小説の再編集とか、資料とか、必要な諸々を置いておくブログ
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「ははっ!ニノ、すっげぇ似合ってんなぁ・・・・」
笑いを押し殺すようにして言う櫻井を、二宮は思いっきり睨み付ける。
「うるさいよ・・・全く。何で俺がこんな格好・・・」
そういいながら髪をいじる姿は、なかなか様になっているなと、櫻井は再び笑う。
「さっきから、翔ちゃん笑いすぎ・・・」
「・・くくっ。だって、お前・・・気持ち悪ぃ・・・」
二宮はドラマの撮影で、メイド服を着ていた。
黒地の膝丈のスカートに黒の網タイツ、白いフリフリのエプロン、ご丁寧にロングのウィッグにカチューシャをつけて、おまけに化粧までしている。
頬紅とリップグロスが妙に強調されて、なんとも言えない。
「・・・人事だと思って・・・まぁ、やるからにはやってやりますよ!」
「おお、さすがニノちゃん。役者ですね、カッコ良くないけど」
「・・・今はカッコ良くなくていいんです。女の子ですから」
そう言って、グラビアアイドルのようにポーズをつけ、櫻井に向かってウインクした。
「うわー・・・、本気でヤメテ・・・」
櫻井は眉根を寄せて、嫌そうな顔をする。
「んはは!さぁ、サッとやって終わりましょうよ!今日は約束あるんですから」
「約束?相葉ちゃん?」
「ええ。愛しのハニーちゃんに会うためですから、頑張りますよ!!」
拳を握る二宮に、毎日のように会ってるくせに何言ってんだと、心の中で突っ込んだ。
それにしても・・・。
「相葉ちゃんかぁ・・・・」
櫻井はそれだけ言うと、どこか違う方向を見つめてニヤつき始めた。
それ見た二宮は、不愉快そうに顔をしかめる。
「・・・ちょっと、翔ちゃん。俺の相葉さんを汚さないで下さいよ」
「なっ!汚すって何だよ・・・」
「だって今、『相葉ちゃんにメイド服着せたら似合うだろうなぁ』とか、相葉さんに着せて『ご主人さまぁとか言わせてぇ』とか思ったでしょ?」
「おっ、思ってねぇよ・・・・」
「嘘だ!絶対今の変態顔は思ってたね」
「変態顔って・・・じゃあさ、お前は思わないわけ?んなわけないよなぁ・・・?」
だっだら、そこにあるものは何なの?と、二宮の足元の大きなバッグを指差した。
「絶対終わったら、衣装もらうつもりだろ?」
「んふふ・・・まぁ、恋人同士の営みの盛り上げアイテムですからね・・・」
「やっぱり・・・俺と変わんないじゃねぇか」
「ちょっと、翔ちゃんと俺を一緒にしないでよ!決定的に違うでしょ?俺にはあの人にコレを着させる権利がある」
櫻井に、にっこり笑って見せた。
スカートの端を両手で持ち上げて、挨拶のポーズつきだ。
「・・・はいはい、その通り。羨ましい限りですね」
そんな二宮に呆れた視線を送った。
「ふふっ。それに、俺は翔ちゃんみたいに、ただ着せていちゃいちゃして喜ぶなんて下世話な事はいたしません」
「何だよそれ。じゃあ、それ以外にどうするってんだよ?」
「んふふ・・・俺の考えはもっと高尚なんですよ・・・」
二宮の不敵な笑みに、相葉の行く末を案じる櫻井だった。
おわり?
―現在、山田太郎ものがたり第2話放送中―
「うひゃひゃっ!にの、すごい!!唇つやつや!メイド可愛いけど、超キモイ!!うひゃひゃっ!!」
案の定、隣の相葉は二宮のコスプレに大ハマリだ。
その様子を見ながら、二宮は口元を弛ませる。
この後のお楽しみを、思い浮かべて・・・。
―放送終了―
「あー、面白かった!翔ちゃんもやればよかったのに、コスプレ」
「翔ちゃんのコスプレ、相葉さんは見たい?」
「・・・・見たくない」
絶対キモイもん。
そう言って顔をしかめた。
「んははっ、だろ?んで、俺は?」
「んー、キモイけど・・・ちょっと可愛かった・・・し、色っぽかった!!」
「んふふ、ありがと」
「あーあ、でもおれも生で見たかったなぁ・・・にののコスプレ。いいなぁ、翔ちゃんはぁ・・・」
きた!!
二宮は心の中で叫び、ガッツポーズをした。
相葉からこの言葉が出れば、70%はミッション成功だ。
「相葉さん・・・俺のコスプレ・・・見たい?」
「へ?うん!生で見てみたい!だって・・・・。いっつもおればっかり・・・なんだもん・・・」
「あ、やっぱり根に持ってたんだ」
「そりゃあね。恥ずかしいんだよ!分かったでしょ?」
顔を赤らめて恥ずかしがる姿は、二宮の加虐心を煽るだけとは気付いていない。
「まぁね、確かに恥ずかしかった。でも、相葉さんは俺の前だけじゃない。俺なんて、全国だよ?」
「そうだけどぉ、にのはテレビだし・・・それに女の子だけど、みんな同じ格好してたじゃん。おれ・・・1人だもん。しかも、にのの前で・・・やっぱ恥ずかしいよぉ」
自分の前だから恥ずかしいと言う相葉に二宮の機嫌は上昇する一方だ。
「恥ずかしがりやさんだなぁ、相葉さんは。実はね・・・今日はそんな相葉さんのためにね・・・・これ!!」
そう言って二宮が相葉の前に差し出したのは、二宮が収録で着た衣装だった。
「もらって来ちゃったvv」
メイド服と、チャイナ服、それに使用したウィッグまである。
相葉は嫌な予感に、顔を曇らせる。
そんな相葉を横目に嬉しそうに衣装を差し出す二宮。
「・・・それ、どうすんの?」
「どうするって、着るんですよ。相葉さん見たいんでしょ?俺の生コスプレ」
「うん、見たい!にのが着てくれるの!?」
途端に目を輝かせる相葉。
80%成功。
「んふふ・・・相葉さんはどっちが見たい?」
「えー・・・どっちかなぁ。メイド・・・いやいや、チャイナかなぁ・・・両方は?」
「どっちかだけだよ」
「けちぃ。んー・・・でも、メイドは結構ドラマの中で見たから、一瞬だけだったチャイナがいい!せくしーチャイナ!!」
90%成功。
「いいよ。じゃあ・・・はい!」
「え?なに?」
相葉は自分に渡されたものをきょとんと見つめた。
「メイド服」
「わかってるよ!何でおれ?」
「だって、俺がチャイナ着るんだから。何?相葉さんチャイナが良いの?」
「ちがうっ!これ、おれがどうすんのって聞いたの!!」
「どうするって、あんた・・・服は着るもんでしょうが」
そんなことも分かんないの?
「わかってるよ、そんなこと!!おれが着るの!?」
「そうですよ」
「なんで?」
「何でって、さっき自分で言ったじゃない、1人で恥ずかしいって。だから、2人で着たら恥ずかしさは1/2でしょ?
俺だって、1人は恥ずかしいんだよ。でも、相葉さんも着てくれるなら良いかなって思って。だめ?」
そう言って、二宮お得意のおねだり顔で相葉を攻める。
「うっ・・・、わかったよぉ。着れば良いんでしょ?その代わり!にのもちゃんと着てよ、それ!」
相葉が赤い顔を更に赤らめて念を押す。
どうやら、騙されて1人だけ着せられると疑っているようだ。
「はい、もちろん。着替えます。ほら、相葉さんも着替えてきて?」
「う、うん・・・」
いまいち納得しきれないまま、相葉は着替えるため、部屋を出て行った。
それを見送った二宮は口元だけで笑った。
95%成功。
おわ・・・らない・・・
「うわー・・・。結構短いよぉ・・・・」
相葉は二宮に渡されたメイド服を着て、途方に暮れていた。
二宮が着ていた時は膝丈程度だったのだが、相葉の方が身長が高い分、丈は短くなる。
「うー・・・恥ずかしい・・・」
相葉が二宮の前でコスプレをするのは初めてではない。
むしろ、他の恋人同士よりは多いくらいだ。
それには、二宮の趣味がかなり反映されているのだが、相葉は一向に慣れることがなかった。
自分の格好が恥ずかしいというよりも、その姿を二宮の射抜くような、全てを見透かされているような視線の前にさらけ出す事が耐えられなかった。
こんな自分の姿を見られている。
きっと二宮は気付いているのだろう。
恥ずかしいと言いながら、彼にされる事を期待している自分に。
彼のそんな視線が、たまらなく相葉を感じさせている事に。
だからこそ、恥ずかしくてたまらないのだ。
「これも・・・履くのぉ?」
相葉はためらいながら、網タイツに足を通した。
恥ずかしさに打ちのめされそうな相葉に、二宮から声がかかる。
「相葉さん、着れた?」
「う、うん・・・もうちょっと。にのは着たの?」
「んふふ・・・準備万端ですよ。早く出ておいで」
「いま行く・・・おかしくないよね?」
一度、鏡で自分の姿を確認する。
男の相葉がメイド服を着ている時点で充分おかしいのだが。
息を大きく吸い込んで鼓動を整えると、戸惑いがちに二宮の居る部屋のドアを開けた。
「にの・・・って・・・うわぁ!にの、超きれいっ!!」
ドアを開けた向こうの二宮の姿を見て、相葉は感嘆の声を上げた。
そこにはチャイナ服を着た二宮が妖しく笑って立っていた。
自分の格好も忘れて、二宮に駆け寄る。
「うひゃひゃっ!にの、すごいねぇ。ヅラもかぶったの?化粧もしてる!!くちびるつやつやだぁ・・・くふふ」
楽しそうに二宮を上から下まで眺め、周りをくるくると回る。
「んふふっ。相葉さん、はしゃぎすぎ」
「だって!すごい!にの自分で化粧したの?」
「もちろん。似合ってる?」
「うん!きれい!!」
目を輝かせて二宮を見ている相葉。
97%成功。
「相葉さんだって・・・かわいいよ?」
「え?あっ・・・うん。ありがと・・・」
二宮に言われて自分の格好を思い出し、急に恥ずかしそうにスカートの裾を引っ張る相葉。
その姿を妖しく見つめる二宮。
「相葉さん、ウィッグとカチューシャは?」
あったでしょ?
「・・・う、うん。コレもつけるの?」
「当たり前でしょ?俺だって着けたんだから、相葉さんも!」
「はいぃ・・・」
鏡の前でウィッグとカチューシャを着けて、雅紀メイドの完成だ。
「うわぁ・・・相葉さん似合ってるっ!ふわふわメイドさんだね。かぁわいい!!」
「うー・・・どうもっ!」
98%成功
「でもなぁ・・・もう一息だね!」
「もうひといき・・・?」
「うん。相葉さん、ここ座って?」
二宮の勧める椅子に座った相葉は、不安そうに二宮を見つめた。
「なにするの・・・?」
その顔が二宮の心をくすぐる。
「ふふっ・・・やるんなら徹底的にね?」
相葉の目の前に化粧道具が並んだ。
「お化粧・・・するの?」
「そりゃ、俺もしてるんですから相葉さんも!俺がしたげる。ね?」
「うん・・・」
「じゃあ・・上向いて、目瞑って?」
相葉の顎に指を掛けて、上を向かせる。
不安げに揺れる潤んだ瞳が閉じられた。
従順な相葉に、妖しく光る唇が吊り上る。
99%成功。
あー…なんて可愛いんでしょうねぇ、俺のハニーちゃんは!!
不安そうに眉を寄せて一生懸命に目を瞑って俺に身を委ねてんの。
唇が震えてるんだから、もう堪んないですよ。
このまま。唇に貪りつきたいっ!!
足までぎゅっと閉じちゃってさ、ああ綺麗な足だなぁ。
触りたいなぁ・・・って、いやいや、まだです。
何のために俺までこんな格好したんですか!!
ここは我慢!
俺の最高傑作、作っちゃうからね!
化粧する手にも力が入りますよ。
このために、メイクさんに化粧法を習ったんですからね。
優しくファンデーションをつけて。
シャドウは、ふわふわメイドさんだから明るい色目が良いよね?
んふふ・・・睫毛長いからマスカラ要らないね。
ビューラーだけで充分。
薄くチークをのせて・・・よしっ!
「相葉さん・・・目開けて・・・?」
俺の声にゆっくりと目を開ける。
開けた瞬間びっくりしたように俺を見て、慌てて目を逸らす。
「相葉さん?」
「に、にの。顔近いっ・・・見ないで・・・」
そう言って顔を赤くする。
もう!可愛すぎるでしょ?その反応。
「んふふ。見て!俺が思ったとおり、相葉さん超可愛い!!」
俺の言葉に、鏡で自分の姿を確認した相葉さんは、大きな目を更に大きくした。
「なっ!なに?だれだよこれぇ・・・」
ホッペをさすって、必死に自分を確認してる。
ふふっ、可愛いなぁ。
+++++
相葉は鏡を見て自分を確認し、顔を歪めた。
「にのぉ・・・おれじゃないみたいだよぉ」
「んふふ・・・似合ってるよ。とっても可愛い。相葉さん、女の子みたい・・・こっち見て?」
言われたとおり、二宮の方を向いた相葉だが、すぐに俯いてしまう。
「相葉さん?どうしたの」
相葉の顔を覗き込もうとすると、再び違う方向に顔を向けようとする。
その顔は真っ赤だ。
「こらっ!こっち見なさい」
相葉の顎を掴み、自分の方を向かせると、顔を逸らせないよう固定した。
「うぅ、にの・・・はなしてぇ。見ないで・・・」
「だめ。どうして目逸らすの?」
「だってぇ・・・恥ずかしいんだもん・・・それに・・・」
「それに?」
「にのが、にのじゃないみたい・・・にのだけど・・・なんか、いつもと違うし・・・その、なんか・・・すごいへんな感じぃ・・・」
チャイナ服に身を包み、化粧までしている二宮は、本当に綺麗で妖艶で。
身のこなしまでもが本当の女性のようで、相葉は戸惑いを隠せない。
「んふふ・・・女の子に攻められてる・・・・みたい?」
「顔は、にのなのにぃ・・・」
赤い顔をして上目遣いで二宮の表情をうかがう。
「俺も・・・変な感じだよ?相葉さんなのに、どっから見ても女の子だもん・・・んふふ、でも可愛い」
「に、にのもきれいだよ・・・?」
「ありがと。ねぇ、相葉さん・・・まだメイドさん完成じゃなかったみたい・・・」
「ふぇ?まだ、なんかあるのぉ?」
「うん、最後にね・・・コレで、完成だよ・・・」
そう言って、相葉のふくよかな唇に口付けた。
「ん・・・・」
しばらく触れるだけのキスをして、唇を離す。
「んっ・・・に、にの?」
「ふふっ、出来た。完璧だね・・・見てごらん」
二宮に促されて鏡を見ると。
「あ・・・くちびる、つやつや・・・」
二宮のリップグロスが相葉の唇に移って、相葉の唇も妖しく輝いていた。
「似合ってる。相葉さんにぴったりだよ」
鏡越しに目を合わせ、うっとりと耳元で囁く二宮に、相葉の顔はさらに紅を増す。
「も、もう・・・にのっ!」
「んふふ、可愛い・・・」
さあ、最後の1%・・・。
「ねぇ相葉さん。今日は・・・このまま・・・女の子同士で、イケナイこと・・・しようか?」
真っ赤な顔をした相葉の耳元に唇を寄せ、ウィッグに指を絡めて妖艶に微笑んだ。
「ええっ!こ、このまま・・・?」
「・・・うん。だって、せっかくのふわふわメイドさんだもん。相葉さん見てると、俺たまんないの。いいでしょ・・・?」
少し動けば触れてしまいそうなほどに顔を近づけて、綺麗な顔が相葉に迫る。
「ちょっと・・・まって!」
「・・・どうして?」
「だって・・・ほんとに恥ずかしいのっ」
このままなんて、おれ死んじゃう・・・・。
「・・・そんな可愛い事言われたら、もう我慢できない・・・大丈夫、私が恥ずかしさなんて分かんなくなるくらい感じさせてあげる・・・」
二宮が妖しく笑った。
「わ、わたしって・・・にのっ・・・あっ!ちょっと・・・うわっ!」
急に自分の事を私と言い出した二宮に戸惑っている相葉を、抱き上げるとそのままベッドへと運び、一緒に倒れこむ。
上から見る相葉の不安げに揺れる瞳が、二宮の欲情をたまらなく煽る。
「もう、本当に・・・相葉さん、愛してるよ・・・」
「にの・・・・」
恥ずかしそうに、でもようやく二宮を見つめ返してくれた相葉に満足そうに口を吊り上げた。
「・・・・ふふっ、可愛いメイドさん・・・今から私とイケナイことしませんか・・・・?」
相葉の頬を撫でながら、顔に息を吹きかけると、顔が更に赤くなった。
「・・・いいよね?」
甘い声で相葉を誘う。
「・・・・にのが・・・したいなら・・・いいよ?」
だって、恥ずかしいけど、いつもと違う二宮に戸惑いはあるけど、嫌なわけじゃない。
二宮が自分を求めてくれる事が、嬉しくて堪らないのだから。
恥ずかしさを断ち切るように目をぎゅっと瞑り、二宮の腕にしがみついて答える。
その姿を見て、二宮は再び妖艶な笑みを浮かべた。
はい、100%大成功。
上から相葉を見下ろして、二宮はうっとりと微笑む。
「んふふ、すっごい変な気持ち・・・倒錯的で、ホントたまんない」
そう言って、二宮が相葉に口付けた。
「んっ・・・・あっ」
次第に深くなるそれに、相葉の呼吸が荒くなる。
キスに夢中になっていると、二宮の手がスカートの裾から入りこみ、内腿をなで上げた。
「ふふ、相葉さん足綺麗だね?網タイツ、すっごいそそる・・・脱がすのもったいないなぁ」
「んあっ、ちょっ、だめぇ・・・」
スカートを捲り上げようとすると、相葉が恥ずかしそうに上から押さえる。
「いつも、平気でズボン脱ぐのに、恥ずかしいんだ・・・?」
「だってぇ・・・・なんか、ちがう・・・あんっ」
「んふふ・・・捲くられんのが嫌なら、こうしようか・・・?」
「えっ!?あっ、ちょっ!・・・・」
二宮はスカートの中にすっぽりと入ってしまった。
「に、にのっ!やだっ、出てっ!」
慌てて身体を起こそうとする相葉を二宮が制する。
「こらっ・・・相葉さん、女の子なんだからおとなしくしてなさい。メイドさんは絶対服従!!」
「は、はいぃ・・・・」
真っ赤な顔を両手で覆っておとなしくなる相葉に満足そうに微笑むと、二宮は行為を再開した。
相葉の足を撫でながら、網タイツを脱がせ内腿にキスを落とす。
「んん、ふぁっ・・・ん」
下着を脱がせ、反応を始めていた相葉自身に手を伸ばすと、そのまま口に含んだ。
「ああっ!あ、あ・・・ん」
そのまま手で相葉を刺激しながら、唇をその奥へと移していき、蕾へと口付ける。
「あっ・・や、ん」
顔を覆っている指の間から、赤いチャイナ服が蠢くのが見えた。
それは、自分のはいてるスカートに続いていて。
恐ろしく倒錯的なその光景に、相葉は不安になり、二宮を必死で呼んだ。
「あっん、にの、にの、にのぉ・・・」
声から不安を読み取ったのか、二宮が顔をあげ、相葉を見る。
「・・・どうした?不安になっちゃったの?」
「かお・・・見せてぇ・・・・にの・・・」
二宮に手を伸ばす。
その手を取り自分の顔へ持って行くと、相葉と目を合わせてにっこりと笑った。
相葉が安心するように。
「大丈夫。俺だよ、相葉さん。何にも怖くない・・・・ね?」
「うん・・・・」
安心したように口元を弛ませる。
そんな相葉に微笑むと、二宮は続きを促した。
「続き・・・していい?」
「ま、まって!お、おれもするっ!!」
「はい?うわっ!」
突然、相葉が起き上がったかと思うと、二宮を押し倒し形勢逆転。
「ちょっ、あ、あいばさんっ!?」
上に乗っかってきた相葉を、目を見開いて見上げる。
「うわー、にのきれい・・・・」
上から二宮を見下ろして、改めて感嘆の声を上げた。
「・・・どうも。で、相葉さんどうするつもり?俺、やられちゃうの?」
「・・・ええっ!いや、ちがっ・・・・ちがうよ」
二宮の言っていることに気付いて、首を横に振る。
「ふふっ。じゃあ、何してくれんの?」
「うっ、うん・・・・」
相葉が二宮のチャイナドレスのスリットから、戸惑いがちに手を差し入れて二宮自身に触れる。
「にの・・・してもいい?」
「どうぞ、あんたの好きなように・・・」
二宮はベッドのヘッドボードに身体を預け、相葉のしたいようにさせてやる。
相葉は下着から二宮自身を取り出すと、すでに熱を持っているそれに恐る恐る口付ける。
「はむっ、ちゅ・・・んぱ・・・・はふ」
口の中で二宮の欲望が大きくなっていくのが嬉しくて、少しでも感じてくれるようにと、一生懸命に行為に没頭する。
「はっ、ん・・・あんた、ホント最高・・・んっ」
そう言う二宮を嬉しそうに見上げる顔と、ウィッグが邪魔なのか鬱陶しそうにかきあげる姿が何とも妖艶で二宮の欲情に火をつける。
「相葉さん・・・もう良いよ・・・」
「ふぇ?」
「もう・・・あんたの中に入りたい・・・」
「っ!に、にの・・・」
「おいで?」
二宮は手を伸ばして相葉を起き上がらせると自分の膝の上に乗せた。
「相葉さん・・・このまま、しようか?」
「えっ?このままって・・・?」
「このまま・・・俺の上で・・・ね?」
「そ、そんなの・・・・」
泣きそうな顔で二宮を見つめる相葉。
「せっかくだもん。相葉さんの可愛いお顔がしっかり見られて、しかも服も乱れない。一石二鳥でしょ?」
「うぅ・・・」
相葉の頬を愛おしそうに撫で、顔を覗き込む。
「相葉さん・・・ほら・・・」
「う、うん・・・」
二宮が促すと、相葉は渋々と行動に出る。
膝立ちになり、二宮自身に手を伸ばし、その上に自らの身体を沈めていく。
「んっ・・ふ、ああっん」
「くっ、ん・・・相葉さん大丈夫?」
「あっん、だい・・・じょぶぅ・・・」
完全に身体を沈めると、馴染むまでじっと動かずに耐える相葉。
俯いて息を浅く吐き、呼吸を整えている相葉を上向かせ、目を合わせる。
「にの、なぁに・・・?」
「んふふ・・・顔が見たかったの。相葉さん・・・大好き」
優しく口付けた。
「ん・・・・あっ!」
その口付けに酔いしれている相葉を不意に下から突き上げた。
「も、もう、にのっ!」
「んはは、ごめん。ねぇ・・・もう我慢できない。相葉さん・・・動いて?」
二宮の言葉に相葉がそろそろと動き出す。
「ふっ、んん・・んあっ・・・」
自分の上で喘ぐ相葉を愛おしそうに見つめ、二宮はその動きに合わせて自らの腰を揺らす。
「あ、あっん、ん・・・だめ・・・にのぉ」
絶頂が近いのだろう、二宮の肩を掴む相葉の手に力が入る。
「はっ、あいばっ・・・一緒に・・・ね」
「あっあ、うっん・・・にの、あぁんっ」
相葉がメイド服を汚したのと同時に、二宮は相葉の最奥に熱を放った。
「ふぁ・・・ん」
力の抜けた相葉は、二宮に凭れかかる。
そんな相葉の背中や頭を撫でてあやす二宮。
「んふふ・・・気持ちよかったね?」
「ばぁか・・・」
「はいはい、馬鹿でごめんね。お疲れ様。大好きよ」
相葉のホッペにキスを贈る。
それに気を良くした相葉が、二宮の肩に顔をすり寄せる。
「もう、雅紀ちゃん最高。癖になりそう」
「もう・・・絶対やんないからね」
心臓に悪いんだから。
「あら、残念。じゃあ、今日だけの限定雅紀ちゃん、もっと堪能しなくちゃね!」
「えっ?うわぁっ!」
勢いよく身体を倒されて、二宮が上になる。
「また・・・やるの?」
「当たり前。だって、ほら・・・分かるでしょ?」
「あっ・・・・」
果てた後も相葉の中にいた二宮が、質量を増しているのを感じ、相葉は顔を赤くする。
「まだまだ・・・夜は、長いよ・・・雅紀ちゃん」
翌日、5人での収録には、妙にすっきりした二宮さんに、どこか疲れているような相葉さんの姿があったとか・・・・なかったとか。
おわり
笑いを押し殺すようにして言う櫻井を、二宮は思いっきり睨み付ける。
「うるさいよ・・・全く。何で俺がこんな格好・・・」
そういいながら髪をいじる姿は、なかなか様になっているなと、櫻井は再び笑う。
「さっきから、翔ちゃん笑いすぎ・・・」
「・・くくっ。だって、お前・・・気持ち悪ぃ・・・」
二宮はドラマの撮影で、メイド服を着ていた。
黒地の膝丈のスカートに黒の網タイツ、白いフリフリのエプロン、ご丁寧にロングのウィッグにカチューシャをつけて、おまけに化粧までしている。
頬紅とリップグロスが妙に強調されて、なんとも言えない。
「・・・人事だと思って・・・まぁ、やるからにはやってやりますよ!」
「おお、さすがニノちゃん。役者ですね、カッコ良くないけど」
「・・・今はカッコ良くなくていいんです。女の子ですから」
そう言って、グラビアアイドルのようにポーズをつけ、櫻井に向かってウインクした。
「うわー・・・、本気でヤメテ・・・」
櫻井は眉根を寄せて、嫌そうな顔をする。
「んはは!さぁ、サッとやって終わりましょうよ!今日は約束あるんですから」
「約束?相葉ちゃん?」
「ええ。愛しのハニーちゃんに会うためですから、頑張りますよ!!」
拳を握る二宮に、毎日のように会ってるくせに何言ってんだと、心の中で突っ込んだ。
それにしても・・・。
「相葉ちゃんかぁ・・・・」
櫻井はそれだけ言うと、どこか違う方向を見つめてニヤつき始めた。
それ見た二宮は、不愉快そうに顔をしかめる。
「・・・ちょっと、翔ちゃん。俺の相葉さんを汚さないで下さいよ」
「なっ!汚すって何だよ・・・」
「だって今、『相葉ちゃんにメイド服着せたら似合うだろうなぁ』とか、相葉さんに着せて『ご主人さまぁとか言わせてぇ』とか思ったでしょ?」
「おっ、思ってねぇよ・・・・」
「嘘だ!絶対今の変態顔は思ってたね」
「変態顔って・・・じゃあさ、お前は思わないわけ?んなわけないよなぁ・・・?」
だっだら、そこにあるものは何なの?と、二宮の足元の大きなバッグを指差した。
「絶対終わったら、衣装もらうつもりだろ?」
「んふふ・・・まぁ、恋人同士の営みの盛り上げアイテムですからね・・・」
「やっぱり・・・俺と変わんないじゃねぇか」
「ちょっと、翔ちゃんと俺を一緒にしないでよ!決定的に違うでしょ?俺にはあの人にコレを着させる権利がある」
櫻井に、にっこり笑って見せた。
スカートの端を両手で持ち上げて、挨拶のポーズつきだ。
「・・・はいはい、その通り。羨ましい限りですね」
そんな二宮に呆れた視線を送った。
「ふふっ。それに、俺は翔ちゃんみたいに、ただ着せていちゃいちゃして喜ぶなんて下世話な事はいたしません」
「何だよそれ。じゃあ、それ以外にどうするってんだよ?」
「んふふ・・・俺の考えはもっと高尚なんですよ・・・」
二宮の不敵な笑みに、相葉の行く末を案じる櫻井だった。
おわり?
