小説の再編集とか、資料とか、必要な諸々を置いておくブログ
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初めて相葉に出会ったとき、天使が舞い降りたと思った。
黒目がちの大きな目と、さらさらの髪の毛。
笑った顔はこの世のものとは思えないくらいに綺麗で。
背中に羽根が見えたような気さえした。
その時の頭を殴られたような衝撃を今でも忘れる事ができない。
最初の頃、人見知りの激しい彼は誰とも話すことなく、稽古場の隅っこにいた。
1人、じっと前を見つめていた彼は本当に綺麗で神聖なもののように思えて。
誰もが彼を気にしていたし、話したいと思っていたが、そのあまりにも近寄りがたい風貌に、皆話しかけることすらできずにいた。
俺は、とにかく大勢の中の1人にはなりたくなくて、決死の覚悟で話しかけた。
最初は戸惑っているようだった彼も、レッスンが終わる頃にはすっかり俺に懐いてくれて。
話してみると、驚くほどに素直で純粋な人だった。
本当に何の穢れも知らない天使のようで。
俺の心は有無を言わさず彼へと向かっていったのだ。
気がついた時には後戻りできないくらいに彼に惚れていた。
実際の相葉は人懐こく、時が経つにつれ周りに慣れてくると、誰にでも笑顔を見せるようになった。
そんな相葉にたくさんの人が魅了されて、相葉の周りは常に人が集まるようになっていったのは言うまでもない。
その頃からだ。
俺の心にどす黒い感情が生まれたのは。
俺が最初に見つけたのに。
どうして他の人にも笑いかけるの?
俺だけ見てよ。
相葉が自分のものになった時は本当に嬉しくて、この世の幸せ全てを手に入れたと思った。
しかし、それによって気付かされた、自分の恐ろしい嫉妬心。
とにかく彼が他の人間と話すだけでも許せないほどに。
自分の醜さを思い知らされ、驚愕した。
純真な相葉と、歪んだ自分。
何とか上手くやって来られたのは、彼が自分を好きだと言ってくれるから。
しかし、いつも心には不安があった。
こんな醜い自分に、いつか彼の想いが離れてしまわないかと。
その時、自分はどうなってしまうのかと・・・。
*****
「あ~、つまんない。松潤、おれつまんない。なんか楽しいことない?」
「何?唐突に。どうしたの?」
突然の相葉の発言に、今まで見ていた台本から目を離し、松本は発言者を見た。
発言者は頬を膨らませて松本を見ている。
それが24の男の顔かと、突っ込みたくなるのを我慢して松本は相葉の言葉を待った。
「うー、だってつまんないんだもん!暇なの!」
暇と聞いて松本は納得が行った。
「何だよ。ニノに相手してもらえないのが寂しいのかよ?」
どうやらニノがドラマの撮影に入った事で、なかなか相手にしてもらえないのが、原因のようだ。
意地悪そうに言う松本に、相葉の眉間が寄った。
「うるさい。ばか潤。とにかく暇なんだよ!ってことで、俺に付き合いなさい」
「は?何で俺が。他のヤツ誘えよ」
俺は命が惜しいんだよと、断る松本の意図が掴めない相葉は更に顔をしかめる。
「むー。もういいもん、ばか本潤!!」
そう捨て台詞を残して松本から離れていった相葉に松本は文句を言う。
「人の名前で遊ぶな!」
べぇ!!
振り返った相葉がしたのは、久しく見ていないあっかんべー。
本当にあれがハタチ超えた男のすることかと、松本は去っていった相葉を見ながらため息を吐いた。
出会った頃から、良い意味でも悪い意味でも変わらない相葉。
その要因の大部分は二宮だろうと、松本は思う。
常に相葉に寄り添い、いつも相葉を穢すものから守っていた。
だからこそ、あんなに純粋で綺麗なままでいられるのだろう。
それが、良い事なのか悪い事なのかは・・・分からないが。
二宮は過保護すぎるし、相葉は無垢すぎる。
それが変な方向に向かなければ良いと、常々松本は思っていた。
*****
「おはようございまーす」
連日のドラマ撮影で寝不足気味の二宮は、低いテンションで現場へとやって来た。
今日は嵐のレギュラー番組の収録だが、とにかく眠い。
隙あらば寝たい、そんな気分だ。
今回のドラマは櫻井と一緒のため、それなりに気も楽だし、子供たちも可愛いし、楽しい現場だ。
しかし、連日のドラマ撮影に加えてコンサートの打ち合わせやリハーサルまで始まるこの時期、やはり体力的にきつく、さすがの二宮もぐったりしていた。
「あ、にの。おはよぉ」
相葉の挨拶にも覇気なく答える。
「おはようございます・・・」
「あのね、昨日ね・・・・」
「ごめん、相葉さん。ちょっと寝ていい?」
「あ、うん・・・」
相葉が何か言いたそうなのは分かったが、眠気には勝てず、二宮はソファーに横になると寝息を立て始めた。
*****
最近、二宮とゆっくり話す時間がない。
ドラマの撮影が始まってからは特にだ。
寂しいけれど、仕方がない。
忙しい二宮に我儘は言えないから。
でも・・・・
「さびしいなぁ・・・・」
ソファーに寝転んだ二宮を見て、相葉はため息を吐く。
結局二宮は収録のギリギリまで寝ていて、話す事もできなかった。
収録の合間にと思ったのだが・・・・。
「あ、にの・・・・」
「おい、ニノ。ドラマの事なんだけどさ・・・」
櫻井に呼び止められ、なにやらドラマの話を始める2人。
間に入ることなど出来ずに、次の収録が始まってしまった。
本番中終了後、今日もこの後ドラマの撮影だろうと半ば諦めていた相葉に、二宮から声がかかった。
「相葉さん、今日元気なかったじゃない?何かあった?」
「・・・・にの。ううん、なんにもないよ」
むしろ何にもないから、元気がないんだと、心の中で呟いた。
「嘘。分かるんだから、嘘ついても無駄だよ。今日さ、この後予定ないんだ。一緒に飯食いに行こう?じっくり話し聞いたげる」
「え?ほんとっ!?一緒に行けるの?」
途端に元気になる自分が少しばかり現金な気はしたが、二宮と一緒にいられるなら、それでもいいやと思う。
「んふふ。久しぶりだもんね?どこ行く?」
「えっとね!どこがいいかなぁ・・・」
相葉が嬉しそうに考えていると、櫻井が慌しく楽屋へとやって来た。
「おい、ニノ。急遽撮影入ったってさ。マネージャーが車で待ってっから、早く行こうぜ!」
「えー・・・、マジで?せっかく休みだと思ったのに・・・。相葉さん・・・ごめん。
行けなくなちゃった・・・・」
「あ、うん・・・。しょうがないよ、仕事だもん。頑張ってね!」
「・・・・終わったら、連絡するよ。ごめん。じゃあね。」
「うん・・・行ってらっしゃい・・・」
申し訳なさそうに去っていく二宮に笑顔で手を振った。
「あーあ・・・・。」
声に出すつもりはなかったが、無意識に出てしまったらしい。
それに反応したのは松本。
「相葉ちゃん、声に出てる。ニノが聞いたら飛んで戻ってくるんじゃね?」
「・・・・松潤。にのは戻ってこないよ。前向いた瞬間から、気持ちはドラマに向かってるから・・・」
寂しそうに笑う相葉に驚いた。
こんな風に笑うヤツだっただろうか。
いつだって天真爛漫に笑うところしか見ていなかった松本は、どう返して良いのか戸惑ったのだが。
「あー!落ち込んだってしょうがない!パーッと行っちゃおうかな?」
テンションを自ら上げようとしたらしい相葉が突然大声を出した。
その姿に松本は苦笑する。
「・・・しょうがねぇなぁ。今日は俺が付き合ってやろう!」
「え?いいよぉ・・・むりしなくて。おれなら平気だし」
「・・・この間断ったの気にしてんの?変なトコで律儀だよね?相葉ちゃんって」
「松潤に言われたくないよ・・・・。分かった!!そう言うなら、今日はとことん付き合ってもらうからね!!」
「覚悟しましょう。ほら、そうと決まれば早く着替えろよ。」
「おっけい♪」
*****
松本は、以前相葉が二宮と一緒に来たという居酒屋にいた。
目の前で、ぐびぐびと酒を煽っている男に呆れながらも、こうなるだろうと予測はしていたため、特に慌てた様子も見せずに、相手の話に耳を傾ける。
「だぁからぁ・・・おれはね・・・寂しいわけですよぉ。分かるぅ?」
「まぁ・・・なんとなく」
事務所に入ってからずっと一緒だった2人がここ最近、映画だドラマだと2人でいられる時間が減っている事は確かだろう。
そこに来て、二宮と櫻井が共演だ。
俄然、二宮は相葉と2人でいる時間より櫻井といる時間のが多くなっている。
仕事熱心な櫻井は、5人で収録の時でも二宮にドラマの話をしていた。
そうなると相葉は中に入れず、遠慮してしまうようだ。
今日もそのパターンだった。
そういうところは、いつものように空気を読まなきゃいいのにと思うのだが。
「おー、分かりますかぁ?ってことはぁ・・・まちゅじゅんもぉ・・・にのがすきなのぉ?だめだよぉ・・・にのは・・・おれのだもんねぇ・・・・あげなぁい!」
「いらねぇよ・・・・」
相葉の話は、とにかくにの、にの、にのだ。
それだけ「にの」を連呼して、よく飽きないもんだと変なところで感心してしまう。
「あー!まちゅじゅんはぁ・・・、にののみりょくが分からないんだぁ・・・。だめだなぁ・・・」
分からないし、分かりたくもないと思ったが、それは口にしない。
酔っ払いには従うのが一番だ。
「とにかくぅ・・・おれは寂しいの!でもぉ、寂しいなんて言ったら、にのが心配しちゃうでしょお?だから、我慢してるんですよぉ・・・」
再びグラスの中身を煽る。
「にのはぁ、ああ見えて心配性の、寂しがりだからぁ・・・俺が元気にしてないとぉ・・・ドラマ頑張れないのですぅ・・・」
ひと言話す度に酒を煽っている相葉に、いい加減まずいと思った松本が声をかけた。
「相葉ちゃん・・・そろそろ止めないと、ぶっ倒れるよ」
しかし、酔っ払いは聞く耳持たずだ。
