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  <title type="text">buena suerte !</title>
  <subtitle type="html">小説の再編集とか、資料とか、必要な諸々を置いておくブログ</subtitle>
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  <updated>2006-12-06T23:27:03+09:00</updated>
  <author><name>爽</name></author>
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    <published>2013-12-04T19:04:49+09:00</published> 
    <updated>2013-12-04T19:04:49+09:00</updated> 
    <category term="小説" label="小説" />
    <title>讃歌</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[「讃歌」<br />
<br />
　一世一代のロマンスだった。<br />
　今までの人生で、こんなに誰かを好きになった事なんてない。始まりがいつだったのかさえ、思い出せなかった。気が付いたら、好きで、好きで、唯それだけで。<br />
　櫻井は、決意する。この思いを伝えようと。<br />
　大野に愛の言葉を告げるのだ。<br />
<br />
「翔君、無理」<br />
「&hellip;&hellip;ですよね」<br />
　潔く、正面突破。のち、撃沈。<br />
　大野を飲みに誘った帰り道、大通りでタクシーを拾おうと少し歩いた。飲んでいる時から、そわそわしていたのだけれど、どうにか店を出るまでは言わないでいられた。<br />
　抑え込んだせいだろうか。二人で夜道を歩いていたら、もうどうにもならなくて、大野の手を掴んだ。<br />
　振り向く彼の吃驚した表情が、可愛くて、愛しくて。同じ男なのに、どうしてこんなに守りたい気持ちにさせるのだろう。<br />
　大野は、不思議だった。その存在も、その思考回路も、何もかもが、櫻井の理解の範疇を超えている。<br />
　だから、彼の気持ちを慮る事は難しかった。ある程度の経験と、熱心な観察のおかげで、大野が次にどんな言動を起こすか、今何をして欲しいのか、何を思っているのか、そう言う事の想像は出来る。<br />
　でも、本音は分からなかった。彼がどんな風に世界を見ているのか、どんな風に自分の事を考えているのか。<br />
　予想もつかない。<br />
　今までの恋愛なら、行動予測を立てて、イエスと言わざるを得ない状況を作った。外堀から埋めて行って、最後にその人を落とすような戦略を練るのが得意だったのだけれど。<br />
　大野相手では、どんな作戦も効力を発揮しない。もうどうにもならなくて、好きと言う気持ちが端から溢れてしまいそうで、だから言った。<br />
　好きです。付き合って下さい、と。<br />
　そして、冒頭の拒絶に戻るのである。<br />
「あ、お前、落ち込んでるだろ」<br />
「そりゃ、落ち込むでしょうよ&hellip;&hellip;」<br />
「違うってば」<br />
「何が違うの」<br />
　手を繋いだまま、車が行き交う場所で、大野と櫻井は向かい合っていた。背を丸める櫻井は、泣きたい気持ちを堪えて、立っている。<br />
「翔君、だって分かってねえだろ」<br />
「何を？」<br />
「男同士で付き合うって事」<br />
「あんたは、分かるの？」<br />
「ある程度は。昔、付き合ってた事あるし」<br />
「何それ！　聞いた事ないんですけど！」<br />
「うん、まあな。人に言って回る事でもねえしな」<br />
「あんた、男もイケるの？　どんだけ守備範囲広いの？」<br />
「翔君&hellip;&hellip;俺に告っといて、その言い草はねえだろ」<br />
「あ、ごめん。でも、吃驚するじゃん。何だよー。そっかー。男と付き合った事あんのかー」<br />
　大野が恋愛経験豊富なのは、何となく分かっていた。醸し出す雰囲気とか、物怖じしないところとか、女の子が不意にときめくような仕草だとか。この人は、全部心得てて、でも何も意識してないんだろうなあと、思っていた。<br />
　けれど、同性と付き合っていたと言うのは想定外だ。否、そんな事はないのだろうか。<br />
　大野なら、どんな奇想天外な事が起きても納得出来てしまうような気がした。それこそ、宇宙人だと言われたら信じてしまいそうになる程なのだ。<br />
　櫻井は、繋いだ指先を揺らして、不満を口にした。<br />
「何で、俺は駄目なの？　男でも平気なら、俺だって良いんじゃねえの？」<br />
「翔君は駄目だろ」<br />
「何で」<br />
「離れたくないから」<br />
「&hellip;&hellip;何、それ」<br />
　櫻井はほとんど絶句して、街灯に照らされた大野の顔を見詰めた。優しい眼差し。僅かに上がった口角。オレンジの明かりを受けて光る頬。優しい表情だった。<br />
「俺は、人間ってのは、出会ったら別れるもんだと思ってる」<br />
　黒目を淡く滲ませて、大野は微笑う。この人、ホントは神様か仙人なんじゃないのかと思うのは、こんな瞬間だった。<br />
　およそ、三十路の男が出来ないような表情を平気で浮かべる。諦めたような、全てを受け入れたような、その実全てを失ったような、柔らかな笑み。<br />
「今までだって、ずっとそうだった。別れないのは家族だけで、だから出会った人は一生懸命愛したいって、そうやって思ってた」<br />
「過去形？」<br />
「今も思ってるよ。でも、嵐は違った」<br />
　かつて、痛みと苦しみを強く抱えて、大野は存在した。グループが結成して最初の数年は、ずっと苦しそうだった。<br />
　あの時、櫻井だってまさか自分が大野に告白するようになるとは思っていない。事務所を辞める事も当然のように考えていたし、この人を誰にも渡したくないだなんて、思いつきもしなかった。<br />
　年月が変えて行った感情がある。大野を愛して、彼から齎される愛情を受け止めて、いつの間にかこんなにも好きになっていた。<br />
「おいらは、ずっと一緒にいたい。翔君も相葉ちゃんも松潤もニノも、皆と一緒にいたい」<br />
「うん。分かるよ」<br />
　いつ離れて行ってしまうとも知れない人だった。その内、彼とも道を違えるだろうと思っていた時期が、櫻井にもある。<br />
　今は、少しだって離れたくなかった。五人でいる場所がホームだし、嵐と言う存在を守る為、そして大きくする為に、一人の仕事も頑張っている。<br />
「翔君は、何で、おいらなんだ？」<br />
「理由が必要？」<br />
「だって、相葉ちゃんの方が可愛いし、松潤の方が優しいし、ニノの方が話は分かるだろ？　何で、俺？」<br />
「何でだろうね。それが分かれば、俺もこんな風に告白なんてしてないと思うよ」<br />
「いい加減な奴だな」<br />
　大野は笑って、繋がれた指先に力を込める。握り返された掌。何を思っているのだろう。<br />
　メンバーと比べたって、恋の理由は分からない。世界中の誰よりも大野が好きなだけで、誰かと比較した訳じゃなかった。<br />
　そりゃ、女の子の方が良いのは分かっている。甘くて柔らかくてふわふわした恋に憧れた二十代があった。<br />
　けれどもう、そんなものでは満たされない。愛して焦がれて、それでも欲しいと思ったのは、大野唯一人だった。<br />
「好きだって思っちゃったんだから、どうにもなんないよ」<br />
「馬鹿だな、翔君」<br />
「俺は、離れないよ？　どこにも行かない。ずっと、嵐でいる。そうやって約束しても、駄目？」<br />
「駄目。嫌だよ。大事なもんは、もうなくしたくない」<br />
「智君&hellip;&hellip;」<br />
　この人は、感情を露にしなかった。だから、忘れてしまう。<br />
　怖いものなんて何もない振りをして、傍目には何も考えていないように見せて、その実喪失を酷く恐れていた。<br />
　彼には彼なりの人生の軌跡があって、その途中でなくしたものが沢山ある。得たものと失ったもの、それは勿論失ったものの方が多くて。<br />
　だから彼は、最小限のものしか手にしない。守れるものだけをその腕で抱き締めて、他を捨て置くのだった。<br />
「俺が、大切？」<br />
「&hellip;&hellip;当たり前の事、聞くな」<br />
「そうだね。嵐だもんね」<br />
「違う。そう言う事じゃない」<br />
「じゃあ、どう言う事？」<br />
「嵐の翔君だから、大切なんじゃない。櫻井翔だから、俺は大事なだけだ」<br />
　思い掛けない事を言われて、櫻井は目を見張る。大事に思われているのは、勿論知っていた。けれど、それ以上でもそれ以下でもない感情だと思っていたから。<br />
　大野は、真剣な眼差しを緩めない。指先が絡んで、妙な熱を持った。<br />
「翔君が、大事だ。絶対、なくしたくない。だから、無理」<br />
「&hellip;&hellip;いなくならないし、大切にするって言っても？」<br />
「うん」<br />
「俺が、全部守るって約束しても？」<br />
「約束なんて、口だけだ」<br />
「どうしたら、信じてくれるの？」<br />
「信じない。信じらんない。だから、無理だ」<br />
　強情な大野に焦れて、溜息を漏らした。その呼気にさえびくりと反応するのに、心の揺れを隠そうとする。<br />
　手を引いて、距離を縮めた。この人がこんなに頑ななのは、自分の愛情を信じてくれていないからだ。<br />
　過去、「ずっと傍にいる」と言った人達が離れて行った事も、彼の傷になっているのだろう。<br />
　大野の思考の全てを理解している訳じゃないけれど、ある程度までなら分かる。分かるように、長い時間努力して来た。その努力は、勿論自ら望んだものだ。<br />
　腕を伸ばして、大野を抱き込んだ。驚いたように見上げて来る瞳に、真っ直ぐな視線を返す。<br />
　大丈夫だよ、と目だけで伝えた。ここが車通りの激しい往来であっても、構わない。人影だけは素早く確認したけれど、二人以外の存在はなかった。<br />
「翔君、何して&hellip;&hellip;」<br />
「こうやってさ、抱き締めていたいの。あんたの事を、ずっと」<br />
　それは、淡く強い願いだった。大野の傍で生きて行きたい。優しくて寂しいこの人を抱き締めて、何も怖い事なんかないんだよ、と伝えたい。<br />
　道なき道を歩いて行く事になっても、きっと怖くないから。そんな風に諦めた顔で、遠くから眺めるような態度は取らないで。<br />
「ずっとなんて、ない」<br />
「あるよ。俺が、証明してみせる。一生かけて、あんたに信じさせる。だから、俺の事好きになって」<br />
　抱き締めた身体が、小さく震える。最初から上手く行くなんて、期待していなかった。長い時間を掛けて、自分の思いが本物である事を知ってくれれば良いと思っている。<br />
　大野の頭が、肩に乗せられた。彼の言葉をじっと待つ。<br />
「翔君」<br />
「ん？　何？」<br />
「俺は、駄目なんだ」<br />
「何が？」<br />
「大事なもんを大事に出来ない」<br />
「そんな事ないでしょうよ」<br />
「ううん。おいらが大事にしたもの、全部どっか行っちゃった」<br />
　大野はきっと、遠い昔の事を思い浮かべている。お気に入りの玩具、浜辺で拾った貝殻、名前も知らない友達、懐いた猫。郷愁と共に思い出されるそれらは、誰もが知っている痛みと共にあった。<br />
「なくならないものもあるって、俺が教えてあげる」<br />
　首を横に振っただけで否定するこの人の中には、消えない思い出や忘れられない人達が沢山いるのだろう。それらは全て、大野の元から去って行った。<br />
　でも自分は、離れるつもりなど更々ない。一緒にいる為なら、嵐さえもその手段として使うに違いなかった。<br />
　だから、安心して欲しい。俺はここにいる、って知って欲しかった。<br />
「智君」<br />
　髪を撫でながら、名前を呼んだ。抱えた身体は、夜風に冷えている。いつまでもここにいる訳にはいかなかった。<br />
「智君、好きだよ」<br />
　優しい音階で、何も怖い事はないんだと伝える。大丈夫、大丈夫。俺はここにいるし、いつでも嵐は貴方と共に在る。<br />