―現在、山田太郎ものがたり第2話放送中―
「うひゃひゃっ!にの、すごい!!唇つやつや!メイド可愛いけど、超キモイ!!うひゃひゃっ!!」
案の定、隣の相葉は二宮のコスプレに大ハマリだ。
その様子を見ながら、二宮は口元を弛ませる。
この後のお楽しみを、思い浮かべて・・・。
―放送終了―
「あー、面白かった!翔ちゃんもやればよかったのに、コスプレ」
「翔ちゃんのコスプレ、相葉さんは見たい?」
「・・・・見たくない」
絶対キモイもん。
そう言って顔をしかめた。
「んははっ、だろ?んで、俺は?」
「んー、キモイけど・・・ちょっと可愛かった・・・し、色っぽかった!!」
「んふふ、ありがと」
「あーあ、でもおれも生で見たかったなぁ・・・にののコスプレ。いいなぁ、翔ちゃんはぁ・・・」
きた!!
二宮は心の中で叫び、ガッツポーズをした。
相葉からこの言葉が出れば、70%はミッション成功だ。
「相葉さん・・・俺のコスプレ・・・見たい?」
「へ?うん!生で見てみたい!だって・・・・。いっつもおればっかり・・・なんだもん・・・」
「あ、やっぱり根に持ってたんだ」
「そりゃあね。恥ずかしいんだよ!分かったでしょ?」
顔を赤らめて恥ずかしがる姿は、二宮の加虐心を煽るだけとは気付いていない。
「まぁね、確かに恥ずかしかった。でも、相葉さんは俺の前だけじゃない。俺なんて、全国だよ?」
「そうだけどぉ、にのはテレビだし・・・それに女の子だけど、みんな同じ格好してたじゃん。おれ・・・1人だもん。しかも、にのの前で・・・やっぱ恥ずかしいよぉ」
自分の前だから恥ずかしいと言う相葉に二宮の機嫌は上昇する一方だ。
「恥ずかしがりやさんだなぁ、相葉さんは。実はね・・・今日はそんな相葉さんのためにね・・・・これ!!」
そう言って二宮が相葉の前に差し出したのは、二宮が収録で着た衣装だった。
「もらって来ちゃったvv」
メイド服と、チャイナ服、それに使用したウィッグまである。
相葉は嫌な予感に、顔を曇らせる。
そんな相葉を横目に嬉しそうに衣装を差し出す二宮。
「・・・それ、どうすんの?」
「どうするって、着るんですよ。相葉さん見たいんでしょ?俺の生コスプレ」
「うん、見たい!にのが着てくれるの!?」
途端に目を輝かせる相葉。
80%成功。
「んふふ・・・相葉さんはどっちが見たい?」
「えー・・・どっちかなぁ。メイド・・・いやいや、チャイナかなぁ・・・両方は?」
「どっちかだけだよ」
「けちぃ。んー・・・でも、メイドは結構ドラマの中で見たから、一瞬だけだったチャイナがいい!せくしーチャイナ!!」
90%成功。
「いいよ。じゃあ・・・はい!」
「え?なに?」
相葉は自分に渡されたものをきょとんと見つめた。
「メイド服」
「わかってるよ!何でおれ?」
「だって、俺がチャイナ着るんだから。何?相葉さんチャイナが良いの?」
「ちがうっ!これ、おれがどうすんのって聞いたの!!」
「どうするって、あんた・・・服は着るもんでしょうが」
そんなことも分かんないの?
「わかってるよ、そんなこと!!おれが着るの!?」
「そうですよ」
「なんで?」
「何でって、さっき自分で言ったじゃない、1人で恥ずかしいって。だから、2人で着たら恥ずかしさは1/2でしょ?
俺だって、1人は恥ずかしいんだよ。でも、相葉さんも着てくれるなら良いかなって思って。だめ?」
そう言って、二宮お得意のおねだり顔で相葉を攻める。
「うっ・・・、わかったよぉ。着れば良いんでしょ?その代わり!にのもちゃんと着てよ、それ!」
相葉が赤い顔を更に赤らめて念を押す。
どうやら、騙されて1人だけ着せられると疑っているようだ。
「はい、もちろん。着替えます。ほら、相葉さんも着替えてきて?」
「う、うん・・・」
いまいち納得しきれないまま、相葉は着替えるため、部屋を出て行った。
それを見送った二宮は口元だけで笑った。
95%成功。
おわ・・・らない・・・
「うわー・・・。結構短いよぉ・・・・」
相葉は二宮に渡されたメイド服を着て、途方に暮れていた。
二宮が着ていた時は膝丈程度だったのだが、相葉の方が身長が高い分、丈は短くなる。
「うー・・・恥ずかしい・・・」
相葉が二宮の前でコスプレをするのは初めてではない。
むしろ、他の恋人同士よりは多いくらいだ。
それには、二宮の趣味がかなり反映されているのだが、相葉は一向に慣れることがなかった。
自分の格好が恥ずかしいというよりも、その姿を二宮の射抜くような、全てを見透かされているような視線の前にさらけ出す事が耐えられなかった。
こんな自分の姿を見られている。
きっと二宮は気付いているのだろう。
恥ずかしいと言いながら、彼にされる事を期待している自分に。
彼のそんな視線が、たまらなく相葉を感じさせている事に。
だからこそ、恥ずかしくてたまらないのだ。
「これも・・・履くのぉ?」
相葉はためらいながら、網タイツに足を通した。
恥ずかしさに打ちのめされそうな相葉に、二宮から声がかかる。
「相葉さん、着れた?」
「う、うん・・・もうちょっと。にのは着たの?」
「んふふ・・・準備万端ですよ。早く出ておいで」
「いま行く・・・おかしくないよね?」
一度、鏡で自分の姿を確認する。
男の相葉がメイド服を着ている時点で充分おかしいのだが。
息を大きく吸い込んで鼓動を整えると、戸惑いがちに二宮の居る部屋のドアを開けた。
「にの・・・って・・・うわぁ!にの、超きれいっ!!」
ドアを開けた向こうの二宮の姿を見て、相葉は感嘆の声を上げた。
そこにはチャイナ服を着た二宮が妖しく笑って立っていた。
自分の格好も忘れて、二宮に駆け寄る。
「うひゃひゃっ!にの、すごいねぇ。ヅラもかぶったの?化粧もしてる!!くちびるつやつやだぁ・・・くふふ」
楽しそうに二宮を上から下まで眺め、周りをくるくると回る。
「んふふっ。相葉さん、はしゃぎすぎ」
「だって!すごい!にの自分で化粧したの?」
「もちろん。似合ってる?」
「うん!きれい!!」
目を輝かせて二宮を見ている相葉。
97%成功。
「相葉さんだって・・・かわいいよ?」
「え?あっ・・・うん。ありがと・・・」
二宮に言われて自分の格好を思い出し、急に恥ずかしそうにスカートの裾を引っ張る相葉。
その姿を妖しく見つめる二宮。
「相葉さん、ウィッグとカチューシャは?」
あったでしょ?
「・・・う、うん。コレもつけるの?」
「当たり前でしょ?俺だって着けたんだから、相葉さんも!」
「はいぃ・・・」
鏡の前でウィッグとカチューシャを着けて、雅紀メイドの完成だ。
「うわぁ・・・相葉さん似合ってるっ!ふわふわメイドさんだね。かぁわいい!!」
「うー・・・どうもっ!」
98%成功
「でもなぁ・・・もう一息だね!」
「もうひといき・・・?」
「うん。相葉さん、ここ座って?」
二宮の勧める椅子に座った相葉は、不安そうに二宮を見つめた。
「なにするの・・・?」
その顔が二宮の心をくすぐる。
「ふふっ・・・やるんなら徹底的にね?」
相葉の目の前に化粧道具が並んだ。
「お化粧・・・するの?」
「そりゃ、俺もしてるんですから相葉さんも!俺がしたげる。ね?」
「うん・・・」
「じゃあ・・上向いて、目瞑って?」
相葉の顎に指を掛けて、上を向かせる。
不安げに揺れる潤んだ瞳が閉じられた。
従順な相葉に、妖しく光る唇が吊り上る。
99%成功。
あー…なんて可愛いんでしょうねぇ、俺のハニーちゃんは!!
不安そうに眉を寄せて一生懸命に目を瞑って俺に身を委ねてんの。
唇が震えてるんだから、もう堪んないですよ。
このまま。唇に貪りつきたいっ!!
足までぎゅっと閉じちゃってさ、ああ綺麗な足だなぁ。
触りたいなぁ・・・って、いやいや、まだです。
何のために俺までこんな格好したんですか!!
ここは我慢!
俺の最高傑作、作っちゃうからね!
化粧する手にも力が入りますよ。
このために、メイクさんに化粧法を習ったんですからね。
優しくファンデーションをつけて。
シャドウは、ふわふわメイドさんだから明るい色目が良いよね?
んふふ・・・睫毛長いからマスカラ要らないね。
ビューラーだけで充分。
薄くチークをのせて・・・よしっ!
「相葉さん・・・目開けて・・・?」
俺の声にゆっくりと目を開ける。
開けた瞬間びっくりしたように俺を見て、慌てて目を逸らす。
「相葉さん?」
「に、にの。顔近いっ・・・見ないで・・・」
そう言って顔を赤くする。
もう!可愛すぎるでしょ?その反応。
「んふふ。見て!俺が思ったとおり、相葉さん超可愛い!!」
俺の言葉に、鏡で自分の姿を確認した相葉さんは、大きな目を更に大きくした。
「なっ!なに?だれだよこれぇ・・・」
ホッペをさすって、必死に自分を確認してる。
ふふっ、可愛いなぁ。
+++++
相葉は鏡を見て自分を確認し、顔を歪めた。
「にのぉ・・・おれじゃないみたいだよぉ」
「んふふ・・・似合ってるよ。とっても可愛い。相葉さん、女の子みたい・・・こっち見て?」
言われたとおり、二宮の方を向いた相葉だが、すぐに俯いてしまう。
「相葉さん?どうしたの」
相葉の顔を覗き込もうとすると、再び違う方向に顔を向けようとする。
その顔は真っ赤だ。
「こらっ!こっち見なさい」
相葉の顎を掴み、自分の方を向かせると、顔を逸らせないよう固定した。
「うぅ、にの・・・はなしてぇ。見ないで・・・」
「だめ。どうして目逸らすの?」
「だってぇ・・・恥ずかしいんだもん・・・それに・・・」
「それに?」
「にのが、にのじゃないみたい・・・にのだけど・・・なんか、いつもと違うし・・・その、なんか・・・すごいへんな感じぃ・・・」
チャイナ服に身を包み、化粧までしている二宮は、本当に綺麗で妖艶で。
身のこなしまでもが本当の女性のようで、相葉は戸惑いを隠せない。
「んふふ・・・女の子に攻められてる・・・・みたい?」
「顔は、にのなのにぃ・・・」
赤い顔をして上目遣いで二宮の表情をうかがう。
「俺も・・・変な感じだよ?相葉さんなのに、どっから見ても女の子だもん・・・んふふ、でも可愛い」
「に、にのもきれいだよ・・・?」
「ありがと。ねぇ、相葉さん・・・まだメイドさん完成じゃなかったみたい・・・」
「ふぇ?まだ、なんかあるのぉ?」
「うん、最後にね・・・コレで、完成だよ・・・」
そう言って、相葉のふくよかな唇に口付けた。
「ん・・・・」
しばらく触れるだけのキスをして、唇を離す。
「んっ・・・に、にの?」
「ふふっ、出来た。完璧だね・・・見てごらん」
二宮に促されて鏡を見ると。
「あ・・・くちびる、つやつや・・・」
二宮のリップグロスが相葉の唇に移って、相葉の唇も妖しく輝いていた。
「似合ってる。相葉さんにぴったりだよ」
鏡越しに目を合わせ、うっとりと耳元で囁く二宮に、相葉の顔はさらに紅を増す。
「も、もう・・・にのっ!」
「んふふ、可愛い・・・」
さあ、最後の1%・・・。
「ねぇ相葉さん。今日は・・・このまま・・・女の子同士で、イケナイこと・・・しようか?」
真っ赤な顔をした相葉の耳元に唇を寄せ、ウィッグに指を絡めて妖艶に微笑んだ。
「ええっ!こ、このまま・・・?」
「・・・うん。だって、せっかくのふわふわメイドさんだもん。相葉さん見てると、俺たまんないの。いいでしょ・・・?」
少し動けば触れてしまいそうなほどに顔を近づけて、綺麗な顔が相葉に迫る。
「ちょっと・・・まって!」
「・・・どうして?」
「だって・・・ほんとに恥ずかしいのっ」
このままなんて、おれ死んじゃう・・・・。
「・・・そんな可愛い事言われたら、もう我慢できない・・・大丈夫、私が恥ずかしさなんて分かんなくなるくらい感じさせてあげる・・・」
二宮が妖しく笑った。
「わ、わたしって・・・にのっ・・・あっ!ちょっと・・・うわっ!」
急に自分の事を私と言い出した二宮に戸惑っている相葉を、抱き上げるとそのままベッドへと運び、一緒に倒れこむ。
上から見る相葉の不安げに揺れる瞳が、二宮の欲情をたまらなく煽る。
「もう、本当に・・・相葉さん、愛してるよ・・・」
「にの・・・・」
恥ずかしそうに、でもようやく二宮を見つめ返してくれた相葉に満足そうに口を吊り上げた。
「・・・・ふふっ、可愛いメイドさん・・・今から私とイケナイことしませんか・・・・?」
相葉の頬を撫でながら、顔に息を吹きかけると、顔が更に赤くなった。
「・・・いいよね?」
甘い声で相葉を誘う。
「・・・・にのが・・・したいなら・・・いいよ?」
だって、恥ずかしいけど、いつもと違う二宮に戸惑いはあるけど、嫌なわけじゃない。
二宮が自分を求めてくれる事が、嬉しくて堪らないのだから。
恥ずかしさを断ち切るように目をぎゅっと瞑り、二宮の腕にしがみついて答える。
その姿を見て、二宮は再び妖艶な笑みを浮かべた。
はい、100%大成功。
上から相葉を見下ろして、二宮はうっとりと微笑む。
「んふふ、すっごい変な気持ち・・・倒錯的で、ホントたまんない」
そう言って、二宮が相葉に口付けた。
「んっ・・・・あっ」
次第に深くなるそれに、相葉の呼吸が荒くなる。
キスに夢中になっていると、二宮の手がスカートの裾から入りこみ、内腿をなで上げた。
「ふふ、相葉さん足綺麗だね?網タイツ、すっごいそそる・・・脱がすのもったいないなぁ」
「んあっ、ちょっ、だめぇ・・・」
スカートを捲り上げようとすると、相葉が恥ずかしそうに上から押さえる。
「いつも、平気でズボン脱ぐのに、恥ずかしいんだ・・・?」
「だってぇ・・・・なんか、ちがう・・・あんっ」
「んふふ・・・捲くられんのが嫌なら、こうしようか・・・?」
「えっ!?あっ、ちょっ!・・・・」
二宮はスカートの中にすっぽりと入ってしまった。
「に、にのっ!やだっ、出てっ!」
慌てて身体を起こそうとする相葉を二宮が制する。
「こらっ・・・相葉さん、女の子なんだからおとなしくしてなさい。メイドさんは絶対服従!!」
「は、はいぃ・・・・」
真っ赤な顔を両手で覆っておとなしくなる相葉に満足そうに微笑むと、二宮は行為を再開した。
相葉の足を撫でながら、網タイツを脱がせ内腿にキスを落とす。
「んん、ふぁっ・・・ん」
下着を脱がせ、反応を始めていた相葉自身に手を伸ばすと、そのまま口に含んだ。
「ああっ!あ、あ・・・ん」
そのまま手で相葉を刺激しながら、唇をその奥へと移していき、蕾へと口付ける。
「あっ・・や、ん」
顔を覆っている指の間から、赤いチャイナ服が蠢くのが見えた。
それは、自分のはいてるスカートに続いていて。
恐ろしく倒錯的なその光景に、相葉は不安になり、二宮を必死で呼んだ。
「あっん、にの、にの、にのぉ・・・」
声から不安を読み取ったのか、二宮が顔をあげ、相葉を見る。
「・・・どうした?不安になっちゃったの?」
「かお・・・見せてぇ・・・・にの・・・」
二宮に手を伸ばす。
その手を取り自分の顔へ持って行くと、相葉と目を合わせてにっこりと笑った。
相葉が安心するように。
「大丈夫。俺だよ、相葉さん。何にも怖くない・・・・ね?」
「うん・・・・」
安心したように口元を弛ませる。
そんな相葉に微笑むと、二宮は続きを促した。
「続き・・・していい?」
「ま、まって!お、おれもするっ!!」
「はい?うわっ!」
突然、相葉が起き上がったかと思うと、二宮を押し倒し形勢逆転。
「ちょっ、あ、あいばさんっ!?」
上に乗っかってきた相葉を、目を見開いて見上げる。
「うわー、にのきれい・・・・」
上から二宮を見下ろして、改めて感嘆の声を上げた。
「・・・どうも。で、相葉さんどうするつもり?俺、やられちゃうの?」
「・・・ええっ!いや、ちがっ・・・・ちがうよ」
二宮の言っていることに気付いて、首を横に振る。
「ふふっ。じゃあ、何してくれんの?」
「うっ、うん・・・・」
相葉が二宮のチャイナドレスのスリットから、戸惑いがちに手を差し入れて二宮自身に触れる。
「にの・・・してもいい?」
「どうぞ、あんたの好きなように・・・」
二宮はベッドのヘッドボードに身体を預け、相葉のしたいようにさせてやる。
相葉は下着から二宮自身を取り出すと、すでに熱を持っているそれに恐る恐る口付ける。
「はむっ、ちゅ・・・んぱ・・・・はふ」
口の中で二宮の欲望が大きくなっていくのが嬉しくて、少しでも感じてくれるようにと、一生懸命に行為に没頭する。
「はっ、ん・・・あんた、ホント最高・・・んっ」
そう言う二宮を嬉しそうに見上げる顔と、ウィッグが邪魔なのか鬱陶しそうにかきあげる姿が何とも妖艶で二宮の欲情に火をつける。
「相葉さん・・・もう良いよ・・・」
「ふぇ?」
「もう・・・あんたの中に入りたい・・・」
「っ!に、にの・・・」
「おいで?」
二宮は手を伸ばして相葉を起き上がらせると自分の膝の上に乗せた。
「相葉さん・・・このまま、しようか?」
「えっ?このままって・・・?」
「このまま・・・俺の上で・・・ね?」
「そ、そんなの・・・・」
泣きそうな顔で二宮を見つめる相葉。
「せっかくだもん。相葉さんの可愛いお顔がしっかり見られて、しかも服も乱れない。一石二鳥でしょ?」
「うぅ・・・」
相葉の頬を愛おしそうに撫で、顔を覗き込む。
「相葉さん・・・ほら・・・」
「う、うん・・・」
二宮が促すと、相葉は渋々と行動に出る。
膝立ちになり、二宮自身に手を伸ばし、その上に自らの身体を沈めていく。
「んっ・・ふ、ああっん」
「くっ、ん・・・相葉さん大丈夫?」
「あっん、だい・・・じょぶぅ・・・」
完全に身体を沈めると、馴染むまでじっと動かずに耐える相葉。
俯いて息を浅く吐き、呼吸を整えている相葉を上向かせ、目を合わせる。
「にの、なぁに・・・?」
「んふふ・・・顔が見たかったの。相葉さん・・・大好き」
優しく口付けた。
「ん・・・・あっ!」
その口付けに酔いしれている相葉を不意に下から突き上げた。
「も、もう、にのっ!」
「んはは、ごめん。ねぇ・・・もう我慢できない。相葉さん・・・動いて?」
二宮の言葉に相葉がそろそろと動き出す。
「ふっ、んん・・んあっ・・・」
