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小説の再編集とか、資料とか、必要な諸々を置いておくブログ
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二宮は呆れた表情で目の前の光景を見ていた。


「んふっ・・・・んにゃ・・・・」


そこにはいまだ夢の中の相葉の姿。

いつもの事とはいえ、こいつはいつになったら学習してくれるのだろう。


「幸せそうな顔しちゃって・・・、おいっ相葉、いい加減起きなさいよ、遅刻するよ!」

「んあ?あー・・・にのぉ、おはよぉ」

「はい、おはよう。って、あんた高校生にもなって人に起こしてもらってんじゃないよ」

「だってぇ、起きれないんだもん・・・」


そう言って、唇を尖らせる。


「だもんじゃないでしょ。早く起きて顔洗ってきなさい!先行くよ?」


「はぁい」


勢いよく起き上がると顔を洗いに部屋を出て行った。


「まったく、アレで年上なんだから、世の中おかしいよ・・・」



二宮は大きなため息を漏らした。


*****


「ねぇ、にの。今日ね、翔ちゃんの家にお呼ばれしてんの。だから一緒に帰れないんだぁ」


2人並んで歩く学校へ向う道すがら、相葉が言った。
それを聞いて一瞬眉を寄せた二宮だが、すぐに表情を戻すと何でもないように答える。 


「・・・そう、分かりました」

「あれ?にの来ないの?」


相葉は二宮の返答に不思議そうに二宮を見た。
いつもは絶対「俺も行きます」って言うのに。


「・・・ええ。俺今日バイトあるんで」

「えっ?にの、バイトしてるの?」

「・・・ええ」

「・・・いつから?」

「1ヶ月くらい前から」

「聞いてない・・・」

「言ってないもん」

「なんで言ってくんないの?」



突然、相葉が不機嫌になった。



「・・・何でいちいちあんたに報告すんのよ。面倒くさい」


相葉の顔も見ず、二宮は答える。


「だってぇ!おれがバイトするって言った時、やめろって言った!!」


二宮の前に立ち、頬を膨らませて睨み付ける。


「あんたのは、危機感なさすぎだったでしょうが。それに、無駄遣いしてお金ないからバイトなんて、そんな浅はかな目的じゃないんで」


相葉の睨みなど全く気にせず、淡々と答える。


「じゃあ・・・なんの目的なのさ?」

「・・・・別に・・・あんたに関係ないでしょ?」

「むー。にののばか」

「あんたに言われたくないよ」

「なんだよ!俺のが年上なんだぞ。年上をうまやえっ!!」

「うま・・・、それを言うなら‘うやまえ’だろ?そんなことも言えない奴は敬えねぇよ」


呆れ顔で二宮が突っ込んだ。


「うーっ!!ばかばか。にののばか!もういいもん。にのなんて知らなもん!」


反論できなくなった相葉は大声で叫ぶと駆け出した。


「ばーかっ!」



べぇっ!!