「でもねぇ・・・ちょっと限界かなぁ・・・。翔ちゃんはいいなぁ・・・いっつもにのといっしょでぇ・・・・」
そこまで言ったところで、相葉がテーブルに突っ伏した。
「おいおい、マジかよ・・・勘弁してくれ・・・」
松本は手元のグラスをカラカラと振って、中身を飲み干した。
*****
「はぁ・・・マジ重かった・・・」
酔いつぶれた相葉をタクシーへ乗せ、大きく息を吐いた。
隣で眠る男を恨めしい目で見ても、何の反応もない。
付き合うといったのは自分だし、こうなるだろう事も予想していたので、文句は言えない。
やれやれと再びため息を吐こうかと思った時。
「うー、うー」
隣の男が唸り始めた。
顔色が悪く、青ざめている。
「うー・・・・・気持ち悪い・・・・うっ」
「ちょっ!待て!お前吐くなよ?」
「うえっ・・・・もう・・だめ・・・」
「ま、待て!す、すいませんっ。降ります!」
タクシーを降りたは良いが、このままでは大惨事になりかねないと思った松本が、とにかく相葉を休ませようと入ったところはホテルだった。
部屋に入ると相葉をベッドに寝かせる。
苦しそうに唸っている相葉のシャツのボタンを外し、ベルトを緩めた。
やましい事をしているわけではないが、松本は何となく相葉を直視できない。
「うー、あついっ!!」
「ちょっ!相葉ちゃっ・・・何してんの!?」
大声で叫んだ相葉は、突然上着のボタンを全部外し、ズボンを脱ぎだした。
制止する間もなく相葉は、上にシャツを引っかけ、下は下着のみという姿になってしまった。
長い足を惜しげもなく投げ出して、眠りに入ろうという体勢の相葉。
気分も良くなったのか、顔色も元に戻っている。
シーツの白さが、相葉の姿を妖艶に映し出す。
「・・・んふっ・・・にぃのぉ・・・・」
幸せそうに呟く。
「おいおい・・・」
寝言もニノかよ、と心の中でつっこんだ。
それにしても目のやり場に困る。
そんな無防備でいいのかと、松本は呆れた。
少なからず相葉に好意を抱いている身としては、かなり刺激が強い。
かといって、後先考えず事を起こすつもりはないが。
二宮が心配する気持ちが少しだけ分かった。
「さて・・・俺はどうしましょうかね」
このまま相葉を置いて帰るのはあまりにも無責任だろうか。
ここは目が覚めるのを待って、一緒に出る方が良いかと考えていると、相葉の携帯が鳴った。
着信を見ると、二宮の名前。
そういえば終わったら、電話すると言っていた。
少し戸惑ったが、今の状態から抜け出すには1番手っ取り早いだろうと相葉の携帯を手に取る。
「もしもし・・・ニノ?」
『・・・・・潤君?』
「ああ」
『・・・・なんで潤君が相葉さんの携帯に?』
明らかな不快感を表した二宮の声に苦笑する。
「一緒に飲んでたんだけどさ・・・相葉ちゃん潰れちゃって。今寝てる」
『・・・そうなんですか』
「ニノ仕事は?」
『終わって、今から帰るところです』
「・・・じゃあさ、相葉ちゃん引取りに来てくんない?」
『・・・・そうですね。今どこですか?店?』
「いや、ホテルなんだけど・・・・」
『・・・・・・どういうことですか?』
明らかに二宮の声のトーンが変わった。
「おいおい、誤解すんなよ?タクシーで送る途中に相葉ちゃん気分悪くなってさ、休ませるために入っただけだから」
『・・・・・・』
「おい、ニノ。聞いてる?」
『・・・・・どこのホテルですか?すぐ行きます』
ホテルの場所を教えると、二宮はすぐさま電話を切った。
「・・・やっぱり過保護だな・・・」
その素早すぎる対応にまたしても苦笑する松本だった。
*****
電話を切った二宮は挨拶もそこそこに現場を飛び出した。
急いでタクシーを捕まえると、乗り込む。
確かに今日の相葉は元気がなかった。
理由なんて分かってる。
自惚れでなく、自分のせいだろう。
最近仕事が忙しく2人でいる時間がなかった。
一緒の仕事でも、櫻井とドラマの打ち合わせをするほうが多い。
相葉は仕事が絡むと絶対に我侭を言わないから、かなりの我慢をしていたはずだ。
だからこそ、今日は一緒にいようと思ったのだが、急な撮影が入ってしまった。
一瞬期待させただけに、彼の落胆振りは明らかだった。
大方、見かねた松本が相葉を誘って、今の事態に繋がったのだろう。
携帯に松本が出たとき、嫌な予感はしたのだが。
居場所を聞いた瞬間、全身の血が沸騰した。
松本に限って、そんなことはないだろうと思うが、頭で分かっていても焦燥感が拭いきれない。
窓の外を見つめ、二宮は爪を噛んだ。
*****
二宮が電話を切ってから数十分、相葉はまだ起きる気配を見せない。
幸せそうに眠っている。
松本はバックに入っていた雑誌に目を通していた。
二宮のいた場所からするとそろそろかと松本が思っていると、ちょうどドアがノックされた。
「はい」
ドアを開けると、立っていたのは明らかに苛立ちを表情に表した二宮。
「どうも・・・」
声にも焦りが感じられた。
「相葉さんは?」
「まだ寝てる」
「そうですか・・・」
ベッドに寝ている相葉を確認してから、部屋へと入ってきた二宮はソファーに置かれているものを見て固まった。
ベッドへと駆け寄ると相葉に掛けてあった布団をはがす。
相葉の姿を確認した二宮は、松本を睨み付けた。
「・・・どういうこと・・・です?」
聞いた事もない二宮の声に松本もたじろぐ。
「俺じゃねぇよ・・・・。暑いっつって、相葉ちゃんが勝手に脱いだんだよ・・・」
「・・・・・」
相葉を見つめたまま何も言わない二宮。
「お、おい、ニノ?」
「・・・・今日は迷惑掛けてすいませんでした。後は俺がいるんで、潤君は帰って下さい」
二宮がわずかに微笑んだようだが、それは恐ろしく冷淡にも見えて。
松本は言いがたい不安に駆られた。
「ニノ?」
「・・・大丈夫ですよ。起きたら、ちゃんと家まで送りますから」
次に見た二宮はいつもと変わらない表情だった。
*****
松本が出ていって2人になると、二宮は相葉の眠るベッドに近づき、もう一度布団をはがす。
惜しげもなくさらした肌がシーツに映えて、その寝顔は昔から変わらずに美しい。
酒に酔っているせいで、いつもより赤みがさした肢体は、あの時を連想させるほどに艶を帯びている。
この姿を見た奴がいる。
自分以外に。
自分の中で、どす黒い感情が渦巻いているのを感じた。
一瞬、松本に抱いた殺意に近い感情。
かろうじて抑えたが。
誰が見せていいと言った?
その身体を。
その姿を。
その表情を。
お前は誰のものだ?
俺のものだろう?
俺だけの・・・・。
次から次へと湧き上がってくる、言いようもない感情を最早止める気はなかった。
それが全て、幸せそうに眠る相葉へと向かっていることも。
分かってる。
彼は寂しかったのだ。
何かがあったわけじゃない。
原因は俺。
分かってる。
けれど、気持ちが追いつかない。
感情が暴走する。
「相葉・・・・起きろよ・・・」
頬を軽く叩き、意識を呼び起こそうとする。
「う・・・・ん・・・」
眉根を寄せて身じろぎをする相葉に、普段なら可愛いと思うのだろうが、今の二宮には全てが許せなかった。
「・・・起きろよっ!」
声を荒げ、少しばかり乱暴に身体を揺すると、ようやく相葉が目を覚ます。
しかしその直後、相葉の口から出た言葉に二宮の感情は爆発した。
「う・・・ん、なにぃ・・・まつじゅん?」
「・・・お前・・・。声聞いて誰だかも分かんねぇのかよ!!俺は松本潤か!?よく見ろよっ!!」
腕を掴まれ、無理やり身体を起こされる。
あまりの大声と強い衝撃に、一瞬にして目を覚ました相葉の目の前にいたのは、先ほどまで自分に付き合ってくれていた松本ではなく、二宮だった。
「にの!?あれ?なんで?」
状況の把握できていない相葉は目を見開いて固まった。
「にの、ドラマ終わったの?松潤は?」
周りを見渡し、松本の姿を探す相葉を二宮はベッドへ押し倒す。
「わっ!にの!?」
押さえつけられている肩が痛い。
「にの、ちょっ・・・痛いよ。どうしたの?」
何故、二宮がここにいるのか。
松本の姿がないと言うことは、彼が呼んだのだろう。
しかし、二宮は明らかに怒っている。
「お前さあ!潤君潤君って、他に言うことないのかよ!!自分が今どんな格好してるか分かってんの!?」
「え?」
二宮にそう言われて、自分の姿を確認した。
「えっ?なんで?」
慌ててシャツの前を合わせる。
「・・・・誰が見せていいって言ったよ?」
「に・・・の?」
「誰が言ったんっだよ!?言ってみろよ!」
「あの・・・」
「何?誘ってんの?俺と別れたいの?潤君が好きになったんだ?最近良く一緒にいるもんなぁ?」
まくし立てる二宮についていけない。
「にの、なに言って・・・・」
「ああ、それとも何?欲求不満なわけ?俺が相手してなかったから、誰でもいいから相手して欲しかったんだ?」
「ちが・・・、そんなんじゃないよ」
「分かったよ。じゃあ・・・満たしてやるよ!」
「えっ?ちょっ・・・・にの!なに!?!やだ!」
上に覆いかぶさってきた二宮の瞳に自分は映っていなくて。
それが相葉の恐怖心を煽る。
「うるせーな、黙れよっ!」
「っ!!」
相葉の頬に衝撃が走った。
二宮に叩かれたんだという事に気付いた時には、下着は脱がされ、シャツだけになっていた。
「な、な・・・に?」
叩かれた事に呆然とする相葉をよそに、二宮は相葉をうつぶせにすると、シャツを肩から抜いて、手首のところでまとめて縛る。
「に、にのっ!?ちょっ、まって!ねぇ・・・あっ」
やめてと懇願する相葉の言葉も聞かず、二宮は相葉自身に手を伸ばす。
「あっ・・・んん・・・にぃのっ・・・はっ・・・」
酔っているせいもあって、熱くなった身体はすぐに反応し始める。
しかし、二宮の動きがいやに無機質で、相葉は戸惑いと不安を隠せない。