　怖がるのは、なくしたくないからだと知っていた。大野は多分、櫻井を失う事に怯えている。<br />
　今までの経験則から導き出した答えだった。そんな因果を櫻井は越える自信がある。<br />
　大野に寂しい思いはさせない。どこまでだって一緒だと、信じて欲しかった。<br />
「智君、何か言って」<br />
「&hellip;&hellip;やだ」<br />
「うん？」<br />
「しょーくんがいなくなんの、嫌だよぉ」<br />
　涙声になるから、櫻井はまたきつく大野の事を抱き締める。怖くない。ここにいるよ。愛してる。ありったけの思いを抱き締めた腕から伝えた。<br />
　恐る恐ると言った風に、大野の手が背中に回される。強い人なのに、今はこんなにも小さく縮こまって緊張していた。<br />
　貴方を怯えさせる過去から、連れ出してしまいたい。唯真っ直ぐに、愛情を受け止めて欲しい。<br />
　大野だって知っているはずだった。自分達の思いに、大きな差異はないのだと言う事を。<br />
「いなくならない。ずっとずっと、智君が嫌がったって、俺はあんたの傍にいる」<br />
「嫌だ。そう言うの、死亡フラグって言うんだぞ」<br />
「死亡フラグ？　まぁた、ニノに妙な言葉教わってんな」<br />
「だって、死んじゃうって」<br />
「死なないよ。思いを告げて死ぬなんて、そんな勿体ない事しない。俺だって、相当の犠牲は覚悟して言ってんだ。それなりの勝算はあると思ってるよ」<br />
「&hellip;&hellip;おいらは、誰も好きになんねえぞ」<br />
「でも、俺の事追い返せる程、嫌いにはなれないでしょ？」<br />
「嫌いな訳ないじゃんか！　好きだよ。大好きに決まってる！」<br />
　大野が叫んで、背に縋り付く手の力を強くする。加減なく抱き返されて、櫻井は思わず笑ってしまった。<br />
　愛しい。愛しくて仕方ない。<br />
　この年上の人は、自分の愛情の受け止め方を知らないだけだった。受け止めて、いつかその約束が反古にされるのが嫌なのだ。<br />
　強情で愛らしくて、可哀想だった。大野の恋愛をずっと見て来た訳じゃないけれど、櫻井にも心当たりのある昔の恋で、相当傷付いた事は何となく分かっている。<br />
　それ以降、どんなに「好きだ」と言っていても、どこかで一線を引いたような関係ばかり築いていた。<br />
　大野は、物凄く単純で得るには大変なものを望んでいる。<br />
　永遠の愛、なんて。<br />
　簡単に望めるものではなかった。諦めを知って、望みが絶たれる恐怖を味わって、大野はここにいる。<br />
　傷付いた分、彼は優しくなったけれど、その度に失われて行く純情があった。<br />
「ねえ、智君。今、智君が俺に感じてる愛情だけで良いよ。それが、メンバーとしてでも先輩としてでも、仕事仲間としてでも何だって良い。嫌われてないんなら、俺は諦めない。あんたがいつか、俺を選んでくれるまで、俺は待つよ」<br />
「待たなくて良い」<br />
「ううん。それが、俺の答えなんだ。誰に何を言われても、例え智君が嫌がっても、俺はいつでもあんたを待ってる」<br />
　抱き締めた腕をほどいて、櫻井は笑ってみせた。その言葉に嘘はない。いつまでだって、待ってみせる。勿論、その間の努力は怠らないつもりだけれど、今すぐ何かを成し遂げようとは思っていなかった。<br />
「翔君&hellip;&hellip;」<br />
「貴方を、好きでいても良いですか？」<br />
「お前、馬鹿だ」<br />
「うん」<br />
　しがみついて来た両手の必死さが、押し当てられた大野の頬に滑る涙が、彼の気持ちを雄弁に語っていた。途方もない程優しくて、想像も及ばない程の孤独の中に身を置く人。<br />
「愛してる。いつか、俺をあんたのものにして」<br />
　その瞬間を待っている。<br />
　離れずにここにいようと、櫻井は決意を新たにした。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
【掌編０４６「讃歌」／２＊１】]]> 
    </content>
    <author>
            <name>爽</name>
        </author>
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    <published>2013-12-02T05:32:56+09:00</published> 
    <updated>2013-12-02T05:32:56+09:00</updated> 
    <category term="小説" label="小説" />
    <title>Close to me</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[「Close to me」<br />
<br />
　不意に訪れた空白の時間だった。大野と櫻井は、顔を見合わせて苦笑する。<br />
　午前中の仕事が巻きで終わってしまった事、午後の大野の撮影が天候の為に見合わされる事、櫻井の取材先が予定変更を申し出た事、そして夜の仕事は五人一緒のものである事。<br />
　沢山の偶然が重なって、夜まで時間が空いたのだった。マネージャーは「どうしますか」と訊いて来る。選択権は、こちらにあるらしい。<br />
　話し合うでもなく、目を合わすだけで、二人は意思の疎通を行った。<br />
「俺んちで智君と一緒に、待機してるよ」<br />
「出掛けて頂いても、大丈夫ですよ？」<br />
「いいや。そう言うのは。ゆっくりしとく」<br />
「分かりました。車、回して来ますね」<br />
　マネージャーは、そう言って控え室を出て行った。二人きりの空間になって、二人は小さな笑い声を漏らす。<br />
「しょーくんちなのか」<br />
「うん。駄目？」<br />
「良いけど」<br />
「たまには、二人でいようよ」<br />
「そうだな」<br />
「日の高い時に智君と二人っきりとか、幸せかも」<br />
「あんま、特別なもんにすんなよ」<br />
「特別だよ。貴方といる時間は。全部」<br />
「&hellip;&hellip;馬鹿だな」<br />
　必要以上に甘い櫻井の声音に笑って、大野は視線を逸らす。彼の愛情は真っ直ぐで、時々恥ずかしくなった。自分のキャパシティを超えた愛情を注がれるのが、苦しくて嬉しい。<br />
　言葉を返す代わりに、大野は櫻井へ手を伸ばした。櫻井は、楽しそうに笑いながらその手を取って、しっかりと絡ませる。<br />
「甘えん坊だな」<br />
「嫌いじゃないだろ？」<br />
「うん。むしろ、好き。おいで」<br />
　繋いだまま腕を引かれて、大野は櫻井の膝の上に移動した。見下ろせば、機嫌のいい櫻井の目が細められている。優しい表情に、柄にもなくときめいた。<br />
　促されるように、顔を近付ける。ちゅ、と小さな音を立てて口付けを落とした。<br />
　櫻井は笑っている。楽しそうに、嬉しそうに。もう一度キスをすれば、彼の手が背中を撫でた。<br />
　もう昔程の情熱はない。奪い合うような口付けは、長い事していなかった。それで良かったし、飢えを忘れた身体は、存外心地良い。<br />
　櫻井を信じていた。絶対に離れない事。愛し続けてくれる事。迷った時期は長かったけれど、こうして迷わず一緒にいようと決めてから、二人の関係は穏やかで優しいものになった。<br />
　櫻井の傍にいられれば、それで良い。彼の瞳が自分を見詰めてくれて、自分の意識が彼へ向いて。<br />
　愛情って、こんな感じなんだろう。恋の時期は通り過ぎてしまった。愛を知り、二人一緒に生きて行く道を見つけた。<br />
　迷ってばかりの自分達が、答えを出してはや数年。驚く程順調に付き合い続けている。<br />
「午後、何しよっか」<br />
「寝る」<br />
「はは。寝るんだ」<br />
「翔君も一緒だぞ」<br />
「俺も？」<br />
「一緒にいられんだ。仕事なんて、しようと思うなよ」<br />
「そうだね、分かった」<br />
　この男は、放っておけばすぐ仕事をする。キャスター業をやっている以上、勉強は必須なのだろうけれど、小難しい本を読んで、ネットで情報収集して、時には友達に連絡を取って、身近な意見を聞くのだった。<br />
　いつだって、分刻みで動いている男だ。自分と一緒にいる時位、ゆっくりして欲しいと願うのは、恋人ならごく当たり前の感情だった。<br />
　忙しなく過ぎ去って行く時間の中、自分といる時だけは、櫻井の時間がゆっくりと流れれば良いと思う。<br />
「しょーくん」<br />
　名前を呼んで、櫻井の首に抱き着いた。膝の上にいる自分を彼は上手に抱き締める。もう、今すぐ眠ってしまいたい程だった。<br />
　櫻井の腕の中は落ち着く。こんな場所を他に知らなかった。彼はいつだって、自分の為の場所を空けてくれた。<br />
　首筋に鼻を寄せて彼の香水と体臭を嗅ぐ。甘い甘い匂いの下にある、彼の匂い。慣れ親しんでしまったそれに、大野は小さく笑みを作る。<br />
　背中をゆっくり撫でる手は、優しく力強かった。男だから守られたいなんて思わないけれど、この手に全てを託すのも悪くないんじゃないかと、思ってしまう程だ。<br />
　うっとりと櫻井の肩に頭を預けて、その体温を感じている時だった。ノックの音が響いて、マネージャーが顔を出す。<br />
「大野さん、櫻井さん、車の用意出来ました」<br />
「はーい。今行く」<br />
　マネージャーは一瞬驚いた顔をして、けれど何も言わずにまた扉を閉めた。一応、気を遣ったのだろう。櫻井の上に大野が乗っている図と言うのは、世間様に見せられるものではない。<br />
　扉を閉めてもらえて、良かった。とは言っても、この格好を受け入れている時点で、櫻井も同罪だ。誰かに見られるかも知れない不安より、大野を甘やかしたい気持ちの方が強かった。<br />
「智君、行こ」<br />
「うん」<br />
「こら。離れて」<br />
「分ぁってるよー」<br />
「家帰ったら、もっと甘やかしてあげるから」<br />
「言ったな」<br />
「言いましたよ。何の為に、家に行くと思ってんの」<br />
「ヤんのか？」<br />
「&hellip;&hellip;あのねえ。夜もまた仕事がある人をメチャクチャに出来る程、俺駄目人間じゃねえよ？」<br />
「何だー」<br />
「何でそこで、残念そうな声出すかね」<br />
「だって、残念じゃんかよー」<br />
「あんたはもう少し、あんたの身体を労った方が良いね」<br />
「俺の身体は、翔君が大事にしてくれんだろ」<br />
「大事にしてますけどね。だから、帰っても何もしないよ」<br />
「涸れてんなあ」<br />
「年末進行直前で盛ってらんねえって。ほら、マネージャー待ってるしもう行くよ」<br />
「はーい」<br />
　大野は、素直に櫻井から降りると鞄を抱えて、スタスタと扉の方へ行った。切り替えの早さに苦笑すると、櫻井も重い鞄を抱えてその後に続く。<br />
　手を繋ぎたいなと思ったけれど、家に着くまで我慢しなければならなかった。大野と二宮が外で手を繋いでも、違和感はない。でも、自分達では駄目だった。<br />
　滲んだ垣間見えるからかも知れない。家に帰れば、くっ付いていられるのだからと思う事にして、駐車場へ向かった。<br />
<br />
<br />
<br />
　車の中でうとうとしていた大野は、マンションに着いてもその眠気を払えていないようだ。櫻井は、リビングに入ってソファに大野を座らせると、コートを脱がして、鞄を玄関に置いた。<br />
　その間もぐらぐら頭を揺らす姿に、彼の子供らしい愛らしさを見て、櫻井は口許を緩める。可愛い人だった。<br />
「智君。横になっちゃいな」<br />
「ん&hellip;&hellip;しょーくんも」<br />
「うん。俺も一緒に寝るから。先、眠っちゃって良いよ」<br />
「ヤだ」<br />
「我儘だな」<br />
「わがままだもん」<br />
　大野が子供のようになるのは、甘えているからだと知っている。さすがにスーツのままでは横になれないから、着替えて来なければならなかった。<br />
　むずがる恋人の額にキスを落とすと、その存外力の強い手に捕まる前に、寝室へ向かう。クローゼットから適当にスェットを出して、スーツはハンガーに掛けた。<br />
　結局今日は取材がなくなってしまったから、この後はスーツじゃなくても良いだろう。出る時に着る服も用意して、寝室を出た。<br />
