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小説の再編集とか、資料とか、必要な諸々を置いておくブログ
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新潮文庫 P64 15行目〜P65 「窓辺の出来事」

「君の提案は素晴らしい」
 そう言いながら、諦めたような表情を博士は見せた。
「出来るなら、僕も君達と散歩したいんだ。でも、駄目だ。駄目なんだ。それは絶対に出来ないよ。僕にそんな勇気はないんだ。でもね、アタスン。君に会えて本当に良かった。こうやって会えた事は、僕にとって大きな喜びだ。君にもエンフィールドさんにも上がって頂きたいんだが、部屋が酷い事になってしまっているんでね」
「それなら、」
 弁護士は言って、親しげで自然な表情を作った。
「私達はここにいて、そこに座る君と話をするのが良いと思わないか」
「それはまさに私が提案しようと思っていた事だよ!」
 博士は嬉しそうに笑いながら返した。しかし、それを言葉にした直後、彼の顔から血の気が失せ絶望に塗り替えられた表情は悲壮な色に変わった。声を掛ける前と同じ表情だ。
 下からその様子見詰めていた二人は、身の毛もよだつ心境だった。すぐに窓が閉められてしまったから、彼らが博士の表情を見たのはほんの一瞬の事だ。けれど、そのたった一瞬で全ては事足りていた。
 深い沈黙に包まれた二人は、その場を立ち去るべく身体の向きを変えた。黙ったまま裏通りを歩く。
 そして、日曜日でもいくらか活気のある大通りに出てから、やっとアタスン氏は隣に立つ友人を振り返った。
 お互いの顔は青褪めており、彼らの心情を示すように目には巨富の色が浮かんでいる。
「神よ。ああ、何と言う事だ」
 アタスン氏は呟いた。エンフィールド氏は非常に深刻な顔をし、再び沈黙を保って二人歩き出した。





<感想>
 単語を調べても、文章の構成の上手さを理解するのは難しいのだなと感じました。
 自分が知っている文型と僅かに変えたニュアンスを理解する事が出来ず、こんな少ない文章でも意訳と言うのは大変だと思いました。
 アタスン氏、エンフィールド氏、ジキル博士それぞれの呼び方が文ごとで変わるのは日本語ではなかなかない感覚でした。
 呼び名を変える事によって、彼らの内面まで表現するような意図があるのではないでしょうか。
 原文に触れた事により、訳されたものを読むだけよりもより文章を理解出来ると思います。
 良い学習になりました。
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