今まで、こんな事はなかった。
ただ、自分を強制的に高められているような感じ。
そこに二宮が見つけられない。
「にっの・・・あ・・・おねが・・・いっ・・・まってぇ・・・んっ・・・」
それでも、二宮に感じるように作られたカラダはどんどんと昂ぶっていく。
そして。
「あぁっ・・・・だめ・・・ん・・・あっ・・・・あぁ!!」
相葉は二宮の手に自身の欲望を吐き出した。
相葉の出したモノを自分の指に塗り、二宮は相葉の奥へと乱暴に押し込んだ。
「いっ・・・!に、の・・・いたっ!あっ・・・・やっ」
余韻に浸るまもなく、後ろに感じた痛みに思わず身体が逃げる。
その無意識の行為が、二宮をイラつかせた。
「逃げんなよっ」
後ろ手で縛られている手を押さえつけられて、上半身がベッドに沈む。
自然に二宮の前に、お尻を突き出すような格好になる。
「んふふ・・・良い眺め。そんなにして欲しいいんだ・・・・やらしいね」
「なっ!ちがっ・・・・・あぁっ・・んっ!」
凌辱的な言葉に相葉の顔が歪む。
それにも二宮の手は止まらず、乱暴に相葉の中をかき回す。
感情とは反対に相葉の体はすでに感じきっていた。
「あっあ・・・ん・・・いや・・・いっ・・・やめてぇ・・・んん・・」
やめてと懇願するしか出来ない。
今、自分を辱めているのは誰なのか。
二宮の顔が見えない。
いつもなら、顔が見えなくても、その行為から二宮の存在が感じ取れた。
行為の端々に二宮の愛情があった。
今、それが見えない。
今感じるのは、とてつもない怒りとせつなさ。
相葉の中で不安が膨らむ。
自分は何故彼をこんなにも追い込んでしまったんだろうか。
とっくに酔いなんて醒めていた。
なのに頭が回らない。
こんな時ながら、自分の頭の悪さを恨んだ。
二宮の感情が不安定になるとき、それは自分が関係している。
自分がそうであるように。
相葉には確信があった。
ただ、頭の良くない自分には、その原因がいつも分からない。
だからこそ、ひたすらに彼を受け入れるのだ。
それで彼の心が落ち着くならと。
二宮の指が相葉の中から引き抜かれる。
それと同時に指とは比べ物にならないほどの、熱いものが相葉のそこに押し当てられる。
躊躇なく入り込んできたそれは、かなりの質量で、あまり慣らされていない相葉は、唸り声を上げる。
それでも、二宮が楽なようにと息を吐き、力を抜く事は忘れない。
「んっ!はぁ・・・・ん・・・」
その献身的な姿すら、今の二宮をイラつかせる原因となるのだが。
まだ馴染んでいない相葉の中を、二宮は乱暴に動き回る。
「あっああ・・・にっのぉ・・・ちょ・・・あっ、あ・・・」
後ろからの突き上げに、相葉の口からは喘ぎ声を上げることしか出来なかった。
自分の中で更に大きさを増した二宮を感じ、相葉は焦る。
「んっ・・・ねぇ、にっのぉ・・・まっ・・・・まって・・・っん」
二宮はこのまま終わらせるつもりなのか。
明らかに二宮の動きはそこに近づいている。
一度も自分を見てくれないまま・・・。
いつだって、行為の最後はお互いの存在を確かめ合っていた。
なのに・・・。
自分はそこまで嫌われてしまったのだろうか。
二宮の顔が浮かばない。
自分を攻めているのは二宮のはずなのに。
こんなの知らない。
二宮の存在が感じられない。
こわい。
こわい。
「んっ・・・はっ・・・・あいっば・・・・」
二宮が切羽詰った声を出す。
「あっ!いや・・・・いやっ・・・ああっ」
二宮が自分の中で果てるのを感じ、相葉は涙を流した。
二宮が相葉の中から出て行った後も、相葉は顔をシーツに埋めたまま動かない。
縛られた手はすでに解かれていたが、それでも相葉は動かなかった。
その肩は小刻みに震えている。
「・・・・何で・・・泣くんだよ・・・。泣くほど嫌だったのかよ。だったら・・・・だったら叫べばいいだろ!嫌だって、抵抗すればいい!!何でしないんだよっ!」
横でそれを見つめていた二宮が切なく叫ぶ。
相葉は、二宮に無理やり行為を進められる中、一度も抵抗しなかった。
口では「待って、やめて」と言いながらも、二宮の全てを受け入れていた。
「何でだよ・・・こんなひどい事されて・・・・」
伏せたままの相葉に触れると、その背中がびくっと跳ねた。
それはまるで触られる事を拒んだようにも見えて。
二宮の顔が歪んだ。
相葉が自分以外を好きになるなんて、ないと分かっているのに、彼の事になると自分の感情がコントロールできなくなる。
どうしようもない独占欲と、支配欲。
一時的な感情だけで、彼を押さえつけた。
そして今、二宮にあるのは焦燥感と罪悪感。
自分勝手な感情で、彼を傷つけた。
彼は自分を最低だと思っただろうか?
「・・・ごめん。」
それだけ言うと、二宮は立ち上がった。
これ以上、ここに居てもお互いに傷つくだけのように思えたから。
「・・・・・の?」
部屋を出て行こうとする二宮の耳にかすかに相葉の声が聞えた。
「え?」
「どこ・・・いくの?」
相葉がのそりと、起き上がる。
二宮には背を向けたままだ。
「どこって・・・、こんなことされて、俺の顔なんて見たくないでしょ?」
だから、出て行こうと思って。
「かお・・・見たくないのは・・・にののほうでしょぉ・・・・」
「・・・は?」
「にの・・・・にのは、おれが嫌いになったんでしょぉ・・・・だからっ・・・出て行くんだっ・・・」
「ちょっと、何言って・・・」
「だって!!にの・・・おれのこと・・・見てくれなかった・・・い、いちども目を合わせてくれなかった!!」
「相葉さん・・・?」
「おれを・・・・すてるの?」
「・・・何言って・・・・」
再び相葉に近づき、肩に触れようとすると、その肩を大きく震わせ逃げる。
「あいばさ・・・・」
「・・・・・」
「こっち見て」
「・・・・いや」
「どうして?」
「・・・・・」
「・・・俺が嫌い?」
聞くと大きく頭を振る相葉。
「・・・・だから、嫌いなのはにのの方でしょ?」
「・・・・どうしてそう思うの?」
「・・・・だって、最後・・・・俺のかお見てくれなかった・・・・にののかお、見せてくれなかった・・・・」
シーツを握り締め、答える相葉は涙をこらえているようだった。
2人が愛し合うとき、相葉はいつも最後を迎えるときに、二宮の顔を見たがった。
二宮に愛されていると感じる事が出来るから。
二宮が自分で感じ、イってくれる事が嬉しかった。
それを分かっていた二宮は、常に相葉の希望通りにしてきた。
そうすると、とても幸せそうに微笑んでくれるから。
二宮もまた、そんな相葉の表情に自分への愛情を感じていた。
今まで、ただの一度だって、その彼の望みを忘れた事はなかったのに。
頭に血が上りすぎて,今日その行為をしなかった。
相葉はその事に、ひどく傷ついているのだ。
二宮が怒っていることにではなく、無理矢理に体を開かされた事にでもなく。
自分の顔を見てくれなかったことに。
二宮の胸に罪悪感と共に、切ないほどの愛情がこみ上げる。
「・・・・・の?」
部屋を出て行こうとする二宮の耳にかすかに相葉の声が聞えた。
「え?」
「どこ・・・いくの?」
相葉がのそりと、起き上がる。
二宮には背を向けたままだ。
「どこって・・・、こんなことされて、俺の顔なんて見たくないでしょ?」
だから、出て行こうと思って。
「かお・・・見たくないのは・・・にののほうでしょぉ・・・・」
「・・・は?」
「にの・・・・にのは、おれが嫌いになったんでしょぉ・・・・だからっ・・・出て行くんだっ・・・」
「ちょっと、何言って・・・」
「だって!!にの・・・おれのこと・・・見てくれなかった・・・い、いちども目を合わせてくれなかった!!」
「相葉さん・・・?」
「おれを・・・・すてるの?」
「・・・何言って・・・・」
再び相葉に近づき、肩に触れようとすると、その肩を大きく震わせ逃げる。
「あいばさ・・・・」
「・・・・・」
「こっち見て」
「・・・・いや」
「どうして?」
「・・・・・」
「・・・俺が嫌い?」
聞くと大きく頭を振る相葉。
「・・・・だから、嫌いなのはにのの方でしょ?」
「・・・・どうしてそう思うの?」
「・・・・だって、最後・・・・俺のかお見てくれなかった・・・・にののかお、見せてくれなかった・・・・」
シーツを握り締め、答える相葉は涙をこらえているようだった。
2人が愛し合うとき、相葉はいつも最後を迎えるときに、二宮の顔を見たがった。
二宮に愛されていると感じる事が出来るから。
二宮が自分で感じ、イってくれる事が嬉しかった。
それを分かっていた二宮は、常に相葉の希望通りにしてきた。
そうすると、とても幸せそうに微笑んでくれるから。
二宮もまた、そんな相葉の表情に自分への愛情を感じていた。
今まで、ただの一度だって、その彼の望みを忘れた事はなかったのに。
頭に血が上りすぎて,今日その行為をしなかった。
相葉はその事に、ひどく傷ついているのだ。
二宮が怒っていることにではなく、無理矢理に体を開かされた事にでもなく。
自分の顔を見てくれなかったことに。
二宮の胸に罪悪感と共に、切ないほどの愛情がこみ上げる。
自分の嫉妬という浅はかな感情など、彼の前では全く意味はなかった。
相葉は、嫉妬に狂ってひどい事をした二宮にではなく、二宮を怒らせ、嫌われてしまったと、自分を責めているのだから。
いつだって相葉は二宮を責めない。
二宮が怒るのは自分が悪いからと、他の人間に話しているのを二宮は何度も聞いたことがあった。
こんな理不尽な目に合っても、なお彼は二宮を責めはしないのだ。
二宮は、自分の中のどす黒い感情が薄れていくのを感じた。
相葉の前では、どんなに醜い感情も浄化されていく。
そうやって、何度も二宮は守られてきた。
彼はやはり天使なのだろうか?
