小説の再編集とか、資料とか、必要な諸々を置いておくブログ
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俺は小さい頃から冷めたところがあった。
皆と一緒に鬼ごっこしたり、かくれんぼしたりはしていたけれど、けっして皆のようにムキになったりはしなかった。
それが気に食わないと嫌がらせされたりもしたけど、それすらも特に何とも思わなかった。
今思えば、本当に扱いづらいガキだったと自分でも思う。
今の事務所に入ったのだって、自らの意志じゃなかった。
従姉妹が送った履歴書が通っただけの話。
オーディションに行くのを拒む俺に母親が5千円くれたから行っただけの事。
やる気もなく踊っていたのに、何故か合格。
レッスンも来いと言われたから行った。
特にやる気はなかったけど、振りを覚えるのは早かった。
そのせいか、真ん中で踊らされる事もあったけど、別に何とも思わなかった。
それが他のジュニアに反感を買っているのも知っていたけど、どうでも良かった。
今思うと、本当になんて嫌なヤツだと自分でも思う。
その頃の俺は冷めていて、ゲームをしている時だけが自分の唯一自分らしい時間だった。
俺がジュニアに入った頃は、ちょうど周りの奴らも俺もお年頃で、話といえば女の事やエッチな事ばかり。
男が寄れば、いつだってそんなもんだろう。
誰が好きだの、告っただの、ヤっただの、ヤリたいだの。
そんな話になんとなく混ざっていた時に聞かれた事があった。
好きな人はいないのか、誰かにときめいた事はないのかと。
ときめく?女に?
ないね。
昨日始めたゲームの展開にはときめいたけど。
そう言ったら、呆れられ、そして言われた。
「それは本当の恋を知らないからだよ」
余計なお世話だ。
じゃあ、お前は知ってるのかよ?
俺とそんなに歳は変わらないだろう?
たかが女とヤったくらいで恋愛マスター気取ってんじゃねぇよ。
でも、そう言って笑ったヤツは悔しいくらいにキラキラしていた。
いくら踊りでセンターを取っても、活躍を褒められても、俺はそいつのキラキラには勝てなかった。
それが恋ってヤツなんだろうか?
恋って、何だよ・・・?
家に帰って辞書を引いた。
「恋=特定の人物に強く惹かれること。切ないまでに深く想いを寄せること」
よく分からない。
その頃の俺は、恋って何なんだろうって、よく考えていた。
冷めていたけど、きっとあいつらのキラキラが羨ましかったんだ。
そんな時だった。
彼が俺の前に現われたのは。
踊る事にも、レッスンにも飽き飽きしていた俺は、事務所を辞めたいといつ言おうかということばかり考えていた。
その日も、今日こそは辞めると言おうと決意してレッスン場に来ていた。
いつもはレッスンが始まるまでゲームをしているのだけれど、その日は鞄に入れてくるのを忘れていたため、なんとなくぼんやりと過ごしていた。
レッスン場のドアが開いたのも偶然見ていただけだ。
遠慮がちに入ってきた1人の少年の姿に俺は目を見張った。
なんて綺麗な子なんだろう。
すらっとした細身の身体にさらさらな髪の毛、小さい顔に大きくて黒い瞳、ぷっくりとした唇。
衝撃的な出会いだった。
どうやら初めてのレッスンらしく、知り合いもいないようで、1人隅っこに座って、周りを窺っている。
その様子が何とも可愛らしくて、俺は話してみたい衝動に駆られた。
自ら行動を起こしたのは、ゲームをする事以外では初めてだったかもしれない。
「ね、ねえ・・・、君初めて?」
柄にもなく緊張した。
声も裏返り、どもったりして。
「え?う、うん・・・」
彼が振り返り目が合った瞬間、俺の体温は一気に上昇した。
体中の血が沸きあがり、湯気が出るんじゃないかというくらいに熱かった。
「あの・・・おれ、あいばまさきって言います・・・」
そう言ってぺこりと頭を下げた。
その声は少し高めで、ハスキーで、耳ではなく俺の脳に直接響いた。
「俺は・・・に、二宮和也って言うんだけど・・・」
俺の声は震えていただろう。
「にのみやくん・・・よろしくね」
「よろしく・・・」
差し出した手に自分の手を重ねた瞬間、電流が駆け抜けた。
身体がしびれた。
心臓が暴れだす。
その日の俺はどうやってレッスンを終えたのか、全く覚えていない。
気がついたら終わっていた。
「あの・・・二宮君・・・」
「な、何?」
「一緒に帰らない?」
「え?う、うん・・・」
一緒に歩いた帰り道。
偶然にも帰る方向が一緒だった俺たちは、沈黙の中ひたすら歩く。
何を話せばいい?