自分の上で喘ぐ相葉を愛おしそうに見つめ、二宮はその動きに合わせて自らの腰を揺らす。
「あ、あっん、ん・・・だめ・・・にのぉ」
絶頂が近いのだろう、二宮の肩を掴む相葉の手に力が入る。
「はっ、あいばっ・・・一緒に・・・ね」
「あっあ、うっん・・・にの、あぁんっ」
相葉がメイド服を汚したのと同時に、二宮は相葉の最奥に熱を放った。
「ふぁ・・・ん」
力の抜けた相葉は、二宮に凭れかかる。
そんな相葉の背中や頭を撫でてあやす二宮。
「んふふ・・・気持ちよかったね?」
「ばぁか・・・」
「はいはい、馬鹿でごめんね。お疲れ様。大好きよ」
相葉のホッペにキスを贈る。
それに気を良くした相葉が、二宮の肩に顔をすり寄せる。
「もう、雅紀ちゃん最高。癖になりそう」
「もう・・・絶対やんないからね」
心臓に悪いんだから。
「あら、残念。じゃあ、今日だけの限定雅紀ちゃん、もっと堪能しなくちゃね!」
「えっ?うわぁっ!」
勢いよく身体を倒されて、二宮が上になる。
「また・・・やるの?」
「当たり前。だって、ほら・・・分かるでしょ?」
「あっ・・・・」
果てた後も相葉の中にいた二宮が、質量を増しているのを感じ、相葉は顔を赤くする。
「まだまだ・・・夜は、長いよ・・・雅紀ちゃん」
翌日、5人での収録には、妙にすっきりした二宮さんに、どこか疲れているような相葉さんの姿があったとか・・・・なかったとか。
おわり
PR
ギラギラと光る太陽が、容赦なく身体を照りつけて、滝のように溢れ出る汗が身体を伝っていく。
その感覚に顔をしかめ、二宮は忌々しそうに空を睨んだ。
今日は終業式で、明日から夏休みだ。
しかし、しょっぱなからこんな暑いんじゃ先行きが不安でしょうがない。
「あ、にの!わりぃ、遅れた」
「遅ぇよ、お前。暑くて死ぬかと思った」
そう言って、目の前の自分より背が高く無駄にスタイルの良い少年を睨み付ける。
「うひゃひゃっ。大げさだな、にのは。こんくらいじゃ死なねぇだろ」
そんな二宮を大きく笑い飛ばした少年も、滝のように汗をかいていた。
「俺は相葉さんと違ってデリケートに出来てんの」
「デリケートねぇ・・・。それにしてもあちー・・・気持ちわりぃし、ベトベトする・・・」
二宮の言葉を軽く流しながらもやはり暑いようで、制服の胸元を大きく開けパタパタと前後に振って涼を求める。
相葉の胸元を流れる汗と、暑さで火照った頬、潤んだ瞳が二宮を妙な気分にさせる。
「あー、早く帰ろうっ。帰ってシャワー浴びて、うみ!!海行こうぜっ」
急にテンション上げて叫んだ相葉に、二宮は鬱陶しそうな顔をした。
「やだよ、面倒くさい。帰ったら家で、まったりゲームしたい」
「なに、じじくせーこと言ってんだよ!夏だぞ?せっかくの夏休みなんだから、遊ぶだろー?普通」
「普通じゃなくていいよ。俺、暑いの苦手なの」
「もう、にのは暑いのも寒いのも苦手じゃん。良いから!今日は海!!明日はゲームでも良いからさ!」
「・・・分かったよ。とにかく帰ろうぜ・・・・暑くて死にそう」
「もう、お前そればっか!!ま、いいや。行こう!!」
2人で自転車置き場へと向かう。
「・・・で、何でお前は俺の後ろにいるわけ?」
何故か二宮の自転車の後ろに座っている相葉に顔を顰める。
「えへ」
「えへ・・・じゃねぇだろっ!お前自分のチャリはどうしたんだよ!?」
「朝、壊れてたからさ今日は徒歩通したの。ほら、早く出発!!」
「代われよ、お前の方が重いんだからさっ!」
「嫌だよ、にのの自転車低いもん」
おれには合わない。
カチン。
「お前なぁ・・・振り落とす!!」
「うわぁっ!ちょ、に、にの!危ねぇっ。うひゃひゃっ!!」
勢いよく漕ぎ出して左右に蛇行する二宮の運転に、最初は焦っていた相葉だが、すぐに楽しみ始めた。
振り落とされないように、二宮の腰にしっかりと腕を回し、しがみついている。
「ちょっと、相葉さん暑いんだけど。あんまくっつくなよ」
この暑さに加えて、自転車を全力で漕いだ二宮の体からは汗が吹き出て流れていく。
「いいじゃん、落ちそうなんだよ。にの、すっげぇ汗だね。汗くさい」
「うるさいよっ。あんただって変わんないでしょ?」
「そりゃそうだ。うひゃひゃっ」
そう言って更に二宮に密着する相葉。
相葉とくっついているところから、彼の体温と汗が二宮に伝わる。
後ろにいる彼を見ると、濡れた髪から首筋へと汗が流れ、太陽に照らされてキラキラしている。
二宮は夏の暑さではない、別の熱さが体内を駆け巡るのを感じた。
「ねえ、相葉さん・・・」
「んー、なにぃ?」
「もうさ、あっついしさー、汗臭いしさー、どうにもなんないからさ・・・・」
「うん?」
「やらしてくんない?」
「はぁ!?」
相葉の大声と共に二宮の後頭部に痛みが走った。
「いてっ!何だよ殴るなよ、痛いな」
「にのがへんな事言うからだろ!?なんだよ、やらせろって。おれ、女じゃねぇし。そういうことは女に言えよ」
「女なんて、興味ねぇもん」
誰が女とやりたたいって言ったよ。
俺はあんたとやりたいんだよ。
もう、ずっとずっと昔から。
二宮は再びペダルを全力で漕ぎ始めた。
「わっ!」
急な加速に後ろへ倒れそうになり、相葉は慌てて二宮にしがみつく。
「ちょ、にの!」
「俺は、あんたとやりたいのーっ!!」
「ばっ、声でかいって!!」
二宮にしがみつきながら、相葉が二宮の体を揺さぶった。
自転車がバランスを崩しそうになる。
「おい、あいばっ!ちょっとやめろよ、コケるっ!!」
後ろで暴れる相葉のおかげで何度も転びそうになりながら、2人を乗せた自転車はフラフラと進んでいく。
「うひゃひゃっ、にの!頑張れ!!転ぶな!」
先ほどのやり取りなどすっかり忘れてはしゃぐ相葉。
ホント、人の気も知らないで気楽に笑っちゃって。
憎たらしいヤツだよ、大好きだけど。
しばらくは、今日の熱と感触で我慢しますか。
お前が俺を欲しいと思うまでは。
ずっと我慢してきたんだから、まだまだ我慢できるさ。
青春って甘酸っぱいね。
二宮は照りつける太陽を睨みあげ、自転車を漕ぐ足に力を込めた。
終わり
その感覚に顔をしかめ、二宮は忌々しそうに空を睨んだ。
今日は終業式で、明日から夏休みだ。
しかし、しょっぱなからこんな暑いんじゃ先行きが不安でしょうがない。
「あ、にの!わりぃ、遅れた」
「遅ぇよ、お前。暑くて死ぬかと思った」
そう言って、目の前の自分より背が高く無駄にスタイルの良い少年を睨み付ける。
「うひゃひゃっ。大げさだな、にのは。こんくらいじゃ死なねぇだろ」
そんな二宮を大きく笑い飛ばした少年も、滝のように汗をかいていた。
「俺は相葉さんと違ってデリケートに出来てんの」
「デリケートねぇ・・・。それにしてもあちー・・・気持ちわりぃし、ベトベトする・・・」
二宮の言葉を軽く流しながらもやはり暑いようで、制服の胸元を大きく開けパタパタと前後に振って涼を求める。
相葉の胸元を流れる汗と、暑さで火照った頬、潤んだ瞳が二宮を妙な気分にさせる。
「あー、早く帰ろうっ。帰ってシャワー浴びて、うみ!!海行こうぜっ」
急にテンション上げて叫んだ相葉に、二宮は鬱陶しそうな顔をした。
「やだよ、面倒くさい。帰ったら家で、まったりゲームしたい」
「なに、じじくせーこと言ってんだよ!夏だぞ?せっかくの夏休みなんだから、遊ぶだろー?普通」
「普通じゃなくていいよ。俺、暑いの苦手なの」
「もう、にのは暑いのも寒いのも苦手じゃん。良いから!今日は海!!明日はゲームでも良いからさ!」
「・・・分かったよ。とにかく帰ろうぜ・・・・暑くて死にそう」
「もう、お前そればっか!!ま、いいや。行こう!!」
2人で自転車置き場へと向かう。
「・・・で、何でお前は俺の後ろにいるわけ?」
何故か二宮の自転車の後ろに座っている相葉に顔を顰める。
「えへ」
「えへ・・・じゃねぇだろっ!お前自分のチャリはどうしたんだよ!?」
「朝、壊れてたからさ今日は徒歩通したの。ほら、早く出発!!」
「代われよ、お前の方が重いんだからさっ!」
「嫌だよ、にのの自転車低いもん」
おれには合わない。
カチン。
「お前なぁ・・・振り落とす!!」
「うわぁっ!ちょ、に、にの!危ねぇっ。うひゃひゃっ!!」
勢いよく漕ぎ出して左右に蛇行する二宮の運転に、最初は焦っていた相葉だが、すぐに楽しみ始めた。
振り落とされないように、二宮の腰にしっかりと腕を回し、しがみついている。
「ちょっと、相葉さん暑いんだけど。あんまくっつくなよ」
この暑さに加えて、自転車を全力で漕いだ二宮の体からは汗が吹き出て流れていく。
「いいじゃん、落ちそうなんだよ。にの、すっげぇ汗だね。汗くさい」
「うるさいよっ。あんただって変わんないでしょ?」
「そりゃそうだ。うひゃひゃっ」
そう言って更に二宮に密着する相葉。
相葉とくっついているところから、彼の体温と汗が二宮に伝わる。
後ろにいる彼を見ると、濡れた髪から首筋へと汗が流れ、太陽に照らされてキラキラしている。
二宮は夏の暑さではない、別の熱さが体内を駆け巡るのを感じた。
「ねえ、相葉さん・・・」
「んー、なにぃ?」
「もうさ、あっついしさー、汗臭いしさー、どうにもなんないからさ・・・・」
「うん?」
「やらしてくんない?」
「はぁ!?」
相葉の大声と共に二宮の後頭部に痛みが走った。
「いてっ!何だよ殴るなよ、痛いな」
「にのがへんな事言うからだろ!?なんだよ、やらせろって。おれ、女じゃねぇし。そういうことは女に言えよ」
「女なんて、興味ねぇもん」
誰が女とやりたたいって言ったよ。
俺はあんたとやりたいんだよ。
もう、ずっとずっと昔から。
二宮は再びペダルを全力で漕ぎ始めた。
「わっ!」
急な加速に後ろへ倒れそうになり、相葉は慌てて二宮にしがみつく。
「ちょ、にの!」
「俺は、あんたとやりたいのーっ!!」
「ばっ、声でかいって!!」
二宮にしがみつきながら、相葉が二宮の体を揺さぶった。
自転車がバランスを崩しそうになる。
「おい、あいばっ!ちょっとやめろよ、コケるっ!!」
後ろで暴れる相葉のおかげで何度も転びそうになりながら、2人を乗せた自転車はフラフラと進んでいく。
「うひゃひゃっ、にの!頑張れ!!転ぶな!」
先ほどのやり取りなどすっかり忘れてはしゃぐ相葉。
ホント、人の気も知らないで気楽に笑っちゃって。
憎たらしいヤツだよ、大好きだけど。
しばらくは、今日の熱と感触で我慢しますか。
お前が俺を欲しいと思うまでは。
ずっと我慢してきたんだから、まだまだ我慢できるさ。
青春って甘酸っぱいね。
二宮は照りつける太陽を睨みあげ、自転車を漕ぐ足に力を込めた。
終わり
コンサートも無事終わり、控え室の椅子に座って喉を潤す。
今日も大いに盛り上がったし良い出来だったと、ひとり満足感に浸っていた二宮の耳に聞き慣れた奇声が聞える。
「ひゃぁっ!!なにこれっ!?うひゃひゃっ!!」
「まぁた、あいつは・・・・」
その声のする方向に視線を向け、苦笑する。
コンサートの後は二宮だってテンションが上がっているのだから、彼に至っては当然の事だろう。
テンションを一気に上げることが出来るのが彼の特技だから。
それにしても・・・
「うるさいなぁ、相葉さん」
「うひゃひゃっ!いたい!いたい・・・うひゃぁ!!」
一体何してんだよ?
まぁ、シャワーに入ったのは見ていたし、シャワーとか風呂とかでテンション上げるのもいつもの事だけど。
痛いって・・・何だ?
疑問に思いながらも、自分も汗を流そうと隣のシャワールームに入る。
汗でベタベタと張り付く上着を脱ぎ捨て、ズボンも脱いで下着一枚になったとき。
バンッ!!
急に扉が開いたかと思えば、入ってきたのは・・・
「あ、あいばさんっ!?」
「にの!!にの!!シャワー!!うひゃひゃっ!」
「な、何!?どうしたの?あんた、落ち着いて話なさいよっ」
「うひゃひゃっ、シャワー!シャワー!!」
ダメだ・・・・テンションMAXで聞いちゃいない。
しかもあんた、全裸なんですけど・・・・。
「にのっ!早く、シャワー!!」
一体シャワーが何なのか、全くもって理解できない二宮に痺れを切らした相葉が、シャワーのコックに手をかけた。
「ばっ!ちょ、待てっ!!」
止めようとした時にはすでに遅し。
勢いよくシャワーが飛び出した。
「うわぁっ!ちょっ、痛い、痛いっ!!」
「うひゃひゃっ・・・にの、おもしれぇ!!ひゃはっ」
四方八方についているシャワーのヘッドから、これでもかというほどお湯が二宮の全身に当たる。
「痛いっ!!ちょっと、あいばっ!!止めろってっ!!」
二宮の悲痛な叫びに、ようやく相葉がシャワーを止めた。
「うひゃひゃ、痛いだろ?おれもびっくりしたもん。でも、にの超おもしれぇ」
そう言って笑う相葉を、恨めしそうに睨み付けた。
「勢いよく出しすぎなんだよ。だから痛いんだろ!」
二宮は履いたままびしょ濡れになっているパンツのウエストを引っ張った。
「もう、あんた・・・これ、どうしてくれんの?」
「ごめん、ごめん。替えのパンツあるでしょ?」
「・・・最後の1枚だったんだよ。あー・・・俺、今から東京戻ってドラマの撮影なのに・・・」
自分のパンツを見て、ため息を吐く二宮。
それにしてもシャワーの前で、全裸男とパンツ1枚の男が立ち尽くしてるって、何て光景だよ。
「ごめんねぇ。ついテンション上がっちゃって・・・あ、そうだ!俺ので良ければあるけど?」
相葉の言葉に二宮が顔を上げる。
「あんたのパンツ貸してくれんの?」
「嫌じゃなければ・・・」
「・・・・・」
「あ、やっぱ嫌?じゃぁ・・翔ちゃんの借りてこようか?」
翔ちゃんならいっぱい持ってるでしょ。
「絶対嫌!!!」
「えー・・・じゃあ、コンビニ行って来ようか?」
おれ、買ってくるよ。
出て行こうとする相葉を二宮が引き止めた。
「いいですよ、そこまでしなくて・・・あんたの借ります」
「え?嫌じゃなかったの?」
「誰が嫌って言ったんですか?ちょっと考えてただけですよ」
あんたのパンツ履いてドラマ撮影かぁ・・・悪くない。
いや、むしろ・・・良い。
二宮が何を考えているのか、露と知らない相葉は自分の鞄からパンツを取り出して二宮に差し出す。
「はい、これ」
「・・・・」
黙ったまま差し出されたパンツをじっと見つめる二宮。
「にの?あ、大丈夫だよ新品だから!!」
二宮が履くのを迷っていると勘違いした相葉が、心配しないでと念を押す。
「・・・・何だ、残念」
「へ?」
「いつも履いてるヤツでも良かったのに・・・・むしろ、その方が萌える・・・」
一瞬二宮の言ってる意味が分からず呆けていた相葉が、それを理解し真っ赤になる。
「なっ!!ばかな事言ってんじゃねぇよっ!はやく入れ!ばかにのっ!!」
二宮にパンツを押し付けると、乱暴にシャワールームへ押し込む。
「ちょ、押すなよ。何?照れてんの?今更だろ?」
「うるさいっ、もう入れってば!!」
「分かったよ・・・・よっと!!」
素直にシャワールームに入ったと思ったら、相葉の腕を掴み一緒にシャワールームに引っ張り込む。
「うわっ!ちょっと、にの!?」
「あんたも、早くシャワーして服着なさいよ。また風邪引くでしょ!」
「お、おれは隣に行くから・・・うひゃ!」
出て行こうとする相葉に、二宮はおもいっきりシャワーを掛けた。
「ちょ、にのっ、やめて」
「良いから!おとなしくしてなさい!!ほら、目ぇ瞑って!」
相葉の顔めがけてシャワーを向ける。
「わっぷ、ん・・・・ぷはっ!!にのっ、わかったから・・・やめてっ」
「分かればよろしい。はい、身体洗うよ?」
「はぁい・・・ねぇ、にの・・・シャワーだけだよね・・・?」
「んふふ・・・、何か期待してるの?」
「ち、違うよ!」
「まぁ・・・そうしたいのは山々だけど、ツアーも続くし、舞台稽古もあるからね。我慢しますよ、今は」
そう言って二宮は相葉の身体を洗い始める。
「うひゃっ、くすぐったいよぉ。おれも洗う!!」
相葉も負けじと二宮の身体に触れた。
「ばっ!あんた、どこ触ってんだよっ!!襲うぞ、馬鹿!」
「きゃぁ!にの、こわい。うひゃひゃっ」
結局2人でシャワーを浴びた。
先に上がった二宮は服を着て、ドライヤーで髪を乾かしていた。
「ふぃー、楽しかったねぇ」
「あんたねぇ、シャワーは楽しむもんじゃないんだよ。汗を流して身体を癒すもんだろ、普通」
「そうだけど、汗が流せて癒されて、それで楽しかったらもっと良いでしょ?」
よく分からない理屈だが、まぁ深く突っ込むのはよしておいた。
ここで突っ込むとムキになって反論してくるから。
裸なのも忘れて。
二宮が何も言わずに髪を乾かしていると、相葉が大声を出した。
「あーっ!!」
「何よ?あんた、うるさい」
「だっ、に、ぱ・・・・」
「はぁ?何だよ、だにぱって?」
「に、にの!お、お・・・おれのぱんつ!!」
「パンツ?さっきあんたが貸してくれたじゃん。遠慮なく履いてるよ?」
「ちがう!そうじゃなくて・・・おれの・・・ぱんつぅ」
「何泣きそうになってんの。そこにあるじゃない」
「だって・・・これ新品だよぉ。ってことはさぁ、にのが履いたのって・・・おれの・・・」
置いてあったパンツは、先ほど二宮に渡したはずの新品のパンツ。
ということは、二宮がすでに履いてしまったのは・・・。
「にのの履いたの・・・おれの使い古しのぱんつだよぉ・・・」
「え?そうですか?気付かなかったなぁ。」
慌てる様子もなく、しれっと答える二宮。
「うう・・・恥ずかしい・・・」
「何言ってんの、別にさっきまで履いてたパンツじゃあるまいし。こっちだって洗濯してあるんでしょ?」
二宮は自分のはいたパンツを指さす。
「そうだけどぉ・・・」
「何の問題もないじゃない。そんなことどうでも良いから、早く服を着なさいって。せっかく汗流してさっぱりしたのに、今度は湯冷めしちゃうでしょうが」
「う、うん・・・」
泣きそうな顔で、相葉は服を着始める。
のそのそと服を着ている相葉の横で、口元を吊り上げる二宮の姿。
つまりは確信犯。
本当は脱いだヤツでもいいんだけど。
そんなことしたら相葉さん、卒倒しちゃうからね。
しばらくお預け覚悟してるんだから、これくらい良いでしょ?
