小説の再編集とか、資料とか、必要な諸々を置いておくブログ
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ノックをして入った理事長室、机の向こうから振り向いた相手に硬直した。
「二、宮?」
「相葉先生……大丈夫なんですか、起きて」
「あ、ああ」
くるりと椅子を回して向き直る二宮に戸惑って部屋を見回す。
「理事長は……」
「ああ」
くす、と二宮が笑った。
「今は僕がここの理事長です」
「え?」
「ちょっといろいろむかついたんで、父親には引退してもらうことにしました………あんな懇親会の手配するようなやつですから」
あっさり言い放って、ちら、と相葉の手の封筒を見た。
「それは?」
「……あ、ああ」
二宮が理事長になっているということは確かに驚きだが、別にやれないとは思わない。見えているほど子供ではないのは相葉自身がよく知っている、そう思ってずきんとした下半身に唇を噛む。
「これは……辞表、だ」
「辞表?辞めるんですか」
「……体調も……整わないし……満足に授業もできない……俺がここにいる理由は……何もない……」
おまえだってもう俺は要らないんだからな、そう言いかけたのをかろうじて呑み込んだ。
差し出した封筒を受け取った二宮がじっと表書きを見る。やがて、それをいきなり真二つに裂いた。
「何を!」
「まだわかっていないようですね」
机の上の何かを押すと、背後のドアでかちりと鍵のかかる音がした。ぎょっとして振り向いた隙に、するりと椅子を抜け出した二宮にソファの上へ突き飛ばされる。
「っあ!」
「体のこともあるから控えていたけど、こんなこと考えてるようじゃ駄目ですね。さっさと理解しておいてもらわないと」
「え、えっ、あっ」
押し倒されたままネクタイを引き抜かれた。腕を後ろに回されて肘近くで拘束され、仰け反るような形で縛られる。
「なっ、なにっ」
「今さら。あんなことがあった後だし、倒れてばっかりだし、側に居ても怯えてるからずっと我慢してたけど、正直、僕も限界です」
「あ、や、ま、まって」
ベルトを外されチャックを降ろされ、一気に下着ごと下半身を剥かれた。そのままぐい、と背後を晒すように夢のままに両足を掬い上げられ、ひたりと二宮が体を寄せてきて瞬間、吐き気が込み上げて喉を鳴らす。
「う、ぐ………っ」
「………やっぱり…」
ひょい、と二宮が唐突に体を離した。視界を涙で滲ませて見上げる相葉に険しい顔で覗き込む。
「相葉先生、男が近付くの駄目になっているでしょう」
「……え……?」
「条件反射みたいに吐きそうになるんでしょ」
「あ……」
「それを我慢して知らないふりしてると、倒れちゃう……そうですよね?」
「………」
「特に……こんなの…」
「ひ……っ」
まだそれほど勢いのない二宮のものをひたりと股間に当てられて視界が眩んだ。温かな柔らかな感触にぞくぞくして体が震える。冷や汗が滲んで、その自分の汗の匂いにさえ追い詰められた。
「や……だ……や……っ」
「もう少し様子見てようかと思ってたんですが、全然楽になる気配ないし。だから、荒療治になりますが」
ひょいと二宮が何かを取り出した。薄いピンクの細長いもの。コードがついていて、その先にスイッチのようなものがついている。それが何か思いつく前に、ぺろ、といきなり後ろを舐められた。
「あ!」
前も触られずにそんなことをされたのは初めてで、今までのどんな感触とも重ならないそれに戸惑っている間に、ぺろぺろと繰り返し舐め回される。
「あ、あ…っ、あ……っあ!」
ちゅぷ、と微かな音がして舌先が中心を突いた。ずくんと走った波が股間に伝わりむくりと萎えていたものが身を起こす。
「ん……ん」
「う、んっ、ん、あっ」