　ソファを覗き込むと、大野は既に眠っている。可愛いなあと思った。起きている時でさえ幼い彼の寝顔は、生まれたての子供みたいで、時々困る。こんな風に眠っている人を無理矢理どうこう出来る訳がなかった。<br />
　唯、愛するだけだ。大事な宝物として、自分の腕に囲うのが精一杯だった。<br />
　恋人になって、もう何年も経つのに、未だに慣れない自分がおかしい。今までの恋愛なら、慣れて、飽きて、一緒にいる時間もどこかおざなりになったのに。<br />
　大野といると、毎日毎日恋をする。昨日より今日の方が、愛は深まった。<br />
　一緒にいれば尚更、愛したい気持ちが募る。不思議な人だった。彼に愛されている事も奇蹟だし、彼の恋人でいられる事が、櫻井にとっては神様からのプレゼントだとしか思えない。<br />
「んん、しょーくん&hellip;&hellip;？」<br />
　寝言かと思う程、柔らかな音で、大野が櫻井を呼んだ。ふわ、と中空を彷徨った右手を取って、櫻井は答える。<br />
「何？　智君」<br />
「いる、のか」<br />
「いるよ。一緒にいるって言ったじゃない」<br />
「しごと、だめだぞ」<br />
「分かってる。あんたといる」<br />
「ん」<br />
　満足そうに顎を引くと、大野はソファの背もたれに身体を寄せた。繋いだ手のまま、来い来いと手首が動く。<br />
「狭くなるよ」<br />
「いい」<br />
「ベッドにする？」<br />
「めんどい」<br />
「俺が運ぶよ」<br />
「やだ」<br />
　ほわほわとした声のまま、大野は首を横に振る。頑固な人だから、ソファの上からの移動は難しいだろう。<br />
「ひかりが、」<br />
「光？　ああ、眩しい？」<br />
　振り返ると、窓から陽光が射し込んでいた。眠るには、少し明るいかも知れない。<br />
「ちがう。きれい、だから、そのまんまが良い」<br />
「そっか。分かった」<br />
　寝室は暗闇が保たれているから、この光を感じる事が出来ない。お昼寝なんて、最高に怠惰で贅沢な時間を過ごすには、今が何時だと分かる太陽の光は必要かも知れなかった。<br />
　大野が空けてくれたスペースに、乗り上げる。二人一緒に眠るには窮屈だけれど、狭い場所でぎゅっとくっ付くのは、自分達嵐の特技と言っても良かった。<br />
　これ位なら、充分に眠れる。<br />
　重なった身体の部分に、大野を乗せた。小さな彼を潰さないよう、慎重に。けれど、女の子を相手にするような繊細な動作は使わない。<br />
　同じ男の身体。小さくて細くて、心配になる愛すべき身体。抱え上げて抱き締めると、大野が小さく笑い声を漏らした。<br />
「智君？」<br />
「んー。しあわせだー」<br />
「なら、良かった」<br />
「しょーくんは？」<br />
「ぽっかり空いた時間に、あんたと過ごせて、あんたは今俺の腕の中にいて、これ以上の幸せはないよ」<br />
「よかった。&hellip;&hellip;仕事してるほうがいいのかとおもった」<br />
「仕事も好きですけどね。でも今は、智君が一番」<br />
「うん」<br />
　嬉しそうな声音は、言葉を多く紡がなくても、雄弁に大野の感情を伝えてくれる。愛しい人だった。この人と生きて行ける事は、櫻井にとってどれだけの幸福になるか。<br />
　きっと大野には、想像もつかないだろう。<br />
　彼がいるから、頑張る事が出来た。彼の目に映る自分が少しでも格好良いものであれば良いと願って、仕事をしている。<br />
　正直な眼差しが、諦めて逸らされるのが何より怖かった。彼に誇れる自分でありたい。<br />
　それは多分、昔から変わらない大野への感情だった。彼の傍にいる為の努力は、櫻井翔と言う人間の輪郭を作り上げたのだ。<br />
　大野がいなければ、今の自分にはなっていなかっただろう。<br />
「俺は、智君が思ってるより、智君の事が大事だよ」<br />
「そーなのか？」<br />
「うん。そうだよ」<br />
「そっか。&hellip;&hellip;そっか」<br />
「意外だった？」<br />
「うーん。どうだろ。おまえが俺のことみてるのは、ちゃんとしってる。おいらがそばにいなくても、おいらんこと考えてくれてんだろうなあってのは、わかる」<br />
　ゆっくりと紡ぎ出される言葉。大野にとっての自分は、一体どんな存在なのだろう。<br />
　考えても分からなくて、分からないまま傍にいた。<br />
「おれも、おまえががんばる材料になってんなら、うれしい」<br />
「材料って言うか、ほとんど貴方目的だけどね」<br />
「それは、ばかだな」<br />
「うん、馬鹿なんだよ。もっと大きな志で仕事したいと思っているけど、いつでも根底には貴方への思いがある。智君が見て、恥ずかしくない俺でいたい」<br />
「お前はいっつも、かっこいいよ」<br />
「これから先も、ずっとそうやって思ってて欲しい」<br />
「うん。しょーくんは、仕事で手をぬくなんてねえんだから、だいじょうぶだろ。ずっとずっと、お前をすごいとおもう。そんで、そんなにすごいやつにならなくても、おいらはしょーくんを好きだぞ？」<br />
「そう言ってくれると嬉しいよ」<br />
　大野は、櫻井の上に身体をぺたりとくっ付けて乗り上げると、上目遣いで見詰めて来る。とろんとした、眠りの淵にある瞳。ふにゃと緩んだ口許。指先だけを絡めて、機嫌良く笑う。<br />
「好き。永遠なんて分かんねえから、さきのことなんてやくそくできねえけど、おいらはずっと、お前が好き」<br />
「俺も、智君が智君である限り、変わらずあんたを好きだと思うよ。永遠は、俺には見えてるけどね」<br />
　大野の頭を撫でると、楽しそうに笑った。<br />
　永遠を誓える。彼の傍で、彼と共に在る事は、願いであり実現すべき目標だ。<br />
　大野がいるから、自分はどんな苦難にも立ち向かう事が出来た。<br />
　いつか、命の潰える時が来ても、櫻井は躊躇なく大野を大切だ思うに違いない。永遠の果て、その先まで、自分には見えた。<br />
　大野の傍にいたい。彼の目の届く場所で、死ぬまでこの仕事をしていたかった。<br />
「永遠なんて、おいらにはとおい」<br />
「うん。智君は、それで良いんだよ」<br />
「いいのか」<br />
「良いよ。決まってる」<br />
「うん&hellip;&hellip;」<br />
「眠いね。ごめんね。もう、寝よう」<br />
　時計を見ると、迎えが来るまで、あと四時間だった。ゆっくり眠れるだろう。<br />
　睡眠不足が当たり前の身体だった。こんな日の高い時間に眠るのなんて、何年ぶりの事か。<br />
　穏やかな午後の陽射しと。腕の中にある温もり。<br />
　大野と櫻井は、互いの体温に守られて、あっという間に眠りに落ちて行った。<br />
<br />
<br />
<br />
　良い匂い。<br />
　大野を眠りから最初に呼び覚ましたのは、部屋に漂う香ばしい香りだった。コーヒーの匂い。<br />
　ああ、そうか。もう櫻井は起きているのか。<br />
　ゆっくり瞼を持ち上げると、ブラインドの外はもう暗くなっていた。何時間眠っていたのか。<br />
　身体の上には大判のブランケットが掛けられてて、空調で温度の整った部屋は寒くないのを分かっていても、何となくくるまってみる。櫻井の匂いがするけれど、どちらかと言えばこのブランケットを使うのは、自分の方が多かった。<br />
　ベッドで眠らない大野は、櫻井が帰って来るまでこのソファにいる。大体眠っているのだけれど、目覚めるとこんな風に掛けられている事がほとんどだった。<br />
　ぐるりと顔を巡らせて、ダイニングテーブルの置いてある方へ向ける。そこには、資料を読んでいる櫻井の姿があった。<br />
（一緒に眠るって言ってた癖に）<br />
　一瞬そう思ったけれど、櫻井の後頭部の髪が跳ねていて、一応は眠ったのだと言う事が分かる。いつ目覚めたのだろう。手持ち無沙汰になって、結局勉強している辺り、相当なワーカーホリックだった。<br />
「&hellip;&hellip;しょーくん」<br />
「あ、起きた？」<br />
「ん」<br />
「起きれる？　まだ、一時間位時間あっけど」<br />
「翔君、いつ起きたんだ？」<br />
「えーと、一時間前？」<br />
「いちじかん&hellip;&hellip;うー、ん？」<br />
「二時間は寝たって事」<br />
　首を傾げる大野に苦笑して、思考を先回りした櫻井が自分の眠った時間を伝える。それならば、上々だった。普段平気で二、三時間の睡眠で過ごす人だから、ほんの僅かでも休息が取れたのは、大野にとっても嬉しい事だ。<br />
　もそもそと身体を起こして、ソファの背に腕と顎を乗せた。櫻井は優しい目で、こちらを見詰める。<br />
　愛されているなあと感じられた。彼の甘くて優しい眼差しには、大野への愛情が全て詰まっている気がする。<br />
　こんな男前に愛される自分は、幸せ者だった。傍にいられる事が幸せで、誰よりも気に掛けてもらえる恋人と言うポジションは、僅かな痛みと多大な幸福を齎す。<br />
「コーヒー飲む？」<br />
「うん」<br />
　一つ頷けば、櫻井は立ち上がってキッチンへ向かった。勉強の途中なのに、大野が起きればこっちを優先する。もっと邪険に扱っても良い位だった。<br />
　男同士で、遠慮する事は何もないはずで。女の子を扱うような優しさは必要ない。<br />
　何度か訴えた事があるけれど、「女の子だったらもっと甘やかして、もっと駄目にさせる」と言われてしまえば、それ以上何も言う事は出来なかった。<br />
　「智君は男だから、俺が踏み込んじゃいけない領域は、きちんと線引きしておきたい」と彼は言う。<br />
（線引きするって言ってる割には、あっちでもこっちでも嫉妬してんのが、翔君の面白いとこだけどな）<br />
　口ではどう言っても、結局は独占欲の強い男だった。彼を翻弄するつもりはないけれど、可能性のないところでまで嫉妬するから、大野は自分の振る舞いを直すなんて殊勝な事は諦めている。<br />
　嫉妬したいのなら、すれば良かった。そこに優越感を見いださないかと言えば、難しいところではある。<br />
　櫻井が大野を自分のものにしたくて、でも自由のままいて欲しいと願っているのは、分かっていた。だから、大野は自由に振る舞う。彼の望む通り、彼が嫌がっても、それこそが願いだと知っているから。<br />
「はい、どうぞ」<br />
「翔君、ここ」<br />
「って言うと思ったから、俺も持って来た」<br />
　マグカップを二個抱えた櫻井は、優しい表情を浮かべている。数年前までは、尖った表情が多かったのに、いつの間にか彼が大らかな強さを身に付けていた。<br />
　大野は、櫻井が座れるようソファの上を移動する。ブランケットは肩から掛けたままにした。<br />
　両手でマグカップを受け取ると、コーヒーの香りが鼻腔を刺激する。目覚めてすぐ飲めるのは、嬉しかった。<br />
　大野が飲みたがるだろう事まで計算に入れていたのだとしたら、良く出来た恋人である。<br />
　隣に並んで座った櫻井に、身体の右側半分を預けた。苦笑しながらも、彼の手は大野の肩を引き寄せる。<br />
「まだ眠い？」<br />
「ううん」<br />
「夜は、相葉達も一緒だから楽しみだね」<br />
「うん」<br />
　ぽつりぽつりと溢れる話題は、他愛もないものだった。仕事の事、プライベートの事、大野も知らないような昔の事、櫻井の言葉にじっと耳を傾ける。<br />
　自分の為だけに囁かれる言葉は、優しくて温かかった。大野は時々笑いながら、コーヒーを飲んで、頷いてみたりする。<br />
　緩やかに進む時間。ずっとここに留まる事は出来ないけれど、きっといつか今日の事は忘れてしまうけれど、今とても大事な時間を過ごしているんだと言う事は分かった。<br />
　目を閉じて、櫻井の肩に頭を預ける。そうすると、手の中からマグカップを奪われた。かたん、とテーブルの上にカップが置かれる音。<br />
　静かな部屋には、二人分の呼吸しか存在しない。櫻井の腕が伸びて来て、大野を抱き締めた。安心する体温に、全てを任せる。<br />
　呼吸さえ、彼のものになれば良いのに、と思った。この腕の中で、自分は生きている。彼の愛情が支えてくれるから、どんな時も辛くなかった。<br />
　櫻井を同じように支えられているとは思わないけれど。彼もまた、自分の存在がある事で救われる何かがあれば良い。<br />