「さて、はりきって撮影してくるかな!!じゃあね、相葉さん、お先に!」
項垂れて服を着ていた相葉に、掠めるようなキスをした。
おわり
今日も大いに盛り上がったし良い出来だったと、ひとり満足感に浸っていた二宮の耳に聞き慣れた奇声が聞える。
「ひゃぁっ!!なにこれっ!?うひゃひゃっ!!」
「まぁた、あいつは・・・・」
その声のする方向に視線を向け、苦笑する。
コンサートの後は二宮だってテンションが上がっているのだから、彼に至っては当然の事だろう。
テンションを一気に上げることが出来るのが彼の特技だから。
それにしても・・・
「うるさいなぁ、相葉さん」
「うひゃひゃっ!いたい!いたい・・・うひゃぁ!!」
一体何してんだよ?
まぁ、シャワーに入ったのは見ていたし、シャワーとか風呂とかでテンション上げるのもいつもの事だけど。
痛いって・・・何だ?
疑問に思いながらも、自分も汗を流そうと隣のシャワールームに入る。
汗でベタベタと張り付く上着を脱ぎ捨て、ズボンも脱いで下着一枚になったとき。
バンッ!!
急に扉が開いたかと思えば、入ってきたのは・・・
「あ、あいばさんっ!?」
「にの!!にの!!シャワー!!うひゃひゃっ!」
「な、何!?どうしたの?あんた、落ち着いて話なさいよっ」
「うひゃひゃっ、シャワー!シャワー!!」
ダメだ・・・・テンションMAXで聞いちゃいない。
しかもあんた、全裸なんですけど・・・・。
「にのっ!早く、シャワー!!」
一体シャワーが何なのか、全くもって理解できない二宮に痺れを切らした相葉が、シャワーのコックに手をかけた。
「ばっ!ちょ、待てっ!!」
止めようとした時にはすでに遅し。
勢いよくシャワーが飛び出した。
「うわぁっ!ちょっ、痛い、痛いっ!!」
「うひゃひゃっ・・・にの、おもしれぇ!!ひゃはっ」
四方八方についているシャワーのヘッドから、これでもかというほどお湯が二宮の全身に当たる。
「痛いっ!!ちょっと、あいばっ!!止めろってっ!!」
二宮の悲痛な叫びに、ようやく相葉がシャワーを止めた。
「うひゃひゃ、痛いだろ?おれもびっくりしたもん。でも、にの超おもしれぇ」
そう言って笑う相葉を、恨めしそうに睨み付けた。
「勢いよく出しすぎなんだよ。だから痛いんだろ!」
二宮は履いたままびしょ濡れになっているパンツのウエストを引っ張った。
「もう、あんた・・・これ、どうしてくれんの?」
「ごめん、ごめん。替えのパンツあるでしょ?」
「・・・最後の1枚だったんだよ。あー・・・俺、今から東京戻ってドラマの撮影なのに・・・」
自分のパンツを見て、ため息を吐く二宮。
それにしてもシャワーの前で、全裸男とパンツ1枚の男が立ち尽くしてるって、何て光景だよ。
「ごめんねぇ。ついテンション上がっちゃって・・・あ、そうだ!俺ので良ければあるけど?」
相葉の言葉に二宮が顔を上げる。
「あんたのパンツ貸してくれんの?」
「嫌じゃなければ・・・」
「・・・・・」
「あ、やっぱ嫌?じゃぁ・・翔ちゃんの借りてこようか?」
翔ちゃんならいっぱい持ってるでしょ。
「絶対嫌!!!」
「えー・・・じゃあ、コンビニ行って来ようか?」
おれ、買ってくるよ。
出て行こうとする相葉を二宮が引き止めた。
「いいですよ、そこまでしなくて・・・あんたの借ります」
「え?嫌じゃなかったの?」
「誰が嫌って言ったんですか?ちょっと考えてただけですよ」
あんたのパンツ履いてドラマ撮影かぁ・・・悪くない。
いや、むしろ・・・良い。
二宮が何を考えているのか、露と知らない相葉は自分の鞄からパンツを取り出して二宮に差し出す。
「はい、これ」
「・・・・」
黙ったまま差し出されたパンツをじっと見つめる二宮。
「にの?あ、大丈夫だよ新品だから!!」
二宮が履くのを迷っていると勘違いした相葉が、心配しないでと念を押す。
「・・・・何だ、残念」
「へ?」
「いつも履いてるヤツでも良かったのに・・・・むしろ、その方が萌える・・・」
一瞬二宮の言ってる意味が分からず呆けていた相葉が、それを理解し真っ赤になる。
「なっ!!ばかな事言ってんじゃねぇよっ!はやく入れ!ばかにのっ!!」
二宮にパンツを押し付けると、乱暴にシャワールームへ押し込む。
「ちょ、押すなよ。何?照れてんの?今更だろ?」
「うるさいっ、もう入れってば!!」
「分かったよ・・・・よっと!!」
素直にシャワールームに入ったと思ったら、相葉の腕を掴み一緒にシャワールームに引っ張り込む。
「うわっ!ちょっと、にの!?」
「あんたも、早くシャワーして服着なさいよ。また風邪引くでしょ!」
「お、おれは隣に行くから・・・うひゃ!」
出て行こうとする相葉に、二宮はおもいっきりシャワーを掛けた。
「ちょ、にのっ、やめて」
「良いから!おとなしくしてなさい!!ほら、目ぇ瞑って!」
相葉の顔めがけてシャワーを向ける。
「わっぷ、ん・・・・ぷはっ!!にのっ、わかったから・・・やめてっ」
「分かればよろしい。はい、身体洗うよ?」
「はぁい・・・ねぇ、にの・・・シャワーだけだよね・・・?」
「んふふ・・・、何か期待してるの?」
「ち、違うよ!」
「まぁ・・・そうしたいのは山々だけど、ツアーも続くし、舞台稽古もあるからね。我慢しますよ、今は」
そう言って二宮は相葉の身体を洗い始める。
「うひゃっ、くすぐったいよぉ。おれも洗う!!」
相葉も負けじと二宮の身体に触れた。
「ばっ!あんた、どこ触ってんだよっ!!襲うぞ、馬鹿!」
「きゃぁ!にの、こわい。うひゃひゃっ」
結局2人でシャワーを浴びた。
先に上がった二宮は服を着て、ドライヤーで髪を乾かしていた。
「ふぃー、楽しかったねぇ」
「あんたねぇ、シャワーは楽しむもんじゃないんだよ。汗を流して身体を癒すもんだろ、普通」
「そうだけど、汗が流せて癒されて、それで楽しかったらもっと良いでしょ?」
よく分からない理屈だが、まぁ深く突っ込むのはよしておいた。
ここで突っ込むとムキになって反論してくるから。
裸なのも忘れて。
二宮が何も言わずに髪を乾かしていると、相葉が大声を出した。
「あーっ!!」
「何よ?あんた、うるさい」
「だっ、に、ぱ・・・・」
「はぁ?何だよ、だにぱって?」
「に、にの!お、お・・・おれのぱんつ!!」
「パンツ?さっきあんたが貸してくれたじゃん。遠慮なく履いてるよ?」
「ちがう!そうじゃなくて・・・おれの・・・ぱんつぅ」
「何泣きそうになってんの。そこにあるじゃない」
「だって・・・これ新品だよぉ。ってことはさぁ、にのが履いたのって・・・おれの・・・」
置いてあったパンツは、先ほど二宮に渡したはずの新品のパンツ。
ということは、二宮がすでに履いてしまったのは・・・。
「にのの履いたの・・・おれの使い古しのぱんつだよぉ・・・」
「え?そうですか?気付かなかったなぁ。」
慌てる様子もなく、しれっと答える二宮。
「うう・・・恥ずかしい・・・」
「何言ってんの、別にさっきまで履いてたパンツじゃあるまいし。こっちだって洗濯してあるんでしょ?」
二宮は自分のはいたパンツを指さす。
「そうだけどぉ・・・」
「何の問題もないじゃない。そんなことどうでも良いから、早く服を着なさいって。せっかく汗流してさっぱりしたのに、今度は湯冷めしちゃうでしょうが」
「う、うん・・・」
泣きそうな顔で、相葉は服を着始める。
のそのそと服を着ている相葉の横で、口元を吊り上げる二宮の姿。
つまりは確信犯。
本当は脱いだヤツでもいいんだけど。
そんなことしたら相葉さん、卒倒しちゃうからね。
しばらくお預け覚悟してるんだから、これくらい良いでしょ?
「さて、はりきって撮影してくるかな!!じゃあね、相葉さん、お先に!」
項垂れて服を着ていた相葉に、掠めるようなキスをした。
おわり
「相葉さん・・・・ごめん。俺たち、別れよう・・・」
「にの・・・どうして?おれ、なんかした?」
「いいえ。相葉さんは何も悪くない・・・ごめん。俺が駄目なんだ」
二宮は辛そうに目を伏せた。
「いやだよ・・・別れたくないよ。おれ、わがまま言わないから、嫌がることはしないから・・・だからお願い、そばにいさせてよぉ・・・」
二宮の手を握り締めて、必死に訴える相葉。
その瞳からは今にも涙が零れ落ちそうだ。
「・・・ごめん。俺たちはこうなる運命なんだよ、相葉さん。幸せになって」
相葉が握る手に自分の手を重ね、微笑むと相葉の手から力が抜けた。
相葉の手から二宮の温もりがするりと抜ける。
二宮が相葉に背を向けた。
「いやぁ・・・!お願い、にのぉ・・・お願いだから、おれから、にの取らないでよぉ・・・」
二宮の背中に、悲痛な声が届く。
二宮は一度固く目を閉じ、振り切るように歩き出した。
その場に立ち尽くす相葉。
「にのぉ・・・」
再び2人の道が重なる事は決してない・・・・・「あのさぁ、お前らいい加減にしてくんない?」
その一部始終を見ていた松本は不機嫌そうに顔をしかめた。
「高々、2時間くらい離れるだけで今生の別れみたいに言いやがって。リーダーも何やってんだよ!変なナレーションつけてんじゃねぇよ。何が『再び2人の道が重なる事はない』だよっ!
そう、今までのナレーションはリーダーのものだった。
「何だよぉ、俺はニノに言われたとおり読んだだけだぞ?」
「だから、そんなことに参加すんなって言ってんだよ!!お前らも馬鹿な事してねぇでさっさと乗れ!乗り遅れんだろうが!!」
ついに松本がキレた。
これから次のコンサート地である仙台へ新幹線で移動するのだが、その新幹線での座席が離れたのが事の発端だった。
座席を決めて、今から乗り込もうというところでの寸劇だ。
「馬鹿なことって何ですか!?俺たちにとったら、本当に辛い別れなんです!潤君には分からないでしょうね!
なんせ、相葉さんの隣に座る立場ですから?」
二宮が松本に咬みついた。
結局はソコなのだ。
「あのなぁ・・・お前を相葉ちゃんの隣にすると、所構わずバカップル振りを発揮するからだろ?俺はただ、静かに穏やかに移動したいんだよ!!」
「ほぉ・・・穏やかにねぇ・・・。じゃあ、あなたはあの人をあのままにしておけるんですか?」
「うっう・・・にのぉ、いやだよぉ」
いまだに立ち直れず泣き出しそうな相葉を櫻井が一生懸命慰めていた。
「相葉ちゃん、そんな落ち込むなよ。2時間なんてあっという間だよ?向こう着いたら、ニノとまたより戻せるからさ・・・な?」
「翔ちゃぁん・・・・」
「何で・・・・あんなになってんだよ?」
本当に数時間離れるだけだ。
何日もあえない事だってあるのに。
「どうやら、演じてるうちにホントに別れると思っちゃったみたいだぞ。感情移入ってヤツだな」
大野が困ったように言う。
「どうしてくれるんですか?」
二宮が松本に詰め寄る。
「どうするも・・・お前らがそんなことしなきゃ良かっただけじゃねぇか!!」
「なぁ、まつもっさん。もうさ、隣同士にしてやれよ。収まりつかねぇよ。それにこのままじゃ、コンサート本番で不細工相葉の出来上がりだぜ?」
相葉の頭を撫でながら、櫻井が言う。
「ぶ、ぶさいく言うなぁ・・・」
「ああ、ごめんごめん」
「ちょっと、翔ちゃん。相葉さんから離れてくれます?ほら、相葉さんおいで?」
「にぃのぉ・・・・」
とてとてと二宮に近づき抱きつく。
肩口に顔を埋めて、すり寄せる。
「大丈夫ですよ、俺たちは絶対別れませんから。相葉さんが嫌って言っても離しません」
「ほんとぉ?」
「もちろん。俺、あんたが大好きなんだから」
「ふふっ、おれもぉ。にのすき!」
再びきつく抱き合う。
言っておくが、駅という公衆の面前だ。
「もうさ、隣同士にしてやれよ。その方が後々面倒がないぜ?」
櫻井の言葉に松本は渋々了承する。
結局は相葉の涙に弱いのだ。
「・・・・分かったよ。その代わり、少しでも変なことがあれば、即離すかんな?」
二宮を睨み、忠告した。
「はいはい。相葉さん、俺たち一緒にいられるって!」
「うん!良かったね、にの!松潤ありがと!大好き!!」
「ああ・・・」
そんなこんなで、現在お隣同士のバカップル。
二宮としては、いちゃいちゃしたいのだが、後ろから痛いほどのオーラを感じるので、ここはおとなしくしておこうと思う。
それでも、2人一緒なら幸せなのだ。
愛しい人の真剣な表情を最後に、二宮は瞼を閉じた。
おわり
「にの・・・どうして?おれ、なんかした?」
「いいえ。相葉さんは何も悪くない・・・ごめん。俺が駄目なんだ」
二宮は辛そうに目を伏せた。
「いやだよ・・・別れたくないよ。おれ、わがまま言わないから、嫌がることはしないから・・・だからお願い、そばにいさせてよぉ・・・」
二宮の手を握り締めて、必死に訴える相葉。
その瞳からは今にも涙が零れ落ちそうだ。
「・・・ごめん。俺たちはこうなる運命なんだよ、相葉さん。幸せになって」
相葉が握る手に自分の手を重ね、微笑むと相葉の手から力が抜けた。
相葉の手から二宮の温もりがするりと抜ける。
二宮が相葉に背を向けた。
「いやぁ・・・!お願い、にのぉ・・・お願いだから、おれから、にの取らないでよぉ・・・」
二宮の背中に、悲痛な声が届く。
二宮は一度固く目を閉じ、振り切るように歩き出した。
その場に立ち尽くす相葉。
「にのぉ・・・」
再び2人の道が重なる事は決してない・・・・・「あのさぁ、お前らいい加減にしてくんない?」
その一部始終を見ていた松本は不機嫌そうに顔をしかめた。
「高々、2時間くらい離れるだけで今生の別れみたいに言いやがって。リーダーも何やってんだよ!変なナレーションつけてんじゃねぇよ。何が『再び2人の道が重なる事はない』だよっ!
そう、今までのナレーションはリーダーのものだった。
「何だよぉ、俺はニノに言われたとおり読んだだけだぞ?」
「だから、そんなことに参加すんなって言ってんだよ!!お前らも馬鹿な事してねぇでさっさと乗れ!乗り遅れんだろうが!!」
ついに松本がキレた。
これから次のコンサート地である仙台へ新幹線で移動するのだが、その新幹線での座席が離れたのが事の発端だった。
座席を決めて、今から乗り込もうというところでの寸劇だ。
「馬鹿なことって何ですか!?俺たちにとったら、本当に辛い別れなんです!潤君には分からないでしょうね!
なんせ、相葉さんの隣に座る立場ですから?」
二宮が松本に咬みついた。
結局はソコなのだ。
「あのなぁ・・・お前を相葉ちゃんの隣にすると、所構わずバカップル振りを発揮するからだろ?俺はただ、静かに穏やかに移動したいんだよ!!」
「ほぉ・・・穏やかにねぇ・・・。じゃあ、あなたはあの人をあのままにしておけるんですか?」
「うっう・・・にのぉ、いやだよぉ」
いまだに立ち直れず泣き出しそうな相葉を櫻井が一生懸命慰めていた。
「相葉ちゃん、そんな落ち込むなよ。2時間なんてあっという間だよ?向こう着いたら、ニノとまたより戻せるからさ・・・な?」
「翔ちゃぁん・・・・」
「何で・・・・あんなになってんだよ?」
本当に数時間離れるだけだ。
何日もあえない事だってあるのに。
「どうやら、演じてるうちにホントに別れると思っちゃったみたいだぞ。感情移入ってヤツだな」
大野が困ったように言う。
「どうしてくれるんですか?」
二宮が松本に詰め寄る。
「どうするも・・・お前らがそんなことしなきゃ良かっただけじゃねぇか!!」
「なぁ、まつもっさん。もうさ、隣同士にしてやれよ。収まりつかねぇよ。それにこのままじゃ、コンサート本番で不細工相葉の出来上がりだぜ?」
相葉の頭を撫でながら、櫻井が言う。
「ぶ、ぶさいく言うなぁ・・・」
「ああ、ごめんごめん」
「ちょっと、翔ちゃん。相葉さんから離れてくれます?ほら、相葉さんおいで?」
「にぃのぉ・・・・」
とてとてと二宮に近づき抱きつく。
肩口に顔を埋めて、すり寄せる。
「大丈夫ですよ、俺たちは絶対別れませんから。相葉さんが嫌って言っても離しません」
「ほんとぉ?」
「もちろん。俺、あんたが大好きなんだから」
「ふふっ、おれもぉ。にのすき!」
再びきつく抱き合う。
言っておくが、駅という公衆の面前だ。
「もうさ、隣同士にしてやれよ。その方が後々面倒がないぜ?」
櫻井の言葉に松本は渋々了承する。
結局は相葉の涙に弱いのだ。
「・・・・分かったよ。その代わり、少しでも変なことがあれば、即離すかんな?」
二宮を睨み、忠告した。
「はいはい。相葉さん、俺たち一緒にいられるって!」
「うん!良かったね、にの!松潤ありがと!大好き!!」
「ああ・・・」
そんなこんなで、現在お隣同士のバカップル。
二宮としては、いちゃいちゃしたいのだが、後ろから痛いほどのオーラを感じるので、ここはおとなしくしておこうと思う。
それでも、2人一緒なら幸せなのだ。
愛しい人の真剣な表情を最後に、二宮は瞼を閉じた。
おわり
ワタクシ二宮和也、ただいま猛烈に落ち込んでおります。
その原因はと言うと・・・。
「うひゃひゃっ!だけどもだっけど♪そんなの関係ねぇ、はいっ!おっぱっぴぃ!」
隣で小島よしおを真似してる男のことだったりするわけです。
もちろん、誰だかお分かりですよね?
「ねぇ、にの!見て見て!!おっぱっぴぃ!!」
「・・・・はいはい」
はしゃぐ彼に適当な返事を返す。
この呆れるほどに能天気な男、相葉雅紀。
この人のことで奈落の底まで落ちているんです。
事の発端は皆さんもご覧になったであろう実験スペシャル。
俺と相葉さんのロケ、ミラーマンにある。
面白かったでしょ?
