にしていたマフラーを、ふわふわいじりながらぼんやりという。
「おじさんはさ、たとえば。考えられる理由とかって、予想つかないの?」
「つかないから、こんな恥ずかしい話してんじゃねーか!」
一呼吸もなくそういうと、ニノはじっと眼を見てきた。
「翔くんはおじさんとエッチしたいんだよね」
・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・



34  竹本  2008/02/26(Tue) 02:17


「・・・・?当たり前じゃねぇか。」
しばらく考えて、そう答える。
いやだって。翔くん、俺のこと好きだし。
普通に好きな人とは、エッチってしたくなるだろ?
ニノはまたもやうーんと声に出して唸り、テーブルに頬をくっつけた。
「・・・・・・?何だよ」
「うん、」
ニノの沈黙が、いやに言葉を重くするみたいだ。だからあまり、
間を置いて言葉を選ばないでほしい。
また、情けない顔になっていたのだろう。
ニノはふっと笑って、俺の眉間にちょんと指をのせた。





35  竹本  2008/02/26(Tue) 02:18



「やっぱりさ、俺にもわかんないや。
リーダーは、翔ちゃんに愛されてるって気持ちが強いのに、
ならどうして抱いてくれないのって、思ってるんでしょう?
それはもう、本人に聞いてみるしか、ないよね。
俺から言えるのは、それだけかもしれないよ」
ニノは、時々、本当かそれ?というような言い回しでもって、
話を終わらせてしまう時がある。
今、俺、思ってる。本当に、そう思ってるのかな?ニノは。
そのままじっとしていると、今度はくちびるをちょんとされた。
「今度は唇がとがってますよ、」
そういって、マフラーをぐるっと首に巻く。
「そろそろ行こうか。おじさん、翔くんに電話してみなよ。
もうそろそろ、ZEROの会議も、終わってるんじゃないの」




36  竹本  2008/02/26(Tue) 02:18



(もしかして、俺が気付いたら、俺が傷つくような理由なのかもしれない)
シンとした車内は、その考えをどんどん大きくしていった。
コツ、コツ、と靴の音。ガチャリとドアが開いて、翔くんが助手席に戻ってくる。
「ごめん、智くん。じゃ、行こうか」
翔くんは、スーツ姿だった。ネクタイは薄い水色。
セットも数時間前に整えたばかりで、帽子も何もしてないから、
一段とカッコよかった。
車がするりと、テレビ局を出る。
「どこか寄るところとかある?」
翔くんは必ず聞いてくれることを、今日もやさしく言ってくれた。
「ううん。」
自分の手をじっと見ながら答える。





37  竹本  2008/02/26(Tue) 02:19


(ニノが言いたかったことは、きっと、
たとえば翔くんはやっぱり男の体ダメだったとか、
別に俺とは違ってエッチはあんまり積極的じゃないとか、
そういうことだったんだ。)
俺はずっと、ただ、翔くんも本当は俺とエッチはしたいけど、
何が踏み切れないことがあって、
それを俺が飛び越えてあげれば、
難なくエッチ出来ると思っていた。
この大雑把な俺がカレンダーで日にちを数えてしまうぐらいに空いた、
この3回目のエッチをすませれば、
そこからは普通に、難なく、
回数を重ねていけると思っていたんだ。



38  竹本  2008/02/26(Tue) 02:19


(でももしも、翔くんがやっぱり俺の体は嫌だったり、
別にエッチはしなくてもいいって考えだったりしたら、
俺のただの空回りで、この先エッチは出来ないかもしれないってこと?)
運転する翔くんは、穏やかな表情で、特に何も話しかけてはこない。
俺が何か考え事をしてたり、疲れていて話したくないときは、
すぐに察知してくれて、
こんな風に、のんびりきままにさせてくれるんだ。
ピアスが光っていてかっこいい。
横顔と、流れるネオンを見ていた。