二宮の全てを許し、包み込む絶対的な愛。
相葉という大きな海原の中でゆらゆらと浮かんでいるような感覚。
自分の馬鹿さ加減を思い知らされる。
こんなに大切で愛おしいのに。
二宮に背を向けたままの相葉を後ろから抱きしめた。
「っ!いやっ。離して・・・・」
二宮からの決定的な言葉を恐れてか、相葉が初めて抵抗した。
「嫌だ。離さない」
「・・・どうしてぇ・・・・おれ、いやだよぉ・・・・。にのぉ、きらいにならないで・・・おれをすてないでよぉ・・・」
二宮の腕にしがみつき懇願する。
「あいば・・・」
「・・・・うぇ・・・・おれ、わがまま言わない・・・寂しくっても我慢する・・・・だから・・・・にののこと・・・好きでいさせてよぉ・・・おれから・・・・にのとらないでぇ」
二宮の腕に涙が落ちて沁みた。
「・・・・ごめん」
相葉の体がびくっと跳ねて、硬直した。
「・・・誤解しないで。今のごめんは、俺があんたにした行為と、あんたを傷つけたことに対してだから。
俺はあんたを嫌いになんかならないし、捨てることなんて絶対しないよ。俺には、あんたが全てなんだ」
抱きしめる腕に力を込めた。
「・・・・・にのぉ」
「寂しい思いさせてごめん。分かってたのに、俺の勝手な嫉妬で傷つけた。俺の方こそお願いしたいよ。
どうか俺を捨てないで。あんたに捨てられたら、生きていけない」
「・・・・・」
「相葉さん・・・・ごめん。あんたを好きになって・・・こんな俺に惚れさせて、ごめん。でも、あんたを愛してるんだ」
何度も考えた事がある。
自分といて、相葉は本当に幸せなのだろうかと。
相葉の奔放さを許してあげられない自分。
いつか本当に縛り付けてしまうかもしれない。
それでも、手放すなんて出来ないんだ。
「愛してるんだ・・・・あんただけを。ごめん・・・」
相葉の肩に顔を埋め、切なく呟く。
「・・・にの、離して」
「・・・嫌だ」
「・・・お願い」
回した腕を解こうとする相葉。
「・・・俺を・・・捨てるの?」
今度は二宮が問う。
「・・・違うよ。にののかお、見たいの」
この格好じゃ、顔が見えないでしょ?と二宮の腕に頬をすり寄せた。
二宮の腕が緩むと、相葉はするりと身を翻した。
「・・・にのだ。えへへ・・・」
「・・・あいばさん」
相葉は二宮の顔を自分の両手で包みこんで、確かめるように何度も撫でる。
愛おしそうに目を細めて。
「にの・・・・。おれはね、にののことが大好きなの。あいしてる。にのが、外に出るなって言うなら、出ない。
誰にも会うなって言うなら、会わない。それくらいのこと、全然平気なの」
にのがそばにいてくれるなら。
「今、ここで誓ったっていいんだ。おれはにののものだよ?にのの好きにしてもいい。」
二宮が望むなら、相葉は自ら喜んで籠に囚われるだろう。
自ら鎖に繋がれたっていい。
二宮の望みは相葉の望みなのだ。
「にのが・・・おれの全てだよ。にのがいないと生きていけないのは、俺も一緒。おれたち・・・似たもの同士だね」
そう言って微笑んだ相葉を、力の限りに抱きしめた。
「相葉さん・・・」
どうして、こんなに愛おしいのか。
どうしてこんなにも自分を捕らえて離さないのか。
自分のために、自らの綺麗な羽さえ喜んで折ってしまおうというのか。
それでもなお、自分のためにそばにいてくれると。
こんなにも愛されている事を改めて感じて、二宮の心は震えた。
「あいばさん・・・」
見つめ合い、お互いに唇を寄せる。
2人の存在を確かめ合うように深くなる口付け。
「・・・ね、ねぇ・・・にの?」
戸惑いがちに相葉が声をかけた。
「何?」
「・・・あ、あのね?あの・・・・・」
何か言いたそうな相葉を不思議に思って体を離すと、相葉は顔を赤くして足をモジモジさせている。
「相葉さん・・・あんた・・・」
相葉の中心の変化に気付いた二宮。
「だ、だって!さっき・・・・おれ・・・・」
そういえば、先ほどの一方的な行為で相葉はイクことが出来なかった。
そのくすぶった熱が、今ので再び燃え上がってしまったようだ。
「・・・していい?」
「え?」
「続き・・・・。相葉さんを・・・愛していい?」
その資格が俺にはあるかな?
「にの・・・。うん、して?おれを・・・・愛して・・・」
二宮に向かい、手を差し出した。
その手を取ると、自分の手を絡ませて2人ベッドへと沈む。
「あっ・・・・はっん・・・ねぇ・・・にのぉ・・・」
「何ですか?」
先ほどから後ろに執拗なまでの愛撫を繰り返す二宮に、相葉が痺れを切らす。
「んっ・・・もう・・・おね・・がい・・だからぁ・・・あっ」
「・・・まだです・・・。さっき無理させちゃったから、大事にしたいの」
そう言って再び相葉の蕾へと舌を這わす。
舌をすぼめて蕾を開き、優しく愛撫していく。
しばらくすると、舌と一緒に二宮の指が入ってくる。
「あっん・・・でもぉ・・・んっ!もう・・・だめぇ・・・」
「もう少し・・・・ね?」
先ほどの行為で、少なからず相葉の中は傷ついているだろうから。
今度は快感だけを味わって欲しい。
二宮の指は確実に相葉の感じるところを攻める。
「んっ・・・・あぁん・・・にのぉ・・・もう・・・いっちゃ・・・よぉ・・・」
早く二宮を感じたい。
二宮で満たされて、二宮でイきたい。
その想いが相葉の体を煽り、自然に腰を揺らして二宮を誘う。
「んふふ・・・、我慢できない?」
「うっん・・・・できないぃ・・・。はやく・・きてぇ・・・」
欲情に濡れた瞳で見つめ合い、再び口付け。
そのまま、相葉のソコに自身をあてがった。
「俺も我慢できない・・・いくよ?」
そういうと同時に二宮の質量を持ったソレが入り込んでくる。
「ああっ!!」
先ほどとは比べ物にならない快感が相葉を襲った。
その衝撃だけで達してしまいそうなほどの快感に、眩暈がする。
今確実に、自分を愛してくれているのは二宮だ。
一つ一つの行為に二宮の愛情を感じる。
「ああ・・・・」
なんて幸せ。
二宮の顔を見つめ微笑むと、二宮から極上のキス。
それを合図に二宮が動き始める。
「んっ・・・はっん・・・・あ、あ・・・にのぉ・・・」
その動きはもどかしいほどゆっくりで、相葉を焦らす。
「はっ・・・あいばさん・・・なに?」
分かっててとぼけている二宮を、相葉は恨めしそうに見上げる。
そこには、二宮のちょっと意地悪そうな顔。
いつもの二宮だ。
「に・・のぉ・・・」
両手を伸ばし、二宮の顔に触れた。
どうしようもないくらいに溢れてくる愛情。
自然に涙がこぼれた。
「あいば・・・何で泣いてんの?」
「あっ・・・ん・・・うれしいの。おれ・・・にののこと・・・すきで、うれしいの・・・」
「・・・俺も、嬉しいよ。あんたが・・・俺を好きでいてくれて・・・」
「うん・・・。にの、もっとにのを感じたい・・・。
おねがい・・・激しくたってかまわないから・・・にのも・・・おれを感じて?」
「うん・・・・動くよ?」
二宮が激しく動き始めた。
「ああっ!あっ・・・あんっ・・・んっ・・・はっん・・・・」
相葉も二宮の動きに合わせ、腰を揺らした。
お互いに感じ合う行為は、2人を絶頂へと誘う。
「あぁっん・・・・ん、ん・・・・んあっ・・・にっのぉ・・・もう・・・おれぇ・・・あっ」
「んっ・・・はっ・・・もう・・・イきそう・・・?」
どんどん早くなる二宮の動きに、相葉はただ縦に首を振った。
「あっ、あ・・・にの・・・にのぉ・・・・」
「はっ・・・あいばっ・・・俺の顔・・・見て、一緒にイこう・・・」
見つめ合い、二宮は相葉の最奥を突く。
「あぁんっ・・・うん・・・にのの・・・かお・・・あっあ・・・だめぇ・・・いっちゃ・・・ああっ!」
相葉の熱が放たれたのと同時に、中に熱いモノを感じた。
嬉しくて、相葉が微笑む。
それは、まさしく天使の微笑みのようで。
「あいばさん・・・大丈夫?」
「・・・うん、へいき。あっ、にの!」
二宮が相葉の中から出ようとするのを、相葉が止めた。
「相葉さん?」
「もうちょっと・・・もうちょっとこのままでいて?」
もう少し二宮を感じていたい。
「・・・俺は構わないけど」
「なら、良いよね?」
二宮の首に腕を回し、自分の方へ引き寄せた。
「んっ・・・。ねぇ、にの・・・・。にのが不安に思うことはなんにもないよ。だって、たとえ他の人の言うことが正しくったって、にのが間違ってたって、おれにはにのが真実だもの」
二宮の言うことが、相葉にとっての真実。
それ以外は何もいらない。
「にの、あいしてる。ずっと、ずっとあいしてる」
「俺も・・・愛してるよ。あんたの愛があれば、俺はどんな事だって耐えられる。ただ・・・あんたがいなくなること以外は」
2人きつく抱き合った。
どんな事があっても揺るがない想いを確信して、強く強く抱き合う。
そして訪れた幸せは、2人が乗り越えてきた愛の証。
*****
「にぃの♪」
「何ですか?相葉さんっVv」
「今日も、ドラマ頑張ってね!終わったら、連絡して?おれ待ってる!」
「もちろん、連絡しますよぉ。休憩時間にだって掛けちゃいます!」
「それはだめぇ・・・嬉しいけど、仕事は仕事でしょ?」
「んふふ。分かってますよ。俺を誰だと思ってんの?二宮和也様よ?全て1発OKで、帰ってくるよ」
「くふふ。にの、かっこいい!!」
「相葉さんは可愛いっ」
「・・・・何だよ、あれは・・・」
そんなとてつもなくバカップルな会話を繰り広げている2人を、台本片手にうんざりとした眼差しで見ているのは松本。
あの夜。
二宮の瞳に垣間見えたのは、確かに狂気。
松本は不安に駆られていた。
何か起こらなければいいと。
なのに・・・。
次に会った2人は、今までにも増して、バカップル振りを発揮していた。
二宮は相変わらず過保護だし、相葉は相変わらず、にの、にの、にのだ。
だが、確かに2人の間に何か今までとは違う雰囲気があるのを感じる。
バカップルは変わらないのだが、今まではその中にどこか危うさの様なものがあった。
今はその危うさが消え、とても安らかな、穏やかな空気が漂っている。
それが何故なのかは分からないが、あの夜、何かがあって、2人はそれを乗り越えたのだろう。
そんな気がする。
「もう、相葉さんってば可愛いんだから」
「もう、可愛いって言うなぁ。照れるぅ・・・」
「おーい、ニノ」
そこへやって来たのは櫻井。
「何ですか?」
「ドラマの事なんだけどさ・・・・」
「あー、それ急ぎ?じゃなければ、後で現場行ってからにして下さい」
「え?でも、せっかくだし。今打ち合わせとけば手っ取り早くね?」
「・・・・もう、翔ちゃんは本当にばかですね。相葉さんと違って、救いようのないばか。まぁ、救いたくもないけど」
「ちょ、何だよそれ?」
「何でもありません。俺は仕事を家庭に持ち込まない主義なんです。だから、その話は後にして下さい。ねぇ、相葉さん?」
「ねぇ!」
「は?」
わけも分からずに立ち尽くす櫻井。
一部始終を見ていた松本は、ここだって仕事場じゃねぇかと心の中で突っ込む。
心配して損した。
まぁ、平和で嵐らしくて良いけどね。
嵐が家庭と言うのはなんとなく分かる気がするから。
松本は台本で口元を隠し、ひっそりと微笑んだ。
「じゃあ、相葉さん行ってくるね!」
5人での仕事が終わり、二宮と櫻井はドラマの撮影へ向かう。
「うん、行ってらっしゃい!」
手がちぎれそうなくらいに振って見送る相葉と、笑顔で答える二宮。
もう寂しくはないし、不安はない。
嫉妬も寂しさも不安も、全部乗り越えて訪れた幸せ。
天使はいつだって我が元に。
おわり
黒目がちの大きな目と、さらさらの髪の毛。
笑った顔はこの世のものとは思えないくらいに綺麗で。
背中に羽根が見えたような気さえした。
その時の頭を殴られたような衝撃を今でも忘れる事ができない。
最初の頃、人見知りの激しい彼は誰とも話すことなく、稽古場の隅っこにいた。
1人、じっと前を見つめていた彼は本当に綺麗で神聖なもののように思えて。
誰もが彼を気にしていたし、話したいと思っていたが、そのあまりにも近寄りがたい風貌に、皆話しかけることすらできずにいた。
俺は、とにかく大勢の中の1人にはなりたくなくて、決死の覚悟で話しかけた。
最初は戸惑っているようだった彼も、レッスンが終わる頃にはすっかり俺に懐いてくれて。
話してみると、驚くほどに素直で純粋な人だった。
本当に何の穢れも知らない天使のようで。
俺の心は有無を言わさず彼へと向かっていったのだ。
気がついた時には後戻りできないくらいに彼に惚れていた。
実際の相葉は人懐こく、時が経つにつれ周りに慣れてくると、誰にでも笑顔を見せるようになった。
そんな相葉にたくさんの人が魅了されて、相葉の周りは常に人が集まるようになっていったのは言うまでもない。
その頃からだ。
俺の心にどす黒い感情が生まれたのは。
俺が最初に見つけたのに。
どうして他の人にも笑いかけるの?