「あんたは、子供ですか・・・」



走り去った相葉を見送りながら、二宮は頭をかいた。



*****


「翔ちゃーん。ここ、わかんない」


学校が終わり、相葉は櫻井の家に来ていた。
何事にも真面目な櫻井に促され、今はお勉強の時間。


「んー、どれ?」

「これ」

「ああ、これはさ・・・」

「翔ちゃーん、つまんない」

「お前ねぇ、自分から聞いといて・・・まぁ、今日は止めるか?」

「うん。勉強おしまーい!」

「お前ずっと上の空だったよな?何かあった?」

「んーん・・・、何にもないよ」

「そっか?お、もうこんな時間か。メシ食ってくだろ?」

「うん!あ、ねぇ翔ちゃん。今日、泊まっても良い?」

「え?俺は構わないけど・・・明日休みだし。けど・・・いいの?」


櫻井は、窺うような視線を相葉に向ける。


「いいの?って、なにが?」

「いや・・・だからさ、ニノとか・・・知ってんのかなって」

「にのは関係ないの!」


途端に不機嫌になった相葉に櫻井はたじろいだ。


「そ、そう・・・。なら良いけど、家に連絡しとけよ?」

「はぁい!」


夕食を食べた後、お風呂に入り、櫻井の部屋で過ごす。
櫻井がお風呂へ行っているうちに家に電話を入れた。
電話を切った後、携帯のメモリからある名前を表示する。



二宮 和也



発信履歴を見ても、メール送信履歴を見ても、ほとんどが彼の名前で埋め尽くされていた。
家だって隣だし、ずっと一緒に育ってきたし、知らないことなんてないと思っていたのに。
二人が成長するにつれて、色々と知らないことが増えていった。


どうしても超えられない年齢の壁。


相葉が中学生になった頃から、特にその壁が高く、厚くなっていた。
いつの間にか、呼び名も「雅紀」から「相葉さん」に変わった。
それでも相葉は必死に二宮の近くに居ようとしたのだ。
毎日のように彼の部屋へ行き、その日あったことを全て話し、二宮からも聞いた。
迷惑そうにしながらもいつも二宮は話してくれたし、聞いてくれた。


それなのに。
バイトのことは教えてはくれなかったのだ。
今までこんなことなかったのに。
ショックだった。
バイトをしていたこと以上にショックだったのは、二宮のあの言葉。




『何でいちいちあんたに報告するのよ、面倒くさい』

『・・・別に・・・あんたに関係ないでしょ?』




「・・・にののばか・・・」


開いていた携帯を閉じた。



「相葉ちゃん、どうした?」


風呂から上がった櫻井が髪の毛を拭きながら相葉を覗き込んだ。


「ん?何でもないよ!翔ちゃん、服ありがとぉ」


風呂から出て、また制服を着るわけにもいかず、相葉は櫻井の服を借りていた。


「ああ。やっぱ相葉ちゃん細ぇな。ぶかぶかじゃん。」

「身長は俺のがあるのにね!翔ちゃんがたくましすぎんでしょ?筋肉ばかだもん」

「・・・お前ね・・・、追い出すぞ?」


頬を引きつらせて、答える櫻井に相葉が爆笑する。


「うひゃひゃっ、うそうそ。」

「ったく・・・。そろそろ寝るか?」

「うん!ね、ね、翔ちゃん。一緒に寝よ?」

「えっ!?な、何言ってんだよっ!一緒にって・・・」


突然の提案に、櫻井が目を見開いて慌てる。


「だめ?」

「だ、だめっていうか・・・その・・・ねぇ?」


櫻井は何と言っていいのか言葉につまる。
小首を傾げて自分を見つめる相葉はとても可愛らしく、思わずお願いを聞きたくなるが。
もし、相葉の言うとおりにしたら自分の命は確実にないだろうと、ある人物の顔を思い浮かべる。



相葉とは高校に入ってからの付き合いだ。
最初の印象は、綺麗な顔した美少年。
物憂げな眼差しに思わず見惚れた(本人としてはただボーっとしていただけらしい)


話してみたら、ただのお馬鹿さんだったのだが、それがまた可愛くて、構いたくて仕方なくなっていた。


それが何だか恋に似ていると、気付いた時はかなり焦ったが。


彼にどうやらそれらしい相手がいると知ってショックだったが、二宮と会って、すぐに納得した。
相葉の二宮を見る目、二宮の相葉を見る目、ともに絶大なる信頼を置いているのが分かったから。
自分に入り込む余地はないと実感してからは、2人の良き友達として付き合ってきた。