39  竹本  2008/02/26(Tue) 02:19


もしかして、俺とのエッチは、
気持ちよくなかったのかな。
でも、翔くんもすごく嬉しそうだったし、幸せそうだったよ。
ニノに質問された時、「分かんない」と答えたのは、
それがあるからだった。
俺から全部仕掛けたけど、がっついたのは俺だけど、
翔くんもちゃんと俺を欲しがってくれた。
腰を引き寄せる力は強くて、わけも無く涙が溢れる気すらしたし、
俺が閉じてた眼を必死に開ければ、すごくやさしい顔で俺のこと見てるんだ。
(見せてやりたい。あの表情を見れば、エッチが嫌なのかななんて、
思う隙まもなくなっちまうよ、ほんとに)
でも、それならどうしてだろう。
わけが分からない。


40  竹本  2008/02/26(Tue) 02:19



「翔くん、」
呼ぶと、翔くんは笑った。
「何?」
甘い声だ。俺の好きな声。どうしたの、って、全身全霊で、俺に向いてくれてる声だ。
そのまままた黙ってしまう俺をちらりと見て、翔くんはくしゃっとした笑顔を見せた。
「今日、どうしたの智くん。ニノと呑んだの、結構長い時間だったの?」
また言葉につまってしまう。翔くんが聞いた質問にさえ、答えられない。
頭にぐるぐる回るキーワードが、思考を停止させてしまう。
翔くんはさっと左右を確認すると、車を道の側にとめてくれた。
ハザードをかちかちして、でも回りに車が思いのほか少ないのを見てか、
エンジンをかちりと落としてもくれた。
やさしいな、翔くんは。
いきなり夜中に電話かけてきて、仕事終わりで疲れてるのに
車で送ってくれて、
挙句、勝手に機嫌損ねてる俺にも、こんなにやさしいんだ。




41  竹本  2008/02/26(Tue) 02:20


「智くん、」
ガチャリ、とシートベルトを外して、翔くんに覆いかぶさってキスした。
大好きなコロンの匂い。しがみつくふれた感触は、スーツのそれ。
ネクタイがあったから、手探りでしがみついて、するすると首筋をなぞる。
挟み込むように唇をあわせて、少し、舌で舐めた。
とたん、胸を押し返される。
(・・・・・・翔くん、困ってるよ)
表情が、少し曇っていた。どうたんだろう、って顔をしている。
気持ちがゆるんでしまって、眼からぼろっと涙がこぼれたのが分かった。
翔くんは、あ、という口の形のままで、情けない顔になってしまった。
(こんな顔させたいんじゃないのにな、
もう一度、俺にめろめろだってあの顔、してほしいよ)
「どうしたの、」
心配だっていう気持ちを100%のせた声の色で、翔くんが聞いてくる。
俺は翔くんの眼から眼をそらせなくなって、
情けない声で、聞いてしまった。
今日はやめて、明日、ニノにもう一度、相談すればよかった。
今更遅い考えをめぐらせて、ふうと息を吸い込む。
ああ、きっと出す一声は、鼻声決定。




42  竹本  2008/02/26(Tue) 02:20


「翔くん、もう俺のこと抱きたくない?」
ものすごい、震えた、涙声だった。情けない。
しかも、声に出すと本当にそうじゃないかと思えてくる。
いや、違う。翔くんは俺とエッチしてるとき、
あんなにも満ち足りた顔をしてたじゃんか。
幸せそうだったよ。にこにこして、嬉しそうで、
俺の頬を何度も撫でて、髪の毛までドライヤーしてくれたじゃん。
そう考えていたのに、声に出したそれが、真実のように思えてくる。
(もしかしたら本当に、もう抱きたくはないのかもしれない)





43  竹本  2008/02/26(Tue) 02:20



翔くんは、びっくりした顔をしばらくして、
そして、眉をさげた、あの笑顔をした。
くしゃって笑って、そして俺の垂れ下がっていた腕をとって、
手をとって、指を絡めて、握ってくれる。
もう片方の手で、俺の涙を指先ですくってくれた。
「智くん、ごめんね。」
でも、笑顔なんだ、翔くん。すごく、俺のこと好きだって、
表情で語りかけてくれてるんだよ。
何年もずっと見てきたんだ。間違えるはずなんてないよ。