分からない。
でも、何か話したい。
気ばかりが焦っていた。
「あのさ、二宮君はもう長いの?事務所に入って」
「え?ううん、まだちょっとだけ・・・」
「そっかぁ、おれね初めてだったからすごく不安だったんだけど、二宮君が話しかけてくれたから嬉しかったの。だから・・・これからもよろしくね?」
俺の前に立ち、両手をぎゅっと握って俺を見つめる彼に、再び心臓が踊りだす。
「う、うん。こちらこそ、よろしく」
電車に乗ってたわいない話をして、俺のほうが先に降りて、彼を見送った。
今日で辞めようと思っていたのに。
これで辞められないな。
自然と顔が綻ぶ。
あんなに辞めたかったはずだ。
踊りもレッスンも嫌だったのに。
今はもう辞める気すらない。
いつも見ているはずの街並みが、今日は何だか違う。
何だかキラキラ、ピカピカ光って見えた。
身体はいまだに熱い。
熱でも出たのか。
そんな事はないはず。
身体は熱いのに、足取りはとっても軽いから。
今にもスキップしたくなるくらいに。
こんな街中でスキップしてたら、それこそ危ないヤツだな。
そう思って、1人笑った。
ふと、今日初めて会った彼を思い出した。
彼のはにかんだ笑顔と、甘い声。
それを思うと、体が熱い。
顔が綻ぶ。
街中がきらめく。
また、会いたいと思う。
何だろう、この感覚。
もう一度彼に会えば、分かるだろうか?
それからの俺は、今までにないくらい熱心にレッスンへ通った。
俺の変貌振りに周りはかなり驚いていたけれど、そんな事も気にならない。
ただ、楽しかった。
相葉と居ることが、楽しくて仕方なかった。
彼といると、相変わらず身体が熱いし、彼に触れられるとそこから身体がしびれる。
彼が笑うと世界はキラキラと輝き、踊りだしたくなる。
同時に胸が締め付けられる。
それが恋だと気付いたのは、もう少し後の事。
気付いてからは早かったよ。
全力で相葉を落としにかかった。
まぁ、出会ったときからの運命ってヤツだったんじゃないかな?
こうなる事は。
「にぃのっ!!」
「・・・はい?」
「はい?じゃない!!さっきから話しかけてんのに、ボーっとしちゃって!!具合悪い?」
「いいえ、ちょっと思い出してたの」
「なにを?」
「あんたとの運命の出会いを・・・ね?」
「運命って・・・あ、今日・・・8月15日ね!!」
「お前、忘れてただろ?」
「ちっ、違うよ!忘れてたんじゃないよ、思い出せなかっただけで・・・」
「それを忘れてたって言うんだよ。はい、お仕置き決定!」
「えーっ!ちょっと、待って!何でもするからさ、お仕置きは待って」
「だめぇ。記念日忘れた罰として・・・・一生を俺に捧げなさい」
「ふぇ?に、にの?」
「返事は!?」
「は、はいっ!!って・・・ええ!!」
「んふふ、相葉さん・・・愛してる」
「んっ・・・」
真っ赤な顔で慌てふためく彼にそっとキスをする。
恋って何だって、色々考えたりもしたけど、あんたに出会ってそんな事全部ぶっ飛んだよ。
理屈で考えたってしょうがない。
身体が、心が、俺の全てがあんたを欲した。
そういう事。
愛しい俺の恋人。
あんたに出会って俺は、知ったんだよ。
本当の恋ってヤツを。
おわり
皆と一緒に鬼ごっこしたり、かくれんぼしたりはしていたけれど、けっして皆のようにムキになったりはしなかった。
それが気に食わないと嫌がらせされたりもしたけど、それすらも特に何とも思わなかった。
今思えば、本当に扱いづらいガキだったと自分でも思う。
今の事務所に入ったのだって、自らの意志じゃなかった。
従姉妹が送った履歴書が通っただけの話。
オーディションに行くのを拒む俺に母親が5千円くれたから行っただけの事。
やる気もなく踊っていたのに、何故か合格。