　もっと近付きたくて、大野は腕を伸ばすと櫻井の心臓にぴたっと耳を寄せた。どくんどくんと脈打つそれは、恋人が抱き着いたからと言って、早まったりしない。<br />
　もう、自分達の中では当たり前の事だった。相手に触れる事。そうして安心感が齎される事。<br />
　また眠ってしまいそうだった。もうすぐ仕事の時間なのに。<br />
　櫻井の腕の中は、心地良かった。どうしたって、安心する。<br />
「翔君」<br />
「うん？」<br />
「仕事行かねえで、このまんまいられたら良いなあ」<br />
「そうだね」<br />
「でも、仕事もしてえよなあ」<br />
「うん」<br />
「ニノ達もいるし」<br />
「うん」<br />
「今日、上がり何時だろうな」<br />
「明け方には帰れるんじゃない？」<br />
「そしたらまた、ここ来て良いか？」<br />
「いつでも来たら良いって、いつも言ってるじゃん」<br />
「うん。そうだけど、でも」<br />
「ここも智君の部屋だと思ってくれれば良い。俺は明日も早いけど、でも帰って来て智君がいてくれたら、俺は嬉しい」<br />
　明日のスケジュールは、櫻井より遅く入って、櫻井より早く上がる。この家に送り迎えを頼むのにも、慣れてしまった。<br />
　彼が望むのなら、いても良いかなと思う。邪魔に扱われない事を分かっていて、けれど一人で恋人の部屋にいるのは、やっぱり寂しいから。なかなか合鍵を使う機会がなかった。<br />
「飯位、作ってやる」<br />
「ホントに？」<br />
「期待すんなよ」<br />
「うん。大丈夫。あんたが作ってくれるもんなら、絶対何でも美味しいから」<br />
「それは、お前の味覚がおかしいだけだ」<br />
　呆れて言っても、櫻井はへこたれない。「楽しみだなあ」なんて、嬉しそうに笑っている。<br />
「なるべく早く帰るつもりだけど、先に寝てて良いからね」<br />
「うん」<br />
「あと、出来ればベッドで寝てて」<br />
「何でだ？」<br />
「ゆっくり眠れてんのか、不安になるから」<br />
「ここのソファ、ゆっくり眠れっぞ？」<br />
「駄目。ちゃんと寝て」<br />
「そしたらお前、俺の事起こさないで寝るだろ？」<br />
「起きたら起こすよ」<br />
「起きなくても起こせ」<br />
「嫌だって」<br />
「そう言うの、優しさじゃないからな」<br />
「分かってるよ！　でも、寝てる時のあんたを起こすのって、勇気いる」<br />
「どうして」<br />
「天使みたいな寝顔してるんだもん」<br />
　絶句して、大野は腕の中で固まった。三十を越えたおっさんに、天使はないだろう。いやでも、多分この男は本気で思っているのだ。<br />
「馬鹿だろ&hellip;&hellip;」<br />
　心から思って言ってやれば、逆にいかに大野が天使かを力説された。「もう良い」と言う頃には、ぐったりだ。<br />
「お前、変態だな」<br />
「智君に関してはね」<br />
　悪びれずに言う櫻井には、もう何をしても駄目だと悟った。大好きだけれど、やっぱりこの辺は相容れないなと思う。<br />
　大野だって、愛情は言葉に出したい方だった。けれど、櫻井の囁く言葉の威力の方が絶大で、結局は口を噤んでしまう。<br />
　噤んだところで、櫻井には分かっているのだろうから、問題はなかった。二人一緒にいると、自然と伝わるのだ。<br />
　愛情も、執着も、嫉妬も、何もかも。<br />
「しょーくん」<br />
　名前を呼んで、僅かに顔を持ち上げる。櫻井は何もかもを分かったように、大野の顎に手を掛けた。<br />
　振って来るのは、コーヒー味のキス。大野はブラックで、櫻井はミルクを足していたから、ほんの少し違う風味が、お互いの口の中で混ざり合った。<br />
　寝起きにするには深いキスだったけれど、次にこうして出来るのがいつか分からないから、思う存分貪り合う。<br />
　足りないところがないように、触れていないところがないように。そうすれば、もっと頑張れる。一人でも、五人でも、相手の存在を信じられた。<br />
　幸福な恋をしている。<br />
　辛かった日々はいつの間にか遠退き、今あるのは優しい愛情だけだった。櫻井の背中に腕を回しながら、大野は思う。<br />
　ずっとずっと先の未来、永遠の果てをも超えて、恋をしていたいと。<br />
　将来の事も、永遠についても分からない事だらけだけれど、櫻井が願うのなら、それはきっと現実になるだろう。<br />
　死ぬまで、傍にいる。それは、重い響きを持たず、唯実現すべき未来として、二人の胸の中にあった。<br />
　傍にいよう。永遠の、その先まで。<br />
　口付けを交わしながら、二人はひっそりとした部屋で、未来の事を思い浮かべていた。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
【掌編０４５「Close to me」／２＊１】]]> 
    </content>
    <author>
            <name>爽</name>
        </author>
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    <published>2013-11-22T20:21:54+09:00</published> 
    <updated>2013-11-22T20:21:54+09:00</updated> 
    <category term="小説" label="小説" />
    <title>ｍｏｒｎｉｎｇ　ｌｉｇｈｔ</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[Ｍ３「ｍｏｒｎｉｎｇ　ｌｉｇｈｔ」／２＊１<br />
<br />
　夜明け前が一番暗いのだと、教えてくれたのは貴方だった。<br />
<br />
　まだ、高校生になって間もない頃だったと思う。勉強と仕事と、とにかく時間に追われていて、それを疎ましく思っている人間がいる事も知っていて、でもどんな風に思われようとも自分は自分のままでいようと頑なに思っていたあの頃。<br />
　放課後のレッスンで倒れた。熱がある事には気付いていたけれど、どうにかなるだろうと思って参加していた。明日の生放送の為のレッスンで、今日出なければ出演出来ない事を知っていたからだ。救護室のベッドで横になって、悔しい気持ちを押し殺した。またあいつらは笑っているだろう。自分を厭う人間が多いのは、仕方のない事だと思っていた。何もかもを捨ててこの仕事だけに専念している人間から見れば、自分は迷惑な存在だろう。<br />
　けれど、何もかもを捨てなければ、何も得られないのかと自分は納得出来なかった。だから、櫻井は全てを得る事を望む。この仕事は一生ものではないだろう。アイドルと言う存在には、賞味期限があった。期限が切れたその時、何もかもを失うなんてリスクを抱える事は、出来ない。<br />
　今無理をしてでも、自分の選択は未来に繋がると信じていた。けれど、身体が追いつかない。高校に上がって、勉強もしっかりやらなければ難しいものとなった。片手間で出来るようなものではない。<br />
　大学へ進学を決めていたし、それを考えると事務所で活動するのは後三年もないだろう。自分の力を何一つ出し惜しみせず、生きて行きたかった。<br />
　ベッドに横たわっている場合ではないのに、起き上がる事が出来ない。明日の番組出演は、諦めなければならないだろう。溜息を零して、櫻井は寝返りを打った。<br />
　その時、何の前触れもなくカーテンが開く。驚いて顔を上げると、普段は余りレッスンに参加しない人の姿があった。大野智だ。<br />
　茶色の長い髪の下に隠された瞳は、ぼんやりとしているのに、彼の一挙手一投足に何故か惹かれた。事務所に入った最初の時から、彼は尊敬する存在だ。素行が良いとは言えないし、大人に対して従順でもなかった。かと言って、粋がっている訳でもなく、反抗心が強い訳でもない。不思議な人だった。<br />
　芸能人って言うのは、こう言う存在の事を言うのかも知れない。得体の知れない雰囲気が、本音を覗かせない表情が、周囲の人間を惹き込んだ。<br />
『平気か？』<br />
『あ、はい』<br />
『ああ、起きなくて良いぞ。まだ、顔赤い』<br />
『すいません』<br />
『何で謝んだ』<br />
『あ、すいませ、』<br />
『お前、変な奴だなあ。熱、明日までに下げられるか？』<br />
『え？』<br />
　大野は躊躇なく桜井の額に手を伸ばすと、体温を確認する。「うーん」と唸りながらも、納得したようにうんうんと頷いた。<br />
『桜井なら、気合いで治すだろ？』<br />
『俺の名前&hellip;&hellip;』<br />
『知ってるって。最初ん時、自分で言ったじゃねえか』<br />
『でも、』<br />
　大野は、人の名前を覚えない事で有名だった。まさか覚えているとは思わなかったし、そもそも視界にも入っていないと思った。それがこうして、救護室まで来てくれている。どうしてだろう。<br />
『明日、出ろ』<br />
『&hellip;&hellip;え』<br />
『おいらのポジション、お前がやれ』<br />
『ちょ、待って下さい！』<br />
　大野は、明日のレッスン時間を告げるようなあっさりとした口調で言った。けれど、勿論桜井がそれに納得出来る訳がない。今日、途中からレッスンには参加していないし、その上大野のポジションは最前列だった。今の自分に与えられる場所ではない。<br />
『何？　覚えてない？』<br />
『覚えますけど！』<br />
『あは。何で怒ってんの、お前』<br />
『だって、大野君のポジションって』<br />
『一番前だ。目立つぞ』<br />
『何で&hellip;&hellip;』<br />
『お前が、頑張ってっから』<br />
『他にも、頑張ってる奴は沢山います』<br />
『そうだな。でも、目の下に隈作ってまで出てる奴、お前だけだよ』<br />
『これは&hellip;&hellip;自分で忙しくしてるだけですから。自業自得です』<br />
『お前、気強そうなのに、案外謙虚だな』<br />
　大野は楽しそうに笑うと、起き上がろうとする桜井の肩を押さえ込んで、ゆっくりと言った。<br />
『チャンス、欲しいだろ』<br />
『はい』<br />
『じゃあ、ラッキーだと思え。先輩が後輩にしてやれる最後のチャンスだ』<br />
『最後って&hellip;&hellip;辞めるんですか？』<br />
『んや、違う。でも、東京離れんだ』<br />
　噂では聞いた事があった。関西に専用劇場を作って、そこで事務所の人間だけの公演を行う事。実力のある人間が、何人も引き抜かれる事。噂は、本当だったのだ。<br />
『行っちゃうんですか？』<br />
『知ってんのか』<br />
『噂だけは』<br />
『そっか。まあ、そんな訳だしさ、東京でテレビ映っても得になる事何もねえんだ。だから、お前が出ろ』<br />
『いつ、行くんですか？』<br />
『さあ？』<br />
　片眉を上げて、大野はおどけた表情を見せた。自分の事なのに、まるで頓着がないようだ。自分の生活する場所から離れて、新しい生活を始めると言うのに、どこにも気負いが見られなかった。<br />
『明日、出れるな』<br />
『はい！』<br />
『じゃあ、これビデオ。家で練習しろ』<br />
『あ、ありがとうございます』<br />
『じゃあ、お大事になー』<br />
『あ、大野君！』<br />
『んー？』<br />
『連絡先、教えて下さい！』<br />
『&hellip;&hellip;何だお前、面倒な後輩だなあ』<br />
　言葉とは裏腹に、大野はベッド脇に置いてあった櫻井のバッグからペンケースを取り出すと、桜井の掌にさらさらと電話番号を書く。<br />
『電話、しても良いって事ですか？』<br />
『出ないかもしんねえけどな』<br />
『じゃあ、出るまで掛けます』<br />
『お前、やっぱ変な奴。じゃあな』<br />
　大野はもう振り返らず、カーテンを閉め部屋を出て行った。桜井は掌に記された番号が消えない内にと、慌てて携帯に番号を登録する。これで、繋がれた。良く分からない安堵感に包まれて、もう一度桜井は眠りに落ちる。<br />
　翌日、大野のポジションと言う責任感も手伝って、振りを間違える事なく踊る事が出来た。勿論、後列のやっかみは聞こえている。けれど、少しも気にならなかった。<br />