吐息を吹き掛けられながら舌先で後ろを弄ばれて、相葉は声を上げて悶えた。見る間に上がってきた身体の熱が、喘ぐように呼吸を繰り返す喉から零れる声が、自分がそれを望んでねだっているとわかって、なお煽られる。無意識に腰を揺らしていたのを抱えられて、一瞬我に返った瞬間、つるりと冷たいものが滑り込んできて悲鳴を上げた。
「ひ、やっ」
「痛くなかったでしょう?軟らかめで細めの素材を選びましたから。ああ、全部入りましたね。もっといけるかな?」
「あっ、あっ、ああっ」
ゆっくりと二宮の指が入ったものを深くに押し込んでくる。池神のものとは質量も硬度も大きさも温度も全く違うそれに、相葉が混乱していると、小さな音が響いた。
「ひっ!!」
ぶぅ、ん、と微かな振動音とともに後ろに呑み込んだものが小刻みに揺れ始める。
「や…あ……あっ」
感触は細い棒なのに、それがまるで内側をまぜるように動いて相葉は仰け反った。広げさせられた足の間でくたりとしていたものがみるみる起き上がってくる。それをじっと見つめている二宮が、
「痛くないでしょう? 気持ちいい?」
「あ……あ……あ……っ」
「こうするともっと深くまでいく?」
「あああっ」
ぐいと指で押し込まれて一気に股間が跳ね起きた。弱いところのわずか端に引っ掛かっていて、立続けに震えが走るのにイくには全然足りない。
「や……たす……たすけ……っ」
「ああ、ようやく泣いてきましたね、これ」
「ひうっ!」
引き起こされてソファに座らされ、両足を抱え上げられ含まれた。とは言え、舐めるのではなくゆったりと含まれたまま、背後の振動で揺れる相葉の動きで舌が触れるだけだから、見る間に切なく追い上げられて喘ぎながら懇願する。
「に……二宮……っ……も……もっと……」
「何…?」
ふい、と二宮が顔を上げた。濡れた唇を舐めながら薄く笑う顔を相葉がうっとり見返してしまうと、
「そんな顔をすると」
「は、あうっ!」
スイッチの切り替わる音がした。激しく揺れだし内側を叩きつけるような動きに身体が勝手に跳ねる。しかも上下がずれたように動き始めて、相葉は喘ぎながら首を振った。
「あ……あう……あっ……あっ」
「ほら、相葉先生?」
汗で濡れてきたシャツの匂いももうわからない。ただただ身体の中で暴走するものに感覚の全てを持っていかれて朦朧とする。その相葉を引き起こして四つ這いにさせると、二宮は相葉の鼻先に自分の勃ちあがったものを突き出した。
「舐めて」
「は…あ、あ…」
「でないとずっとイかせてあげませんよ?」
「あ…あう………っ」
またスイッチが戻されて柔らかな微かな振動に戻る。濡れ始めた中で滑るのか、零れだしそうなそれを無意識に締めつけてしまい、身体がびくびくと震えた。
「口を開いて」
「あ、あ……んっ」
「舌を使って」
「ん……んんっ」
銜え込む二宮のものに絡む汗の匂い、それが不思議にえづかなかった。奇妙な安心で舌を絡めて腰を揺らせる。鈍い振動はどんどん麻痺していく 下半身に遠くて緩い愛撫になり、じれったくて必死に舌を動かした。
何度か走り上がった快感、けれど、そのどれもが押し上げてくれなくて、相葉は二宮を口から外して掠れた声で訴えた。
「も…う……入れて……」
「相葉先生……」
さすがに呆然とした顔で二宮が見下ろしてくる。霞む視界でもう一度繰り返す。
「おまえのを………入れて……くれ………こんなのは………いやだ…」
「………わかりました」
すう、と凄んだ笑みが二宮の口に広がった。ぞくりとしながら、その冷たい笑みに見愡れる。
「じゃあ……これと…」
「あ、うんっ!」
急に引き抜かれて思わず少し零してしまう。くすりと笑った二宮が背中の腕の拘束も解いてくれた。べたべたに濡れたシャツ一枚で戸惑ってると、ソファに掴まるように言われて、唾を呑み込みながらソファの背に掴まる。
「いきますよ?」
「……っ、う、んっ、んあっあああっ!」
散々濡れて弛んだそこが二宮のものをじわりと呑み込むのを感じた。池神のときのように激痛や不安ばかりではない、少し入って引き抜かれ、またもっと深くまで押し込まれる、その柔らかな手順がもう、意識を吹き飛ばしてしまいそうによくて。