44  竹本  2008/02/26(Tue) 02:20


「不安にさせてたんだよね?違うんだよ。俺、智くんのこと抱きたいよ」
「いつだって抱きたいなって思ってるよ」
「でも智くん、1度目も2度目も、翌日はツラかったでしょう?」
「場所とか、スケジュールとか、そういうの気にしてたの」
「それに・・・前、俺が我慢できなくって、ここでしちゃったじゃない?」
「あの時、体、すっごく無理させちゃったよね」
「しかも俺、智くんがしてくれても、結局最後は、俺が・・・その・・・」
「俺が、智くんに、してるじゃない?あの後さ、もしかしたら・・・」
「その、言いにくいけど。智くんも、逆がいいっておもってたのかなって」
「だけど俺がつい夢中になっちゃって、気付いてあげられなかったかなって」
「そういうので、ちょっと・・・考えちゃってただけなんだ」




45  竹本  2008/02/26(Tue) 02:20


翔くんが俺の肩を引き寄せて、胸にぎゅっと抱えてくれた。
俺は翔くんの、きっと高いであろう高級スーツに頬を寄せて、
上から降ってくる甘い声を聞いていた。
その間も、握ってくれる手が、ゆっくりゆっくり強弱をつけて、
ゆるく力を加えてくれる。
泣いてしまって熱く重くなった瞼を半分閉じて、ゆったりした気持ちで聞いた。
翔くん。翔くん。ありがとう。俺、やっぱり大雑把だから、
翔くんのその気持ちは、想像出来なかったや。
ありがとう、翔くん。髪をすいてくれる手も、途方も無いほどに、やさしい。
それに翔くんも、我慢できなくなってたんだ。
つい、夢中になってたんだ。
俺もだよ、翔くん。
(伝えたいな、そういうの、全部)





46  竹本  2008/02/26(Tue) 02:21



それから翔くんは、俺の顔を引き寄せて、
涙の後を追うように、軽いキスをたくさんくれた。
ぼんやりしている俺に、ホテル行こうか、と笑ってもくれた。
嬉しくて、伸びをするように、唇にキスを仕掛けた。
ゆっくり舌をあわせて、じんとくる熱を温める。
首裏に添えられた手が、嬉しい。
名残惜しく離れた唇と、翔くんをぼんやりとした眼で見たら、
また、ゆっくり、笑ってくれるんだ。
こんな時に笑顔をくれる翔くんがすごく好きだ。



47  竹本  2008/02/26(Tue) 02:21


余韻を残したままぼんやりする俺を、笑って助手席に納めて、
一度翔くんが、シートベルトを外した。
なんだろうと思ってると、俺のところへかがんでくれて、
俺が外した俺のシートベルトを、翔くんがかちゃりとやってくれた。
運転席に体を戻す前に、またキス。にっこり微笑まれる。
(あーもう・・・なんかもう、好きにして、って、こんな気持ちかも)
最後にちょっと照れた表情まで浮かべると、翔くんもシートベルトをした。
エンジンがかかる。
時計の時刻をこっそり見た。0時前。
(俺らこれから、一緒にいれるんだ。明日の朝まで)

ゆっくりと車が動き出す。街は、真っ暗で、寒くて、
外灯が綺麗だった。


48  竹本  2008/02/26(Tue) 02:21



「・・・・・・ものすごいノロケだよね。俺ってすごい」
ニノは表情を変えずにばさりと言った。居心地の悪い俺は、
口をへの字にして帽子の上から頭をぼりぼりかく。
「だ、だから言ったじゃんか。きもちわりぃぞって」
「相談事の解決話を聞かないってのも、気持ち悪いもんですからね」
綺麗な色のオレンジジュースを飲み干して、ニノが立ち上がった。
「ま、これからも、仲良くやってくださいよ」
なんとひねくれた言い方だろうか。でも、その腰に手を回して、
ぎゅって軽く抱きしめてやると、やめろぉと笑顔になった。
「翔ちゃんに言ってやる!」
その無邪気な笑顔に、無言で笑顔をつくると、ニノは頭をぽんぽんと撫でてきた。
「よかったね、おじさん。」
今日はこれから5人で仕事だ。その仕事が終わったら、
今日も車で、送ってくれる予定なんだ。