ただ、相葉に初めて二宮を紹介されたときから、二宮が見せる櫻井への警戒心はとてつもない。

きっと、二宮は櫻井の気持ちに気付いていたのだろう。
常に相葉の気付かないところで、牽制されてきた。

今までも、何度か泊まりに来た事はあったが、いつも二宮と一緒だった。
その二宮が相葉を1人で泊まらせるなんて。
普通に考えても、絶対にあり得ない。


今日の相葉は、朝から終始心ここにあらずだった。
急に泊まりたいと言ってきたところや、先ほどの相葉の態度からして、喧嘩でもしたのだろう。


「ねぇ、翔ちゃん!聞いてる?」

「あ?ああ・・・悪ぃ。お前さぁ、いつも誰かと寝たりしてんの?」

「・・・いつもじゃないけど、眠れないときは・・・にのがそうしてくれる・・・」



二宮の名前が出ると、途端に沈んだ顔をする相葉。



「・・・ニノと・・・喧嘩でもした?」


相葉の頭を撫でながら問う。


「・・・・喧嘩になんかならないよ。にのはおれのことなんて、どうでもいいんだから・・・」


俯き加減で相葉が呟いた。


「相葉ちゃん・・・。どうでもいいなんて、ニノは絶対思ってないと思うけど。」


そんな事、絶対にあり得ない。


「どうでもいいんだよ・・・・。だって、おれに内緒ごとするんだもん・・・」

「内緒事・・・?」


俯いたままの相葉の顔を覗き込むと、口を一文字にして泣くのを耐えているようだった。


「もう、いいじゃん。ね!寝よ?」


話を終わらせたいのか、相葉はベッドへと移動して、櫻井を呼ぶ。
ベッド誘われて、相葉にその気はないと分かっていても、櫻井の心臓は跳ね上がる。
どうしたもんかと考えあぐねていたところで、櫻井の携帯が鳴った。