「あっ……あっ……あああっ……」
「凄い声……あげてる……わかる……?」
「は、ああっ、あっ、あ、二宮ぁっっ!」
「う、くぅっ!」
ずん、と強く突かれて大きな波が駆け抜けた。それに攫われるように相葉も弾けながら仰け反った。
「……大丈夫?」
「……」
ソファの上、二宮の腕の中でこっくりと頷いた。汚れた下半身は心得たように二宮がきれいにしてくれたし、半裸姿なのに安堵に気持ちがほぐれて、今にも眠ってしまいそうだ。
もう、いい、そう思った。
もう後のことはどうでもいい。今こうしてこの腕の中で眠れるのなら。
女のこともあるけれど、彼女は彼女で二宮が必要ならば構わないとさえ思った。静かに相葉を抱える二宮の腕はもうひんやりと冷えて、さっきまでの熱は微塵も感じさせない。ここで眠ってしまっても、目が覚めれば、さっきみたいにまた一人で取り残されているのかもしれないが。
胸に耳を当て、とくとく打っている心臓の音に耳を澄ませる。
そうだ、次に捨てられそうなら、思いきり二宮を罵倒してやろう。そうして激怒させて、相葉を嬲り殺させればいい。それぐらいはするだろう、この男なら。
微かに走った震えにうっすらと笑う。
「何を笑ってるんです」
「うん?」
見つめられていたとは思わなくて、ひょいと顔を上げると表情の読めない瞳が見下ろしていた。
「不思議だな」
「え?」
「安心するんだ」
低くつぶやいて目を伏せた。
「ここにいると安心する」
「じゃあ、もう辞めませんね?」
「………」
「申し訳ないですけれど、相葉先生」
「……ん?」
「僕はあなたを手放す気はありませんよ」
二宮の声に苛立つような調子が混ざった気がして、もう一度見上げた。醒めた視線の奥から冷えた怒りが滲み出している。
「どういうつもりで態度を変えたのかわかりませんが」
ああ、そうか、と気がついた。相葉はずっと二宮を拒んできたから、急に二宮に身を任せたばかりか自分でねだって快楽を貪った、その相葉に戸惑っているのだ。
「今のだって……録画してるんです」
「………もう……そんなものはいらない」
「え?」
「………俺をつなぎ止めるなら……」
見上げて唇を差し出した。脳裏を彼女の姿が掠める。あの娘はもう二宮にキスされたのだろうか。
それとももう抱かれて喜びに喘いでいたのだろうか。
今日の遅刻は実はそのせいだったのだろうか。
「抱いて」
「相葉先生……?」
不審そうに見下ろす相手に目を閉じる。ただひたすらに待っていて、ようやく降りてきた唇にほっとする。所詮遊び道具の一つにしか過ぎないんだろう、そう思った瞬間に切なくて辛くて眉をしかめた。
「どう……したの」
「どうも、してない」
「おかしいでしょう、あなたから」
「おかしいのか、俺からじゃ」
「あんなに僕を嫌がってた」
「……」
「初めて会った時からずっと」
「?」
相葉は眉をしかめた。記憶を辿ってようやく該当するものを見つけだす。そうだ、あの時、理事長の机に寄り掛かるようにして、どうみても中学生にしか見えない子供が相葉の履歴を覗き込んでいた。ぱらぱらさも用ありげにめくって、ずいぶんあれこれやってきたんだね、どうして落ち着けなかったの、そう問われた。かっとして、確かに「子供が大人の話に口を出すもんじゃない」と。
「……弱味だった」
「なぜ?」
「……どうしてかな…………何度か襲われかけることがあって」
「っ」
「うまく切り抜け逃げてきたんだけど……今度みたいに薬まで使われたのは初めてだ」
口にすると、気を張っていた部分ががさりと抜け落ちた。
「でも、おまえに執着されるのは」
たぶん、嫌いじゃなかった、そうつぶやいて自嘲すると急に強く激しく抱き締められた。
「ごめん、なさい」
思いもよらぬ呻くような声に目を見開く。
「そんなこと、どのデータにもなかったから」
「………誰がしゃべる…?…データになんか残すはずないだろ」