俺だけ見てよ。
相葉が自分のものになった時は本当に嬉しくて、この世の幸せ全てを手に入れたと思った。
しかし、それによって気付かされた、自分の恐ろしい嫉妬心。
とにかく彼が他の人間と話すだけでも許せないほどに。
自分の醜さを思い知らされ、驚愕した。
純真な相葉と、歪んだ自分。
何とか上手くやって来られたのは、彼が自分を好きだと言ってくれるから。
しかし、いつも心には不安があった。
こんな醜い自分に、いつか彼の想いが離れてしまわないかと。
その時、自分はどうなってしまうのかと・・・。
*****
「あ~、つまんない。松潤、おれつまんない。なんか楽しいことない?」
「何?唐突に。どうしたの?」
突然の相葉の発言に、今まで見ていた台本から目を離し、松本は発言者を見た。
発言者は頬を膨らませて松本を見ている。
それが24の男の顔かと、突っ込みたくなるのを我慢して松本は相葉の言葉を待った。
「うー、だってつまんないんだもん!暇なの!」
暇と聞いて松本は納得が行った。
「何だよ。ニノに相手してもらえないのが寂しいのかよ?」
どうやらニノがドラマの撮影に入った事で、なかなか相手にしてもらえないのが、原因のようだ。
意地悪そうに言う松本に、相葉の眉間が寄った。
「うるさい。ばか潤。とにかく暇なんだよ!ってことで、俺に付き合いなさい」
「は?何で俺が。他のヤツ誘えよ」
俺は命が惜しいんだよと、断る松本の意図が掴めない相葉は更に顔をしかめる。
「むー。もういいもん、ばか本潤!!」
そう捨て台詞を残して松本から離れていった相葉に松本は文句を言う。
「人の名前で遊ぶな!」
べぇ!!
振り返った相葉がしたのは、久しく見ていないあっかんべー。
本当にあれがハタチ超えた男のすることかと、松本は去っていった相葉を見ながらため息を吐いた。
出会った頃から、良い意味でも悪い意味でも変わらない相葉。
その要因の大部分は二宮だろうと、松本は思う。
常に相葉に寄り添い、いつも相葉を穢すものから守っていた。
だからこそ、あんなに純粋で綺麗なままでいられるのだろう。
それが、良い事なのか悪い事なのかは・・・分からないが。
二宮は過保護すぎるし、相葉は無垢すぎる。
それが変な方向に向かなければ良いと、常々松本は思っていた。
*****
「おはようございまーす」
連日のドラマ撮影で寝不足気味の二宮は、低いテンションで現場へとやって来た。
今日は嵐のレギュラー番組の収録だが、とにかく眠い。
隙あらば寝たい、そんな気分だ。
今回のドラマは櫻井と一緒のため、それなりに気も楽だし、子供たちも可愛いし、楽しい現場だ。
しかし、連日のドラマ撮影に加えてコンサートの打ち合わせやリハーサルまで始まるこの時期、やはり体力的にきつく、さすがの二宮もぐったりしていた。
「あ、にの。おはよぉ」
相葉の挨拶にも覇気なく答える。
「おはようございます・・・」
「あのね、昨日ね・・・・」
「ごめん、相葉さん。ちょっと寝ていい?」
「あ、うん・・・」
相葉が何か言いたそうなのは分かったが、眠気には勝てず、二宮はソファーに横になると寝息を立て始めた。
*****
最近、二宮とゆっくり話す時間がない。
ドラマの撮影が始まってからは特にだ。
寂しいけれど、仕方がない。
忙しい二宮に我儘は言えないから。
でも・・・・
「さびしいなぁ・・・・」
ソファーに寝転んだ二宮を見て、相葉はため息を吐く。
結局二宮は収録のギリギリまで寝ていて、話す事もできなかった。
収録の合間にと思ったのだが・・・・。
「あ、にの・・・・」
「おい、ニノ。ドラマの事なんだけどさ・・・」
櫻井に呼び止められ、なにやらドラマの話を始める2人。
間に入ることなど出来ずに、次の収録が始まってしまった。
本番中終了後、今日もこの後ドラマの撮影だろうと半ば諦めていた相葉に、二宮から声がかかった。
「相葉さん、今日元気なかったじゃない?何かあった?」
「・・・・にの。ううん、なんにもないよ」
むしろ何にもないから、元気がないんだと、心の中で呟いた。
「嘘。分かるんだから、嘘ついても無駄だよ。今日さ、この後予定ないんだ。一緒に飯食いに行こう?じっくり話し聞いたげる」
「え?ほんとっ!?一緒に行けるの?」
途端に元気になる自分が少しばかり現金な気はしたが、二宮と一緒にいられるなら、それでもいいやと思う。
「んふふ。久しぶりだもんね?どこ行く?」
「えっとね!どこがいいかなぁ・・・」
相葉が嬉しそうに考えていると、櫻井が慌しく楽屋へとやって来た。
「おい、ニノ。急遽撮影入ったってさ。マネージャーが車で待ってっから、早く行こうぜ!」
「えー・・・、マジで?せっかく休みだと思ったのに・・・。相葉さん・・・ごめん。
行けなくなちゃった・・・・」
「あ、うん・・・。しょうがないよ、仕事だもん。頑張ってね!」
「・・・・終わったら、連絡するよ。ごめん。じゃあね。」
「うん・・・行ってらっしゃい・・・」
申し訳なさそうに去っていく二宮に笑顔で手を振った。
「あーあ・・・・。」
声に出すつもりはなかったが、無意識に出てしまったらしい。
それに反応したのは松本。
「相葉ちゃん、声に出てる。ニノが聞いたら飛んで戻ってくるんじゃね?」
「・・・・松潤。にのは戻ってこないよ。前向いた瞬間から、気持ちはドラマに向かってるから・・・」
寂しそうに笑う相葉に驚いた。
こんな風に笑うヤツだっただろうか。
いつだって天真爛漫に笑うところしか見ていなかった松本は、どう返して良いのか戸惑ったのだが。
「あー!落ち込んだってしょうがない!パーッと行っちゃおうかな?」
テンションを自ら上げようとしたらしい相葉が突然大声を出した。
その姿に松本は苦笑する。
「・・・しょうがねぇなぁ。今日は俺が付き合ってやろう!」
「え?いいよぉ・・・むりしなくて。おれなら平気だし」
「・・・この間断ったの気にしてんの?変なトコで律儀だよね?相葉ちゃんって」
「松潤に言われたくないよ・・・・。分かった!!そう言うなら、今日はとことん付き合ってもらうからね!!」
「覚悟しましょう。ほら、そうと決まれば早く着替えろよ。」
「おっけい♪」
*****
松本は、以前相葉が二宮と一緒に来たという居酒屋にいた。
目の前で、ぐびぐびと酒を煽っている男に呆れながらも、こうなるだろうと予測はしていたため、特に慌てた様子も見せずに、相手の話に耳を傾ける。
「だぁからぁ・・・おれはね・・・寂しいわけですよぉ。分かるぅ?」
「まぁ・・・なんとなく」
事務所に入ってからずっと一緒だった2人がここ最近、映画だドラマだと2人でいられる時間が減っている事は確かだろう。
そこに来て、二宮と櫻井が共演だ。
俄然、二宮は相葉と2人でいる時間より櫻井といる時間のが多くなっている。
仕事熱心な櫻井は、5人で収録の時でも二宮にドラマの話をしていた。
そうなると相葉は中に入れず、遠慮してしまうようだ。
今日もそのパターンだった。
そういうところは、いつものように空気を読まなきゃいいのにと思うのだが。
「おー、分かりますかぁ?ってことはぁ・・・まちゅじゅんもぉ・・・にのがすきなのぉ?だめだよぉ・・・にのは・・・おれのだもんねぇ・・・・あげなぁい!」
「いらねぇよ・・・・」
相葉の話は、とにかくにの、にの、にのだ。
それだけ「にの」を連呼して、よく飽きないもんだと変なところで感心してしまう。
「あー!まちゅじゅんはぁ・・・、にののみりょくが分からないんだぁ・・・。だめだなぁ・・・」
分からないし、分かりたくもないと思ったが、それは口にしない。
酔っ払いには従うのが一番だ。
「とにかくぅ・・・おれは寂しいの!でもぉ、寂しいなんて言ったら、にのが心配しちゃうでしょお?だから、我慢してるんですよぉ・・・」
再びグラスの中身を煽る。
「にのはぁ、ああ見えて心配性の、寂しがりだからぁ・・・俺が元気にしてないとぉ・・・ドラマ頑張れないのですぅ・・・」
ひと言話す度に酒を煽っている相葉に、いい加減まずいと思った松本が声をかけた。
「相葉ちゃん・・・そろそろ止めないと、ぶっ倒れるよ」
しかし、酔っ払いは聞く耳持たずだ。
「でもねぇ・・・ちょっと限界かなぁ・・・。翔ちゃんはいいなぁ・・・いっつもにのといっしょでぇ・・・・」
そこまで言ったところで、相葉がテーブルに突っ伏した。
「おいおい、マジかよ・・・勘弁してくれ・・・」
松本は手元のグラスをカラカラと振って、中身を飲み干した。
*****
「はぁ・・・マジ重かった・・・」
酔いつぶれた相葉をタクシーへ乗せ、大きく息を吐いた。
隣で眠る男を恨めしい目で見ても、何の反応もない。
付き合うといったのは自分だし、こうなるだろう事も予想していたので、文句は言えない。
やれやれと再びため息を吐こうかと思った時。
「うー、うー」
隣の男が唸り始めた。
顔色が悪く、青ざめている。
「うー・・・・・気持ち悪い・・・・うっ」
「ちょっ!待て!お前吐くなよ?」
「うえっ・・・・もう・・だめ・・・」
「ま、待て!す、すいませんっ。降ります!」
タクシーを降りたは良いが、このままでは大惨事になりかねないと思った松本が、とにかく相葉を休ませようと入ったところはホテルだった。