「んー・・・残念。相葉ちゃん、お迎えだよ?」



そう言って相葉の前に携帯を差し出す。
ディスプレイには二宮の名前。
それを見た相葉が眉根を寄せて櫻井を睨む。



「翔ちゃん・・・連絡したの?」

「ああ・・・。ちょっと相葉ちゃんの様子がおかしかったからね」

「・・・翔ちゃんのばか」

「はいはい、ごめんねバカで」



でもね、俺も命が惜しいんですよ。



相葉の手を取り、玄関へ向かう。




ドアを開けると、不機嫌そうな二宮の姿があった。


「・・・あんた、俺に断りもなく何やってんの?」



あまり聞いた事のない二宮の低い声に櫻井は驚いた。



「・・・・なんだよぉ。おれは悪くないもん・・・。悪いのはにのでしょぉ・・・。おれに内緒ごとしてぇ・・・」


一気に泣きそうになる相葉に、二宮は大きなため息を吐いた。
そのため息に相葉の肩がびくっと跳ねる。


「に、ニノ、何があったかしらねぇけどさ・・・・」

「知らないなら黙ってて下さい」

「は、はい・・・」



間に入ろうとした櫻井を一蹴し、相葉を見据える。


今朝のやり取りから、相葉が拗ねているのは分かっていた。
櫻井からの連絡を受け、すぐに迎えに来たのだが。


玄関が開いて二宮の眼に映った相葉は、櫻井の服に身を包んでいた。
二宮の苛立ちが増す。


「・・・・お前さ・・・まず着替えろ」

「ふぇ?」

「いいから!その翔君に借りた服、全部脱いで着替えろ!!」


急に大声を出した二宮に相葉と櫻井は固まった。


「・・・早くしないと、ここで脱がすよ?」

「じ、自分できがえる・・・」


そう言って櫻井の部屋へと戻っていった。


「ニノさぁ・・・、相葉ちゃんヘコんでたぜ?お前が自分の事なんてどうでもいいと思ってるって。だから内緒事するんだってさ」

「・・・・はぁ・・・・。ホント、馬鹿なんだから・・・」


二宮が呆れたように頭をかいた。


「何隠してんの?」

「別に・・・たいした事じゃありません・・・」


二宮がそこまで言ったところで、相葉が着替えて戻ってきた。



「・・・帰るよ」

「・・・やだ」

「相葉!」

「やだ!」

「・・・分かった。もういいよ」



二宮は身を翻し、歩き出そうとする。


「え?ちょっ、にの?やだぁ・・・・まってぇ・・・・」

「・・・・あんたさぁ。・・・どっちなんだよ!?あんたが帰らないなら、俺1人帰るっつってんの!」



「やだぁ・・・」



ついに泣き始めた相葉に、大きくため息を吐いて二宮が近寄る。


「うぇ・・・うー・・にのぉ・・・怒ってる?おれのこと、嫌いになった?」

「・・・怒ってないし、嫌いにもなってないよ?」

「ほんとぉ?」



目にいっぱい涙を溜めて、窺うように二宮を見上げる。


「ええ。俺、あんたの事大好きだもん」



二宮が相葉の頭を撫でると、嬉しそうにその手に頭を擦り付けた。
その仕草に微笑んで手を差し出す。


「相葉さん・・・雅紀。一緒に帰ろう?」

「うぇっ・・・ん。にのと帰るぅ・・・」


そう言って相葉が二宮の手を握る。


「ということですんで連れて帰ります。今日のところは、お礼を言います。まぁ、次はないですけど」


二宮が櫻井に頭を下げた。
それを見て相葉も頭を下げる。


「翔・・・ちゃん、お世話にっ・・・なりました」

「はい、どうも」


そんな2人に櫻井は苦笑して、手を振った。




*****


2人が帰ってきたのは二宮の部屋。
相葉はまだ半泣き状態だ。


「・・・いい加減泣き止みなさいよ」


顔、腫れるよ?


「うぇ・・・くっ、だってぇ・・・。にのに嫌われたと・・・うっ・・おも・・たんだもぉん・・・うっ・・・」

「嫌いになんかなってないって、言ったでしょ?」


あんたが思ってるより、相当あんたにイカレてんだよ。


「うっん。でも、じゃあ・・・・どうして教えてくれなかったのぉ?バイトのこと・・・。おれ、ほんとに悲しかったんだからぁ・・・」

「・・・・あんたに言ったら、自分もやるって言うでしょ?」

「うっ・・・・」

言葉につまった相葉、どうやら図星のようだ。

「だから言わなかったの。前にも言ったけど、いくら俺だってバイト中にあんたの面倒まで見れないからね」

「なんだよ・・・それぇ・・・うぇっ」

「もう・・泣くなって。変な意味じゃないよ。ただ、心配だからいつでも俺のそばに居て欲しいってこと!それに、一緒にバイトなんかしたら俺だって、仕事どころじゃないだろ?」