回数を数えてしまうのは、もうここで、終わり。







49  竹本  2008/02/26(Tue) 02:24




・・・お疲れ様でした!!!
なんだかもう鉄板すぎる内容ですいません。
どこかとかぶっていたらどうしよう。
ですが、やまっこはこんなぐだぐだで
「勝手にやってろよもう、このバカップル!」ぐらいのゆるゆる感が
好きです。
あと、翔くんの、智さんに向ける
笑顔が、すごく好きです。
そんな妄想から生まれた短い話ですが、
読んでくださってありがとうございました!
一気に書いて一気に終えてしまってすいません。
楽しかったです。


智と翔ちゃん、大好き!いつまでも、嵐ののんびり夫婦でいてください。




50  名無しさん  2008/02/26(Tue) 02:26

面白かったです~!
しょうくんのさとしくんに見せる視線ほんといいですよね♪
やまっこだいすきです笑


51  名無しさん  2008/02/26(Tue) 09:39

わーー
わたしこういうテイストの翔智だいすきです!!
わたしも読んでて楽しかったです!


52  名無しさん  2008/02/26(Tue) 11:11

二人があまりにもかわいくて、切なくて、あったかくて
きゅんとしました…
素敵なお話、ありがとうございました。


53  名無しさん  2008/02/26(Tue) 14:20

あげ


54  名無しさん  2008/02/26(Tue) 16:39

>>1-10>>11-20>>21-30>>31-40>>41-50


55  名無しさん  2008/02/26(Tue) 21:41

あげあげあげ!!!


56  名無しさん  2008/02/26(Tue) 21:53

すごく素敵でした!!
あげますvV


57  名無しさん  2008/02/26(Tue) 22:37

面白かったです♪


58  竹本  2008/02/27(Wed) 23:52


コメントくださった、あげてくださった皆さん、

<50さん
<51さん
<52さん
<53さん
<54さん
<55さん
<56さん
<57さん


本当にありがとうございます!
一気に更新しお話する機会を挟めず、申し訳ないです。
ありがとうございました。

個展会見の2人の笑顔がすごく好きです。
翔くんも、自分の事のようにすっごく笑顔で、
智くんはちょーキラキラしてるし、最高でした。
至近距離でも、笑顔で笑いあえる、自然体な山っこが大好きだ!



そんなわけで今回は、その題名にもある「3回目」を
ちょっとお話にしてみます。
イコール、3回目のエッチの話ですが、
ゆるーくぬるくが好きですのて、期待値ゼロで、おまけとしてどうぞ。
微妙にぐだぐだですが(苦笑)




59  竹本  2008/02/27(Wed) 23:53




とん、という、厚みのある音がして、ドアが閉まると、
翔くんは俺の帽子をそっと外して、前髪に顔をうめた。
あまり差はないけれど、翔くんのほうが少し背が高いので、
見上げて、やさしい眼を見つめる。
「智くん、眼、潤んだままだね」
泣いてしまった瞼は重くて、少しぼんやりしている。
こぼれてない涙にふれるように、目じりに指先が置かれた。
何も言わず、ただじっと見つめていた。




60  竹本  2008/02/27(Wed) 23:53


(翔くんの眼かわいい・・・)
もう何度も何度も繰り返した感想を思い浮かべて目を閉じた。
暖かな唇は、ただちゅっと軽くふれて、
体温を与え合うように頬に手のひらが置かれる。
所在無い両手をそっと翔くんの腰に回した。
硬いベルトの感触がする。