あれはね、今回の実験の中でも一番だと思うんですよ。
何であんな扱いなのか、納得できないんですけど。
まぁ、ゴールデン向きではないとは思います。
って、そうじゃなくて。
あの実験のせいで俺は今、落ち込んでいるわけですよ。
俺はね、相葉さんのことを世界で・・・いや、この世もあの世も全て含めて一番想っているって自信があるんです。
彼を想う気持ちは誰にも負けないし、負けるつもりもない。
ずーっと彼のことを見てきたし、それはこれからも変わらない。
俺にはね、自負があったんです。
自分が彼を見失うはずがない。
何処に居たって、何をしてたって・・・俺は彼を見つけられるって。
なのに・・・・。
俺は彼を見失った。
一瞬ではあったけれど。
森の中で彼が何処にいるのか分からなかった。
俺は必死になって探した。
それこそ、テレビだって事も忘れるくらい。
出川さんへの返しも疎かになっていたけど、気にすることも出来なかった。
目が悪いせいだと、自分をごまかしたりして。
透明人間になりたいと言っていた彼にはきっと、嬉しいことでしょうけど。
俺にとってはとてつもないショックだった。
というわけで。
表面上はいつもと変わらないニノちゃんを演じてはいますが、内心ずっしりと落ちているんですよ。
「もう、にぃの!!」
適当な返事に痺れを切らしたのか、ハニーちゃんが背中に張り付いた。
「何ですか?甘えん坊さんですね。ちょっと、重たいよ・・・」
そう言って肩から覗く小さなお顔を小突いた。
ワタクシとしては、いつも通りにしていたつもり・・・だったんですが。
「ねぇ・・・にの、なんか変。元気ないね?」
思わず、肩から覗く顔を見つめる。
「そう、ですか?」
そんなことないけどと、目を逸らした。
「・・・そう?なんか、いつもと違うんだけどなぁ。ほら、顔がねしゅわしゅわしてんの」
「しゅわしゅわ?何それ、意味分からないんだけど・・・」
「んー・・・なんていうのかなぁ。顔がね、ふにゃぁってなっててね、元気じゃない感じがするの」
「・・・・覇気がない・・・って言いたいの?」
「そう、それ!!はきがないの!!」
自分の言いたいことが言えて、すっきりしたのか、ぎゅうっと抱きついてワタクシの身体を前後に揺する。
「ちょ、苦しいよ!もう・・・」
文句を言ってみても、彼は微笑むばかり。
「ねぇ、どうかしたの?おれ相談にのるよ?」
「・・・・・」
この人は普段鈍いくせに、どうしてこういう時は気付くんでしょうね。
ホント、敵わない。
「俺ね、鏡ロケん時、あんたを見つけられなかったの。絶対に自信があったのに・・・・あんたを見失った」
「にの?」
「そん時ね、見つけられないショックもあったけど・・・あんたがいないって事に、一瞬にして視界が途絶えたんだ」
ナニモミエナイ。
ナニモキコエナイ。
世界はこんなにも暗くて静かなところなんだ。
あんたがいないと。
所詮俺の世界なんて、こんなもの。
絶対言うつもり、なかったのに。
前に回る相葉の手をぎゅっと掴んだ。
その手がするっと、俺の手から抜けていく。
「あいばさん・・・?」
「にの!見て!!」
「はい?」
突然立ち上がったかと思うと、相葉さんが取った行動は・・・。
「はいっ!そんなの関係ねぇ、そんなの関係ねぇ!!」
小島よしおかよ・・・・。
人がシリアス気取ってんのに、落ち込んでんのに、この人は・・・。
思わずため息が漏れた。
「ちょっと、にの!見てんの!?」
「はいはい、見てますよ」
「もう!呆れてるでしょ?そうじゃなくてね、おれが言いたいのは、にのがおれを見失っても、そんなの関係ないって言ってんの!!」
ちょっと、関係ないって、ひどくないですか?それ。
「だって!にのがおれを探してる時、おれにはにのが見えてるんだから!!」
「・・・え?」
「だぁかぁら!にのが見失っても、おれはにのが見えてたの!だから、にのの世界が暗くなることなんてないし、不安になることもないの。分かる?」
「あいばさん・・・」
「おれだって、にのが・・・にのがおれを見てくれないなんて、いや。だから、透明人間になったとき、にのが探してんの見て・・・最初は嬉しかったけど、だんだん不安になって・・・。
おれ、ここだよ!にの、早く見つけて!って思ってた。あんな気持ちになるなら、透明人間なんてならなくていい・・・」
相葉さんが、正面から抱きついてきた。
俺はそれをしっかりと受け止め、力いっぱい抱きしめる。
「にのぉ・・・にのが見つけられない時は、俺が見つけるから・・・だから・・・」
「うん・・・。あんたが見失った時は、俺が必ず見つけるよ」
「絶対ね?おれだって、にのがいなきゃ・・・・んっ・・・」
いい終わらないうちに、相葉さんの言葉ごと飲み込んだ。
俺達は、やっぱり似たもの同士だね。
あんたの言葉、俺もそう思ってるよ。
今後、俺があんたを見失うことなんて絶対ないと思うけど。
その時には、あんたが俺を見つけてよ。
きっとそん時には、俺は暗い世界に怯えきってるだろうから。
今日みたいに見つけて、抱きしめてね。
『おれだって、にのがいなきゃ・・・生きてても死んでるのと一緒だから』
おわり
その原因はと言うと・・・。
「うひゃひゃっ!だけどもだっけど♪そんなの関係ねぇ、はいっ!おっぱっぴぃ!」
隣で小島よしおを真似してる男のことだったりするわけです。
もちろん、誰だかお分かりですよね?
「ねぇ、にの!見て見て!!おっぱっぴぃ!!」
「・・・・はいはい」
はしゃぐ彼に適当な返事を返す。
この呆れるほどに能天気な男、相葉雅紀。
この人のことで奈落の底まで落ちているんです。
事の発端は皆さんもご覧になったであろう実験スペシャル。
俺と相葉さんのロケ、ミラーマンにある。
面白かったでしょ?
あれはね、今回の実験の中でも一番だと思うんですよ。
何であんな扱いなのか、納得できないんですけど。
まぁ、ゴールデン向きではないとは思います。
って、そうじゃなくて。
あの実験のせいで俺は今、落ち込んでいるわけですよ。
俺はね、相葉さんのことを世界で・・・いや、この世もあの世も全て含めて一番想っているって自信があるんです。
彼を想う気持ちは誰にも負けないし、負けるつもりもない。
ずーっと彼のことを見てきたし、それはこれからも変わらない。
俺にはね、自負があったんです。
自分が彼を見失うはずがない。
何処に居たって、何をしてたって・・・俺は彼を見つけられるって。
なのに・・・・。
俺は彼を見失った。
一瞬ではあったけれど。
森の中で彼が何処にいるのか分からなかった。
俺は必死になって探した。
それこそ、テレビだって事も忘れるくらい。
出川さんへの返しも疎かになっていたけど、気にすることも出来なかった。
目が悪いせいだと、自分をごまかしたりして。
透明人間になりたいと言っていた彼にはきっと、嬉しいことでしょうけど。
俺にとってはとてつもないショックだった。
というわけで。
表面上はいつもと変わらないニノちゃんを演じてはいますが、内心ずっしりと落ちているんですよ。
「もう、にぃの!!」
適当な返事に痺れを切らしたのか、ハニーちゃんが背中に張り付いた。
「何ですか?甘えん坊さんですね。ちょっと、重たいよ・・・」
そう言って肩から覗く小さなお顔を小突いた。
ワタクシとしては、いつも通りにしていたつもり・・・だったんですが。
「ねぇ・・・にの、なんか変。元気ないね?」
思わず、肩から覗く顔を見つめる。
「そう、ですか?」
そんなことないけどと、目を逸らした。
「・・・そう?なんか、いつもと違うんだけどなぁ。ほら、顔がねしゅわしゅわしてんの」
「しゅわしゅわ?何それ、意味分からないんだけど・・・」
「んー・・・なんていうのかなぁ。顔がね、ふにゃぁってなっててね、元気じゃない感じがするの」
「・・・・覇気がない・・・って言いたいの?」
「そう、それ!!はきがないの!!」
自分の言いたいことが言えて、すっきりしたのか、ぎゅうっと抱きついてワタクシの身体を前後に揺する。
「ちょ、苦しいよ!もう・・・」
文句を言ってみても、彼は微笑むばかり。
「ねぇ、どうかしたの?おれ相談にのるよ?」
「・・・・・」
この人は普段鈍いくせに、どうしてこういう時は気付くんでしょうね。
ホント、敵わない。
「俺ね、鏡ロケん時、あんたを見つけられなかったの。絶対に自信があったのに・・・・あんたを見失った」
「にの?」
「そん時ね、見つけられないショックもあったけど・・・あんたがいないって事に、一瞬にして視界が途絶えたんだ」
ナニモミエナイ。
ナニモキコエナイ。
世界はこんなにも暗くて静かなところなんだ。
あんたがいないと。
所詮俺の世界なんて、こんなもの。
絶対言うつもり、なかったのに。
前に回る相葉の手をぎゅっと掴んだ。
その手がするっと、俺の手から抜けていく。
「あいばさん・・・?」
「にの!見て!!」
「はい?」
突然立ち上がったかと思うと、相葉さんが取った行動は・・・。
「はいっ!そんなの関係ねぇ、そんなの関係ねぇ!!」
小島よしおかよ・・・・。
人がシリアス気取ってんのに、落ち込んでんのに、この人は・・・。
思わずため息が漏れた。
「ちょっと、にの!見てんの!?」
「はいはい、見てますよ」
「もう!呆れてるでしょ?そうじゃなくてね、おれが言いたいのは、にのがおれを見失っても、そんなの関係ないって言ってんの!!」
ちょっと、関係ないって、ひどくないですか?それ。
「だって!にのがおれを探してる時、おれにはにのが見えてるんだから!!」
「・・・え?」
「だぁかぁら!にのが見失っても、おれはにのが見えてたの!だから、にのの世界が暗くなることなんてないし、不安になることもないの。分かる?」
「あいばさん・・・」
「おれだって、にのが・・・にのがおれを見てくれないなんて、いや。だから、透明人間になったとき、にのが探してんの見て・・・最初は嬉しかったけど、だんだん不安になって・・・。
おれ、ここだよ!にの、早く見つけて!って思ってた。あんな気持ちになるなら、透明人間なんてならなくていい・・・」
相葉さんが、正面から抱きついてきた。
俺はそれをしっかりと受け止め、力いっぱい抱きしめる。
「にのぉ・・・にのが見つけられない時は、俺が見つけるから・・・だから・・・」
「うん・・・。あんたが見失った時は、俺が必ず見つけるよ」
「絶対ね?おれだって、にのがいなきゃ・・・・んっ・・・」
いい終わらないうちに、相葉さんの言葉ごと飲み込んだ。
俺達は、やっぱり似たもの同士だね。
あんたの言葉、俺もそう思ってるよ。
今後、俺があんたを見失うことなんて絶対ないと思うけど。
その時には、あんたが俺を見つけてよ。
きっとそん時には、俺は暗い世界に怯えきってるだろうから。
今日みたいに見つけて、抱きしめてね。
『おれだって、にのがいなきゃ・・・生きてても死んでるのと一緒だから』
おわり
自分は意外と寛大な方だ。
滅多に怒ることはない。
アイドルなんてやってると、誹謗や中傷はしょっちゅうで。
そんなことに慣れたくはないけど、いちいち真に受けてたら身が持たない。
だから、別に知らない人に何を言われようと、掲示板とやらに変な書き込みをされようとどうって事ない。
まぁ、言ってるだけで実際は気にもなるし、傷つくんだけど。
でも、そんな事はどうでもよくって。
「・・・ねぇ、相葉さん、相葉さん!」
「・・・ナンデスカ?」
「何で片言!?」
「・・・・・」
自分で言うのもなんだけど、寛大な方。
でも、今日ばかりはちょっと無理。
と、いうわけで。
相葉雅紀、怒ってます!!
「もう、相葉さんってば!!何に怒ってんのよ?」
あなたにですけど、何か?
「相葉さんって・・・・もう、おいこらっ!相葉!!」
大きな声を出したにのを思いっきり睨んだら、少し身を引いた。
ふん、いつもお前の言う通りになんかなんねぇんだからな。
「ねぇ、相葉さーん。こっち向いてよー」
今度は泣き落としにかかった。
ぜってぇ、落ちねぇよ!!
「・・・・分かった。じゃあ、ヒント!ヒント頂戴!!ね?」
「自分で考えろ、ばか」
「あんた・・・・いつからそんなキャラになったよ?」
「うるさい、ばか宮。分かんねぇなら帰れ。帰って、キャプテンのトコでも行けよ」
ほんっと、むかつくんだよ。
「・・・・ああ、そういうこと」
おれのひと言で、どうやら怒ってる原因が分かったらしい。
ニヤって笑う顔がカッコいいなんて、ほんとどうかしてる。
「もう、可愛いねぇ・・・あんたって」
「可愛くねぇよ。こんなオトコマエつかまえて可愛い言うな・・・」
「だってぇ、ジェラシーでしょ?」
ほんと、うざいったら。
「おれよりキャプテンがいいなら、そう言えよ・・・」
「心外だなぁ。そんな事思ってないですよ」
「・・・・うそだね。食べちゃいたいくらい好きなんだろ?」
今だって考えてるのはキャプテンのことなくせに。
「やっぱり・・・それで怒ってたんだ。ホント、可愛い子だこと」
「だから、可愛いって言うな!」
おれだってね、怒るわけですよ。
自分の恋人が他のオトコに惹かれているなんて、いい気がしないでしょ?普通。
そっぽを向いたおれに、にのがくっついてくる。
「相葉さーん」
「・・・・」
「ねぇってば、俺は別にあんたの事よりキャプテンを好きになったわけじゃないよ?」
「・・・でもすきでしょ?」
じゃなきゃ、あんなにひっつかないだろうが。
おれだって2人の、いつものいちゃいちゃくらい何てことないよ。
でも、誕生日にあれはないんじゃない?
女みたいって言われるかもしれないけど、誕生日ってやっぱり特別じゃない?
その日にメールで「もう、食べちゃいたいv」って、ハートマークまでつけて?
どんだけだよ!!
ああ、うざい!!
怒って当然でしょ?
むくれるおれに、にのはあっけらかんと言う。
「だって、俺キャプテンのことは好きですけど、キャプテンとはせっくす出来ないもん」
「・・・なにそれ」
「だぁから!あんたとはせっくす出来るけど、キャプテンとは出来ないって。あんなこと、あんたとしかしたいと思わないもん」
他のヤツとなんて、考えただけでも気持ち悪い。
「なんか・・・あんまり嬉しくない」
「何でよ?最高の口説き文句でしょ?あんた、最高に気持ちいいもん」
「・・・・」
「それに!あんただって人のこと言えないでしょうが。いつも翔ちゃんに頼るくせに」
「翔ちゃんは、そんなんじゃない」
「でも、好きでしょ?」
「・・・・すき」
「ふん・・・、じゃあ翔ちゃんとせっくす出来るのかよ?」
翔ちゃんとせっくす・・・・。
「むり!!」
「だろ?同じことだよ」
「・・・」
黙ったおれのおでこにチュッとした。
それだけで機嫌が良くなる自分が憎い。
だから、ちょっと憎まれ口。
「せっくすが基準かよ・・・最低だな」
「・・・最低だけど、最高でしょ?」
そう言って、んふふって笑うにのは、やっぱり最高にオトコマエ。
「さ!機嫌が直ったところで、相葉さん。せっくすしましょ♪」
ほんと、最低。
でも、結局それに乗っかっちゃう自分も同じ穴のムジナ。
「・・・満足させてくれんだろうな?」
「んふふ、もちろん。ココロもカラダも満たしてあげる・・・」
こんなにのに付き合えるおれって、やっぱり寛大なオトコだと思う。
おわり
滅多に怒ることはない。
アイドルなんてやってると、誹謗や中傷はしょっちゅうで。
そんなことに慣れたくはないけど、いちいち真に受けてたら身が持たない。
だから、別に知らない人に何を言われようと、掲示板とやらに変な書き込みをされようとどうって事ない。
まぁ、言ってるだけで実際は気にもなるし、傷つくんだけど。
でも、そんな事はどうでもよくって。
「・・・ねぇ、相葉さん、相葉さん!」
「・・・ナンデスカ?」
「何で片言!?」
「・・・・・」
自分で言うのもなんだけど、寛大な方。
でも、今日ばかりはちょっと無理。
と、いうわけで。
相葉雅紀、怒ってます!!
「もう、相葉さんってば!!何に怒ってんのよ?」
あなたにですけど、何か?
「相葉さんって・・・・もう、おいこらっ!相葉!!」
大きな声を出したにのを思いっきり睨んだら、少し身を引いた。
ふん、いつもお前の言う通りになんかなんねぇんだからな。
「ねぇ、相葉さーん。こっち向いてよー」
今度は泣き落としにかかった。
ぜってぇ、落ちねぇよ!!
「・・・・分かった。じゃあ、ヒント!ヒント頂戴!!ね?」
「自分で考えろ、ばか」
「あんた・・・・いつからそんなキャラになったよ?」
「うるさい、ばか宮。分かんねぇなら帰れ。帰って、キャプテンのトコでも行けよ」
ほんっと、むかつくんだよ。
「・・・・ああ、そういうこと」
おれのひと言で、どうやら怒ってる原因が分かったらしい。
ニヤって笑う顔がカッコいいなんて、ほんとどうかしてる。
「もう、可愛いねぇ・・・あんたって」
「可愛くねぇよ。こんなオトコマエつかまえて可愛い言うな・・・」
「だってぇ、ジェラシーでしょ?」
ほんと、うざいったら。
「おれよりキャプテンがいいなら、そう言えよ・・・」
「心外だなぁ。そんな事思ってないですよ」
「・・・・うそだね。食べちゃいたいくらい好きなんだろ?」
今だって考えてるのはキャプテンのことなくせに。
「やっぱり・・・それで怒ってたんだ。ホント、可愛い子だこと」
「だから、可愛いって言うな!」
おれだってね、怒るわけですよ。
自分の恋人が他のオトコに惹かれているなんて、いい気がしないでしょ?普通。
そっぽを向いたおれに、にのがくっついてくる。
「相葉さーん」
「・・・・」
「ねぇってば、俺は別にあんたの事よりキャプテンを好きになったわけじゃないよ?」
「・・・でもすきでしょ?」
じゃなきゃ、あんなにひっつかないだろうが。
おれだって2人の、いつものいちゃいちゃくらい何てことないよ。
でも、誕生日にあれはないんじゃない?
女みたいって言われるかもしれないけど、誕生日ってやっぱり特別じゃない?
その日にメールで「もう、食べちゃいたいv」って、ハートマークまでつけて?
どんだけだよ!!
ああ、うざい!!
怒って当然でしょ?
むくれるおれに、にのはあっけらかんと言う。
「だって、俺キャプテンのことは好きですけど、キャプテンとはせっくす出来ないもん」
「・・・なにそれ」
「だぁから!あんたとはせっくす出来るけど、キャプテンとは出来ないって。あんなこと、あんたとしかしたいと思わないもん」
他のヤツとなんて、考えただけでも気持ち悪い。
「なんか・・・あんまり嬉しくない」
「何でよ?最高の口説き文句でしょ?あんた、最高に気持ちいいもん」
「・・・・」
「それに!あんただって人のこと言えないでしょうが。いつも翔ちゃんに頼るくせに」
「翔ちゃんは、そんなんじゃない」
「でも、好きでしょ?」
「・・・・すき」
「ふん・・・、じゃあ翔ちゃんとせっくす出来るのかよ?」
翔ちゃんとせっくす・・・・。
「むり!!」
「だろ?同じことだよ」
「・・・」
黙ったおれのおでこにチュッとした。
それだけで機嫌が良くなる自分が憎い。
だから、ちょっと憎まれ口。
「せっくすが基準かよ・・・最低だな」
「・・・最低だけど、最高でしょ?」
そう言って、んふふって笑うにのは、やっぱり最高にオトコマエ。
「さ!機嫌が直ったところで、相葉さん。せっくすしましょ♪」
ほんと、最低。
でも、結局それに乗っかっちゃう自分も同じ穴のムジナ。
「・・・満足させてくれんだろうな?」
「んふふ、もちろん。ココロもカラダも満たしてあげる・・・」
こんなにのに付き合えるおれって、やっぱり寛大なオトコだと思う。
おわり
宿題くんの収録日
本日はオグさんの持ち込み企画らしい。
家事王決定戦って・・・一体何をやるんでしょうねぇ。
と、言うわけでワタクシ二宮和也。
本日も頑張って収録に臨もうじゃありませんか!!
なんてったって、今日はゲストがいないから牽制もしやすいってもんですよ。
狙われやすいからね、ウチの可愛い子ちゃんは!
しかも、本人に全く自覚がないから、毎回厄介ですよ。
メンバーはともかく、ゲストはね、むやみに威嚇できないでしょ?
だから気の使い方が半端ないわけよ。
そう思うと、今日の収録はラッキーです。
「にのぉ。衣装決めるから来てって!行こうよぉ」
「はぁい」
ワタクシのハニーちゃんが呼んでますんで、行くとしましょう!!
「って・・・、今日はジャージ?衣装決める必要ないじゃん」
5人お揃いのジャージに思わず出た言葉。
でも。
「ふふっ、相葉さんお揃いだねー」
「ん?うん!お揃いー」
ああ、可愛いvv
「あのぉ、みんなお揃いですけど・・・」
「あ!?」
「いえ・・・何でも」
うるさいニュースキャスターをひと睨み。
ビビッてやんの。
ああ、面白い。
「ねぇ、にの!エプロン!!」
ハニーちゃんが叫んだ。
「エプロン?」
「うん。エプロンのね、色が違うの。好きな色選んでいいんだって!どれにする?」
そこには5色の色違いのエプロン。
ああ、家事王だからね。
ん?好きな色?
目の前のエプロンは5色。
赤、青、黄色、ピンクに・・・・・。
「ああっ!!」
「な、何だよ?急に大声出すなよ。びっくりすんだろ?」
俺の大声に潤君が顔をしかめた。
濃い顔が余計に濃くなるからやめてよ。
って!!そんなことが言いたいんじゃない!!
「じゅ、潤君!」
「な、何?」
「俺、それが良い!!譲って下さい!!」
潤君が手にしたエプロンを指差す。
「は?ああ、別にいいけど・・・何?この色が好きなわけ?」
「え?いや・・・その、今日のラッキーカラーなんですよ」
「はぁ?」
「今日、たまたま占いでね、そう言われたんで」
「ふーん・・・」
俺の勢いにちょっと引き気味な潤君だったけど、そんなの関係ねぇ。
おっと、流行語にも敏感なにのちゃん、ナイス!!
と、言うわけで見事にゲット!
緑のエ・プ・ロ・ンvv
んふふ・・・今日のラッキーカラーなんて嘘っぱち。
まぁ、「今日の」ってトコが嘘なんです。
緑はいつだって、ワタクシのラッキーカラーですからvv
理由?
そんなの分かりきってるじゃないですかぁ。
俺のハニーちゃんの色だからvv
ね!ハニーちゃ・・・「おれ、青!!青にするぅ!」
ええっ!?
そりゃないでしょ・・・・。
そこは黄色でしょ?
「あ、じゃあ俺黄色っ」
って、お前かヘタレニュースキャスター!!!
睨んだら、怖がって後ずさりして後ろの潤君にぶつかった。
そんで潤君に怒られてやんの。
ざまぁみろ!!