あんたが心配で。



そう言って、相葉の頭を撫でた。


「にぃのぉ・・・・」


更に大粒の涙を流す相葉。


「もう・・・だから泣き止めって。明日不細工だったら、口きかないよ?」

「やだ!!」


一生懸命に涙を堪えようとする相葉が何とも愛おしくて、二宮は微笑んだ。
頭に置いた手を頬へとずらし、涙を拭ってやる。
そんな二宮をじっと見つめる相葉。


「・・・何?」

「ううん・・・にの、やさしい・・・」

「俺はいつだって優しいでしょ?」

「うん・・・。でも今日は冷たかったもん・・・」


朝の二宮の態度を言っているのだろうと、すぐに分かった。


「あれは・・・あんたが翔君の家に行くなんていうから」

「何で?いつも行くじゃない?」

「だから!今日は俺がいけないから、ちょっと心配だったんだよっ!」

いくら理性のあるヤツで自分と相葉の事を知っていても、翔君だって男なんだからさ。

「えへへ・・・」


「何笑ってんの?」

「にのに嫌われたんじゃなくて良かった」


ようやく相葉に笑顔が戻る。


「だから、そう言ってんじゃん」


呆れたように言う二宮。



「うふふ。あ、でもさ・・・なんでバイト始めたの?にのお金持ちなのに。確か、お金がないからバイトなんて理由じゃないって言ってたよね?」

「・・・あんた、頭悪いくせに変なところで記憶力が良いんですね・・・」

「なっ、にのひどいっ!」


再び顔が崩れそうな相葉に、二宮は少しばかり焦る。


「まっ、頼むから泣くなよ?」


俺、あんたの泣き顔苦手なんだ。


「教えてくれなきゃ泣く!!」

「変に賢くなりやがって・・・」


二宮は顔をしかめる。


「ねぇ!どうして?」


もう少し黙っていようと思っていたのに。


「・・・夏休みに、どっか行きたいって言ってたでしょ?」

「へ?」

「だから!夏休み2人でどっか行きたいねって、あんた前に言ってたじゃん!」

「ああ・・・言ったかな・・・え?それで?」


驚いて二宮を見ると、顔を少し赤らめてそっぽを向いた。


「どうせ行くなら、泊りが良いなって・・・・思ったんだよ」

「にぃのぉ・・・・」



思いがけない二宮の言葉にせっかく戻った顔がくしゃりと崩れた。



「あーあ、泣くなって言ったじゃん」

「だってぇ、嬉しいんだもん・・・」


ガバッと抱きついてきた相葉を受け止めると、ポンポンと背中を叩く。


「おれ、自分が情けなくって・・・いっつもにのは、おれよりも先にいて・・・・年下なのに頼ってばっかで、迷惑かけて情けない・・・」

「・・・あのね、そんなの今更なの。いつも迷惑かけられて嫌ならとっくに離れてるよ。それでも、俺があんたのそばにいたいから、いるんでしょ?分かる?」


それにさ、しっかりしたあんたなんて気持ち悪くて嫌だよ。



「・・・・分かった!」

「そ。なら、もう泣き止めよ?」

「俺もバイトする!!

「・・・はぁ!?」

「だって、にののバイトの目的が俺との旅行って分かった以上は、おれだって資金稼がなきゃ!」


相葉は拳を高く突き上げた。


全然俺の言ってる事、分かってねぇじゃんと、顔を覆う二宮。


「あのさぁ・・・ま、いいや。それはそれで好都合かも。どうせ、そのつもりだったし・・・」


二宮は相葉に気付かれないよう、ニヤリと笑う。


「ん?何か言った?」

「いいえ。ねぇ相葉さん、お金はねもう充分溜まったから、今日でバイト終わりにしたんだ」

「えー、そうなの?おれも頑張ろうと思ったのにぃ・・・」

「んふふ、でもあんたには働いて貰おうかな?」


「へ?」


「商売の基本は需要と供給。あんたは自分の旅行代金を稼ぎたい、俺はそれに見合うお金を持っている。俺のためにバイトしてみる?」



さぁ、どうする?