61  竹本  2008/02/27(Wed) 23:54


スイッチって何処にあるんだろう?
俺が翔くんに、そういう意味で行為を抱いたその分岐点は?
うわべだけそういう事を考えながら、
自分の中でかちっとONになった衝動のまま、
少し性急に手探りでベルトを外そうとガチャガチャ鳴らした。
だけどそれは、翔くんが俺の腰に手を当ててしっかり引き寄せてくれたので、
体が近くなって出来なくなった。
体勢が少しぐらついても、そのまま体重を受け止めてくれて、
舌がすっと入り込んでくる。
2人の温度が上がった瞬間。ここまできたら、あとはもう、そのまま、だ。



62  竹本  2008/02/27(Wed) 23:54



キスが長くてうれしくなる。ただ単純に気持ちがいい。
温かくて、やわらかな舌の、ゆっくりざらり、とした質感。
(あー、きもち・・・)耳の後ろにある翔くんの指が、時々髪をすいた。
必死にキスを受け止めて、自分もこたえていたけど、
じゅ、と吸われて思わず膝が抜けた。
あ、やばい俺、もうめろめろじゃんか。
上手く力が入らない体を、翔くんがぐっと支えてくれて、
なんとか立っている状態。
「智くん、」
少し離れたままの距離での、翔くんの声。甘い、とけそう。
気持ちがいい。
またふれてほしくて、上がらない手を必死に首に回して、
両方でぐっと引き寄せた。
「ね、さとしく、」
その呼びかけを飲み込むようにキスをする。翔くんは俺が引き寄せたから、
少し前かがみのようになってしまって、
俺の膝はとうとうカーペットにすとんと落ちた。




63  竹本  2008/02/27(Wed) 23:54



「ベッドいこうか・・・歩ける?」
(もう歩けない、)
何もいらない、今はベッドもいらない。
その声もすごく聴いていたいけど、
それよりももっともっとキスして欲しくて、
もっとぐっと引き寄せて、翔くんの体も下げようと体重をかけた。
「ん・・・ん、」
(あ、その声もすごく好きだ)
俺から仕掛けるキスに、翔くんが少し声を漏らした。
腰に回った手に、ぐっと力が入る。
「・・・ね、ベッドいこう」
少しだけ引いて、その隙間から翔くんが、なだめるように言う。
すごく甘くて、やさしい声だった。いいよ、そんなの、
俺、今すぐ翔くんが欲しい。
「いらない、」
眼をつぶったまま答えた。え、って、小さく驚く声がする。
恥ずかしいよな。俺ってほんと、がっつきすぎ。
でもこの熱を冷まさずに全部あげたい、翔くんに。
だから翔くんもそのままで、ここでいいよ。
「ここでいい、」
そのまま小さく言って、閉じていた眼を開けた。





64  竹本  2008/02/27(Wed) 23:55


「ん、っ・・・」
今の顔、もう一度見たい。でも覆いかぶさってきた重さとキスに、
眼を開けていられなくなった。
なんて顔をするんだろう。少しゆがんだ、眉間のしわも、
ばかだなぁって意味を含めた、少し笑ってた口元も、
自分の涙腺のせいで少しぼやけていたけど、すごくかわいかった。
頭の後ろに広げられた翔くんの手があって、
支えながら押し倒された床にも、衝撃は少なかったし、
やわらかなベージュのカーペットは、
さすが翔くんがセレクトしてくれたホテルだけあって、
清潔で真っ直ぐ平らにしかれている。
一度ゆっくり舌を撫でると、翔くんの唇は頬にうつって、
目元にキス、
そのまま右の耳にくると、何度も何度もキスをされた。
熱くなった息と、服を脱がせてくる手が少しだけ荒々しくて、
たまらない気持ちになった。
首をひねって耳から遠ざけても、鼻先から擦り寄って追いかけてくる。
「・・・手、あげて」
「あ、」
(あーもう、好きにしてほしいって、こういう気持ちだきっと、)
ただ耳に直接響く声で、腰からとけてしまう。
眼と閉じたまま声が漏れて、ろくに動けない俺の手を、
翔くんの熱い手のひらが誘導した。