ええ、分かってますとも。
相葉さんに何の意図もないし、俺のこんなこだわりに気付くことだってない。
そんなところも好きなんだから。
だけど何でしょう、このせつなさ。
まるで片想い。
もちろん両想いですよ?
これは妄想じゃないですよ!!
「にぃの!後ろ縛って?」
ああ・・・あんたが言うと何でも卑猥に聞えます・・・。
「にの?」
「ああ・・・はい出来た」
「ありがと!!」
そんな笑顔が・・・好きなんです。
悔しいからちょっときつめに縛ったら、腰のラインがクッキリで、あら素敵vv
とりあえず、このやるせない気持ちを収録にぶつけましょうか!!
二宮和也、家事王狙いまっす!!!!
終わり
本日はオグさんの持ち込み企画らしい。
家事王決定戦って・・・一体何をやるんでしょうねぇ。
と、言うわけでワタクシ二宮和也。
本日も頑張って収録に臨もうじゃありませんか!!
なんてったって、今日はゲストがいないから牽制もしやすいってもんですよ。
狙われやすいからね、ウチの可愛い子ちゃんは!
しかも、本人に全く自覚がないから、毎回厄介ですよ。
メンバーはともかく、ゲストはね、むやみに威嚇できないでしょ?
だから気の使い方が半端ないわけよ。
そう思うと、今日の収録はラッキーです。
「にのぉ。衣装決めるから来てって!行こうよぉ」
「はぁい」
ワタクシのハニーちゃんが呼んでますんで、行くとしましょう!!
「って・・・、今日はジャージ?衣装決める必要ないじゃん」
5人お揃いのジャージに思わず出た言葉。
でも。
「ふふっ、相葉さんお揃いだねー」
「ん?うん!お揃いー」
ああ、可愛いvv
「あのぉ、みんなお揃いですけど・・・」
「あ!?」
「いえ・・・何でも」
うるさいニュースキャスターをひと睨み。
ビビッてやんの。
ああ、面白い。
「ねぇ、にの!エプロン!!」
ハニーちゃんが叫んだ。
「エプロン?」
「うん。エプロンのね、色が違うの。好きな色選んでいいんだって!どれにする?」
そこには5色の色違いのエプロン。
ああ、家事王だからね。
ん?好きな色?
目の前のエプロンは5色。
赤、青、黄色、ピンクに・・・・・。
「ああっ!!」
「な、何だよ?急に大声出すなよ。びっくりすんだろ?」
俺の大声に潤君が顔をしかめた。
濃い顔が余計に濃くなるからやめてよ。
って!!そんなことが言いたいんじゃない!!
「じゅ、潤君!」
「な、何?」
「俺、それが良い!!譲って下さい!!」
潤君が手にしたエプロンを指差す。
「は?ああ、別にいいけど・・・何?この色が好きなわけ?」
「え?いや・・・その、今日のラッキーカラーなんですよ」
「はぁ?」
「今日、たまたま占いでね、そう言われたんで」
「ふーん・・・」
俺の勢いにちょっと引き気味な潤君だったけど、そんなの関係ねぇ。
おっと、流行語にも敏感なにのちゃん、ナイス!!
と、言うわけで見事にゲット!
緑のエ・プ・ロ・ンvv
んふふ・・・今日のラッキーカラーなんて嘘っぱち。
まぁ、「今日の」ってトコが嘘なんです。
緑はいつだって、ワタクシのラッキーカラーですからvv
理由?
そんなの分かりきってるじゃないですかぁ。
俺のハニーちゃんの色だからvv
ね!ハニーちゃ・・・「おれ、青!!青にするぅ!」
ええっ!?
そりゃないでしょ・・・・。
そこは黄色でしょ?
「あ、じゃあ俺黄色っ」
って、お前かヘタレニュースキャスター!!!
睨んだら、怖がって後ずさりして後ろの潤君にぶつかった。
そんで潤君に怒られてやんの。
ざまぁみろ!!
ええ、分かってますとも。
相葉さんに何の意図もないし、俺のこんなこだわりに気付くことだってない。
そんなところも好きなんだから。
だけど何でしょう、このせつなさ。
まるで片想い。
もちろん両想いですよ?
これは妄想じゃないですよ!!
「にぃの!後ろ縛って?」
ああ・・・あんたが言うと何でも卑猥に聞えます・・・。
「にの?」
「ああ・・・はい出来た」
「ありがと!!」
そんな笑顔が・・・好きなんです。
悔しいからちょっときつめに縛ったら、腰のラインがクッキリで、あら素敵vv
とりあえず、このやるせない気持ちを収録にぶつけましょうか!!
二宮和也、家事王狙いまっす!!!!
終わり
いつも思ってる訳じゃない。
でも、時々思うことがある。
にのはずるい。
大好きなにの。
カッコよくて、可愛くて、頭が良くて、面白くて。
運動神経も抜群で、お芝居も上手い。
ダメなときはちゃんと叱ってくれる。
頑張ったときは誰よりも褒めてくれる。
おれのことを一番理解してくれて、一番分かろうとしてくれる。
この世で一番好きなひと。
でもね、時々思うの。
にのってずるい。
ほら、今だって!!
なんなのその笑顔!
嬉しそうにしちゃってさっ!
*****
今日は年末の特番のスタジオ収録。
たくさんのスポーツ選手が集まって、おれのテンションも最高潮。
楽しくて仕方がなかった。
隣のチームのにのも楽しそう。
にのも、野球大好きだから、テンションも超高いみたい。
本当に楽しかったんだよ?
でもさ、納得行かないことがある。
にのがスペインにロナウジーニョに会いに行ったロケのこと。
にの、出発前に何て言った?
『相葉さん、俺がいない間はいつもより気をつけて。誰の誘いも乗っちゃダメ。帰ってきたらたっぷり相手してあげるから・・・・・。
仕事じゃなきゃ絶対ぇ行かねぇのにな。あんた残して行くなんて心配すぎて、また寝れねぇよ』
って、言ったよね?
おれ、ちゃんと言いつけ守ったよ?
よく分かんないけど、いつもより誘われることも多かったけど、淋しいし、行きたかったけど、我慢したよ!!
確かに帰ってきてから、にのにたっぷり甘やかしてもらったし、すっごく幸せだったし、嬉しかった。
でも、納得行かない!!
『ロニー!愛してる!!』
何だよ!?
SHEILAが一緒なんて聞いてない!!
手繋いじゃったりして!
ロナウジーニョとも抱き合っちゃってさ!
おれ、一生懸命我慢したのに・・・・。
分かってるよ、仕事だもん。
あんなスーパースターに会えることなんて滅多にないし、にのはちゃんと仕事したんだ。
でも、でもでもでも!!
おれのこのやり場のない怒りは、何処に持っていけばいいの!?
にののばか。
おれが、同じことすれば途端にご機嫌ナナメになるくせに。
なんか、納得いかなーい!!
―収録後
「相葉さーん、帰ろっ」
「・・・・おれ、今から野球チームの人と飲みに行く約束したから、にの先に帰って」
「は?何言ってんの、そんなのだめに決まってるでしょ?帰るよ」
「・・・いや」
「あ?何拗ねてんだよ?」
「・・・・にのはずるい」
「は?」
意味が分からないって顔して首を傾げるにの。
眉間にしわが寄って、ちょっと怖い。
「にの、ずるいよ。俺にはあれはダメ、これはダメって言うくせに・・・・」
自分ばっかり・・・・おれが嫉妬しないとでも思ってんの?
「・・・ふふっ、相葉さんったらかぁわいいっ!ヤキモチやいてんだぁ」
「う、うるさいっ!!おれだって・・・・」
「うん?」
「おれだって、思ってるんだよ!」
にのはおれのもの。
他の誰にも笑いかけて欲しくない。
誰の誘いにも乗らないで。
そんなこと言えないけど。
いつだって思ってるんだから!
それを言えるにのが羨ましい。
それを言えないおれを分かってるにのはずるい。
「相葉さん、良いんだよ言って。あんたは俺に・・・それを言える権利があるんだ。あんただけが言って良いんだよ」
「にの・・・」
「んふふ、それに・・・あんたの言葉が俺を縛るなんて、考えただけで感じちゃう」
「ばっ!な、何言ってんだよ、ばか!!」
「あははっ!照れてんのー。かぁわぁいい!」
「うるさい、ばか」
「ふふっ、相葉さん帰ろ?俺はあんたに行って欲しくない」
もう、ほんとにずるいひと。
そう言われたら行けないこと、分かってるくせに。
「行かないよ!にのと帰るっ!!」
「んふふ、良かった」
「その代わり、帰ったらずっといちゃいちゃして!!」
「もちろん」
いやだって言っても離さないよ。
耳元で言われて足元から崩れそうになる。
そんなおれを見て、にのが笑った。
やっぱりずるい。
おれだけがこんなになるなんて。
悔しかったから、思いっきり首根っこ掴んで唇に噛み付いてやった。
おわり
でも、時々思うことがある。
にのはずるい。
大好きなにの。
カッコよくて、可愛くて、頭が良くて、面白くて。
運動神経も抜群で、お芝居も上手い。
ダメなときはちゃんと叱ってくれる。
頑張ったときは誰よりも褒めてくれる。
おれのことを一番理解してくれて、一番分かろうとしてくれる。
この世で一番好きなひと。
でもね、時々思うの。
にのってずるい。
ほら、今だって!!
なんなのその笑顔!
嬉しそうにしちゃってさっ!
*****
今日は年末の特番のスタジオ収録。
たくさんのスポーツ選手が集まって、おれのテンションも最高潮。
楽しくて仕方がなかった。
隣のチームのにのも楽しそう。
にのも、野球大好きだから、テンションも超高いみたい。
本当に楽しかったんだよ?
でもさ、納得行かないことがある。
にのがスペインにロナウジーニョに会いに行ったロケのこと。
にの、出発前に何て言った?
『相葉さん、俺がいない間はいつもより気をつけて。誰の誘いも乗っちゃダメ。帰ってきたらたっぷり相手してあげるから・・・・・。
仕事じゃなきゃ絶対ぇ行かねぇのにな。あんた残して行くなんて心配すぎて、また寝れねぇよ』
って、言ったよね?
おれ、ちゃんと言いつけ守ったよ?
よく分かんないけど、いつもより誘われることも多かったけど、淋しいし、行きたかったけど、我慢したよ!!
確かに帰ってきてから、にのにたっぷり甘やかしてもらったし、すっごく幸せだったし、嬉しかった。
でも、納得行かない!!
『ロニー!愛してる!!』
何だよ!?
SHEILAが一緒なんて聞いてない!!
手繋いじゃったりして!
ロナウジーニョとも抱き合っちゃってさ!
おれ、一生懸命我慢したのに・・・・。
分かってるよ、仕事だもん。
あんなスーパースターに会えることなんて滅多にないし、にのはちゃんと仕事したんだ。
でも、でもでもでも!!
おれのこのやり場のない怒りは、何処に持っていけばいいの!?
にののばか。
おれが、同じことすれば途端にご機嫌ナナメになるくせに。
なんか、納得いかなーい!!
―収録後
「相葉さーん、帰ろっ」
「・・・・おれ、今から野球チームの人と飲みに行く約束したから、にの先に帰って」
「は?何言ってんの、そんなのだめに決まってるでしょ?帰るよ」
「・・・いや」
「あ?何拗ねてんだよ?」
「・・・・にのはずるい」
「は?」
意味が分からないって顔して首を傾げるにの。
眉間にしわが寄って、ちょっと怖い。
「にの、ずるいよ。俺にはあれはダメ、これはダメって言うくせに・・・・」
自分ばっかり・・・・おれが嫉妬しないとでも思ってんの?
「・・・ふふっ、相葉さんったらかぁわいいっ!ヤキモチやいてんだぁ」
「う、うるさいっ!!おれだって・・・・」
「うん?」
「おれだって、思ってるんだよ!」
にのはおれのもの。
他の誰にも笑いかけて欲しくない。
誰の誘いにも乗らないで。
そんなこと言えないけど。
いつだって思ってるんだから!
それを言えるにのが羨ましい。
それを言えないおれを分かってるにのはずるい。
「相葉さん、良いんだよ言って。あんたは俺に・・・それを言える権利があるんだ。あんただけが言って良いんだよ」
「にの・・・」
「んふふ、それに・・・あんたの言葉が俺を縛るなんて、考えただけで感じちゃう」
「ばっ!な、何言ってんだよ、ばか!!」
「あははっ!照れてんのー。かぁわぁいい!」
「うるさい、ばか」
「ふふっ、相葉さん帰ろ?俺はあんたに行って欲しくない」
もう、ほんとにずるいひと。
そう言われたら行けないこと、分かってるくせに。
「行かないよ!にのと帰るっ!!」
「んふふ、良かった」
「その代わり、帰ったらずっといちゃいちゃして!!」
「もちろん」
いやだって言っても離さないよ。
耳元で言われて足元から崩れそうになる。
そんなおれを見て、にのが笑った。
やっぱりずるい。
おれだけがこんなになるなんて。
悔しかったから、思いっきり首根っこ掴んで唇に噛み付いてやった。
おわり
今日は相葉さんとゴルフです。
オグさんと一緒なんですが、まぁそれは置いといて。
ああっ、俺のハニーちゃんのスタイルの良いこと!!
ゴルフウェアーに身を包んだハニーちゃんは、それはもうエロイです!!
サーモンピンクのポロシャツの開いた胸元が何とも色っぽいこと!
細身のパンツがとっても可愛いお尻を強調していて堪りません。
ニノちゃん、最終ホールまで我慢できるかしら?
「にぃの!早く行くよ?」
「はい!」
ああ・・・ワタクシも早くイキたいです。
あなたのナカで。
妄想しているうちにゴルフは進み。
ゴルフ中のハニーちゃんはこれまた、マキシマムエロすです!!
だって、あなた!!
ショット打つたびにシャツの裾からお腹がチラリ。
グリーンで芝生の目を読もうとして、しゃがむ度に胸はチラッと、お尻がプリッと・・・・。
ああ・・・・ゴルフ万歳!
「ちょっと、にの!!」
「え?あ、はい。何ですか?」
「次、にのの番でしょ?早くしないとオグさんに怒られるよ?」
「ああ、すいません。つい見惚れちゃって」
「見惚れる?」
「ええ。相変わらずエロい身体してんなぁってね」
俺、我慢できなくなりそうよ、と囁けばたちまちリンゴちゃん。
ホント、可愛い子。
「なっ!なに言ってんの!?ゴルフ中だぞ、ばか!!」
「ゴルフ中でも、仕事中でも俺はいつでもあんたを「そういう目」で見てんの」
「そういう目で見んな!」
「無理。第一、打つ度に腹をチラつかせるあんたが悪い」
「俺のせいかよ!」
もういいよ、馬鹿とそっぽ向いちゃいました。
拗ねる姿も可愛いけどね・・・・って!!
「ちょ、相葉さんっ!何してんのっ!?」
おもむろにハニーちゃんがポロシャツをパンツにインした。
「なにって、腹見えないようにしてんの!!」
「や、止めなさい!!俺が悪かった。もう言わないからさ、えなりかずきは止めて!!」
「うるさい!ばかにの!!とっとと打ちやがれ!」
「あいばさーん・・・」
ハニーちゃん!
どんなあんたも大好きだけど、たとえパンツにインでも愛してるけど、せっかくの目の保養がぁ・・・。
その後のハニーちゃんは、俺の事を完全無視でゴルフに夢中ですよ・・・。
ゴルフになると真剣なんだから。
真剣な顔も可愛くって、堪んないけど。
まぁ、なにが言いたいかっていうと。
ハニーちゃんは最高ってことです。
おわり
オグさんと一緒なんですが、まぁそれは置いといて。
ああっ、俺のハニーちゃんのスタイルの良いこと!!
ゴルフウェアーに身を包んだハニーちゃんは、それはもうエロイです!!
サーモンピンクのポロシャツの開いた胸元が何とも色っぽいこと!
細身のパンツがとっても可愛いお尻を強調していて堪りません。
ニノちゃん、最終ホールまで我慢できるかしら?
「にぃの!早く行くよ?」
「はい!」
ああ・・・ワタクシも早くイキたいです。
あなたのナカで。
妄想しているうちにゴルフは進み。
ゴルフ中のハニーちゃんはこれまた、マキシマムエロすです!!
だって、あなた!!
ショット打つたびにシャツの裾からお腹がチラリ。
グリーンで芝生の目を読もうとして、しゃがむ度に胸はチラッと、お尻がプリッと・・・・。
ああ・・・・ゴルフ万歳!
「ちょっと、にの!!」
「え?あ、はい。何ですか?」
「次、にのの番でしょ?早くしないとオグさんに怒られるよ?」
「ああ、すいません。つい見惚れちゃって」
「見惚れる?」
「ええ。相変わらずエロい身体してんなぁってね」
俺、我慢できなくなりそうよ、と囁けばたちまちリンゴちゃん。
ホント、可愛い子。
「なっ!なに言ってんの!?ゴルフ中だぞ、ばか!!」
「ゴルフ中でも、仕事中でも俺はいつでもあんたを「そういう目」で見てんの」
「そういう目で見んな!」
「無理。第一、打つ度に腹をチラつかせるあんたが悪い」
「俺のせいかよ!」
もういいよ、馬鹿とそっぽ向いちゃいました。
拗ねる姿も可愛いけどね・・・・って!!
「ちょ、相葉さんっ!何してんのっ!?」
おもむろにハニーちゃんがポロシャツをパンツにインした。
「なにって、腹見えないようにしてんの!!」
「や、止めなさい!!俺が悪かった。もう言わないからさ、えなりかずきは止めて!!」
「うるさい!ばかにの!!とっとと打ちやがれ!」
「あいばさーん・・・」
ハニーちゃん!
どんなあんたも大好きだけど、たとえパンツにインでも愛してるけど、せっかくの目の保養がぁ・・・。
その後のハニーちゃんは、俺の事を完全無視でゴルフに夢中ですよ・・・。
ゴルフになると真剣なんだから。
真剣な顔も可愛くって、堪んないけど。
まぁ、なにが言いたいかっていうと。
ハニーちゃんは最高ってことです。
おわり
こんにちは。お久しぶりです。もしくは、初めまして。
名前が変わってからは皆さん始めましてですね。名前は変わっても人間性は全く変わっておりません(笑)。改めまして、椿本 爽と申します。ツバキモト サヤカとお読み下さい。宜しくお願いします。
さて、今回は裏表紙並びに奥付をご覧になって気付かれた方はいらっしゃいますでしょうか。同人活動を始めて、そこそこの年月が経っている筈なのに、今回の本はvol.1となっております。実は同人活動を始める最初に出す予定だった物が延々完成せず、恐らく三年余りの月日を経てようやく完成した次第でございます。……正直長かった。
パラレル自体を余り扱わない人間なので、大分ドキドキです。大丈夫でしょうか。元々が年下攻め思考のある私なんですが、此処までやっちゃって本当に良かったのか非常に不安です。まあ、このページを読んでいると言う事は、恐らく既に読まれてしまったとは思うんですが。お口に合いましたでしょうか?
三年前のプロットなので、智也だったりリーダーだったり岡田だったり、今とは少し選ぶ人が違いますね。リーダーの全面信頼は今も昔も変わりませんが。岡田は全然掴めていない人なのに、何故か書きたくなります(笑)。不思議だなあ。
エンディングは、あえての曖昧です。此処まで読ませておいて消化不良でごめんなさい。光一さんが受け入れられる日は来るのかな。来ないかも名。彼らはきっとこれ位のスタンスで良いんだと思います。……身勝手だなあ。
ではでは、少しでも楽しんで頂ければ幸いです。また、何処かでお会いしましょう。
2008/01/12 椿本 爽
名前が変わってからは皆さん始めましてですね。名前は変わっても人間性は全く変わっておりません(笑)。改めまして、椿本 爽と申します。ツバキモト サヤカとお読み下さい。宜しくお願いします。
さて、今回は裏表紙並びに奥付をご覧になって気付かれた方はいらっしゃいますでしょうか。同人活動を始めて、そこそこの年月が経っている筈なのに、今回の本はvol.1となっております。実は同人活動を始める最初に出す予定だった物が延々完成せず、恐らく三年余りの月日を経てようやく完成した次第でございます。……正直長かった。
パラレル自体を余り扱わない人間なので、大分ドキドキです。大丈夫でしょうか。元々が年下攻め思考のある私なんですが、此処までやっちゃって本当に良かったのか非常に不安です。まあ、このページを読んでいると言う事は、恐らく既に読まれてしまったとは思うんですが。お口に合いましたでしょうか?