「じゅようときょうきゅう・・・よく分かんないけど、にののために働いたら良いの?」

「そうだね・・・俺を満足させてくれたら、それでいいよ」


「分かった!おれ頑張る。にのを満足させるよ!!何すればいい?」


「んふふ・・・、何してくれんの?」

「にのがして欲しいことなら、なんでも!!」

「何でもねぇ・・・。じゃあ、キスして?」

「ええっ!おれから・・・するの?」



相葉の顔が一気に赤くなった。



「はい、もちろん」

「うう・・・」

「出来ないの?」

「やるよぉ・・・目瞑って?」


相葉に言われて、目を瞑る。


二宮に近づくと、相葉はそっと触れるだけのキスをした。
その唇が震えているのを自分の唇で感じ取った二宮は思わず笑う。



「おわりっ!なんだよぅ、笑うなぁ!」

「んはは。だって、あんた。可愛いんだもん」


キスなんて、何度だってしてるのに。


「だって、おれからなんて・・・はじめてだもん!」

「うん、そうだね。ねぇ相葉さん・・・初めてついでに、もう少し踏み込んでみようか?」

「え?」

「これだけじゃ、満足できないってことだよ」



相葉の腕を引き自分に近づけると、相葉の後頭部に手を回して一気に引き寄せキスをした。



「んっ!んはっ・・・あんん」


先ほどの触れるようなキスではなく、相手の唇を喰らいつくすように激しいキス。


二宮の舌が相葉の口腔内を犯す。


充分に味わうと、最後に下唇に吸い付いて二宮の唇が離れていった。


「ふあっ・・・・ん」


うつろな瞳で、無意識に離れた唇を追おうとする相葉に苦笑する。


「気持ち・・・良かったでしょ?」

「食べられちゃうのかと思った・・・」

「んははっ、そうだね。それも間違いじゃないね」

「もう・・・、笑うなぁ!だって、変だったの!!なんか・・・苦しいのに、気持ちくて・・・でも、嫌じゃない。苦しくてやめてって思うのに・・・・」

「止められると、もっとって?」

「う、うん・・・・にの・・・なんなの?」

「知りたい?」

「にのは・・・わかるの?」



おれのこの気持ちが。



「そうだね・・・・それが俺の求めてるものかな?」



二宮と相葉は、小さい頃から一緒にいて、お互いに好意を持っていることも承知していた。
しかし、2人の間にキス以上の関係はない。


キスだって小さい頃からの習慣で、触れるだけのものしかしたことがなかった。

いまだ、子供のように純粋な相葉。
彼の心が自分に追いついてくるまでは待とうと思っていた。

しかし、日に日に綺麗で魅力的に成長していく相葉に焦りを感じていたのも確かで。
姿かたちの成長とはうらはらに、中身が成長しきれていない相葉は、色々と危ない目にも会いそうになってきた。