部屋に入ると相葉をベッドに寝かせる。
苦しそうに唸っている相葉のシャツのボタンを外し、ベルトを緩めた。
やましい事をしているわけではないが、松本は何となく相葉を直視できない。
「うー、あついっ!!」
「ちょっ!相葉ちゃっ・・・何してんの!?」
大声で叫んだ相葉は、突然上着のボタンを全部外し、ズボンを脱ぎだした。
制止する間もなく相葉は、上にシャツを引っかけ、下は下着のみという姿になってしまった。
長い足を惜しげもなく投げ出して、眠りに入ろうという体勢の相葉。
気分も良くなったのか、顔色も元に戻っている。
シーツの白さが、相葉の姿を妖艶に映し出す。
「・・・んふっ・・・にぃのぉ・・・・」
幸せそうに呟く。
「おいおい・・・」
寝言もニノかよ、と心の中でつっこんだ。
それにしても目のやり場に困る。
そんな無防備でいいのかと、松本は呆れた。
少なからず相葉に好意を抱いている身としては、かなり刺激が強い。
かといって、後先考えず事を起こすつもりはないが。
二宮が心配する気持ちが少しだけ分かった。
「さて・・・俺はどうしましょうかね」
このまま相葉を置いて帰るのはあまりにも無責任だろうか。
ここは目が覚めるのを待って、一緒に出る方が良いかと考えていると、相葉の携帯が鳴った。
着信を見ると、二宮の名前。
そういえば終わったら、電話すると言っていた。
少し戸惑ったが、今の状態から抜け出すには1番手っ取り早いだろうと相葉の携帯を手に取る。
「もしもし・・・ニノ?」
『・・・・・潤君?』
「ああ」
『・・・・なんで潤君が相葉さんの携帯に?』
明らかな不快感を表した二宮の声に苦笑する。
「一緒に飲んでたんだけどさ・・・相葉ちゃん潰れちゃって。今寝てる」
『・・・そうなんですか』
「ニノ仕事は?」
『終わって、今から帰るところです』
「・・・じゃあさ、相葉ちゃん引取りに来てくんない?」
『・・・・そうですね。今どこですか?店?』
「いや、ホテルなんだけど・・・・」
『・・・・・・どういうことですか?』
明らかに二宮の声のトーンが変わった。
「おいおい、誤解すんなよ?タクシーで送る途中に相葉ちゃん気分悪くなってさ、休ませるために入っただけだから」
『・・・・・・』
「おい、ニノ。聞いてる?」
『・・・・・どこのホテルですか?すぐ行きます』
ホテルの場所を教えると、二宮はすぐさま電話を切った。
「・・・やっぱり過保護だな・・・」
その素早すぎる対応にまたしても苦笑する松本だった。
*****
電話を切った二宮は挨拶もそこそこに現場を飛び出した。
急いでタクシーを捕まえると、乗り込む。
確かに今日の相葉は元気がなかった。
理由なんて分かってる。
自惚れでなく、自分のせいだろう。
最近仕事が忙しく2人でいる時間がなかった。
一緒の仕事でも、櫻井とドラマの打ち合わせをするほうが多い。
相葉は仕事が絡むと絶対に我侭を言わないから、かなりの我慢をしていたはずだ。
だからこそ、今日は一緒にいようと思ったのだが、急な撮影が入ってしまった。
一瞬期待させただけに、彼の落胆振りは明らかだった。
大方、見かねた松本が相葉を誘って、今の事態に繋がったのだろう。
携帯に松本が出たとき、嫌な予感はしたのだが。
居場所を聞いた瞬間、全身の血が沸騰した。
松本に限って、そんなことはないだろうと思うが、頭で分かっていても焦燥感が拭いきれない。
窓の外を見つめ、二宮は爪を噛んだ。
*****
二宮が電話を切ってから数十分、相葉はまだ起きる気配を見せない。
幸せそうに眠っている。
松本はバックに入っていた雑誌に目を通していた。
二宮のいた場所からするとそろそろかと松本が思っていると、ちょうどドアがノックされた。
「はい」
ドアを開けると、立っていたのは明らかに苛立ちを表情に表した二宮。
「どうも・・・」
声にも焦りが感じられた。
「相葉さんは?」
「まだ寝てる」
「そうですか・・・」
ベッドに寝ている相葉を確認してから、部屋へと入ってきた二宮はソファーに置かれているものを見て固まった。
ベッドへと駆け寄ると相葉に掛けてあった布団をはがす。
相葉の姿を確認した二宮は、松本を睨み付けた。
「・・・どういうこと・・・です?」
聞いた事もない二宮の声に松本もたじろぐ。
「俺じゃねぇよ・・・・。暑いっつって、相葉ちゃんが勝手に脱いだんだよ・・・」
「・・・・・」
相葉を見つめたまま何も言わない二宮。
「お、おい、ニノ?」
「・・・・今日は迷惑掛けてすいませんでした。後は俺がいるんで、潤君は帰って下さい」
二宮がわずかに微笑んだようだが、それは恐ろしく冷淡にも見えて。
松本は言いがたい不安に駆られた。
「ニノ?」
「・・・大丈夫ですよ。起きたら、ちゃんと家まで送りますから」
次に見た二宮はいつもと変わらない表情だった。
*****
松本が出ていって2人になると、二宮は相葉の眠るベッドに近づき、もう一度布団をはがす。
惜しげもなくさらした肌がシーツに映えて、その寝顔は昔から変わらずに美しい。
酒に酔っているせいで、いつもより赤みがさした肢体は、あの時を連想させるほどに艶を帯びている。
この姿を見た奴がいる。
自分以外に。
自分の中で、どす黒い感情が渦巻いているのを感じた。
一瞬、松本に抱いた殺意に近い感情。
かろうじて抑えたが。
誰が見せていいと言った?
その身体を。
その姿を。
その表情を。
お前は誰のものだ?
俺のものだろう?
俺だけの・・・・。
次から次へと湧き上がってくる、言いようもない感情を最早止める気はなかった。
それが全て、幸せそうに眠る相葉へと向かっていることも。
分かってる。
彼は寂しかったのだ。
何かがあったわけじゃない。
原因は俺。
分かってる。
けれど、気持ちが追いつかない。
感情が暴走する。
「相葉・・・・起きろよ・・・」
頬を軽く叩き、意識を呼び起こそうとする。
「う・・・・ん・・・」
眉根を寄せて身じろぎをする相葉に、普段なら可愛いと思うのだろうが、今の二宮には全てが許せなかった。
「・・・起きろよっ!」
声を荒げ、少しばかり乱暴に身体を揺すると、ようやく相葉が目を覚ます。
しかしその直後、相葉の口から出た言葉に二宮の感情は爆発した。
「う・・・ん、なにぃ・・・まつじゅん?」
「・・・お前・・・。声聞いて誰だかも分かんねぇのかよ!!俺は松本潤か!?よく見ろよっ!!」
腕を掴まれ、無理やり身体を起こされる。
あまりの大声と強い衝撃に、一瞬にして目を覚ました相葉の目の前にいたのは、先ほどまで自分に付き合ってくれていた松本ではなく、二宮だった。
「にの!?あれ?なんで?」
状況の把握できていない相葉は目を見開いて固まった。
「にの、ドラマ終わったの?松潤は?」
周りを見渡し、松本の姿を探す相葉を二宮はベッドへ押し倒す。
「わっ!にの!?」
押さえつけられている肩が痛い。
「にの、ちょっ・・・痛いよ。どうしたの?」
何故、二宮がここにいるのか。
松本の姿がないと言うことは、彼が呼んだのだろう。
しかし、二宮は明らかに怒っている。
「お前さあ!潤君潤君って、他に言うことないのかよ!!自分が今どんな格好してるか分かってんの!?」
「え?」
二宮にそう言われて、自分の姿を確認した。
「えっ?なんで?」
慌ててシャツの前を合わせる。
「・・・・誰が見せていいって言ったよ?」
「に・・・の?」
「誰が言ったんっだよ!?言ってみろよ!」
「あの・・・」
「何?誘ってんの?俺と別れたいの?潤君が好きになったんだ?最近良く一緒にいるもんなぁ?」
まくし立てる二宮についていけない。
「にの、なに言って・・・・」
「ああ、それとも何?欲求不満なわけ?俺が相手してなかったから、誰でもいいから相手して欲しかったんだ?」
「ちが・・・、そんなんじゃないよ」
「分かったよ。じゃあ・・・満たしてやるよ!」
「えっ?ちょっ・・・・にの!なに!?!やだ!」
上に覆いかぶさってきた二宮の瞳に自分は映っていなくて。
それが相葉の恐怖心を煽る。
「うるせーな、黙れよっ!」
「っ!!」
相葉の頬に衝撃が走った。
二宮に叩かれたんだという事に気付いた時には、下着は脱がされ、シャツだけになっていた。
「な、な・・・に?」
叩かれた事に呆然とする相葉をよそに、二宮は相葉をうつぶせにすると、シャツを肩から抜いて、手首のところでまとめて縛る。
「に、にのっ!?ちょっ、まって!ねぇ・・・あっ」
やめてと懇願する相葉の言葉も聞かず、二宮は相葉自身に手を伸ばす。
「あっ・・・んん・・・にぃのっ・・・はっ・・・」
酔っているせいもあって、熱くなった身体はすぐに反応し始める。
しかし、二宮の動きがいやに無機質で、相葉は戸惑いと不安を隠せない。
今まで、こんな事はなかった。
ただ、自分を強制的に高められているような感じ。
そこに二宮が見つけられない。
「にっの・・・あ・・・おねが・・・いっ・・・まってぇ・・・んっ・・・」
それでも、二宮に感じるように作られたカラダはどんどんと昂ぶっていく。
そして。
「あぁっ・・・・だめ・・・ん・・・あっ・・・・あぁ!!」
相葉は二宮の手に自身の欲望を吐き出した。
相葉の出したモノを自分の指に塗り、二宮は相葉の奥へと乱暴に押し込んだ。