　後で聞いたところによると、大野は振付師と喧嘩までして、桜井にこのポジションを与えたと言う事だった。いなくなる人間と、これから伸びて行く人間のどちらが大事なのかと、あの厳しく怖い振付師に向かって言い放ったと言う。<br />
　大野の真意は、分からなかった。唯、自分と言う存在を知っていてくれた事、彼の計らいによって更に自分には迷いがなくなった事、それだけは確かだ。努力しようと思った。彼が専用劇場で頑張っている間に、彼の望むように成長しようと。<br />
　明確な目標が出来ると、人は更に強くなる。桜井は、ますます自分の手にある全ての事に全力で取り組むようになった。<br />
<br />
<br />
<br />
『大野君？』<br />
『&hellip;&hellip;お前、彼女いねえのかよ』<br />
『いますけど？』<br />
『じゃあ何で、こんなに電話掛けてくんだっての』<br />
『大野君に話したい事あるからです』<br />
『彼女でも友達でも、俺より話聞いてくれる奴なんて、桜井なら幾らでもいるだろ』<br />
『大野君じゃなきゃ、駄目なんです。どうですか？　そっちの生活』<br />
『自由で最高だけど、客入んなくて最低だな』<br />
『楽しい？　辛い？　帰りたい？　どれですか？』<br />
『&hellip;&hellip;分かんね』<br />
『いつ、帰って来るんですか』<br />
『あのなあ、毎回それ聞くけど、わざわざ劇場作って、三ヶ月やそこらで帰れる訳ねえだろ』<br />
『はあ。&hellip;&hellip;大野君に会いに行こうかなあ』<br />
『だから、何で俺に拘んだっての』<br />
『大野君が好きだから？』<br />
『&hellip;&hellip;疑問形だし。大体お前、忙しいだろ』<br />
『忙しいですけど、時間は作るもんなんですよ』<br />
『京都来ても、収穫ねえぞ』<br />
『大野君に会いたい』<br />
『お前な&hellip;&hellip;』<br />
　大野が京都に行ってから、桜井は忘れられてなるものかと、週に一度位の頻度で電話するようになった。出ない時は、三日続けて掛け続ける事もある。沢山いる後輩の一人から、どうにか抜け出したかった。今、彼にとっての自分はどれ位の位置にいるだろう。東京から電話を掛けて来る迷惑な後輩と言う認識でも構わなかった。<br />
　大野に存在を忘れられなければ、それで良い。救護室での会話が、面と向かって話した最後だった。こんな急に京都へ行ってしまうとは思わなかった。<br />
　翌日の本番が上手く言った事を、ちゃんと伝えたかったのに。その後の仕事も、上手く行くようになった。雑誌での扱いも大きくなったし、番組でコーナーも持てるようになった。<br />
　全部、大野がくれたチャンスがきっかけだったと桜井は思っている。恩人のようなその人に、会いたかった。今は、電話でしか彼の存在を知る事が出来ない。<br />
　大野の立つ舞台の客入りが悪い事は、桜井の耳にも届いていた。最初の頃はまだ良かったものの、平日になると客数が一桁になる事もあるようだ。もう既に、何人か辞めたとも聞いていた。もし、大野が辞めるような事を思っていたら、どうしよう。そう思って、桜井は毎週電話を掛ける。<br />
『大野君に会いたいよ』<br />
『そーゆーのは、彼女に言ってやれ』<br />
『彼女には、すぐ会えるし。大野君、辞めたりしないですよね？』<br />
『そうだな。まだ辞めようとまでは思ってねえよ』<br />
『ホントですか？』<br />
『それも毎回聞くなあ。辞めねえよ、まだ。今辞めたら、プー太郎になっちまうし』<br />
『そう言う理由で？』<br />
『おう。プー太郎はマズいだろ？』<br />
『まずいとかそう言う問題じゃないと思うんですけど。やっぱり俺、大野君に会いに行きます！』<br />
『&hellip;&hellip;だから、どうしてそうなんだっての。平日は学校で、放課後も休みも目一杯仕事詰め込んでんだろ？　翔君、凄ぇ人気だって皆言ってっぞ』<br />
『そりゃ、そこそこ人気はありますけどね』<br />
『自分で言うし』<br />
『でも、大野君の事見に行きます。ええと&hellip;&hellip;ああ、そうだ。再来週、木曜日、行ける。ここで、行きます』<br />
　手帳を捲りながら、櫻井は決めた。学校を休んで日帰りで行けば、舞台を見て、大野に会って最終で帰って来られるだろう。<br />
『お前、本気か？』<br />
『本気です』<br />
『俺、お前の事良く分かんねえや』<br />
『分かんなくて良いです。忘れられなければ』<br />
『こんな後輩、忘れらんねえだろ』<br />
『良かった。じゃあ、再来週行きますから！』<br />
　桜井は強引に約束を取り付けると、電話を切った。大野に会うのは、三ヶ月ぶりだ。もっと会っていない気もするし、電話をしているからもっと身近に感じる気もした。大野に会いたい。単純で明確な欲求だった。自分の恩人。大切な先輩。それ以外に、大野を形容する言葉は見つからないけれど。<br />
　彼の背中を見て、踊って来た。手本になるような先輩ではないかも知れないけれど、自分にとってはどんな先輩より大切な存在だ。<br />
　翌週は電話をしなかった。大野が少しでも自分の事を気に掛けてくれはしないかと言う小細工だ。そんなつまらないものに引っ掛かってくれるとは思えなかったけれど、二週間我慢した分、会ったらより嬉しいんじゃないかと思った。<br />
<br />
<br />
<br />
　京都に作られた劇場は、思ったより狭くて、思った以上に客が入っていなかった。桜井はキャップを目深に被って、誰にもばれないように席に着く。こんなに空席ばかりでは、精神的にきついだろうなと思った。<br />
　楽屋へ行くのは気が引けたから、劇場を出ると頃合を見計らって、大野へ電話する。滞在時間は短かった。少しでも早く、顔を見て直接話したい。<br />
『もしもし？　大野君？』<br />
『お前、何で先週電話しなかったんだよ』<br />
『え、』<br />
『おいら、気になって気になって、ずっと携帯持ってたんだぞ』<br />
『ホントですか？』<br />
『ホントだよ。嫌な習慣付けさせやがって。翔君から電話来るの当たり前になっちまったじゃねえか』<br />
『それは、嬉しいな。うん、嬉しいです』<br />
『そんなに嬉しそうな顔して言ってんなよ』<br />
『&hellip;&hellip;え。あ、』<br />
　目の前に、大野が立っていた。確かにここは劇場から近いけれど、こんな風に探してもらえる程目立つ場所にもいない。どうして見つけられたのか、やっぱり大野は不思議な人だった。<br />
『大野君』<br />
『客席にお前いるから、ビビったぞ』<br />
『見えたの？』<br />
『こっちはもう、客数数えんの癖になってんだよ。ホントに来やがって』<br />
『行くって、言ったじゃないですか』<br />
『馬鹿だな、お前。今日、学校だろ』<br />
『出席日数は計算してるから、大丈夫です』<br />
『そう言うのが、お前の嫌味なところだよな』<br />
『嫌味ですか？』<br />
『だって、わざとそうやって振る舞ってんだろ？　わざわざ嫌われる方を選んでるようにしか見えねえよ』<br />
『そんなつもりもないんですけどね』<br />
『嘘つけ。嫌われても良いから、自分のやりたい事は貫こうとしてる。おいらは、翔君のそう言うとこが良いなって思ってる』<br />
　ふわりと笑った大野は、三ヶ月前に見た時よりも儚げに見える。それは多分、この環境が変えてしまったものなのだろう。けれど、彼の優しさは変わっていない。一見するとぶっきらぼうに見える振る舞いや口調も、慣れてしまえばどうって事はなかった。<br />
　携帯を仕舞うと、大野へ手を伸ばす。彼は反射的にびくりと肩を竦めたけれど、構わずにその柔らかな頬に触れた。後輩が先輩にする行為ではない。分かっていても、彼の体温を確かめずにはいられなかった。<br />
『翔君&hellip;&hellip;』<br />
『会えて、良かったです』<br />
　静かに、その喜びを伝えた。大野は、自分の光だ。彼の光があるから、自分は迷わずに生きて行けた。いつだって、彼の背中を追っている。遠く離れた今も、その行方を追い掛けた。<br />
『嬉しい。来て、良かった』<br />
『馬鹿だな、お前は』<br />
　照れたように言った大野は、俯くと頬を僅かに赤く染めた。この事務所に所属すべき可愛らしさだと、桜井は冷静に思う。可愛くて儚げで、そして綺麗だった。三ヶ月前よりずっと、大野は綺麗になっている。それが、何故なのか桜井は分かる気がしたから、何も言わなかった。プライベートにまで踏み込める程の関係ではない。<br />
　彼が誰とどんな風に付き合っていても、自分には話を聞く資格も、止める権利も持ち合わせてはいなかった。<br />
『来い。飯位、奢ってやる』<br />
『良いんですか？』<br />
『ここまで来た馬鹿は、お前だけだ。おいらがいつも行ってる店だから、安いとこだぞ』<br />
『何でも良いです』<br />
　そう答えれば、大野は溜息を一つ零した。自分の気持ちは、余り伝わっていないのかも知れない。どうしたら、この思いの全部が伝わるかな、と考えた。接点の少ない自分達だ。そう簡単には、思いは届かないだろう。憧れの先輩です、と言ったところで今はファンにまで理解してもらうのも難しい。<br />
　どうして、京都に行く事を決めたんですか？　本当に聞きたい事は、多分まだ言葉に出来ないだろうと思った。<br />
<br />
<br />
<br />
　それから、二年もの歳月が経った。東京ではすっかり、大野達の存在は忘れ去られ、櫻井も大学進学の為自分の進路を決めなければならないところに立っていた。<br />
　この二年、櫻井はほとんど毎週大野への電話を欠かさなかった。会えたのは、二年前の一度きりで東京に仕事に来た時もすれ違いで会えなかったけれど。やっと、大野が帰って来る。<br />
　事務所を辞めるのは、大野ともう一度同じステージに立ってからでも良いかと思っていた。さすがに、大学生活と芸能活動を一緒に行う事は、難しい。今まで何も言わなかった父親でさえ、そろそろ考えろと言って来た程だった。<br />
　ジュニアの自分達が目指すべきゴールは、ＣＤデビューしかない。櫻井はそこを目指していなかったし、ジュニアの間にやりたい事は沢山経験出来た。心残りがあるとすれば、大野と一緒に先輩のツアーに帯同して回りたかったと言う事位だ。<br />
　彼が京都から引き上げて帰って来たその夜。櫻井は迷わず、大野の元へ行った。顔が見たくて、番組収録を終えると、大野の住所を聞き出して彼の家の前までタクシーで付けた。<br />
『大野君！』<br />
　大野は、家の外で待っていた。二年ぶりのその姿に見とれそうになって、櫻井は慌てて首を振った。見ていたい存在じゃない。違う。俺はこの人に、近付きたい。目を見て話して、触れたかった。<br />
『お帰りなさい！』<br />
『うん。ただいま』<br />
　照れ臭そうに鼻を掻いた大野は、いつも通りだった。いつも通り、櫻井の憧れた姿のまま、立っている。近付いて、両手を伸ばして、その頬に掌を当てた。<br />
　そして、気付く。大野が小さくなっている事に。正確に言えば、自分の身長が伸びたのだ。大野と視線を合わせると、目の高さが同じで嬉しくなった。二年と言う月日は、やはり短いものではないのだ。<br />
『&hellip;&hellip;んだよ。そんなに見ても、変わってねえぞ』<br />
『変わってなくて嬉しいなって、思ってたんです。もう、誰かに会いました？』<br />
『ああ。事務所行ったから、そこにいた奴らとは』<br />
『そっか、残念』<br />
『何が？』<br />
『京都から帰って来た大野君に、一番に会いたかったなあって』<br />
『また変なとこに拘るな、お前は』<br />
『でも、家まで押し掛けたのは、俺が始めてでしょ？』<br />
『翔君みたいな馬鹿は、他にいねえかんな』<br />
『そうですか？　馬鹿で良かったな、俺』<br />
『褒めてねえっての。ほら、上がってけ』<br />
『&hellip;&hellip;良いんですか』<br />
『ここまで来た癖に、良く言うよ。その鞄、学校のもん入ってんな？　泊まってけ。明日は、母ちゃんが駅まで送ってくれっから』<br />
『ホントに？　良いの？』<br />
『駄目だったら、電話の段階で断ってる。ほら、来いって』<br />
　大野が手を引くから、櫻井はそれに倣った。家に入ると、彼の家族が歓迎してくれて、櫻井は吃驚した。温かい家庭だった。大野を育むには、こんな環境が必要なのかと納得する。<br />