三年前のプロットなので、智也だったりリーダーだったり岡田だったり、今とは少し選ぶ人が違いますね。リーダーの全面信頼は今も昔も変わりませんが。岡田は全然掴めていない人なのに、何故か書きたくなります(笑)。不思議だなあ。
エンディングは、あえての曖昧です。此処まで読ませておいて消化不良でごめんなさい。光一さんが受け入れられる日は来るのかな。来ないかも名。彼らはきっとこれ位のスタンスで良いんだと思います。……身勝手だなあ。
ではでは、少しでも楽しんで頂ければ幸いです。また、何処かでお会いしましょう。
2008/01/12 椿本 爽
「はちみつハニー」
正月が明けてから光一の様子が可笑しい。
周囲が心配になってしまう位には、激しく不審だった。自らライフワークと言う程の舞台の稽古中は平気らしい。いつも通り、カンパニーを引っ張る座長として毅然とした態度を持っていた。
けれど、舞台を離れれば一転して駄目になる。着替えている途中でぼんやり動きを止めてしまってマネージャーの手を煩わせたし(マネージャー曰く「この年齢で着替えを手伝う事になるとは思わなかった」との事)、稽古の帰り道に車を待たずふらふら外に出てしまい町田を焦らせたし、最近では減っていたのに平らな道でこけると言う器用な癖も再発してしまった。
そんな話を聞いて、剛は一人で笑いを噛み殺す。おどおどと視線の定まらない光一なんて久しぶりだった。出会った頃の不安定な子供を思い出す。自分がいてやらなければ、笑う事も泣く事も出来なかった。
人生の半分以上を共に過ごして、今ではもう家族以上の存在になっている。魂の半分、運命の共有者、どう表現すれば自分と光一の関係を上手に示せるのかは未だに分からなかった。
大切な相方の存在を、遠くから眺める。一緒の仕事は一年を通して僅かだった。年末年始の時期を逃せば、後は新曲のプロモーション期間位のものだ。けれど、離れているから分からない訳ではなかった。
今でも多分、マネージャーやあの舞台のカンパニーの人間より彼の事を理解している。何を考え何を夢見て生きているのか。きっと、彼自身よりもはっきい見えていた。
だから剛には簡単なのだ。元旦を越えた後の不審の理由。明白過ぎて笑いたくなるけれど、原因が自分にある以上迂闊な事は出来なかった。
まさか、こんな所まで来て光一が変わってしまうなんてさすがに予想外ではある。まあ、それも楽しいかと剛は楽観的に笑った。世の中の全てを悲哀の眼差しで見詰めてしまうのに、何故か隣にいる存在だけは優しく肯定する事が出来る。
幸福な人間ではなかった。それでも、自分の傍にいると嬉しそうに笑うから。煌めく瞳を信じてやりたかった。一緒にいる時は幸福だったら嬉しい、と。
隣の楽屋にいる光一へ思いを馳せながら、準備をする。いつもは部屋の間にある仕切りを取り払って貰うのに、何故か個室の状態になっていた。分かりやす過ぎて可哀相になるわ。全面的に避けられていると言うのに、剛に苦痛はない。避けられて嬉しいなんてMっぽいけど。
衣装に着替えて鏡の前で軽く髪も整えると、マネージャーに断りを入れてから光一の楽屋へ向かった。あっちの部屋に行くと言う断りではなく、人払いをしてくれと言う要求なのだけど。一瞬眉を顰めたものの、光一の現状を持て余しているマネージャーは素直に頷く。
いつからか自分達の関係者は、二人でいる事を嫌がるようになった。原因がどちらにあるのかは分からない。けれど、多分本人よりも周囲の方が気付いているのだろう。二人の空気の変質を恐れて離されてしまった。
自覚のある剛はまだ良い。全く自覚せず唯真っ直ぐ相方へ愛情を傾ける光一の変化を周囲は恐れた。
いつか、気付いてしまう前に。ソロ活動がそんな事の為に始められたなんて知ったら、彼は嫌がるだろう。
勿論理由は光一の感情だけではないけれど、一緒の仕事を減らす事務所を見ているとあながち間違っていないのだと思った。
隣の楽屋の扉の前に立って、剛は自嘲気味に口角を上げる。マネージャーは、自分を止めるべきだった。光一の動揺はきっと舞台が始まれば消えてしまう。後僅かの我慢やったのにな。
自分には自覚がある。現状を把握して動く事へのリスクを彼は考えた方が良かった。今更、止まるつもりもないけれど。
自分を見詰められずに視線を彷徨わせる光一が可愛かった。口付けた柔らかな感触はもう記憶から消えていて、少し驚く。記憶力は良い方なのだけれど、さすがに感覚を鮮明に残すのは難しいらしかった。
会議の時なんかは辛辣な言葉を吐く癖に、拒絶する事も思い付かない身体。ずっと自分の物だったのではないかと勘違いしてしまいそうだった。
……否、実際自分の物なのだと思う。「相方」の定義を「唯一の存在」とするなら、ずっと昔から光一は自分の物だったし自分も光一の物だった。離れたり近付き過ぎたり、二人きりが故に苦しんだ過去もあるけれど、今は落ち着いた距離で立っている。
崩してしまっても良いのだろうか。自身に問い掛けて、けれど誰にも触れさせたくないと言う欲望が勝っていた。彼の髪の一本まで自分の物なのだと主張したい。
ふう、と息を吐くときっちり閉じられた扉をノックした。お前の心みたいやな。隙がなくて、そう簡単には開かれない。此処を躊躇なく開けられるのが自分一人であって欲しいと切に願った。抱え切れない愛情を向ける存在は、いつだってたった一人。
「光一、入るでー」
返事がないのを良い事に、躊躇わず扉を開けた。こちらが構えれば、敏感に空気を感じ取って怯えるだろうから。野生の動物に近付くのと同じ手順で、相方へ近付いて行く。
相変わらず広いスペースの隅に蹲る姿は、いたいけな何かに思えた。ふわふわした、甘い色の何か。
定番の黒いバスローブを羽織って、髪は濡れたままだった。稽古場から此処に来たと言っていたから、シャワーでも浴びたのだろう。
同じ収録への準備なのに、衣装を着た自分と未だ焦点の定まらない光一。コンタクトもせずに、唯ぼんやりと自分の手許を見詰めていた。
重症、やな。マネージャーの言葉を借りる訳ではないが、まさかこんな年齢になって相方の恋煩いを見る事になるとは思わなかった。感情的な面で幼い部分も多い人だから、分からなくもなかったけれど。
つい手を伸ばしたくなるのは。愛情以外の何者でもないだろう。彼の近くにいる人間全てが今の状態を持て余していても、自分には唯嬉しいばかりだった。
元旦の夜。どうして誰も気付かないんでしょうね。それとも気付きたくないのかな。はっきりと認識してしまえば事実になる事を、皆知っていた。十代の頃に引き離した感情。光一自身は今も気付いていない。
「光一。起きとるか?」
「……っ!」
「変な顔やなあ」
剛の存在に気付くと、面白い程慌てふためいて逃げようとした。背後には壁しかないのに。仕方のない人だと笑って、躊躇なく彼の目の前にしゃがみ込む。
目線を合わせれば、声にならない声を上げて目を瞑った。こんなに何も出来ない光一は久しぶりに見る。もう少し遊びたくなって、そっと手を伸ばした。
濡れたままの髪に指先を滑り込ませると、怯えた仕草で肩を竦める。
「髪、濡れたまんまやと体調崩すで」
「う、うん。……後でやる。だいじょぶ」
「光ちゃん、乾かしたろか」
懐かしい呼び方で甘く囁けば、瞬時に耳までを赤く染めた。可愛いなあ。手放す事は出来ないのだと、改めて思う。
普段は呆れる程男前なのに。今は見る影もなく、自分の事だけで頭が一杯になっていた。
「い、良い!平気!出来るから!」
「光ちゃん、今日は何で部屋仕切ってんの?」
「……え、えーと。あ、だって入り時間違うし、剛寝てて後から俺入って煩くしたらあかんやろ」
「いっつも入りは別やろ」
「えー、えっと。あ!俺今日風邪気味やねん!だから移したあかん思うて」
「具合悪いのに、シャワー浴びたんか?」
切り抜ける事も出来そうにない言い訳を並べる光一に笑んで、髪を梳いていた手を額へ滑らせる。体温を計る振り。
熱がない事なんて分かっていたけれど。更に赤くなるのが可愛くて、意地悪は止められそうもなかった。
「つ!つよ!」
「んー?熱はなさそうやなあ」
「っ平気、やから!なあ、剛も忙しいし、ええよ。自分で、出来るっ」
「こぉいち」
俯いて小さな声のまま叫ぶ彼が捨てられた仔猫みたいに見えて、そっと抱き締めた。他意はない、と言ったら嘘になるけれど深い意味はない。
可哀相な生き物は守ってやりたくなるだけだった。ぎゅうと腕の力を強めれば、思い出したように暴れ出す。
「こら、光ちゃん。落ち着き」
「うーっ、つよ!離して!や、や」
「何が?」
「いや」
「光ちゃん、そんなんじゃやめへんよ」
「離し、て」
「お前なあ、良い大人なんやから抱き締められた位で騒がない」
「やって、剛が!」
「俺が?」
「……つよしの、におい、するんやもん」
これはさすがに不意打ちだった。何て可愛い事を言う子だろう。今まで付き合ったどんな女よりも可愛かった。駄目だ。いつもと変わらない様に見えて、実は剛自身も落ち着かない気持ちを持て余しているのだ。
どうしようなあ。彼の一生を得る為に、今の距離を選んだ。痛みのない、「相方」と言う関係。人間関係に臆病な人だから、一般的に定義のある関係にはなりたくなかった。
他と比較をして、平均値であろうとする。友人でも恋人でも家族でも、代用の効くものになりたくはなかった。「相方」に代わりはない。働き続ける限り、生涯この位置は自分のものだった。例え解散しても、新しい人間を見付けられる程器用な人ではない。
一緒にいる為に選んだ関係を壊そうとしているのは、何故か。理由は余りにも簡単だった。もっと、愛してやりたい。キス一つでこんな風になってしまう相方を、相方以上の存在にしてしまいたい。
「光ちゃん」
「……なんや」
「髪、乾かしたるから、キスしてええ?」
「うん……っえぇ!」
脳内の接続も鈍くなっている光一は普段にない大袈裟なリアクションで顔を上げた。吃驚した瞳には、今にも零れ落ちそうな程水分が溜まっている。
何でこんな、子供みたいなんやろ。舞台に立っている時は、誰をも寄せ付けない孤高の印象を与える人だった。凛とした背中に、後輩は彼と生きる事を夢見るのだ。
そんな強い人が、今自分の腕の中で何も出来ずに泣き出しそうになっていた。湧き上がる優越感を抑えようとは思わない。
何者にも屈しない光一が、自分の事にだけ感情を揺らした。苦しませたり傷付ける事の方が多い関係だったけれど、彼の感情を左右出来る事が嬉しくて堪らない。
「キス、分からん?」
「な、なに……言って」
「ちゅーやがな。光ちゃんは相変わらず初心やなあ」
「う、うぶって……」
「光一、喋れてへん」
余り赤く染まる事のない頬が熟れた様になっているのが堪らず、動揺したままの光一に口付けた。フライングだけど、まあ良いでしょう。
どうせ最初から最後まで、この人に拒絶なんてないのだ。触れただけで離せば、もうどうしたら良いのか分からないようで静止画像みたいに固まっていた。
「こーいち」
「……」
「光ちゃん」
「……っ」
「分かる?今、つよちゃんとキスしたんやで」
「あ!……っつ!うぇ、え!キ……っ」
「はいはい、落ち着こうな。ほら」
今度は目尻に口付ける。とうとう零れた雫を掬えば、本格的に顔を歪めて涙を溢れさせた。泣いている光一に遭遇出来る機会なんてそうそうない。同じ部屋で眠っていた幼い頃、嗚咽を堪えて泣く彼を抱き締めた事があるだけだった。
あの夜から、大分遠い所まで来てしまったのだ。年月の長さに、二人分の道程を重ね合わせた。傍にいながら手を伸ばせなかった時期もある。見ない振りを出来る大人になったのに、手を出したい強欲な自分がいた。
「光ちゃん」
もう一度、乾燥した唇を潤す様にキスをする。自分の心を決める為だった。手放さずにいられるように、永遠を共に生きられるように。
「好き」
「……え」
「愛してる」
「……つ、つぉし?」
「ん?俺な、ずっとずっと光一の事が好きやった。相方として、やないよ?一人の人間として、って意味や」
「つぉし」
「お前、赤んぼみたいやなあ」
自分のシャツの裾を握る不器用な手や、真っ直ぐに見上げる瞳、舌足らずな言葉に彼の幼児性を見る。大人の部分と子供の部分をアンバランスに抱える人だった。成長する暇もない位、十代を駆け抜けてしまっている。今更そのひずみを治そうとしても無理な話だった。
赤い頬を両手で包んで、愛しい気持ちのままに見詰める。甘やかしたい衝動ばかりが胸に迫った。
愛を囁ける様な人間ちゃうんやけどな。他人に対して臆病過ぎる彼が素直に理解出来るよう、言葉を重ねる。
「光一」
「……駄目。あかん。離して」
「どうして」
「や、って……俺、可笑しない?」
「何が?」
「心臓、痛い。あかん、俺お前とキスしたらあかん」
困惑し切った表情で視線を泳がせる。どうしたら、自覚してくれるのか。自分の気持ち一つ分からない光一。誰よりも強い様に見えて、すぐに崩れそうな弱さを持つ人。
伏せられた睫毛が怯えた気配で、ふるりと震えた。それを見詰めて、気付く。恋に落ちると言う事の意味に。
分からなくても良いのかも知れない。光一の心は自分が分かっていた。自覚がなくても、自身の感情の揺れに怯えても。傍にいれば、良いのだと。
一人で納得して、身体を離した。これ以上触れていたら抑えが効かなくなるし、何より光一の心臓が壊れてしまう。最後にこめかみへ口付けを落として、未だ視点の定まらない瞳を覗き込んだ。
「風邪引く前に、ドライヤーしたろな」
「つよ、え……」
「ええよ。今はまだ分からんでも。いつでも話してやるから」
「でも、心臓痛いのは嫌や」
「んー、したらおまじないな。目ぇ瞑ってみ」
素直に瞼を下ろす彼にまた不安を覚えながら、赤く染まった耳朶に触れた。びくりと竦む身体に、本気で押し倒してやろうかと思う。いつまで我慢出来るんかな。
「つ!つぉ!」
「はは。言えてへんやん。ほら、立って。鏡の前行こか」
有無を言わさず腕を引いて、歩く事もままならない彼の髪に触れた。しっとりとした感触。少しだけ乾いてしまったそれを痛めない様に温風を当てた。自分の腕の中にいれば怖くないのだと言う事に、いつか気付けば良い。
今もまだ幼い光一の恋。「恋人」の関係になるまでは時間が掛かりそうで、スタッフの悲痛な顔を思い浮かべながら剛は一人笑った。
まだまだ、猶予期間はありそうだ。唯一無二の「相方」の髪を乾かしながら、幸福な未来をそっと思い浮かべた。
【おわり】
BUENA SUERTE !
08/01/13 vol.9
■Greeting■
こんにちは。もしくは初めまして。あ、改名してからは初めましてですね。少し名前を変えまして、今後は「椿本 爽」で書かせて頂きますので宜しくお願いします。
さて、元旦のお話や今日見て来たSHOCKの話をしたかったのですが、小噺じゃない位書いてしまったので、ゆっくり語れません……。ペーパーに書こうと思って、作るのSHOCK後って決めてたのにな(泣)。仕方ないのでサイトで語ります。
では、またいつかどこかでお会いしましょう。
■information■
普段は、亀より遅いサイトの運営をしております。宜しければ、ふらりと立ち寄って下さいませ。
「SUERTE」 http://tomorrow02.hp.infoseek.co.jp/
■Ahead communicating■
感想・苦情等何でも受け付けております。……お手柔らかにお願い致します。
mail:happy_21@mac.com
■Guide of book■
<新刊>
「アオイトリシンドローム」
+幻の「buena suerte!」1冊目のお話です。思い起こせば、初めてサークル参加した時に書こうと思い立ち、完成せぬまま今日までの月日が経ってしまいました。恐らく、3年越しの勢いです(笑)。
+Kinkiさんが親子のパラレルです。珍しく可愛く甘酸っぱい感じのお話になったのではないかと。
<既刊>
「空に憧れた魚、海の底を夢見た鳥」 P36/¥300-
+禁断の「解散」話。2006年の年末から2008年頭に掛けての設定です。暗い話を淡々とした筆致で書く、と言うのを目指しました。余り後味悪くないように書いたつもりですが、お口に会わない方は多そうです……。
「桜色の恋」 P24/¥200-
+SHOCK本です。ええと、また趣味に走ってしまいました。
(剛×)光←斗真+MAと言った感じのお話です。打ち上げのお話。もう一つごめんなさいな、石川+光の小咄も入っています。……ええもう、ホントに色々ごめんなさい。今回程妄想を駆使したお話はありません(笑)。でも、楽しかったです。
「帰る場所」 60P/¥600
+以前サイトで更新していたお話の紙化です。既に読まれている小説を改めて紙にするのはどうなのかと葛藤があったのですが、ご要望も頂いていたのでやっと本になりました。ベッドの中で読みたい方に是非(笑)。
正月が明けてから光一の様子が可笑しい。周囲が心配になってしまう位には、激しく不審だった。自らライフワークと言う程の舞台の稽古中は平気らしい。いつも通り、カンパニーを引っ張る座長として毅然とした態度を持っていた。
けれど、舞台を離れれば一転して駄目になる。着替えている途中でぼんやり動きを止めてしまってマネージャーの手を煩わせたし(マネージャー曰く「この年齢で着替えを手伝う事になるとは思わなかった」との事)、稽古の帰り道に車を待たずふらふら外に出てしまい町田を焦らせたし、最近では減っていたのに平らな道でこけると言う器用な癖も再発してしまった。
そんな話を聞いて、剛は一人で笑いを噛み殺す。おどおどと視線の定まらない光一なんて久しぶりだった。出会った頃の不安定な子供を思い出す。自分がいてやらなければ、笑う事も泣く事も出来なかった。人生の半分以上を共に過ごして、今ではもう家族以上の存在になっている。魂の半分、運命の共有者、どう表現すれば自分と光一の関係を上手に示せるのかは未だに分からなかった。
そんな大切な相方の存在を、遠くから眺める。一緒の仕事は一年を通して僅かだった。年末年始の時期を逃せば、後は新曲のプロモーション期間位のものだ。けれど、離れているから分からない訳ではなかった。今でも多分、マネージャーやあの舞台のカンパニーの人間より彼の事を理解している。何を考え何を夢見て生きているのか。きっと、彼自身よりもはっきい見えていた。
だから剛には簡単なのだ。元旦を越えた後の不審の理由。明白過ぎて笑いたくなるけれど、原因が自分にある以上迂闊な事は出来なかった。
まさか、こんな所まで来て光一が変わってしまうなんてさすがに予想外ではある。まあ、それも楽しいかと剛は楽観的に笑った。世の中の全てを悲哀の眼差しで見詰めてしまうのに、何故か隣にいる存在だけは優しく肯定する事が出来る。幸福な人間ではなかった。それでも、自分の傍にいると嬉しそうに笑うから。煌めく瞳を信じてやりたかった。一緒にいる時は幸福だったら嬉しい、と。
隣の楽屋にいる光一へ思いを馳せながら、準備をする。いつもは部屋の間にある仕切りを取り払って貰うのに、何故か個室の状態になっていた。分かりやす過ぎて可哀相になるわ。全面的に避けられていると言うのに、剛に苦痛はない。避けられて嬉しいなんてMっぽいけど。
衣装に着替えて鏡の前で軽く髪も整えると、マネージャーに断りを入れてから光一の楽屋へ向かった。あっちの部屋に行くと言う断りではなく、人払いをしてくれと言う要求なのだけど。一瞬眉を顰めたものの、光一の現状を持て余しているマネージャーは素直に頷く。いつからか自分達の関係者は、二人でいる事を嫌がるようになった。原因がどちらにあるのかは分からない。けれど、多分本人よりも周囲の方が気付いているのだろう。二人の空気の変質を恐れて離されてしまった。
自覚のある剛はまだ良い。全く自覚せず唯真っ直ぐ相方へ愛情を傾ける光一の変化を周囲は恐れた。いつか、気付いてしまう前に。ソロ活動がそんな事の為に始められたなんて知ったら、彼は嫌がるだろう。勿論理由は光一の感情だけではないけれど、一緒の仕事を減らす事務所を見ているとあながち間違っていないのだと思った。
隣の楽屋の扉の前に立って、剛は自嘲気味に口角を上げる。マネージャーは、自分を止めるべきだった。光一の動揺はきっと舞台が始まれば消えてしまう。後僅かの我慢やったのにな。自分には自覚がある。現状を把握して動く事へのリスクを彼は考えた方が良かった。今更、止まるつもりもないけれど。
自分を見詰められずに視線を彷徨わせる光一が可愛かった。口付けた柔らかな感触はもう記憶から消えていて、少し驚く。記憶力は良い方なのだけれど、さすがに感覚を鮮明に残すのは難しいらしかった。会議の時なんかは辛辣な言葉を吐く癖に、拒絶する事も思い付かない身体。ずっと自分の物だったのではないかと勘違いしてしまいそうだった。
……否、実際自分の物なのだと思う。「相方」の定義を「唯一の存在」とするなら、ずっと昔から光一は自分の物だったし自分も光一の物だった。離れたり近付き過ぎたり、二人きりが故に苦しんだ過去もあるけれど、今は落ち着いた距離で立っている。
崩してしまっても良いのだろうか。自身に問い掛けて、けれど誰にも触れさせたくないと言う欲望が勝っていた。彼の髪の一本まで自分の物なのだと主張したい。
ふう、と息を吐くときっちり閉じられた扉をノックした。お前の心みたいやな。隙がなくて、そう簡単には開かれない。此処を躊躇なく開けられるのが自分一人であって欲しいと切に願った。抱え切れない愛情を向ける存在は、いつだってたった一人。
「光一ー入るでー」
返事がないのを良い事に、躊躇わず扉を開けた。こちらが構えれば、敏感に空気を感じ取って怯えるだろうから。野生の動物に近付くのと同じ手順で、相方へ近付いて行く。相変わらず広いスペースの隅に蹲る姿は、いたいけな何かに思えた。ふわふわした、甘い色の何か。