「いっ・・・!に、の・・・いたっ!あっ・・・・やっ」
余韻に浸るまもなく、後ろに感じた痛みに思わず身体が逃げる。
その無意識の行為が、二宮をイラつかせた。
「逃げんなよっ」
後ろ手で縛られている手を押さえつけられて、上半身がベッドに沈む。
自然に二宮の前に、お尻を突き出すような格好になる。
「んふふ・・・良い眺め。そんなにして欲しいいんだ・・・・やらしいね」
「なっ!ちがっ・・・・・あぁっ・・んっ!」
凌辱的な言葉に相葉の顔が歪む。
それにも二宮の手は止まらず、乱暴に相葉の中をかき回す。
感情とは反対に相葉の体はすでに感じきっていた。
「あっあ・・・ん・・・いや・・・いっ・・・やめてぇ・・・んん・・」
やめてと懇願するしか出来ない。
今、自分を辱めているのは誰なのか。
二宮の顔が見えない。
いつもなら、顔が見えなくても、その行為から二宮の存在が感じ取れた。
行為の端々に二宮の愛情があった。
今、それが見えない。
今感じるのは、とてつもない怒りとせつなさ。
相葉の中で不安が膨らむ。
自分は何故彼をこんなにも追い込んでしまったんだろうか。
とっくに酔いなんて醒めていた。
なのに頭が回らない。
こんな時ながら、自分の頭の悪さを恨んだ。
二宮の感情が不安定になるとき、それは自分が関係している。
自分がそうであるように。
相葉には確信があった。
ただ、頭の良くない自分には、その原因がいつも分からない。
だからこそ、ひたすらに彼を受け入れるのだ。
それで彼の心が落ち着くならと。
二宮の指が相葉の中から引き抜かれる。
それと同時に指とは比べ物にならないほどの、熱いものが相葉のそこに押し当てられる。
躊躇なく入り込んできたそれは、かなりの質量で、あまり慣らされていない相葉は、唸り声を上げる。
それでも、二宮が楽なようにと息を吐き、力を抜く事は忘れない。
「んっ!はぁ・・・・ん・・・」
その献身的な姿すら、今の二宮をイラつかせる原因となるのだが。
まだ馴染んでいない相葉の中を、二宮は乱暴に動き回る。
「あっああ・・・にっのぉ・・・ちょ・・・あっ、あ・・・」
後ろからの突き上げに、相葉の口からは喘ぎ声を上げることしか出来なかった。
自分の中で更に大きさを増した二宮を感じ、相葉は焦る。
「んっ・・・ねぇ、にっのぉ・・・まっ・・・・まって・・・っん」
二宮はこのまま終わらせるつもりなのか。
明らかに二宮の動きはそこに近づいている。
一度も自分を見てくれないまま・・・。
いつだって、行為の最後はお互いの存在を確かめ合っていた。
なのに・・・。
自分はそこまで嫌われてしまったのだろうか。
二宮の顔が浮かばない。
自分を攻めているのは二宮のはずなのに。
こんなの知らない。
二宮の存在が感じられない。
こわい。
こわい。
「んっ・・・はっ・・・・あいっば・・・・」
二宮が切羽詰った声を出す。
「あっ!いや・・・・いやっ・・・ああっ」
二宮が自分の中で果てるのを感じ、相葉は涙を流した。
二宮が相葉の中から出て行った後も、相葉は顔をシーツに埋めたまま動かない。
縛られた手はすでに解かれていたが、それでも相葉は動かなかった。
その肩は小刻みに震えている。
「・・・・何で・・・泣くんだよ・・・。泣くほど嫌だったのかよ。だったら・・・・だったら叫べばいいだろ!嫌だって、抵抗すればいい!!何でしないんだよっ!」
横でそれを見つめていた二宮が切なく叫ぶ。
相葉は、二宮に無理やり行為を進められる中、一度も抵抗しなかった。
口では「待って、やめて」と言いながらも、二宮の全てを受け入れていた。
「何でだよ・・・こんなひどい事されて・・・・」
伏せたままの相葉に触れると、その背中がびくっと跳ねた。
それはまるで触られる事を拒んだようにも見えて。
二宮の顔が歪んだ。
相葉が自分以外を好きになるなんて、ないと分かっているのに、彼の事になると自分の感情がコントロールできなくなる。
どうしようもない独占欲と、支配欲。
一時的な感情だけで、彼を押さえつけた。
そして今、二宮にあるのは焦燥感と罪悪感。
自分勝手な感情で、彼を傷つけた。
彼は自分を最低だと思っただろうか?
「・・・ごめん。」
それだけ言うと、二宮は立ち上がった。
これ以上、ここに居てもお互いに傷つくだけのように思えたから。
「・・・・・の?」
部屋を出て行こうとする二宮の耳にかすかに相葉の声が聞えた。
「え?」
「どこ・・・いくの?」
相葉がのそりと、起き上がる。
二宮には背を向けたままだ。
「どこって・・・、こんなことされて、俺の顔なんて見たくないでしょ?」
だから、出て行こうと思って。
「かお・・・見たくないのは・・・にののほうでしょぉ・・・・」
「・・・は?」
「にの・・・・にのは、おれが嫌いになったんでしょぉ・・・・だからっ・・・出て行くんだっ・・・」
「ちょっと、何言って・・・」
「だって!!にの・・・おれのこと・・・見てくれなかった・・・い、いちども目を合わせてくれなかった!!」
「相葉さん・・・?」
「おれを・・・・すてるの?」
「・・・何言って・・・・」
再び相葉に近づき、肩に触れようとすると、その肩を大きく震わせ逃げる。
「あいばさ・・・・」
「・・・・・」
「こっち見て」
「・・・・いや」
「どうして?」
「・・・・・」
「・・・俺が嫌い?」
聞くと大きく頭を振る相葉。
「・・・・だから、嫌いなのはにのの方でしょ?」
「・・・・どうしてそう思うの?」
「・・・・だって、最後・・・・俺のかお見てくれなかった・・・・にののかお、見せてくれなかった・・・・」
シーツを握り締め、答える相葉は涙をこらえているようだった。
2人が愛し合うとき、相葉はいつも最後を迎えるときに、二宮の顔を見たがった。
二宮に愛されていると感じる事が出来るから。
二宮が自分で感じ、イってくれる事が嬉しかった。
それを分かっていた二宮は、常に相葉の希望通りにしてきた。
そうすると、とても幸せそうに微笑んでくれるから。
二宮もまた、そんな相葉の表情に自分への愛情を感じていた。
今まで、ただの一度だって、その彼の望みを忘れた事はなかったのに。
頭に血が上りすぎて,今日その行為をしなかった。
相葉はその事に、ひどく傷ついているのだ。
二宮が怒っていることにではなく、無理矢理に体を開かされた事にでもなく。
自分の顔を見てくれなかったことに。
二宮の胸に罪悪感と共に、切ないほどの愛情がこみ上げる。
「・・・・・の?」
部屋を出て行こうとする二宮の耳にかすかに相葉の声が聞えた。
「え?」
「どこ・・・いくの?」
相葉がのそりと、起き上がる。
二宮には背を向けたままだ。
「どこって・・・、こんなことされて、俺の顔なんて見たくないでしょ?」
だから、出て行こうと思って。
「かお・・・見たくないのは・・・にののほうでしょぉ・・・・」
「・・・は?」
「にの・・・・にのは、おれが嫌いになったんでしょぉ・・・・だからっ・・・出て行くんだっ・・・」
「ちょっと、何言って・・・」
「だって!!にの・・・おれのこと・・・見てくれなかった・・・い、いちども目を合わせてくれなかった!!」
「相葉さん・・・?」
「おれを・・・・すてるの?」
「・・・何言って・・・・」
再び相葉に近づき、肩に触れようとすると、その肩を大きく震わせ逃げる。
「あいばさ・・・・」
「・・・・・」
「こっち見て」
「・・・・いや」
「どうして?」
「・・・・・」
「・・・俺が嫌い?」
聞くと大きく頭を振る相葉。
「・・・・だから、嫌いなのはにのの方でしょ?」
「・・・・どうしてそう思うの?」
「・・・・だって、最後・・・・俺のかお見てくれなかった・・・・にののかお、見せてくれなかった・・・・」
シーツを握り締め、答える相葉は涙をこらえているようだった。
2人が愛し合うとき、相葉はいつも最後を迎えるときに、二宮の顔を見たがった。
二宮に愛されていると感じる事が出来るから。
二宮が自分で感じ、イってくれる事が嬉しかった。
それを分かっていた二宮は、常に相葉の希望通りにしてきた。
そうすると、とても幸せそうに微笑んでくれるから。
二宮もまた、そんな相葉の表情に自分への愛情を感じていた。
今まで、ただの一度だって、その彼の望みを忘れた事はなかったのに。
頭に血が上りすぎて,今日その行為をしなかった。
相葉はその事に、ひどく傷ついているのだ。
二宮が怒っていることにではなく、無理矢理に体を開かされた事にでもなく。
自分の顔を見てくれなかったことに。
二宮の胸に罪悪感と共に、切ないほどの愛情がこみ上げる。
自分の嫉妬という浅はかな感情など、彼の前では全く意味はなかった。
相葉は、嫉妬に狂ってひどい事をした二宮にではなく、二宮を怒らせ、嫌われてしまったと、自分を責めているのだから。
いつだって相葉は二宮を責めない。
二宮が怒るのは自分が悪いからと、他の人間に話しているのを二宮は何度も聞いたことがあった。
こんな理不尽な目に合っても、なお彼は二宮を責めはしないのだ。
二宮は、自分の中のどす黒い感情が薄れていくのを感じた。
相葉の前では、どんなに醜い感情も浄化されていく。
そうやって、何度も二宮は守られてきた。
彼はやはり天使なのだろうか?