「そう、ですよね」
熱い息を吐いてなおきつく抱き締めてくる二宮にもう一度目を閉じて力を抜いた。
「でも、僕はただ、初めて会ったときから、ずっとあなたが欲しくて」
掠れた声が訴える。
「ただ、あなたが欲しかっただけ………どんな手を使っても、どんなにあなたを傷めつけても」
ああ、そうか、と気づいた。
冷たくて容赦がなくて、けれど相葉を欲してやまないその激情をずっと感じていたからこそ、自分はあの時二宮の顔に安心したのだ。そして、いつの間にかすっくりと、心の底までこの男に。
「もう、どこへも行かないで」
「………あの、娘はどうする」
ずるいと思ったが計算が動いた。
「ああ………何?何か聞いたの?」
「痴漢から守って登下校してると」
「ええ、そうですよ。けど、今日で終わり……もう彼女は転校しますから」
「転校?」
「やっぱり怖くて通えないって。今日が最後だからって、確かにちょっと付き合いましたけど」
微かに笑った二宮が声を改める。
「でも、あれが相葉先生なら」
「俺、なら?」
「痴漢を警察なんかに引き渡しませんよ。池神さんのように、僕の納得する方法で消えてもらう」
低い笑い声が響いた。
「それに先生は家になんか帰さない。ここで暮らして頂きます………ああ、そうだ」
ぺたりと平板になった顔で二宮は相葉を覗き込んだ。
「今まであなたを襲いかけた人達、覚えてます?」
「………」
「その顔は、覚えてるんですね?そう、じゃあ、また何かの折に聞かせてもらいましょうか、何を誰にどうされたのか」
冷笑を含ませてゆっくり相葉を抱き込んでくる。
「新しいゲームの始まりですよ。待ってて、相葉先生。あなたに触れた人間がどうなるか見せてあげる」
静かで柔らかなキスが降りた。
「あなたが僕以外受け入れることはできないって、思い知らせてあげる」
殺気立った黒い目はパソコンのカメラ・アイとそっくりで。
誰よりも冷たくて誰よりも熱いこの瞳に、ついに自分は捕われた。
口の中を執拗に蹂躙されながら、相葉は密やかな笑みを浮かべた。
「二、宮?」
「相葉先生……大丈夫なんですか、起きて」
「あ、ああ」
くるりと椅子を回して向き直る二宮に戸惑って部屋を見回す。
「理事長は……」
「ああ」
くす、と二宮が笑った。
「今は僕がここの理事長です」
「え?」
「ちょっといろいろむかついたんで、父親には引退してもらうことにしました………あんな懇親会の手配するようなやつですから」
あっさり言い放って、ちら、と相葉の手の封筒を見た。
「それは?」
「……あ、ああ」
二宮が理事長になっているということは確かに驚きだが、別にやれないとは思わない。見えているほど子供ではないのは相葉自身がよく知っている、そう思ってずきんとした下半身に唇を噛む。
「これは……辞表、だ」
「辞表?辞めるんですか」
「……体調も……整わないし……満足に授業もできない……俺がここにいる理由は……何もない……」
おまえだってもう俺は要らないんだからな、そう言いかけたのをかろうじて呑み込んだ。
差し出した封筒を受け取った二宮がじっと表書きを見る。やがて、それをいきなり真二つに裂いた。
「何を!」
「まだわかっていないようですね」
机の上の何かを押すと、背後のドアでかちりと鍵のかかる音がした。ぎょっとして振り向いた隙に、するりと椅子を抜け出した二宮にソファの上へ突き飛ばされる。
「っあ!」
「体のこともあるから控えていたけど、こんなこと考えてるようじゃ駄目ですね。さっさと理解しておいてもらわないと」
「え、えっ、あっ」
押し倒されたままネクタイを引き抜かれた。腕を後ろに回されて肘近くで拘束され、仰け反るような形で縛られる。
「なっ、なにっ」
「今さら。あんなことがあった後だし、倒れてばっかりだし、側に居ても怯えてるからずっと我慢してたけど、正直、僕も限界です」
「あ、や、ま、まって」