　家族に混ざって夕食を食べ、一緒にテレビを見て、順番に風呂を使わせてもらった。そして、日付が変わる前に大野の部屋へと入る。既に、布団も敷いてあった。<br />
『翔君、ベッド使え』<br />
『え、悪いから良いです。布団で充分』<br />
『お客さんにはベッド使ってもらうのが礼儀だって、母ちゃん言ってた』<br />
『俺、お客さんじゃないし。大野君に一番に会いたくて押し掛けて来た、迷惑な後輩です』<br />
『迷惑じゃねえよ』<br />
　大野は布団に腰を下ろすと、櫻井を見上げて優しく言った。外からの明かりしかない暗い部屋の中で、彼の瞳がきらりと光る。<br />
『大野君？』<br />
『帰って来たら、ちゃんと言おうと思ってた。おいらの事、忘れないでいてくれて、あんがとな』<br />
『忘れないです』<br />
『俺が、辞めてもか？』<br />
『辞めるつもりですか？』<br />
『分かんねえ。でも、潮時かなあって思ってる』<br />
『そんな&hellip;&hellip;』<br />
『まだ、事務所にも言ってねえし、翔君が悲しそうな顔する話でもねえよ。でも、最初に言いたかった』<br />
『俺が、最初？』<br />
『おう』<br />
『だって、仲の良い人、沢山いるじゃないですか』<br />
『仲良いからって、何でも話すってもんでもないだろ』<br />
『&hellip;&hellip;大野君。俺、』<br />
『ん？』<br />
　大野の目の前に腰を下ろして、彼の手を取った。どうして、この人に触れるのは怖くないんだろう。会える時間は少なかった。これから先も多分、一緒にいられる時間は多くない。<br />
　それなのに、触れている。大野の体温を感じると、安心した。この感情を何と呼ぶのか、櫻井は知らない。<br />
『俺も、もうすぐ辞めると思います』<br />
『&hellip;&hellip;そうか』<br />
『理由、聞いてくれないんですか？』<br />
『翔君は頭良いから、色んな事考えてんだろ？　俺が聞く事なんて、何もねえよ』<br />
『酷いなあ。俺も、大野君に言ったのが初めてなのに』<br />
『しょうく、』<br />
　大野の背を抱き寄せて、肩口に額を押し当てた。彼の身体は拒まない。その理由は、考えない事にしていた。二年前に会った時に感じた違和感は、今もここにある。同性を知っている身体。抱き締められる事に抵抗を覚えないその身体が、愛しくて疎ましい。<br />
（嗚呼、何だ&hellip;&hellip;）<br />
　櫻井は、初めて自分の感情に気付いた。自分の光。どうして、分からなかったのだろう。櫻井の胸の中に、温かな光が差し込んで来る。<br />
（俺は、この人が、好きだ）<br />
　はっきりと、自分の思いを知る。会えない時間も、近付けない距離も超えて、唯この人を愛していた。欲しがっていた。女の子を好きになるのとは、違う感覚だ。尊敬と親愛と、嫉妬と羨望と。沢山の感情が入り混じっている。<br />
『翔君？』<br />
『好きです』<br />
『&hellip;&hellip;お前、』<br />
『これ、多分、好きって事なんだと思います。良く分かんないけど』<br />
『分かんねえで、そんな事言うなよ』<br />
『分かんないけど、間違ってないです。大野君が好きです。貴方が、誰を好きでも、俺は貴方が好きだ』<br />
『お前、彼女&hellip;&hellip;』<br />
『いますよ？』<br />
『訳、分かんねえ』<br />
『この気持ちは、恋とかそんな簡単なもんじゃなくて、もっと大事な、生きてく上で重要な、そう言う愛情なんだと思います』<br />
『あんまり難しい事言うな』<br />
『だから、簡単に言えば好きだって事です』<br />
『お前は、賢いのに、馬鹿な後輩だな』<br />
　抱き締められた大野は、溜息を零して、櫻井の背中に手を回す。頼りない身体が二つ、夜の闇の中を彷徨おうとしていた。<br />
『大野君、好き。大好き』<br />
　闇の中に射し込む光のようだった。大野を愛すると言うのは。<br />
　永遠を知る事と同じだと思った。<br />
『好きだよ、大野君』<br />
<br />
<br />
<br />
　それから、二人の関係に進展があったかと言えば、何もなかった。恋や愛なんて言っている場合ではなくなったからだ。二人共に、辞めようとしていた頃、いきなりデビューが決まった。拒絶して、辞退を申し出て、けれどもう、子供の力では止められない程、その話は走り出してしまった。<br />
　ハワイでの会見も、その後の怒涛の忙しさも、二人の記憶には余り残っていない。唯、傀儡のように分刻みのスケジュールをこなすだけだった。五人共に顔見知りではあったけれど、東京での仕事が少なかった大野にしてみれば、下の三人は知らないも同然だ。<br />
　五人でいる事の居心地の悪さも、忙しさの中で気詰まりになって行った。櫻井には大野がいたし、弟同然の松本もいる。二宮と相葉は、最初からセット売りのようなものだったし、松本との仕事も多かった。<br />
　櫻井が心配なのは、大野だけだ。自分の、辞めたいと言う気持ちよりも、一人になりがちな大野が心配で、そちらに気を向けるばかりだった。大野は、元々群れる事を好まない。スタッフに気を使われるのも嫌いだったし、そもそも決められたように動く事が苦手なタイプだった。<br />
　デビューして、雁字搦めに縛り付けられて、その呼吸さえ支配されてしまうのではないかと思う程の環境の中、大野は苦しそうだった。櫻井はその度、大野に寄り添って、何も言わず傍にいた。<br />
　まさか、自分達の人生がこんなところで重なるとは思いもしない。大野は手の届かない先輩で、いつか離れて行ってしまうものだと思っていたから。<br />
『大野君、大丈夫？』<br />
　デビューして三ヶ月。もう、敬語を使っている暇もなかった。大野の傍には自分が必要だと、櫻井は心得ている。そして、引き返せない事も覚悟した。このまま大学に通う事がどれだけ辛いかは、想像に難くないけれど、自分のやりたい事は何があっても貫き通したい。そして、その中で大野を守りたかった。ダンスと歌は折り紙付きでも、東京での知名度は高くない。自分達四人は、冷静に見ても人気があると言って良いだろう。その人気だけではやっていけないからと、大野を入れた事務所の判断も分かる。そして、やる気の見えない大野を繋ぎ止めておく為に、デビューさせる事が必要だと言うのも、櫻井には充分理解出来た。<br />
　大野に寄り添って、大野の一番の理解者であると周囲にアピールして、嵐と言うグループで日々を過ごして行く。憧れの存在が、ここにあった。苦しそうに、辛そうに、足掻きながら、もがきながら、その姿を一番近くで見ている。手を取って、一人ではないと言い聞かせた。闇に溺れそうになる大野の手を、離さず握り締める。<br />
　そうして、いつかの大野の言葉を思い出した。<br />
　櫻井は、移動中の車の中も大野の隣に座る。全員が、疲労困憊だった。徐々に力の抜き方も覚えて来たけれど、元々体力のない相葉は、一週間に一度は必ず熱を出す。隣にいる二宮は手馴れたもので、大した動揺も見せず、フォローに回った。あんな風になれたら良いなと思う。二宮と相葉は、今まで積み重ねて来た時間の密度が違った。今はまだ、あんな風にはなれないけれど。<br />
　いつか、大野の一番の理解者になりたいと思った。一緒にデビューした事に意味があるのだとしたら、それはきっと大野と運命を共にする為だ。<br />
　いつの日か、電話で話した事。今の生活は辛くないかと、向こうに行って一年が経った頃だろうか、それ位に聞いた事がある。否、いつも聞いていたのだけれど、その時だけはぽつりと答えをくれた。<br />
　辛いけど、辛くない。<br />
　なあ、知ってっか？<br />
　夜明け前が、一番暗いんだよ？<br />
　あの時は、良く意味が分からなかった。夜の深さの話と、大野の生活の辛さがどうリンクするのか、櫻井には理解出来なかったけれど。今なら、分かる。<br />
　暗闇の中、たった一つの光。夜明けを待つ、花のように。<br />
　一番深い闇に堕ちた時に、気付くのだ。朝を迎えるその一瞬前が一番暗い事に。真の闇に堕ちて、初めて明けの光を感じる事が出来る。あの時の大野は、暗闇の中にいた。でも、希望を捨てなかった。<br />
　そして今もまた、苦しい闇の中にいる。大野は、覚えているだろうか。あの時の言葉を。<br />
『大野君、寝てる？』<br />
『起きてる&hellip;&hellip;』<br />
　そっと声を掛けると、大野は繋いでいた手を握り返して来た。他人の体温が必要な人だ。誰でも良いのだろうけれど、刷り込みのように、自分の体温を覚えさせたかった。<br />
『もう、着くか？』<br />
『ううん。もう少し』<br />
『翔君も、寝ろ』<br />
『俺はタフだから、大丈夫』<br />
『そう言う自意識過剰なところがお前の駄目なとこだな』<br />
『良いんだよ。出来るし』<br />
『嫌味な奴』<br />
『ねえ、大野君。覚えてる？』<br />
　車は、次の収録現場へと五人を運ぶ。後戻りの出来ない道。これから、先輩達のようにこの五人で歩いて行くのだろう。自分だけではなかった。大野も二宮も辞めたがっているなんて、前代未聞なグループだ。松本にはやる気があったし、相葉は何も考えていないように見えた。ばらばらな方向を向いた自分達が、これからどうなるのかは分からない。けれど、大野の傍を離れてはいけないと思った。これは、神様がくれたチャンスだ。交わる事のない運命を、触れる事さえ叶わない遠い距離を、神様は重ねてくれた。一緒にいても良いのだと、言っている。<br />
『何を？』<br />
『夜は、夜明け前が一番暗いんだって』<br />
『&hellip;&hellip;ああ、言った』<br />
『今もきっと、夜明け前なんだよ』<br />
『暗過ぎんな、今は』<br />
　疲れたように、大野は笑った。櫻井は、繋いだ手にもう片方の手を重ねると、大野にだけ向ける優しい表情と声で彼を労わった。<br />
『暗いけど、俺もここにいるよ。一人じゃない』<br />
『&hellip;&hellip;一人じゃ、ねえのか』<br />
『大野君を一人にはしないよ』<br />
『そっか』<br />
『怖い？』<br />
『怖くねえ。でも、何でここにいんだろうな、俺』<br />
『それは、望まれてるからだよ。大野君が良いんだ』<br />
『俺、人気ねえぞ』<br />
『そんな事ない。その内、間違いなく大野君の凄さは、皆に知れ渡る。大野君は、凄い人なんだから』<br />
『翔君は、俺を買い被り過ぎだ』<br />
『違うよ。これは、事実。俺はもう、逃げない事決めた。だから、大野君も一緒に、ここで、戦おう？』<br />
　どんな長い道だって、歩き続けてみせる。辿り着いた先に見える景色が、どんなものかは分からないけれど。大野がいれば、自分は大丈夫だった。もう、辞めようなんて思わない。神様が落としたチャンスを逃す訳にはいかなかった。大野と言う光を、自分は失えない。彼の傍で、生きて行きたかった。<br />
『翔君は、強いな』<br />
『強がってたいの』<br />
『お前がいると、安心する』<br />
　そう言って目を閉じるから、櫻井はごく自然な仕草で、大野の唇に自分のそれを触れさせた。柔らかな感触。大野は吃驚したように、目を真ん丸に見開く。その様さえ、可愛かった。<br />
　大野を可愛いと思うようになったのは、いつからだろう。手の届かない先輩だった。彼を自分のものにする事は出来ないと思っていた。けれど今、櫻井は大野に触れて、再びの愛情を確認する。<br />
『&hellip;&hellip;お前、変な奴』<br />
『大野君にだけは、言われたくないよ』<br />
　彼が拒絶を見せなかったから、櫻井はもう一度口付ける。メンバーのいる車の中で、何度も何度も唇を合わせた。どうにかなってしまいそうだ。このまま、大野を抱いてしまいたい程。疲労のせいで、溜まっているのだろう。それもあるけれど、やっぱりこの人が欲しいんだと思った。<br />
『大野君、』<br />
『ん？』<br />
『いつか、暗闇から抜け出せたら、俺と一緒に、未来を見てくれる？』<br />
『未来を？』<br />
『そう。俺達の生きる先。そんな簡単には見つけられないだろうけど、いつか、その日が来たら俺と一緒に生きて』<br />
『それは、告ってんの？　グループを成功させようって言ってんの？』<br />
『どっちも。俺、欲張りなんだ』<br />
『知ってる』<br />
　大野は笑って、自分から櫻井へ口付けた。その仕草が甘かったから、自分達の関係は間違っていないのだと櫻井は確信する。<br />