レッスンも来いと言われたから行った。
特にやる気はなかったけど、振りを覚えるのは早かった。
そのせいか、真ん中で踊らされる事もあったけど、別に何とも思わなかった。
それが他のジュニアに反感を買っているのも知っていたけど、どうでも良かった。
今思うと、本当になんて嫌なヤツだと自分でも思う。
その頃の俺は冷めていて、ゲームをしている時だけが自分の唯一自分らしい時間だった。
俺がジュニアに入った頃は、ちょうど周りの奴らも俺もお年頃で、話といえば女の事やエッチな事ばかり。
男が寄れば、いつだってそんなもんだろう。
誰が好きだの、告っただの、ヤっただの、ヤリたいだの。
そんな話になんとなく混ざっていた時に聞かれた事があった。
好きな人はいないのか、誰かにときめいた事はないのかと。
ときめく?女に?
ないね。
昨日始めたゲームの展開にはときめいたけど。
そう言ったら、呆れられ、そして言われた。
「それは本当の恋を知らないからだよ」
余計なお世話だ。
じゃあ、お前は知ってるのかよ?
俺とそんなに歳は変わらないだろう?
たかが女とヤったくらいで恋愛マスター気取ってんじゃねぇよ。
でも、そう言って笑ったヤツは悔しいくらいにキラキラしていた。
いくら踊りでセンターを取っても、活躍を褒められても、俺はそいつのキラキラには勝てなかった。
それが恋ってヤツなんだろうか?
恋って、何だよ・・・?
家に帰って辞書を引いた。
「恋=特定の人物に強く惹かれること。切ないまでに深く想いを寄せること」
よく分からない。
その頃の俺は、恋って何なんだろうって、よく考えていた。
冷めていたけど、きっとあいつらのキラキラが羨ましかったんだ。
そんな時だった。
彼が俺の前に現われたのは。
踊る事にも、レッスンにも飽き飽きしていた俺は、事務所を辞めたいといつ言おうかということばかり考えていた。
その日も、今日こそは辞めると言おうと決意してレッスン場に来ていた。
いつもはレッスンが始まるまでゲームをしているのだけれど、その日は鞄に入れてくるのを忘れていたため、なんとなくぼんやりと過ごしていた。
レッスン場のドアが開いたのも偶然見ていただけだ。
遠慮がちに入ってきた1人の少年の姿に俺は目を見張った。
なんて綺麗な子なんだろう。
すらっとした細身の身体にさらさらな髪の毛、小さい顔に大きくて黒い瞳、ぷっくりとした唇。
衝撃的な出会いだった。
どうやら初めてのレッスンらしく、知り合いもいないようで、1人隅っこに座って、周りを窺っている。
その様子が何とも可愛らしくて、俺は話してみたい衝動に駆られた。
自ら行動を起こしたのは、ゲームをする事以外では初めてだったかもしれない。
「ね、ねえ・・・、君初めて?」
柄にもなく緊張した。
声も裏返り、どもったりして。
「え?う、うん・・・」
彼が振り返り目が合った瞬間、俺の体温は一気に上昇した。
体中の血が沸きあがり、湯気が出るんじゃないかというくらいに熱かった。
「あの・・・おれ、あいばまさきって言います・・・」
そう言ってぺこりと頭を下げた。
その声は少し高めで、ハスキーで、耳ではなく俺の脳に直接響いた。
「俺は・・・に、二宮和也って言うんだけど・・・」
俺の声は震えていただろう。
「にのみやくん・・・よろしくね」
「よろしく・・・」
差し出した手に自分の手を重ねた瞬間、電流が駆け抜けた。
身体がしびれた。
心臓が暴れだす。
その日の俺はどうやってレッスンを終えたのか、全く覚えていない。
気がついたら終わっていた。
「あの・・・二宮君・・・」
「な、何?」
「一緒に帰らない?」
「え?う、うん・・・」
一緒に歩いた帰り道。
偶然にも帰る方向が一緒だった俺たちは、沈黙の中ひたすら歩く。
何を話せばいい?