定番の黒いバスローブを羽織って、髪は濡れたままだった。稽古場から此処に来たと言っていたから、シャワーでも浴びたのだろう。同じ収録への準備なのに、衣装を着た自分と未だ焦点の定まらない光一。コンタクトもせずに、唯ぼんやりと自分の手許を見詰めていた。
重症、やな。マネージャーの言葉を借りる訳ではないが、まさかこんな年齢になって相方の恋煩いを見る事になるとは思わなかった。感情的な面で幼い部分も多い人だから、分からなくもなかったけれど。つい手を伸ばしたくなるのは。愛情以外の何者でもないだろう。彼の近くにいる人間全てが今の状態を持て余していても、自分には唯嬉しいばかりだった。
元旦の夜。どうして誰も気付かないんでしょうね。それとも気付きたくないのかな。はっきりと認識してしまえば事実になる事を、皆知っていた。十代の頃に引き離した感情。光一自身は今も気付いていない。
「光一。起きとるか?」
「……っ!」
「変な顔やなあ」
剛の存在に気付くと、面白い程慌てふためいて逃げようとした。背後には壁しかないのに。仕方のない人だと笑って、躊躇なく彼の目の前にしゃがみ込む。目線を合わせれば、声にならない声を上げて目を瞑った。こんなに何も出来ない光一は久しぶりに見る。もう少し遊びたくなって、そっと手を伸ばした。濡れたままの髪に指先を滑り込ませると、怯えた仕草で肩を竦める。
「髪、濡れたまんまやと体調崩すで」
「う、うん。……後でやる。だいじょぶ」
「光ちゃん、乾かしたろか」
懐かしい呼び方で甘く囁けば、瞬時に耳までを赤く染めた。可愛いなあ。手放す事は出来ないのだと、改めて思う。普段は呆れる程男前なのに。今は見る影もなく、自分の事だけで頭が一杯になっていた。
「い、良い!平気!出来るから!」
「光ちゃん、今日は何で部屋仕切ってんの?」
「……え、えーと。あ、だって入り時間違うし、剛寝てて後から俺入って煩くしたらあかんやろ」
「いっつも入りは別やろ」
「えー、えっと。あ!俺今日風邪気味やねん!だから移したあかん思うて」
「具合悪いのに、シャワー浴びたんか?」
切り抜ける事も出来そうにない言い訳を並べる光一に笑んで、髪を梳いていた手を額へ滑らせる。体温を計る振り。熱がない事なんて分かっていたけれど。更に赤くなるのが可愛くて、意地悪は止められそうもなかった。
「つ!つよ!」
「んー?熱はなさそうやなあ」
「っ平気、やから!なあ、剛も忙しいし、ええよ。自分で、出来るっ」
「こぉいち」
俯いて小さな声のまま叫ぶ彼が捨てられた仔猫みたいに見えて、そっと抱き締めた。他意はない、と言ったら嘘になるけれど深い意味はない。可哀相な生き物は守ってやりたくなるだけだった。ぎゅうと腕の力を強めれば、思い出したように暴れ出す。
「こら、光ちゃん。落ち着き」
「うーっ、つよ!離して!や、や」
「何が?」
「いや」
「光ちゃん、そんなんじゃやめへんよ」
「離し、て」
「お前なあ、良い大人なんやから抱き締められた位で騒がない」
「やって、剛が!」
「俺が?」
「……つよしの、におい、するんやもん」
これはさすがに不意打ちだった。何て可愛い事を言う子だろう。今まで付き合ったどんな女よりも可愛かった。駄目だ。いつもと変わらない様に見えて、実は剛自身も落ち着かない気持ちを持て余しているのだ。
どうしようなあ。彼の一生を得る為に、今の距離を選んだ。痛みのない、「相方」と言う関係。人間関係に臆病な人だから、一般的に定義のある関係にはなりたくなかった。他と比較をして、平均値であろうとする。友人でも恋人でも家族でも、代用の効くものになりたくはなかった。「相方」に代わりはない。働き続ける限り、生涯この位置は自分のものだった。例え解散しても、新しい人間を見付けられる程器用な人ではない。
一緒にいる為に選んだ関係を壊そうとしているのは、何故か。理由は余りにも簡単だった。もっと、愛してやりたい。キス一つでこんな風になってしまう相方を、相方以上の存在にしてしまいたい。
「光ちゃん」
「……なんや」
「髪、乾かしたるから、キスしてええ?」
「うん……っえぇ!」
脳内の接続も鈍くなっている光一は普段にない大袈裟なリアクションで顔を上げた。吃驚した瞳には、今にも零れ落ちそうな程水分が溜まっている。何でこんな、子供みたいなんやろ。舞台に立っている時は、誰をも寄せ付けない孤高の印象を与える人だった。凛とした背中に、後輩は彼と生きる事を夢見るのだ。
そんな強い人が、今自分の腕の中で何も出来ずに泣き出しそうになっていた。湧き上がる優越感を抑えようとは思わない。何者にも屈しない光一が、自分の事にだけ感情を揺らした。苦しませたり傷付ける事の方が多い関係だったけれど、彼の感情を左右出来る事が嬉しくて堪らない。
「キス、分からん?」
「な、なに……言って」
「ちゅーやがな。光ちゃんは相変わらず初心やなあ」
「う、うぶって……」
「光一、喋れてへん」
余り赤く染まる事のない頬が熟れた様になっているのが堪らず、動揺したままの光一に口付けた。フライングだけど、まあ良いでしょう。どうせ最初から最後まで、この人に拒絶なんてないのだ。触れただけで離せば、もうどうしたら良いのか分からないようで静止画像みたいに固まっていた。
「こーいち」
「……」
「光ちゃん」
「……っ」
「分かる?今、つよちゃんとキスしたんやで」
「あ!……っつ!うぇ、え!キ……っ」
「はいはい、落ち着こうな。ほら」
今度は目尻に口付ける。とうとう零れた雫を掬えば、本格的に顔を歪めて涙を溢れさせた。泣いている光一に遭遇出来る機会なんてそうそうない。同じ部屋で眠っていた幼い頃、嗚咽を堪えて泣く彼を抱き締めた事があるだけだった。あの夜から、大分遠い所まで来てしまったのだ。年月の長さに、二人分の道程を重ね合わせた。傍にいながら手を伸ばせなかった時期もある。見ない振りを出来る大人になったのに、手を出したい強欲な自分がいた。
「光ちゃん」
もう一度、乾燥した唇を潤す様にキスをする。自分の心を決める為だった。手放さずにいられるように、永遠を共に生きられるように。
「好き」
「……え」
「愛してる」
「……つ、つぉし?」
「ん?俺な、ずっとずっと光一の事が好きやった。相方として、やないよ?一人の人間として、って意味や」
「つぉし」
「お前、赤んぼみたいやなあ」
自分のシャツの裾を握る不器用な手や、真っ直ぐに見上げる瞳、舌足らずな言葉に彼の幼児性を見る。大人の部分と子供の部分をアンバランスに抱える人だった。成長する暇もない位、十代を駆け抜けてしまっている。今更そのひずみを治そうとしても無理な話だった。
赤い頬を両手で包んで、愛しい気持ちのままに見詰める。甘やかしたい衝動ばかりが胸に迫った。愛を囁ける様な人間ちゃうんやけどな。他人に対して臆病過ぎる彼が素直に理解出来るよう、言葉を重ねる。
「光一」
「……駄目。あかん。離して」
「どうして」
「や、って……俺、可笑しない?」
「何が?」
「心臓、痛い。あかん、俺お前とキスしたらあかん」
困惑し切った表情で視線を泳がせる。どうしたら、自覚してくれるのか。自分の気持ち一つ分からない光一。誰よりも強い様に見えて、すぐに崩れそうな弱さを持つ人。
伏せられた睫毛が怯えた気配で、ふるりと震えた。それを見詰めて、気付く。恋に落ちると言う事の意味に。分からなくても良いのかも知れない。光一の心は自分が分かっていた。自覚がなくても、自身の感情の揺れに怯えても。傍にいれば、良いのだと。
一人で納得して、身体を離した。これ以上触れていたら抑えが効かなくなるし、何より光一の心臓が壊れてしまう。最後にこめかみへ口付けを落として、未だ視点の定まらない瞳を覗き込んだ。
「風邪引く前に、ドライヤーしたろな」
「つよ、え……」
「ええよ。今はまだ分からんでも。いつでも話してやるから」
「でも、心臓痛いのは嫌や」
「んー、したらおまじないな。目ぇ瞑ってみ」
素直に瞼を下ろす彼にまた不安を覚えながら、赤く染まった耳朶に触れた。びくりと竦む身体に、本気で押し倒してやろうかと思う。いつまで我慢出来るんかな。
「つ!つぉ!」
「はは。言えてへんやん。ほら、立って。鏡の前行こか」
有無を言わさず腕を引いて、歩く事もままならない彼の髪に触れた。しっとりとした感触。少しだけ乾いてしまったそれを痛めない様に温風を当てた。自分の腕の中にいれば怖くないのだと言う事に、いつか気付けば良い。
今もまだ幼い光一の恋。「恋人」の関係になるまでは時間が掛かりそうで、スタッフの悲痛な顔を思い浮かべながら剛は一人笑った。まだまだ、猶予期間はありそうだ。唯一無二の「相方」の髪を乾かしながら、幸福な未来をそっと思い浮かべた。
けれど、舞台を離れれば一転して駄目になる。着替えている途中でぼんやり動きを止めてしまってマネージャーの手を煩わせたし(マネージャー曰く「この年齢で着替えを手伝う事になるとは思わなかった」との事)、稽古の帰り道に車を待たずふらふら外に出てしまい町田を焦らせたし、最近では減っていたのに平らな道でこけると言う器用な癖も再発してしまった。
そんな話を聞いて、剛は一人で笑いを噛み殺す。おどおどと視線の定まらない光一なんて久しぶりだった。出会った頃の不安定な子供を思い出す。自分がいてやらなければ、笑う事も泣く事も出来なかった。人生の半分以上を共に過ごして、今ではもう家族以上の存在になっている。魂の半分、運命の共有者、どう表現すれば自分と光一の関係を上手に示せるのかは未だに分からなかった。
そんな大切な相方の存在を、遠くから眺める。一緒の仕事は一年を通して僅かだった。年末年始の時期を逃せば、後は新曲のプロモーション期間位のものだ。けれど、離れているから分からない訳ではなかった。今でも多分、マネージャーやあの舞台のカンパニーの人間より彼の事を理解している。何を考え何を夢見て生きているのか。きっと、彼自身よりもはっきい見えていた。
だから剛には簡単なのだ。元旦を越えた後の不審の理由。明白過ぎて笑いたくなるけれど、原因が自分にある以上迂闊な事は出来なかった。
まさか、こんな所まで来て光一が変わってしまうなんてさすがに予想外ではある。まあ、それも楽しいかと剛は楽観的に笑った。世の中の全てを悲哀の眼差しで見詰めてしまうのに、何故か隣にいる存在だけは優しく肯定する事が出来る。幸福な人間ではなかった。それでも、自分の傍にいると嬉しそうに笑うから。煌めく瞳を信じてやりたかった。一緒にいる時は幸福だったら嬉しい、と。
隣の楽屋にいる光一へ思いを馳せながら、準備をする。いつもは部屋の間にある仕切りを取り払って貰うのに、何故か個室の状態になっていた。分かりやす過ぎて可哀相になるわ。全面的に避けられていると言うのに、剛に苦痛はない。避けられて嬉しいなんてMっぽいけど。
衣装に着替えて鏡の前で軽く髪も整えると、マネージャーに断りを入れてから光一の楽屋へ向かった。あっちの部屋に行くと言う断りではなく、人払いをしてくれと言う要求なのだけど。一瞬眉を顰めたものの、光一の現状を持て余しているマネージャーは素直に頷く。いつからか自分達の関係者は、二人でいる事を嫌がるようになった。原因がどちらにあるのかは分からない。けれど、多分本人よりも周囲の方が気付いているのだろう。二人の空気の変質を恐れて離されてしまった。
自覚のある剛はまだ良い。全く自覚せず唯真っ直ぐ相方へ愛情を傾ける光一の変化を周囲は恐れた。いつか、気付いてしまう前に。ソロ活動がそんな事の為に始められたなんて知ったら、彼は嫌がるだろう。勿論理由は光一の感情だけではないけれど、一緒の仕事を減らす事務所を見ているとあながち間違っていないのだと思った。
隣の楽屋の扉の前に立って、剛は自嘲気味に口角を上げる。マネージャーは、自分を止めるべきだった。光一の動揺はきっと舞台が始まれば消えてしまう。後僅かの我慢やったのにな。自分には自覚がある。現状を把握して動く事へのリスクを彼は考えた方が良かった。今更、止まるつもりもないけれど。
自分を見詰められずに視線を彷徨わせる光一が可愛かった。口付けた柔らかな感触はもう記憶から消えていて、少し驚く。記憶力は良い方なのだけれど、さすがに感覚を鮮明に残すのは難しいらしかった。会議の時なんかは辛辣な言葉を吐く癖に、拒絶する事も思い付かない身体。ずっと自分の物だったのではないかと勘違いしてしまいそうだった。
……否、実際自分の物なのだと思う。「相方」の定義を「唯一の存在」とするなら、ずっと昔から光一は自分の物だったし自分も光一の物だった。離れたり近付き過ぎたり、二人きりが故に苦しんだ過去もあるけれど、今は落ち着いた距離で立っている。
崩してしまっても良いのだろうか。自身に問い掛けて、けれど誰にも触れさせたくないと言う欲望が勝っていた。彼の髪の一本まで自分の物なのだと主張したい。
ふう、と息を吐くときっちり閉じられた扉をノックした。お前の心みたいやな。隙がなくて、そう簡単には開かれない。此処を躊躇なく開けられるのが自分一人であって欲しいと切に願った。抱え切れない愛情を向ける存在は、いつだってたった一人。
「光一ー入るでー」
返事がないのを良い事に、躊躇わず扉を開けた。こちらが構えれば、敏感に空気を感じ取って怯えるだろうから。野生の動物に近付くのと同じ手順で、相方へ近付いて行く。相変わらず広いスペースの隅に蹲る姿は、いたいけな何かに思えた。ふわふわした、甘い色の何か。
定番の黒いバスローブを羽織って、髪は濡れたままだった。稽古場から此処に来たと言っていたから、シャワーでも浴びたのだろう。同じ収録への準備なのに、衣装を着た自分と未だ焦点の定まらない光一。コンタクトもせずに、唯ぼんやりと自分の手許を見詰めていた。
重症、やな。マネージャーの言葉を借りる訳ではないが、まさかこんな年齢になって相方の恋煩いを見る事になるとは思わなかった。感情的な面で幼い部分も多い人だから、分からなくもなかったけれど。つい手を伸ばしたくなるのは。愛情以外の何者でもないだろう。彼の近くにいる人間全てが今の状態を持て余していても、自分には唯嬉しいばかりだった。
元旦の夜。どうして誰も気付かないんでしょうね。それとも気付きたくないのかな。はっきりと認識してしまえば事実になる事を、皆知っていた。十代の頃に引き離した感情。光一自身は今も気付いていない。
「光一。起きとるか?」
「……っ!」
「変な顔やなあ」
剛の存在に気付くと、面白い程慌てふためいて逃げようとした。背後には壁しかないのに。仕方のない人だと笑って、躊躇なく彼の目の前にしゃがみ込む。目線を合わせれば、声にならない声を上げて目を瞑った。こんなに何も出来ない光一は久しぶりに見る。もう少し遊びたくなって、そっと手を伸ばした。濡れたままの髪に指先を滑り込ませると、怯えた仕草で肩を竦める。
「髪、濡れたまんまやと体調崩すで」
「う、うん。……後でやる。だいじょぶ」
「光ちゃん、乾かしたろか」
懐かしい呼び方で甘く囁けば、瞬時に耳までを赤く染めた。可愛いなあ。手放す事は出来ないのだと、改めて思う。普段は呆れる程男前なのに。今は見る影もなく、自分の事だけで頭が一杯になっていた。
「い、良い!平気!出来るから!」
「光ちゃん、今日は何で部屋仕切ってんの?」
「……え、えーと。あ、だって入り時間違うし、剛寝てて後から俺入って煩くしたらあかんやろ」
「いっつも入りは別やろ」
「えー、えっと。あ!俺今日風邪気味やねん!だから移したあかん思うて」
「具合悪いのに、シャワー浴びたんか?」
切り抜ける事も出来そうにない言い訳を並べる光一に笑んで、髪を梳いていた手を額へ滑らせる。体温を計る振り。熱がない事なんて分かっていたけれど。更に赤くなるのが可愛くて、意地悪は止められそうもなかった。
「つ!つよ!」
「んー?熱はなさそうやなあ」
「っ平気、やから!なあ、剛も忙しいし、ええよ。自分で、出来るっ」
「こぉいち」
俯いて小さな声のまま叫ぶ彼が捨てられた仔猫みたいに見えて、そっと抱き締めた。他意はない、と言ったら嘘になるけれど深い意味はない。可哀相な生き物は守ってやりたくなるだけだった。ぎゅうと腕の力を強めれば、思い出したように暴れ出す。
「こら、光ちゃん。落ち着き」
「うーっ、つよ!離して!や、や」
「何が?」
「いや」
「光ちゃん、そんなんじゃやめへんよ」
「離し、て」
「お前なあ、良い大人なんやから抱き締められた位で騒がない」
「やって、剛が!」
「俺が?」
「……つよしの、におい、するんやもん」
これはさすがに不意打ちだった。何て可愛い事を言う子だろう。今まで付き合ったどんな女よりも可愛かった。駄目だ。いつもと変わらない様に見えて、実は剛自身も落ち着かない気持ちを持て余しているのだ。
どうしようなあ。彼の一生を得る為に、今の距離を選んだ。痛みのない、「相方」と言う関係。人間関係に臆病な人だから、一般的に定義のある関係にはなりたくなかった。他と比較をして、平均値であろうとする。友人でも恋人でも家族でも、代用の効くものになりたくはなかった。「相方」に代わりはない。働き続ける限り、生涯この位置は自分のものだった。例え解散しても、新しい人間を見付けられる程器用な人ではない。
一緒にいる為に選んだ関係を壊そうとしているのは、何故か。理由は余りにも簡単だった。もっと、愛してやりたい。キス一つでこんな風になってしまう相方を、相方以上の存在にしてしまいたい。
「光ちゃん」
「……なんや」
「髪、乾かしたるから、キスしてええ?」
「うん……っえぇ!」
脳内の接続も鈍くなっている光一は普段にない大袈裟なリアクションで顔を上げた。吃驚した瞳には、今にも零れ落ちそうな程水分が溜まっている。何でこんな、子供みたいなんやろ。舞台に立っている時は、誰をも寄せ付けない孤高の印象を与える人だった。凛とした背中に、後輩は彼と生きる事を夢見るのだ。
そんな強い人が、今自分の腕の中で何も出来ずに泣き出しそうになっていた。湧き上がる優越感を抑えようとは思わない。何者にも屈しない光一が、自分の事にだけ感情を揺らした。苦しませたり傷付ける事の方が多い関係だったけれど、彼の感情を左右出来る事が嬉しくて堪らない。
「キス、分からん?」
「な、なに……言って」
「ちゅーやがな。光ちゃんは相変わらず初心やなあ」
「う、うぶって……」
「光一、喋れてへん」
余り赤く染まる事のない頬が熟れた様になっているのが堪らず、動揺したままの光一に口付けた。フライングだけど、まあ良いでしょう。どうせ最初から最後まで、この人に拒絶なんてないのだ。触れただけで離せば、もうどうしたら良いのか分からないようで静止画像みたいに固まっていた。
「こーいち」
「……」
「光ちゃん」
「……っ」
「分かる?今、つよちゃんとキスしたんやで」
「あ!……っつ!うぇ、え!キ……っ」
「はいはい、落ち着こうな。ほら」
今度は目尻に口付ける。とうとう零れた雫を掬えば、本格的に顔を歪めて涙を溢れさせた。泣いている光一に遭遇出来る機会なんてそうそうない。同じ部屋で眠っていた幼い頃、嗚咽を堪えて泣く彼を抱き締めた事があるだけだった。あの夜から、大分遠い所まで来てしまったのだ。年月の長さに、二人分の道程を重ね合わせた。傍にいながら手を伸ばせなかった時期もある。見ない振りを出来る大人になったのに、手を出したい強欲な自分がいた。
「光ちゃん」
もう一度、乾燥した唇を潤す様にキスをする。自分の心を決める為だった。手放さずにいられるように、永遠を共に生きられるように。
「好き」
「……え」
「愛してる」
「……つ、つぉし?」
「ん?俺な、ずっとずっと光一の事が好きやった。相方として、やないよ?一人の人間として、って意味や」
「つぉし」
「お前、赤んぼみたいやなあ」
自分のシャツの裾を握る不器用な手や、真っ直ぐに見上げる瞳、舌足らずな言葉に彼の幼児性を見る。大人の部分と子供の部分をアンバランスに抱える人だった。成長する暇もない位、十代を駆け抜けてしまっている。今更そのひずみを治そうとしても無理な話だった。
赤い頬を両手で包んで、愛しい気持ちのままに見詰める。甘やかしたい衝動ばかりが胸に迫った。愛を囁ける様な人間ちゃうんやけどな。他人に対して臆病過ぎる彼が素直に理解出来るよう、言葉を重ねる。
「光一」
「……駄目。あかん。離して」
「どうして」
「や、って……俺、可笑しない?」
「何が?」
「心臓、痛い。あかん、俺お前とキスしたらあかん」
困惑し切った表情で視線を泳がせる。どうしたら、自覚してくれるのか。自分の気持ち一つ分からない光一。誰よりも強い様に見えて、すぐに崩れそうな弱さを持つ人。
伏せられた睫毛が怯えた気配で、ふるりと震えた。それを見詰めて、気付く。恋に落ちると言う事の意味に。分からなくても良いのかも知れない。光一の心は自分が分かっていた。自覚がなくても、自身の感情の揺れに怯えても。傍にいれば、良いのだと。
一人で納得して、身体を離した。これ以上触れていたら抑えが効かなくなるし、何より光一の心臓が壊れてしまう。最後にこめかみへ口付けを落として、未だ視点の定まらない瞳を覗き込んだ。
「風邪引く前に、ドライヤーしたろな」
「つよ、え……」
「ええよ。今はまだ分からんでも。いつでも話してやるから」
「でも、心臓痛いのは嫌や」
「んー、したらおまじないな。目ぇ瞑ってみ」
素直に瞼を下ろす彼にまた不安を覚えながら、赤く染まった耳朶に触れた。びくりと竦む身体に、本気で押し倒してやろうかと思う。いつまで我慢出来るんかな。
「つ!つぉ!」
「はは。言えてへんやん。ほら、立って。鏡の前行こか」
有無を言わさず腕を引いて、歩く事もままならない彼の髪に触れた。しっとりとした感触。少しだけ乾いてしまったそれを痛めない様に温風を当てた。自分の腕の中にいれば怖くないのだと言う事に、いつか気付けば良い。
今もまだ幼い光一の恋。「恋人」の関係になるまでは時間が掛かりそうで、スタッフの悲痛な顔を思い浮かべながら剛は一人笑った。まだまだ、猶予期間はありそうだ。唯一無二の「相方」の髪を乾かしながら、幸福な未来をそっと思い浮かべた。