　どれだけ深い闇が自分達を覆っても、一緒にいれば大丈夫だった。いつか、朝は来る。星の光に導かれて、長い夜を越えて。<br />
　その時にきっと、自分達の運命は一つになるのだろう。<br />
<br />
<br />
<br />
　あれから、十年以上の月日が流れた。グループは長い低迷の時期を経て、波に乗っている。初心は忘れてはならないと思っているけれど、あの頃からは想像もつかない仕事を沢山経験した。<br />
　自分がキャスター業を出来るとは思っていなかったし、大野が古典を開くとも思っていなかった。五人それぞれの認知度も上がって、ありがたい事に国民的アイドルなんて呼ばれたりする。本質は、何も変わっていなかった。変わったのは、時代だ。自分達は、上手く今の時代に合っただけだと思っていた。<br />
　それでも、忙しい事は嬉しい。デビュー当時の、訳の分からない忙しさではなかった。今はきちんと、自分の出来る範囲ではあっても、全体を把握する事が出来ている。全体とは、勿論自分の仕事だけではなかった。メンバーの仕事も把握するのが、櫻井の意向だ。趣味とも言えるかも知れない。<br />
　今日は、大野の上がり時間が早い。自分は夜の取材まで、少し時間があった。久しぶりに大野を誘って夕飯に出掛けようと決めたのは、その日の午後だ。仕事終わりの大野を迎えに行けば、嫌そうに眉を顰めた。大野は自分にだけ、こう言う態度を見せる。嫌がってる振り。嬉しくない振り。<br />
　それが、櫻井を喜ばせている事に、どうして気付かないのか。可愛い人だな、と思う。<br />
「お疲れ様、智君」<br />
「何で、お前ここにいんだよ」<br />
「夜まで空きがあるんだ」<br />
「おいらは、空いてねえ」<br />
「嘘。船長にも今日は釣り出ないって確認したし、奈良さんは今海外でしょ？　めぼしい友達にも今日は連絡すんなって釘刺したし」<br />
「お前は、やる事があくどい&hellip;&hellip;」<br />
「酷いな。智君との時間を楽しみたいだけだよ」<br />
「大体何で、船長の連絡先知ってんだよ。奈良さんの予定とか、お前知らなくて良いだろ」<br />
「まあ、把握出来る限りはね、把握しておきたい訳ですよ。大野智の事は」<br />
「&hellip;&hellip;お前のそれは、病気だな」<br />
「恋の病って言ってよ」<br />
「馬鹿」<br />
　大野は文句を言いながらも、助手席に乗り込んだ。お互いの仕事量を考えると、こうして無理をしなければ二人の時間は作れない。<br />
　十年以上の時を経てもまだ、自分達の関係は変わっていなかった。大野が変化を恐れたと言うのもあるし、まだ未来の見える場所に立てていないような気もしたからだ。<br />
　けれど、二人で出来る事は、もう全部試してしまった。キスが気持ち良い事も、身体の相性が良い事も分かっている。<br />
　それでもまだ、恋人にはなっていなかった。長い長い片思いだ。しかも、二人で同じ気持ちを抱えていた。二宮に言わせれば、くっ付いてない方が迷惑だとの事だったけれど、もう一歩を踏み込む理由が見出せない。このままで良いと、お互いが思っていた。<br />
　車を静かに発進させる。大野は、櫻井に連れ回される事を嫌がらなかった。お気に入りのレストランも、昔馴染みの料亭も、ひと気のない夜景の見える場所も、どこでも付いて来る。どれが楽しいのか、いまいち把握出来ていなかったけれど、どこへ連れて行っても大野は櫻井に向けて笑い掛ける。それだけで、充分だった。<br />
「今日は、この間松潤に教えてもらったイタリアン行こう」<br />
「パスタ？」<br />
「そうそう。パスタもピザもリゾットも、何でもあるよ。予約してあるから、安心して」<br />
「仕事の入り時間は？」<br />
「あー&hellip;&hellip;先にそれ訊く？」<br />
「そりゃ、訊くだろ普通」<br />
「二十一時」<br />
「あ、案外普通だな。ゆっくり飯食えんじゃねえか」<br />
　大野はほっとしたように笑うと、シートに背中を預けた。地下駐車場を出て、スピードに気を付けながら予約時間に間に合うように車を飛ばす。信号で止まった時、サイドブレーキを上げると、櫻井は大野へ手を伸ばした。<br />
「お前、運転中&hellip;&hellip;」<br />
「我慢出来ない」<br />
　唇が合わさる一センチ手前でそう言うと、深い口付けを与えた。大野の唇が、しっとりと濡れている。舌を絡めて、口蓋を舐めて、最後に下唇を甘噛みすると、唇を離す。<br />
　信号が青に変わり、櫻井は平気な顔で運転を再開した。<br />
「&hellip;&hellip;誰かに見られたら、どうすんだよ」<br />
「何の為のスモークだと思ってんの」<br />
「これの為だったら、唯の馬鹿だからな。女優さんとデートする時の為とか言えよ」<br />
「だって、ホントにあんたの為だもん。智君とイチャイチャしたい時に、すぐ連れ込めて良いでしょ？」<br />
「良くねえっての」<br />
「もう、そろそろ、かなあ」<br />
「&hellip;&hellip;何が？」<br />
「未来を一緒に見据えませんか、ってお誘い」<br />
「お前は、いちいち記憶力良過ぎんだよ」<br />
「それは、智君も覚えてるって事でしょ？　まだ早い？」<br />
「早いも遅いもねえよ。俺は、翔君を縛り付けたりしない」<br />
「縛ってよ。どこにも行けないように。他の何も、見えない位」<br />
「嫌だ」<br />
「そろそろ腹決めても良い頃だと思うけどね。俺ら、三十越えたんだよ？　二十歳そこそこの子供じゃねえし。自分の未来位、自分で選んでも良いと思わない？」<br />
「翔君が選ぶのは、あん時と違う未来だ」<br />
「どうして？」<br />
「お前なら、選び放題だろ？　何も、俺じゃなくたって良い。俺は、お前を幸せに出来ない」<br />
「今、こんなに幸せなのに？」<br />
「今だけだ。俺達に、未来はない」<br />
「未来なんてね、智君。自分の手で作って行くものなんだよ」<br />
　大野はこの長い年月の中で、頑なになったなと思う。自由に生きるのが似合う人なのに、何故か自分との関係だけは自由に遊ぼうとしなかった。それだけ、彼に大切に思われていると言う事だ。櫻井にとっては、嬉しい事でしかないのだけれど、大野はそれに気付いていないらしい。<br />
　彼の中で自分の存在が大きくなればなる程、大野は櫻井を拒絶した。何て愛しいのだろう。そうまでして、櫻井の幸せを願う大野がいじらしかった。彼の幸せは自分が守ると、宣言したくなっても仕方ないと思う。<br />
「まあ、長期戦は覚悟してるから、良いけどね」<br />
「お前なんか、さっさと結婚しちまえ」<br />
「そしたら、あんたにスピーチ頼むけど？　泣かないで出来る？」<br />
「&hellip;&hellip;意地悪なんだよ、お前は」<br />
「嵐は親族席に座らせるし、子供が出来たら、毎日写メ送るよ。そんな風になっても良い訳？」<br />
「&hellip;&hellip;」<br />
「嫌でしょ？　嫌って、言って」<br />
「&hellip;&hellip;」<br />
「智君、」<br />
「嫌だ。そんな翔君、見たくねえ」<br />
「良く出来ました。良いんだよ、俺は待ってる。あんたの気持ちが追い付くまで、ずっと」<br />
「四十になってもか？」<br />
「まだ、十年も待たせる気？」<br />
　櫻井は大袈裟に驚いてみせる。まだぶつぶつと文句を言う大野を尻目に、レストランの駐車場へ車を入れた。予約時間より、大分早く着いてしまった。後、二十分はある。その時間を無駄にするつもりは、更々なかった。<br />
「俺をこんなに待たせるのは、智君だけだよ。ホントにあんたは、凄い人だね」<br />
「それ、嫌味だろ。&hellip;&hellip;うわ！」<br />
　前触れなく、大野のシートを倒した。シートベルトを外して、大野の上に乗り上げる。狭い車内で動きを封じるのなんて、櫻井には造作もない事だ。<br />
「しょ、しょーくん」<br />
「愛してるよ、智君」<br />
　櫻井は甘く囁くと、大野の唇を塞いだ。両手を使って、彼の身体のラインを辿る。擽ったそうに身を捩る姿が可愛かった。この人の全てを手に入れても、多分まだ足りない。心と身体と未来と永遠と、そして彼自身の放つ光と。<br />
　何もかもを欲して、未だ答えのない関係に焦れる。けれど、この焦燥さえ、快楽のスパイスにしかならなかった。大野の身体を開くのは、簡単だ。それだけの長い時間を過ごして来た。早く諦めれば良いのに。あの、擦り切れて忘れてしまいそうな昔から、ずっとずっと櫻井は大野を愛していた。これから先も多分、一生好きだろう。<br />
「しょ、くん&hellip;&hellip;っ、」<br />
　諦めの悪い大野を抱きながら、櫻井は永遠のその先を夢見た。<br />
　愛してる。<br />
　その思いだけで駆け抜けて来たこの年月を振り返る。長い長い日々だった。そして、共に生きる未来を現実のものとする為に、櫻井は智慧を巡らせる。<br />
「智、」<br />
　夜が明けるまで、後少し。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
【掌編０３８「ｍｏｒｎｉｎｇ　ｌｉｇｈｔ」／２＊１】]]> 
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            <name>爽</name>
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    <published>2009-03-11T14:25:43+09:00</published> 
    <updated>2009-03-11T14:25:43+09:00</updated> 
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    <title>ペーパー</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[<br />
<br />
<br />
　貴方に死なれたら、僕は生きていけない。<br />
　最近真剣に、そんな事を考えるようになりました。<br />
<br />
マチダくんの大いなる憂い<br />
<br />
　毎年進化を続けている舞台は、大先輩が入った事によって更に進化している。自分のポジションは満足の行くもので、勿論屋良に嫉妬をすべくもなかった。<br />
　人にはそれぞれ与えられた役割がある。<br />
　だから、町田は自分に出来る精一杯以上を出すまでだった。座長は毎回、本当に倒れてしまうんじゃないかと思う程限界を超えて頑張っている。<br />
　彼と共に過ごせば過ごすだけ、町田も成長する事が出来た。ひたむきに努力をする、その背中に惹かれたのかも知れない。<br />
　最初は憧れだけだった。<br />
　細く壊れそうな身体で、人一倍タフな事をやってのける。相当の努力を重ねている癖に、それを言葉に出す事はなかった。<br />
　男は寡黙な方が良い、なんて言うけれど。<br />
　確かに納得出来るものだった。<br />
　町田は、出来る限り傍にいたいと願っている。唯純粋に好きだからと言うのもあるし、大切に守りたいとも思っていた。守られたがる様な人じゃないから絶対に言わないけれど。<br />
　稽古の時期が来る度に、町田はウキウキとした気分を抑えておく事が出来ない。今回も打ち合わせの段階から、共演者や後輩に「気持ち悪い」と言われていた。<br />
　しかし、その町田の笑顔は一転、曇る事となる。<br />
　オーナーが変わった事による細かい台本の変更は、日々行われていた。植草はさすがのアイデアで、舞台をより良い方向へ導いてくれる。<br />
　町田は感心しながらも、自分に出来る事自分が任された事を確実に把握していた。打ち合わせの緊張感すら好きだと思う。<br />
　座長の真剣な横顔は綺麗だった。それが少しやつれていると、余計に色気が増す。……ちょっと変態だな、とは勿論自覚していた。<br />
　そんな、楽しくも厳しい打ち合わせの中で一つの新しい案が出る。今回のオーナーは、プレイヤーを兼任してはいなかった。となると、一幕の見せ場であるジャパネスクで刀を渡す人間がいない。<br />
　重要な場面の一つだった。主要キャストに話が回ってくるのは分かっていたけれど。<br />
<br />
「俺、絶対無理です！！」<br />
<br />
　悲痛な叫びは、光一の提案の後に響いた。<br />