分からない。
でも、何か話したい。
気ばかりが焦っていた。
「あのさ、二宮君はもう長いの?事務所に入って」
「え?ううん、まだちょっとだけ・・・」
「そっかぁ、おれね初めてだったからすごく不安だったんだけど、二宮君が話しかけてくれたから嬉しかったの。だから・・・これからもよろしくね?」
俺の前に立ち、両手をぎゅっと握って俺を見つめる彼に、再び心臓が踊りだす。
「う、うん。こちらこそ、よろしく」
電車に乗ってたわいない話をして、俺のほうが先に降りて、彼を見送った。
今日で辞めようと思っていたのに。
これで辞められないな。
自然と顔が綻ぶ。
あんなに辞めたかったはずだ。
踊りもレッスンも嫌だったのに。
今はもう辞める気すらない。
いつも見ているはずの街並みが、今日は何だか違う。
何だかキラキラ、ピカピカ光って見えた。
身体はいまだに熱い。
熱でも出たのか。
そんな事はないはず。
身体は熱いのに、足取りはとっても軽いから。
今にもスキップしたくなるくらいに。
こんな街中でスキップしてたら、それこそ危ないヤツだな。
そう思って、1人笑った。
ふと、今日初めて会った彼を思い出した。
彼のはにかんだ笑顔と、甘い声。
それを思うと、体が熱い。
顔が綻ぶ。
街中がきらめく。
また、会いたいと思う。
何だろう、この感覚。
もう一度彼に会えば、分かるだろうか?
それからの俺は、今までにないくらい熱心にレッスンへ通った。
俺の変貌振りに周りはかなり驚いていたけれど、そんな事も気にならない。
ただ、楽しかった。
相葉と居ることが、楽しくて仕方なかった。
彼といると、相変わらず身体が熱いし、彼に触れられるとそこから身体がしびれる。
彼が笑うと世界はキラキラと輝き、踊りだしたくなる。
同時に胸が締め付けられる。
それが恋だと気付いたのは、もう少し後の事。
気付いてからは早かったよ。
全力で相葉を落としにかかった。
まぁ、出会ったときからの運命ってヤツだったんじゃないかな?
こうなる事は。
「にぃのっ!!」
「・・・はい?」
「はい?じゃない!!さっきから話しかけてんのに、ボーっとしちゃって!!具合悪い?」
「いいえ、ちょっと思い出してたの」
「なにを?」
「あんたとの運命の出会いを・・・ね?」
「運命って・・・あ、今日・・・8月15日ね!!」
「お前、忘れてただろ?」
「ちっ、違うよ!忘れてたんじゃないよ、思い出せなかっただけで・・・」
「それを忘れてたって言うんだよ。はい、お仕置き決定!」
「えーっ!ちょっと、待って!何でもするからさ、お仕置きは待って」
「だめぇ。記念日忘れた罰として・・・・一生を俺に捧げなさい」
「ふぇ?に、にの?」
「返事は!?」
「は、はいっ!!って・・・ええ!!」
「んふふ、相葉さん・・・愛してる」
「んっ・・・」
真っ赤な顔で慌てふためく彼にそっとキスをする。
恋って何だって、色々考えたりもしたけど、あんたに出会ってそんな事全部ぶっ飛んだよ。
理屈で考えたってしょうがない。
身体が、心が、俺の全てがあんたを欲した。
そういう事。
愛しい俺の恋人。
あんたに出会って俺は、知ったんだよ。
本当の恋ってヤツを。
おわり
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