65  竹本  2008/02/27(Wed) 23:55


翔くんは厚いダウンジャケットを脱がせただけで、
薄いTシャツの裾を捲し上げて、そこに顔を寄せている。
暖房は初めから入ってるみたいで寒くはないけど、
きっとベッドじゃないことを気にしているんだろう。
(こんなところまでほんとちゃんとしてる・・・)
「翔くん、」
なっさけない声で呼んだら、ばさり、と大げさな音がして、
ちらりとあけた視界の先に、固まりのスーツのジャケット。
「智くん、寒い?」
顔を近づけて聞いてくる翔くんの、首に腕を絡めて引き寄せた。
そのまま腕に収まってる翔くん。
その翔くんの手が、やっと自分のものにふれる。
ここでもすべて取り払わず、ズボンも下着も膝まで下ろした状態で、
翔くんはだんだん下に下がっていった。



66  竹本  2008/02/27(Wed) 23:55


最初っから、俺は翔くんには、
抱かれるのだろうなと思っていた。
漠然と、そりゃそういう意味で好きなのだから、
両思いと気付く前から想像したりしていたけれど、
さわりたいという気持ちもあり、しかしさわってもらいたい気持ちもあり。
そんな想像の中で、翔くんはあのいつもの笑顔で、
俺にキスして、ゆっくりリードしてくれていたのだ。
多分自分が、そういう仕組みとか男同士だとどこを使うとか、
そういうのに一切抵抗も危機感も未知の世界だという気持ちもなく、
興味という一定の熱量で受け取れたからかなぁと思う。



67  竹本  2008/02/27(Wed) 23:56


(ああでもこの瞬間はなんか慣れないわ・・・)
翔くんの顔はもう俺のそこにまでいっていて、
右手ではチューブから出したものをゆっくり体温まで暖め、
左手ではゆっくりゆるやかな刺激を、俺に与えてくれている。
この音がまた、なんとも、ねぇ。すごいんだこれが。
俺は翔くんの表情を覗き込む余裕も全然無く、
その音にうわーうわーと思いながら、
ゆるやかな刺激を受けている。
翔くんが体を起こして、俺の顔を覗き込んできた。
俺は少し収まった刺激にほっとして、
あがってきてくれた翔くんの顔を見る。
ネクタイを外してはいるけど、シャツは第二ボタンまで外しただけの、
少し髪が乱れた翔くんがいた。
俺が掴んだりしちゃうから、いつもボロボロだよね。ごめんね。
でもこの笑顔は反則なんだよな。にこって、笑って、頬に頬をよせて。




68  竹本  2008/02/27(Wed) 23:58


「いれるよ、」
ゆっくり、翔くんがほぐしていく。
その時絶対翔くんは、ていうかまだ3回目だけど、
この3回とも絶対に、じっと俺の表情を観察してるんだ。
俺は最初は眼をしっかり開けて、中で動いている指の感覚に
表情を動かさないように集中しているんだけど、
もうそんなのすぐに出来なくなって、
眼をぎゅっと瞑ったり、
手を翔くんの肩でがちがちに固めたり、
ヘンなところにかすったら、あ、とか声まで出してしまう。
別に我慢することじゃないからとも思うけど、
その時の翔くんの表情がまた、真剣で、
でもだんだん眼がとろけてきて、
もー可愛くて仕方のない表情になっちゃうのです。
もう、「夢中です」って表情をしてくれてる。
俺が眉間にしわをよせると、痛い?って小声で耳につぶやいたり、
擦れた気持ちよさにぎくって眼を開けたら、
微笑んで唇にちゅって軽くキス。
もう、とにかく、
俺の一瞬ぜんぶに夢中なの。