先日のアルバイトの件だってそうだ。


何の疑いもなく信じていた。
そんな割のいいバイトが、そうそうあるわけないのに。

このまま彼の成長をのんびりと待っていたら、他のやつに掻っ攫われるかもしれない。
先日の出来事から、二宮の中に焦りが生じた。


そこに、夏休みの話が出てきて。
二宮はチャンスだと思った。
2人の関係を変えるチャンスだと。


「にのの、求めてるもの・・・・」


相葉は少し不安そうに二宮を見上げ、そして決意を固めた表情をした。


「にの・・・教えて?おれ、どうすればいい?」

「・・・いいの?」

「・・・うん。にのの求めてるものが知りたい。にのに満足してもらいたい・・・」

「あのね、あいば・・・・雅紀。まず聞くけど、さっきのキス、嫌じゃなかったって言ったよね?」

「うん」

「アレさ・・・俺じゃなかったら、どう?例えば、翔君とか・・・」



「翔ちゃんと?・・・・だめ、考えられない」



少し考えた後、大きく首を振る。



「どうして?」

「え?どうしてって・・・だって、にのとしかできないよ」

「どうして俺とは出来るの?」

「にのとは・・・・にのはおれの好きな人だもん。キスは好きな人とするものでしょ?」



初めてキスしたときに、にのがそう言ったじゃない。



「うん・・・そうだね、安心した。じゃあ、その先も・・・俺となら出来る?」

「よく・・・分かんないけど、にのとならなんだって大丈夫だと思う」



相葉は不安そうに、でもしっかりと二宮を見て答える。


「上出来。雅紀、おいで?」


相葉の手を引いて自分の腕の中に導くと、再び口付けた。

それは先ほどよりももっと激しく深いもので、息さえも飲み込まれそうで、相葉は二宮のシャツをぎゅっと握り締めた。



「んはっ・・・ん、あっ・・・」


キスに夢中な相葉のシャツの裾から手を滑り込ませ、胸の突起を擦り上げると、相葉の身体がビクンと跳ねる。


「んあっ・・・ん、にのぉ」


戸惑いと不安の入り混じった瞳から大粒の涙が零れた。


「大丈夫。あんたはただ、感じてくれれば良い・・・俺を感じてくれれば・・・」


ゆっくりと相葉を押し倒すと、シャツを脱がし胸の突起に唇を落とす。
舌先で転がしたり押しつぶしたり、初めての相葉の感触を確かめるように優しく愛撫する。


「あふっ・・・ん・・ん・・・あぁっ!」


身体のラインに沿って手を下ろしていき、反応を始めている相葉自身に触れた。
そのまま布越しにやんわりと擦ると、面白いほどに相葉の身体が跳ね上がる。


「う、あっん・・・んっ、あぁ」


相葉の反応を見ながらズボンを下ろすと、直接相葉自身を握りこみ、上下に動かす。


「ああっん・・・んっ、にの、にの・・・こわいっ・・・・・」


初めて味わうその強烈な刺激に恐怖を感じ、二宮の名前を呼び続ける相葉。
瞳からは止め処なく涙が溢れる。


そんな相葉に、二宮は優しく声をかける。


「・・・まさき、大丈夫だよ。俺も雅紀と同じだから・・・」


そう言って、自らの欲望を相葉の大腿に押し付けた。


「あ・・・・に、にの?」



二宮の熱いものを感じて、相葉の瞳が揺れた。



「好きだからキスするのと同じ・・・好きだから、触れたい。触れて確かめたいんだ。雅紀が俺と同じ気持ちだって・・・。それが俺の求めてるものだよ」



相葉の頬を撫で、切なげに目を細めた。


「触れて・・・いい?」


無理矢理奪いたいわけじゃない、気持ちがないと意味がないんだ。


「う・・ん、さわって?おれのきもち・・・確かめて?」



不安だけど、大丈夫。



にのがいてくれるんだから。


「ありがとう・・・」


額にキスを贈り、再び相葉を握りこむ。
不安にさせないよう顔中にキスを落としながら、それでも先ほどよりも激しく動く二宮の手は、確実に相葉を追い込んでいく。


「んっ!あ、あっ・・・に、にのっ、なんか・・・あ、だめっ・・・」


「・・・いいよ、出して?」


相葉の絶頂が近いと知り、更に動きを早め射精を促す。




「あ、あ・・・だっ・・・でちゃ・・・ああっ!」




相葉の一際高い声と共に、二宮の手の中に白濁の液体が流れてくる。




「はぁん・・・・」




肩で息をして、くったりと動けない相葉の代わりに二宮は後始末を済まし、相葉の衣服を整えた。

いまだぼんやりと天井を見ている相葉の顔を覗き込み、にっこりと笑った。



「どうだった?気持ち良かったでしょ?」


「え・・・うん」


顔を真っ赤にして目を逸らす。


「良かった。今日はもうゆっくり寝なさい」


「え?に、にのは?しないの?」

「今日は・・・止めとく。あんたの身体も心配だしね。身体辛いでしょ?徐々に慣らしていかないと。」



初めての強い刺激に頭も身体もついてこられないようで、相葉はまだ動く事もままならないようだった。



「でもっ・・・おれだって、確かめたいよ、にのの気持ち」


「んふふ、それは今度の旅行の時までとっとくよ。それまでに、まだまだあんたにはやってもらいたい事がたくさんあるからね」 


「まだ、他にもやる事があるの?」


再び不安そうに二宮を見る。


「ええ、まだまだ。俺を満足させてくれるんでしょ?これじゃまだ、バイト料は出せないよ」


満足なんて、一生しないけど。
あんたのバイトが終わる事は、俺が生きてる限りないってことだよ。


これは、バイトじゃなくて永久就職するしかないかもね。



ベッドに横たわる相葉に、優しく触れるだけのキスをした。





おわり
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