ベルトを外されチャックを降ろされ、一気に下着ごと下半身を剥かれた。そのままぐい、と背後を晒すように夢のままに両足を掬い上げられ、ひたりと二宮が体を寄せてきて瞬間、吐き気が込み上げて喉を鳴らす。
「う、ぐ………っ」
「………やっぱり…」
ひょい、と二宮が唐突に体を離した。視界を涙で滲ませて見上げる相葉に険しい顔で覗き込む。
「相葉先生、男が近付くの駄目になっているでしょう」
「……え……?」
「条件反射みたいに吐きそうになるんでしょ」
「あ……」
「それを我慢して知らないふりしてると、倒れちゃう……そうですよね?」
「………」
「特に……こんなの…」
「ひ……っ」
まだそれほど勢いのない二宮のものをひたりと股間に当てられて視界が眩んだ。温かな柔らかな感触にぞくぞくして体が震える。冷や汗が滲んで、その自分の汗の匂いにさえ追い詰められた。
「や……だ……や……っ」
「もう少し様子見てようかと思ってたんですが、全然楽になる気配ないし。だから、荒療治になりますが」
ひょいと二宮が何かを取り出した。薄いピンクの細長いもの。コードがついていて、その先にスイッチのようなものがついている。それが何か思いつく前に、ぺろ、といきなり後ろを舐められた。
「あ!」
前も触られずにそんなことをされたのは初めてで、今までのどんな感触とも重ならないそれに戸惑っている間に、ぺろぺろと繰り返し舐め回される。
「あ、あ…っ、あ……っあ!」
ちゅぷ、と微かな音がして舌先が中心を突いた。ずくんと走った波が股間に伝わりむくりと萎えていたものが身を起こす。
「ん……ん」
「う、んっ、ん、あっ」
吐息を吹き掛けられながら舌先で後ろを弄ばれて、相葉は声を上げて悶えた。見る間に上がってきた身体の熱が、喘ぐように呼吸を繰り返す喉から零れる声が、自分がそれを望んでねだっているとわかって、なお煽られる。無意識に腰を揺らしていたのを抱えられて、一瞬我に返った瞬間、つるりと冷たいものが滑り込んできて悲鳴を上げた。
「ひ、やっ」
「痛くなかったでしょう?軟らかめで細めの素材を選びましたから。ああ、全部入りましたね。もっといけるかな?」
「あっ、あっ、ああっ」
ゆっくりと二宮の指が入ったものを深くに押し込んでくる。池神のものとは質量も硬度も大きさも温度も全く違うそれに、相葉が混乱していると、小さな音が響いた。
「ひっ!!」
ぶぅ、ん、と微かな振動音とともに後ろに呑み込んだものが小刻みに揺れ始める。
「や…あ……あっ」
感触は細い棒なのに、それがまるで内側をまぜるように動いて相葉は仰け反った。広げさせられた足の間でくたりとしていたものがみるみる起き上がってくる。それをじっと見つめている二宮が、
「痛くないでしょう? 気持ちいい?」
「あ……あ……あ……っ」
「こうするともっと深くまでいく?」
「あああっ」
ぐいと指で押し込まれて一気に股間が跳ね起きた。弱いところのわずか端に引っ掛かっていて、立続けに震えが走るのにイくには全然足りない。
「や……たす……たすけ……っ」
「ああ、ようやく泣いてきましたね、これ」
「ひうっ!」
引き起こされてソファに座らされ、両足を抱え上げられ含まれた。とは言え、舐めるのではなくゆったりと含まれたまま、背後の振動で揺れる相葉の動きで舌が触れるだけだから、見る間に切なく追い上げられて喘ぎながら懇願する。
「に……二宮……っ……も……もっと……」
「何…?」
ふい、と二宮が顔を上げた。濡れた唇を舐めながら薄く笑う顔を相葉がうっとり見返してしまうと、
「そんな顔をすると」
「は、あうっ!」
スイッチの切り替わる音がした。激しく揺れだし内側を叩きつけるような動きに身体が勝手に跳ねる。しかも上下がずれたように動き始めて、相葉は喘ぎながら首を振った。
「あ……あう……あっ……あっ」
「ほら、相葉先生?」
汗で濡れてきたシャツの匂いももうわからない。ただただ身体の中で暴走するものに感覚の全てを持っていかれて朦朧とする。その相葉を引き起こして四つ這いにさせると、二宮は相葉の鼻先に自分の勃ちあがったものを突き出した。