二宮の全てを許し、包み込む絶対的な愛。
相葉という大きな海原の中でゆらゆらと浮かんでいるような感覚。
自分の馬鹿さ加減を思い知らされる。
こんなに大切で愛おしいのに。
二宮に背を向けたままの相葉を後ろから抱きしめた。
「っ!いやっ。離して・・・・」
二宮からの決定的な言葉を恐れてか、相葉が初めて抵抗した。
「嫌だ。離さない」
「・・・どうしてぇ・・・・おれ、いやだよぉ・・・・。にのぉ、きらいにならないで・・・おれをすてないでよぉ・・・」
二宮の腕にしがみつき懇願する。
「あいば・・・」
「・・・・うぇ・・・・おれ、わがまま言わない・・・寂しくっても我慢する・・・・だから・・・・にののこと・・・好きでいさせてよぉ・・・おれから・・・・にのとらないでぇ」
二宮の腕に涙が落ちて沁みた。
「・・・・ごめん」
相葉の体がびくっと跳ねて、硬直した。
「・・・誤解しないで。今のごめんは、俺があんたにした行為と、あんたを傷つけたことに対してだから。
俺はあんたを嫌いになんかならないし、捨てることなんて絶対しないよ。俺には、あんたが全てなんだ」
抱きしめる腕に力を込めた。
「・・・・・にのぉ」
「寂しい思いさせてごめん。分かってたのに、俺の勝手な嫉妬で傷つけた。俺の方こそお願いしたいよ。
どうか俺を捨てないで。あんたに捨てられたら、生きていけない」
「・・・・・」
「相葉さん・・・・ごめん。あんたを好きになって・・・こんな俺に惚れさせて、ごめん。でも、あんたを愛してるんだ」
何度も考えた事がある。
自分といて、相葉は本当に幸せなのだろうかと。
相葉の奔放さを許してあげられない自分。
いつか本当に縛り付けてしまうかもしれない。
それでも、手放すなんて出来ないんだ。
「愛してるんだ・・・・あんただけを。ごめん・・・」
相葉の肩に顔を埋め、切なく呟く。
「・・・にの、離して」
「・・・嫌だ」
「・・・お願い」
回した腕を解こうとする相葉。
「・・・俺を・・・捨てるの?」
今度は二宮が問う。
「・・・違うよ。にののかお、見たいの」
この格好じゃ、顔が見えないでしょ?と二宮の腕に頬をすり寄せた。
二宮の腕が緩むと、相葉はするりと身を翻した。
「・・・にのだ。えへへ・・・」
「・・・あいばさん」
相葉は二宮の顔を自分の両手で包みこんで、確かめるように何度も撫でる。
愛おしそうに目を細めて。
「にの・・・・。おれはね、にののことが大好きなの。あいしてる。にのが、外に出るなって言うなら、出ない。
誰にも会うなって言うなら、会わない。それくらいのこと、全然平気なの」
にのがそばにいてくれるなら。
「今、ここで誓ったっていいんだ。おれはにののものだよ?にのの好きにしてもいい。」
二宮が望むなら、相葉は自ら喜んで籠に囚われるだろう。
自ら鎖に繋がれたっていい。
二宮の望みは相葉の望みなのだ。
「にのが・・・おれの全てだよ。にのがいないと生きていけないのは、俺も一緒。おれたち・・・似たもの同士だね」
そう言って微笑んだ相葉を、力の限りに抱きしめた。
「相葉さん・・・」
どうして、こんなに愛おしいのか。
どうしてこんなにも自分を捕らえて離さないのか。
自分のために、自らの綺麗な羽さえ喜んで折ってしまおうというのか。
それでもなお、自分のためにそばにいてくれると。
こんなにも愛されている事を改めて感じて、二宮の心は震えた。
「あいばさん・・・」
見つめ合い、お互いに唇を寄せる。
2人の存在を確かめ合うように深くなる口付け。
「・・・ね、ねぇ・・・にの?」
戸惑いがちに相葉が声をかけた。
「何?」
「・・・あ、あのね?あの・・・・・」
何か言いたそうな相葉を不思議に思って体を離すと、相葉は顔を赤くして足をモジモジさせている。
「相葉さん・・・あんた・・・」
相葉の中心の変化に気付いた二宮。
「だ、だって!さっき・・・・おれ・・・・」
そういえば、先ほどの一方的な行為で相葉はイクことが出来なかった。
そのくすぶった熱が、今ので再び燃え上がってしまったようだ。
「・・・していい?」
「え?」
「続き・・・・。相葉さんを・・・愛していい?」
その資格が俺にはあるかな?
「にの・・・。うん、して?おれを・・・・愛して・・・」
二宮に向かい、手を差し出した。
その手を取ると、自分の手を絡ませて2人ベッドへと沈む。
「あっ・・・・はっん・・・ねぇ・・・にのぉ・・・」
「何ですか?」
先ほどから後ろに執拗なまでの愛撫を繰り返す二宮に、相葉が痺れを切らす。
「んっ・・・もう・・・おね・・がい・・だからぁ・・・あっ」
「・・・まだです・・・。さっき無理させちゃったから、大事にしたいの」
そう言って再び相葉の蕾へと舌を這わす。
舌をすぼめて蕾を開き、優しく愛撫していく。
しばらくすると、舌と一緒に二宮の指が入ってくる。
「あっん・・・でもぉ・・・んっ!もう・・・だめぇ・・・」
「もう少し・・・・ね?」
先ほどの行為で、少なからず相葉の中は傷ついているだろうから。
今度は快感だけを味わって欲しい。
二宮の指は確実に相葉の感じるところを攻める。
「んっ・・・・あぁん・・・にのぉ・・・もう・・・いっちゃ・・・よぉ・・・」
早く二宮を感じたい。
二宮で満たされて、二宮でイきたい。
その想いが相葉の体を煽り、自然に腰を揺らして二宮を誘う。
「んふふ・・・、我慢できない?」
「うっん・・・・できないぃ・・・。はやく・・きてぇ・・・」
欲情に濡れた瞳で見つめ合い、再び口付け。
そのまま、相葉のソコに自身をあてがった。
「俺も我慢できない・・・いくよ?」
そういうと同時に二宮の質量を持ったソレが入り込んでくる。
「ああっ!!」
先ほどとは比べ物にならない快感が相葉を襲った。
その衝撃だけで達してしまいそうなほどの快感に、眩暈がする。
今確実に、自分を愛してくれているのは二宮だ。
一つ一つの行為に二宮の愛情を感じる。
「ああ・・・・」
なんて幸せ。
二宮の顔を見つめ微笑むと、二宮から極上のキス。
それを合図に二宮が動き始める。
「んっ・・・はっん・・・・あ、あ・・・にのぉ・・・」
その動きはもどかしいほどゆっくりで、相葉を焦らす。
「はっ・・・あいばさん・・・なに?」
分かっててとぼけている二宮を、相葉は恨めしそうに見上げる。
そこには、二宮のちょっと意地悪そうな顔。
いつもの二宮だ。
「に・・のぉ・・・」
両手を伸ばし、二宮の顔に触れた。
どうしようもないくらいに溢れてくる愛情。
自然に涙がこぼれた。
「あいば・・・何で泣いてんの?」
「あっ・・・ん・・・うれしいの。おれ・・・にののこと・・・すきで、うれしいの・・・」
「・・・俺も、嬉しいよ。あんたが・・・俺を好きでいてくれて・・・」
「うん・・・。にの、もっとにのを感じたい・・・。
おねがい・・・激しくたってかまわないから・・・にのも・・・おれを感じて?」
「うん・・・・動くよ?」
二宮が激しく動き始めた。
「ああっ!あっ・・・あんっ・・・んっ・・・はっん・・・・」
相葉も二宮の動きに合わせ、腰を揺らした。
お互いに感じ合う行為は、2人を絶頂へと誘う。
「あぁっん・・・・ん、ん・・・・んあっ・・・にっのぉ・・・もう・・・おれぇ・・・あっ」
「んっ・・・はっ・・・もう・・・イきそう・・・?」
どんどん早くなる二宮の動きに、相葉はただ縦に首を振った。
「あっ、あ・・・にの・・・にのぉ・・・・」
「はっ・・・あいばっ・・・俺の顔・・・見て、一緒にイこう・・・」
見つめ合い、二宮は相葉の最奥を突く。
「あぁんっ・・・うん・・・にのの・・・かお・・・あっあ・・・だめぇ・・・いっちゃ・・・ああっ!」
相葉の熱が放たれたのと同時に、中に熱いモノを感じた。
嬉しくて、相葉が微笑む。
それは、まさしく天使の微笑みのようで。
「あいばさん・・・大丈夫?」
「・・・うん、へいき。あっ、にの!」
二宮が相葉の中から出ようとするのを、相葉が止めた。
「相葉さん?」
「もうちょっと・・・もうちょっとこのままでいて?」
もう少し二宮を感じていたい。
「・・・俺は構わないけど」
「なら、良いよね?」
二宮の首に腕を回し、自分の方へ引き寄せた。
「んっ・・・。ねぇ、にの・・・・。にのが不安に思うことはなんにもないよ。だって、たとえ他の人の言うことが正しくったって、にのが間違ってたって、おれにはにのが真実だもの」
二宮の言うことが、相葉にとっての真実。
それ以外は何もいらない。
「にの、あいしてる。ずっと、ずっとあいしてる」
「俺も・・・愛してるよ。あんたの愛があれば、俺はどんな事だって耐えられる。ただ・・・あんたがいなくなること以外は」
2人きつく抱き合った。
どんな事があっても揺るがない想いを確信して、強く強く抱き合う。
そして訪れた幸せは、2人が乗り越えてきた愛の証。
*****
「にぃの♪」
「何ですか?相葉さんっVv」
「今日も、ドラマ頑張ってね!終わったら、連絡して?おれ待ってる!」
「もちろん、連絡しますよぉ。休憩時間にだって掛けちゃいます!」
「それはだめぇ・・・嬉しいけど、仕事は仕事でしょ?」
「んふふ。分かってますよ。俺を誰だと思ってんの?二宮和也様よ?全て1発OKで、帰ってくるよ」
「くふふ。にの、かっこいい!!」
「相葉さんは可愛いっ」
「・・・・何だよ、あれは・・・」
そんなとてつもなくバカップルな会話を繰り広げている2人を、台本片手にうんざりとした眼差しで見ているのは松本。
あの夜。
二宮の瞳に垣間見えたのは、確かに狂気。
松本は不安に駆られていた。
何か起こらなければいいと。
なのに・・・。
次に会った2人は、今までにも増して、バカップル振りを発揮していた。
二宮は相変わらず過保護だし、相葉は相変わらず、にの、にの、にのだ。
だが、確かに2人の間に何か今までとは違う雰囲気があるのを感じる。
バカップルは変わらないのだが、今まではその中にどこか危うさの様なものがあった。
今はその危うさが消え、とても安らかな、穏やかな空気が漂っている。
それが何故なのかは分からないが、あの夜、何かがあって、2人はそれを乗り越えたのだろう。
そんな気がする。
「もう、相葉さんってば可愛いんだから」
「もう、可愛いって言うなぁ。照れるぅ・・・」
「おーい、ニノ」
そこへやって来たのは櫻井。
「何ですか?」
「ドラマの事なんだけどさ・・・・」
「あー、それ急ぎ?じゃなければ、後で現場行ってからにして下さい」
「え?でも、せっかくだし。今打ち合わせとけば手っ取り早くね?」
「・・・・もう、翔ちゃんは本当にばかですね。相葉さんと違って、救いようのないばか。まぁ、救いたくもないけど」
「ちょ、何だよそれ?」
「何でもありません。俺は仕事を家庭に持ち込まない主義なんです。だから、その話は後にして下さい。ねぇ、相葉さん?」
「ねぇ!」
「は?」
わけも分からずに立ち尽くす櫻井。
一部始終を見ていた松本は、ここだって仕事場じゃねぇかと心の中で突っ込む。
心配して損した。
まぁ、平和で嵐らしくて良いけどね。
嵐が家庭と言うのはなんとなく分かる気がするから。
松本は台本で口元を隠し、ひっそりと微笑んだ。
「じゃあ、相葉さん行ってくるね!」
5人での仕事が終わり、二宮と櫻井はドラマの撮影へ向かう。
「うん、行ってらっしゃい!」
手がちぎれそうなくらいに振って見送る相葉と、笑顔で答える二宮。
もう寂しくはないし、不安はない。
嫉妬も寂しさも不安も、全部乗り越えて訪れた幸せ。
天使はいつだって我が元に。
おわり
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