69  竹本  2008/02/27(Wed) 23:58



だから俺もそんな翔くんの表情にも夢中になるし、嬉しいし、
しかし指は絶えず刺激してくるしで、
声を抑えるっていうものへの集中力は、ちって無くなってしまうのです。
「智くん、寒くない?」
「あっ・・・う、ん、・・・あ、あ、」
翔くんの何度目かの問いかけにも、頷くぐらいしか出来ない。
でも翔くんは嬉しそうに笑って、またキスをしてくれた。
「ふ、」
キスの最中に指を抜かれて、漏れた吐息も飲み込まれる。




70  竹本  2008/02/27(Wed) 23:58




俺はエッチのときは大概、眼をつぶってる事が多いけど、
この瞬間だけは、必死に必死に、閉じてしまいそうな眼を細めてでも、
翔くんの表情を盗み見している。
自分の中に入ってくるそれの熱さや、固さや、まだまだ感じる違和感や、
そういうのでごっちゃになって一杯一杯になるんだけど、
その時の翔くんの表情は、とてもとても色っぽいんだ。
俺の顔の横に支える腕を置いて、
ゆっくり、慎重に、中にはいってくる。
眼をつぶって、眉間にせつないしわがよって、
息をそっと吐いているんだ、翔くん。
俺も結構ひどいぐちゃぐちゃな表情していると思うんだけど、
こんな表情、きっと誰にでもは見せないだろうっていう、
すごくきもちいいよって表情で、俺の中に入ってくる。
その額にちらばった光る汗まで、
全部俺のものにしたい。
湿った細い髪の毛一本から、
きっと引き締まっているだろう小さいお尻のラインも、
全部俺のだ。俺のもんだよ。





71  竹本  2008/02/27(Wed) 23:59


「はっ・・・」
吐息を感じて、翔くん、と小さく名前を呼ぶと、
翔くんはかがんで耳元によって、うん、と返事をしてくれた。
「智くん、キツくない?寒い?大丈夫?」
ちゅっと軽くキスをしてくれながら、翔くんが聞いてくる。
うん、うん、と、頷くしか出来なかったけど、
合わせた眼をそらさずそうすると、にっこり笑って、前髪をすいてくれた。
ゆっくり、翔くんが動いて。
俺はその感覚に取り込まれて、
また必死に翔くんの肩にしがみついた。
なんなんだろう、この感覚。
いきてきた中で体験したことのない、3回目のその感覚を、
必死に受け止めるだけで、小さい声ばかりがあがる。
翔くんの顔が俺の右の耳そばにすぐあるから、
翔くんの漏らす息が荒くて、嬉しくなって、
首にすりつくように体を密着させた。
「智くん、」
わけも無く呼ばれる名前が、嬉しい。
「あ、うん、・・・っ、しょう、くん、」
途切れ途切れでもそう呼び返すと、
顔を覗き込まれて、唇にキスがふった。






72  竹本  2008/02/27(Wed) 23:59



翌朝起きると、翔くんは側にいなくて、
部屋は明るい光で満たされていた。
側にはジャケットや鞄もあったけど、
翔くんがいる気配は部屋中にあったので、
時刻をわざわざベッドから離れてまで確認することもないかぁ、と
また体の向きを変えただけで寝ようとした。
かたん、と音がなって、足音がする。
その音は近づいてきて、そのまま俺を覗き込んだ。



73  竹本  2008/02/27(Wed) 23:59


「あ、起きた?」
おはよう、と。
むくんでるけど、テレビにはまだどどんと出せない顔だけど、
翔くんが笑顔で問いかける。
そのベッドサイドで揺れる大好きな手をとって、
ぎゅっと握ると、くしゃっとした笑顔でベッドに腰掛けた。
「今日は午後から、ゆっくりだね」
頬を撫でる手に、また眠気が襲ってくる。
ぐいっと引き寄せると、あははという笑い声と一緒に、
ぎゅっと抱きしめてくれた。
「もう少し眠れるよ、」
やさしい声。
ちゅっと左耳に、ひとつキスをもらった。
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