「舐めて」
「は…あ、あ…」
「でないとずっとイかせてあげませんよ?」
「あ…あう………っ」
またスイッチが戻されて柔らかな微かな振動に戻る。濡れ始めた中で滑るのか、零れだしそうなそれを無意識に締めつけてしまい、身体がびくびくと震えた。
「口を開いて」
「あ、あ……んっ」
「舌を使って」
「ん……んんっ」
銜え込む二宮のものに絡む汗の匂い、それが不思議にえづかなかった。奇妙な安心で舌を絡めて腰を揺らせる。鈍い振動はどんどん麻痺していく 下半身に遠くて緩い愛撫になり、じれったくて必死に舌を動かした。
何度か走り上がった快感、けれど、そのどれもが押し上げてくれなくて、相葉は二宮を口から外して掠れた声で訴えた。
「も…う……入れて……」
「相葉先生……」
さすがに呆然とした顔で二宮が見下ろしてくる。霞む視界でもう一度繰り返す。
「おまえのを………入れて……くれ………こんなのは………いやだ…」
「………わかりました」
すう、と凄んだ笑みが二宮の口に広がった。ぞくりとしながら、その冷たい笑みに見愡れる。
「じゃあ……これと…」
「あ、うんっ!」
急に引き抜かれて思わず少し零してしまう。くすりと笑った二宮が背中の腕の拘束も解いてくれた。べたべたに濡れたシャツ一枚で戸惑ってると、ソファに掴まるように言われて、唾を呑み込みながらソファの背に掴まる。
「いきますよ?」
「……っ、う、んっ、んあっあああっ!」
散々濡れて弛んだそこが二宮のものをじわりと呑み込むのを感じた。池神のときのように激痛や不安ばかりではない、少し入って引き抜かれ、またもっと深くまで押し込まれる、その柔らかな手順がもう、意識を吹き飛ばしてしまいそうによくて。
「あっ……あっ……あああっ……」
「凄い声……あげてる……わかる……?」
「は、ああっ、あっ、あ、二宮ぁっっ!」
「う、くぅっ!」
ずん、と強く突かれて大きな波が駆け抜けた。それに攫われるように相葉も弾けながら仰け反った。
「……大丈夫?」
「……」
ソファの上、二宮の腕の中でこっくりと頷いた。汚れた下半身は心得たように二宮がきれいにしてくれたし、半裸姿なのに安堵に気持ちがほぐれて、今にも眠ってしまいそうだ。
もう、いい、そう思った。
もう後のことはどうでもいい。今こうしてこの腕の中で眠れるのなら。
女のこともあるけれど、彼女は彼女で二宮が必要ならば構わないとさえ思った。静かに相葉を抱える二宮の腕はもうひんやりと冷えて、さっきまでの熱は微塵も感じさせない。ここで眠ってしまっても、目が覚めれば、さっきみたいにまた一人で取り残されているのかもしれないが。
胸に耳を当て、とくとく打っている心臓の音に耳を澄ませる。
そうだ、次に捨てられそうなら、思いきり二宮を罵倒してやろう。そうして激怒させて、相葉を嬲り殺させればいい。それぐらいはするだろう、この男なら。
微かに走った震えにうっすらと笑う。
「何を笑ってるんです」
「うん?」
見つめられていたとは思わなくて、ひょいと顔を上げると表情の読めない瞳が見下ろしていた。
「不思議だな」
「え?」
「安心するんだ」
低くつぶやいて目を伏せた。
「ここにいると安心する」
「じゃあ、もう辞めませんね?」
「………」
「申し訳ないですけれど、相葉先生」
「……ん?」
「僕はあなたを手放す気はありませんよ」
二宮の声に苛立つような調子が混ざった気がして、もう一度見上げた。醒めた視線の奥から冷えた怒りが滲み出している。
「どういうつもりで態度を変えたのかわかりませんが」
ああ、そうか、と気がついた。相葉はずっと二宮を拒んできたから、急に二宮に身を任せたばかりか自分でねだって快楽を貪った、その相葉に戸惑っているのだ。
「今のだって……録画してるんです」
「………もう……そんなものはいらない」
「え?」
「………俺をつなぎ止めるなら……」
見上げて唇を差し出した。脳裏を彼女の姿が掠める。あの娘はもう二宮にキスされたのだろうか。
それとももう抱かれて喜びに喘いでいたのだろうか。
今日の遅刻は実はそのせいだったのだろうか。
「抱いて」
「相葉先生……?」
不審そうに見下ろす相手に目を閉じる。ただひたすらに待っていて、ようやく降りてきた唇にほっとする。所詮遊び道具の一つにしか過ぎないんだろう、そう思った瞬間に切なくて辛くて眉をしかめた。
「どう……したの」
「どうも、してない」
「おかしいでしょう、あなたから」
「おかしいのか、俺からじゃ」
「あんなに僕を嫌がってた」
「……」
「初めて会った時からずっと」
「?」
相葉は眉をしかめた。記憶を辿ってようやく該当するものを見つけだす。そうだ、あの時、理事長の机に寄り掛かるようにして、どうみても中学生にしか見えない子供が相葉の履歴を覗き込んでいた。ぱらぱらさも用ありげにめくって、ずいぶんあれこれやってきたんだね、どうして落ち着けなかったの、そう問われた。かっとして、確かに「子供が大人の話に口を出すもんじゃない」と。
「……弱味だった」
「なぜ?」
「……どうしてかな…………何度か襲われかけることがあって」
「っ」
「うまく切り抜け逃げてきたんだけど……今度みたいに薬まで使われたのは初めてだ」
口にすると、気を張っていた部分ががさりと抜け落ちた。
「でも、おまえに執着されるのは」
たぶん、嫌いじゃなかった、そうつぶやいて自嘲すると急に強く激しく抱き締められた。
「ごめん、なさい」
思いもよらぬ呻くような声に目を見開く。
「そんなこと、どのデータにもなかったから」
「………誰がしゃべる…?…データになんか残すはずないだろ」
「そう、ですよね」
熱い息を吐いてなおきつく抱き締めてくる二宮にもう一度目を閉じて力を抜いた。
「でも、僕はただ、初めて会ったときから、ずっとあなたが欲しくて」
掠れた声が訴える。
「ただ、あなたが欲しかっただけ………どんな手を使っても、どんなにあなたを傷めつけても」
ああ、そうか、と気づいた。
冷たくて容赦がなくて、けれど相葉を欲してやまないその激情をずっと感じていたからこそ、自分はあの時二宮の顔に安心したのだ。そして、いつの間にかすっくりと、心の底までこの男に。
「もう、どこへも行かないで」
「………あの、娘はどうする」
ずるいと思ったが計算が動いた。
「ああ………何?何か聞いたの?」
「痴漢から守って登下校してると」
「ええ、そうですよ。けど、今日で終わり……もう彼女は転校しますから」
「転校?」
「やっぱり怖くて通えないって。今日が最後だからって、確かにちょっと付き合いましたけど」
微かに笑った二宮が声を改める。
「でも、あれが相葉先生なら」
「俺、なら?」
「痴漢を警察なんかに引き渡しませんよ。池神さんのように、僕の納得する方法で消えてもらう」
低い笑い声が響いた。
「それに先生は家になんか帰さない。ここで暮らして頂きます………ああ、そうだ」
ぺたりと平板になった顔で二宮は相葉を覗き込んだ。
「今まであなたを襲いかけた人達、覚えてます?」
「………」
「その顔は、覚えてるんですね?そう、じゃあ、また何かの折に聞かせてもらいましょうか、何を誰にどうされたのか」
冷笑を含ませてゆっくり相葉を抱き込んでくる。
「新しいゲームの始まりですよ。待ってて、相葉先生。あなたに触れた人間がどうなるか見せてあげる」
静かで柔らかなキスが降りた。
「あなたが僕以外受け入れることはできないって、思い知らせてあげる」
殺気立った黒い目はパソコンのカメラ・アイとそっくりで。
誰よりも冷たくて誰よりも熱いこの瞳に、ついに自分は捕われた。
口の中を執拗に蹂躙されながら、相葉は密やかな笑みを浮かべた。
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