「何で？　此処はマチダがええやん」<br />
「ヨネにやらせましょうよー」<br />
「ヨネは、俺の命預かって貰ってんの。そんな奴に、刀渡せるかい。なあ」<br />
「そうですねー。俺は、フッキングだけで手一杯です」<br />
「ヨーネー」<br />
「何だよ、町田。大事なシーンなんだからさあ。良い事じゃん」<br />
「俺に……俺に……光一君の命を奪う物を渡せって言うの！？」<br />
「……いや、だから俺やなくて、死ぬんはコウイチやから。な？」<br />
　光一の声すら、最早耳に入っていなかった。よよよ、と崩れ落ちると机に突っ伏して泣き始める。<br />
　カンパニーの面々は、呆れるばかりだった。隣に座っていた米花は勿論、二つ離れた席にいる屋良も眉を顰める。<br />
　光一を大好きな事は、周知の事実だった。憧れとも恋心ともつかない町田の言動は、可愛いものにすら見えるけれど。<br />
「ま、町田……？」<br />
　一人、困った顔をするのは光一だ。まさか、この打ち合わせの場面で泣かれるとは思っていなかった。<br />
　仕事には厳しい人間だけれど、突発的事態には未だに弱い。こう言う時に、剛がいてくれたらなあなんて思う事もしばしばだった。<br />
　残念ながら此処にはいないので、自分が頑張るしかない。言葉で何かを伝えるのは、本当に苦手だった。<br />
「町田、なあ、此処はどう考えてもお前がやるべきやって。あかん？」<br />
「……あかん、なんて聞かないで下さい。俺……俺ぇ」<br />
「光一君。こいつのこれは、唯の我儘なんでスルーして良いっすよ。確かに、此処で真剣持ってけるポジションにいるのは町田だけだし」<br />
「やろ？　俺もそう思うねん。でも、スルーする訳にもなあ」<br />
　座長をサポートする事を常に頭の隅に留めているＭＡにとって、座長を困らせない事は鉄則だった。米花は、平気だと制したけれど変なところで気を遣う座長殿は、わざわざ席を立って町田の傍に行く。<br />
「あかん？」<br />
「……マチダ、絶対自害します」<br />
「阿呆かい。コウイチは１年間はちゃんと植物人間なんやから」<br />
「ちゃんと植物人間って何ですか。うわー！　ヤだ！　光一君を殺すなんて耐えられない」<br />
「や、だから、なあ？　あかん。……米花～助けてー」<br />
「放っとけば良いんですよ。どうせ、絶対やるんだから」<br />
　手を伸ばそうかどうか迷っている光一に、米花は大丈夫ですと笑ってみせる。大分慣れたとは言っても、未だに触れる事に躊躇する人だった。<br />
　それはもう多分、触れるのが嫌と言う感情ではない。変なところで臆病な光一は、触れても良いのかどうかを唯迷っていた。<br />
「光一、戻っておいで」<br />
　植草に呼ばれて、光一は素直に自分の席へと戻る。今回が初参加とは言っても、元々親交の深い人だった。町田とのやり取りを見ていた植草は、素直に苦笑を浮かべている。<br />
「お前は、ホントに座長向きだよなあ」<br />
「え？　全然、そんな事ないですよ」<br />
「んな事言うなって。なあ、屋良？」<br />
「はい。申し訳ないですけど、ウチの座長は世界一っすからね」<br />
「……褒めても何も出て来ぉへんよ」<br />
「いりません。光一君が此処にいるのに、他に必要なもんなんかありませんよ」<br />
　屋良は、躊躇なく言い放った。昔はこんな子じゃなかったのに……と、思わず米花は泣きたくなる。<br />
　愛するのも愛されるのもカンパニーにとっては良い事だけれど、段々方向性がずれている様な気がした。<br />
　このカンパニーで最後に残った良心である米花は、毎回の事に頭を痛める。座長第一主義は自分も大賛成だ。でも。何事にも限度と言うものがあった。<br />
「町田、少しは落ち着いたか」<br />
「……無理です」<br />
「やる？　やらない？」<br />
<br />
「……やるに、決まってます」<br />
<br />
「よし、じゃあ決まりな」<br />
　植草の言葉に、町田は地を這うような低音で答えた。それでも、はっきりとした声だ。さっさと次へ行こうと言わんばかりの快活な返答に、光一も苦笑した。<br />
「ホンマに大丈夫か？　マチダに自害させる予定はないからな」<br />
「はい……この重要な任務、町田に遂行させて下さい」<br />
「任務って程、大それた話やないんやけどなあ。まあ、良いか。じゃ、次な」<br />
　光一も何だかんだと切り替えが早い。分刻みで仕事をして来たからなのかとも思うが、今回は多分植草が上手く誘導していた。<br />
　上からも下からも愛されるのは、やっぱり本人にそれだけの魅力があるからだ。損得なしに皆、光一を大事にしたいと思っていた。<br />
　それは、出演者もスタッフも変わらない。<br />
　プロの顔を取り戻した光一を見詰めながら、米花は隣にティッシュの箱を差し出した。<br />
<br />
<br />
おしまい<br />
■information■<br />
　昨年末からブログへ移行しました。ご連絡はこちらまで。<br />
「SUERTE」　　　http://buenasuerte2451.blog.shinobi.jp/<br />
mail：happy_21@mac.com<br />
■Guide of book■<br />
＜新刊＞【共犯者＜下＞】 <br />
頁数：60P/A5<br />
価格：￥600-<br />
内容：5人は、光一を救い出し復讐の為に動き出した。それぞれの思惑と計画。言葉を持たない光一が選んだ未来とは――？<br />
　お待たせしました。完結です。<br />
＜既刊＞<br />
【共犯者＜上＞】 <br />
頁数：44P/A5<br />
価格：￥400-<br />
内容：近畿さんと嵐さんで大正ロマンパラレルです。<br />
　関東震災後の東京、悪質な高利貸しを経営している剛と彼に囲われている喋る事の出来ない光一。そして、剛への復讐を誓う５人。<br />
　復讐への計画は、松本が光一に出会い恋をすることによってゆっくりとその歯車を狂わせて行く――。<br />
【世界の果てに、君の声】 <br />
頁数：60P/A5<br />
価格：￥600- <br />
内容：SHOCKパラレルです。キャスティングは、2008年のもの。<br />
オオクラの劇場で舞台を続けるコウイチの前に、見知らぬ男が現れた。彼は自らを堂本と名乗り、とんでもない事を言い出した。<br />
　「コウイチの為に劇場を建てたから、其処で踊って欲しい」と――。<br />
　　強引過ぎる申し出に、カンパニーのメンバーは憤慨したが、コウイチは何故か不思議な感覚を抱いていた。<br />
【blanco SUERTE 01】 <br />
頁数：100P/A5<br />
価格：￥1,000- <br />
内容：2003～2005年に掛けて、合同誌で発表したお話の総集編です。ごめんなさい。書き下ろしはありません。<br />
　　全7話収録。「時のない部屋」のみ、准光要素あり。他は全て剛光。<br />
<br />
<br />
Buena suerte !<br />
<br />
09/03/15<br />
<br />
<br />
■Greeting■<br />
　こんにちは。もしくは初めまして。椿本爽です。<br />
　SHOCKの時期ですね。相変わらず光一さんは生き急ぎすぎていて不安になります……。この間見た時、すでに頬がげっそりしていてちょっと気の毒になりました。<br />
　でも、冬になると疲れてるのにキラキラするので大好きなんですけどねー（鬼）。あ、単独主演回数の更新おめでとーございます！本気でライフワークになって来てるなあ。<br />
　それをお祝いして、SHOCK話と思ったんですが……。もはや、剛光ですらないと言うこの感じ（笑）。ＭＡが大好きでごめんなさい。でも、まちこは絶対葛藤しただろうなあと思うので。<br />
　もう一つのごめんなさいは新刊ですね。無事完結した事に関しては自分で自分を誉めたいところではありますが。やっぱり、こんだけ嵐さんを出張らせてしまうのはいかがなものかと……。＜下＞までお付き合い頂けている方はどれ位いらっしゃるのかなー。本当に読んで下さってありがとう、と言いたいです。<br />
　んでもって、失敗したなと思ったのは、メインで動く光一さん。喋れないのは非常にしんどかったです。話が転がらない転がらない。もう２度と喋れない光一さんは書きたくないです（笑）。でも、本当に仕上がって良かったなー。色々と後悔はありますが、完成しない後悔よりは良いだろうと言う事で。<br />
　では、そろそろ失礼します。今年もこんな感じでのんびりですが、お付き合い頂ければ幸。<br />
<br />
2009/03/15　椿本　爽<br />
]]> 
    </content>
    <author>
            <name>爽</name>
        </author>
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    <id>tomorrow02.blog.shinobi.jp://entry/250</id>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="https://tomorrow02.blog.shinobi.jp/%E5%B0%8F%E8%AA%AC/%E9%8F%A1%E3%81%AE%E6%81%8B" />
    <published>2009-02-21T20:12:05+09:00</published> 
    <updated>2009-02-21T20:12:05+09:00</updated> 
    <category term="小説" label="小説" />
    <title>鏡の恋</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[　いつも見ているのは後ろ姿だった。自分と変わらない身長なのに、その背中は大きく見える。強く白い背を持つ彼の後ろに立つ機会は、気付けば随分と増えていた。近くて遠い人だと思う。<br />
　最初に仕事をしたのは昔の事になるけれど、その時にはもう秋山が一番近い場所にいた。だから、自分の中ではお世話になっている先輩の一人に過ぎない。人見知りで後輩との関わり方すら惑うような人だから、敢えて近付こうとも思わなかった。<br />
　それが、いつの間に。理由は分かっていた。自覚している。踊る事が好きな自分にとって、事務所は満足出来る場所ではなかった。演技の仕事もロケの仕事も、勿論自分のプラスにはなっている。沢山の事を経験させてもらえている分、幸福だと思う事はあった。嫌いな訳ではない。でも。<br />
　俺はまず、一番に踊りたい。踊る場所が欲しかった。やりたい事は明白で、踊る事以外に自分を満足させられる事はない。何も考えている余裕がない位踊りたかった。それだけを望んでいた。<br />
　欲しい物を与えてくれたのが、彼だ。<br />
　「お前、踊るの好きやもんな」なんて笑って、何でもない事のように一曲分の振り付けを任せてくれた。本当は多分、そんなに簡単に渡してもらえる事ではない。「俺もお前の踊り好きや」と言われた瞬間に、きっと駄目になった。<br />
　堂本光一と言う人が、特別な存在になる。ずっと、他のメンバーが彼を大切に扱う理由が分からなかった。確かに頼りない一面はあるし、体力はあっても少し不安になる程、身体の線は細いけれど。自分より年上の男性に世話を焼くなんて、と思っていた。今でも、彼は守られる存在ではないと思っている。<br />
　それでも。大切にしたい気持ちを知ってしまった。彼らがたった一人の人として愛おしく思う心が、今の自分の中にもある。<br />
　俺に自由をくれた人。俺達の事をバックについている後輩ではなく、仲間として大切に思ってくれる人。言葉が足りなくて、驚く程不器用な彼の傍にいたいと願う気持ちは、きっと四人全員が抱えていた。独り占めしたいのではなく、唯の後輩に甘んじたい訳でもない。<br />
　絶対的なポジションは、秋山が守っていた。町田のような愛情表現をしたいとは思わない。彼の後ろで踊りたかった。それだけだった。向上心はメンバー一だと思っていたのに不思議だ。前に出るよりも、サポートしたい気持ちの方が強かった。<br />
　今回のツアーで一緒にいる時間が増えたせいか、冬の時よりもお互い馴染んだと思う。地方にいる時は二十四時間一緒だと言っても良い位だった。メンバーといる時だって、こんな風に過ごす事はないのに。<br />
　今日も結局朝までトランプをして過ごしてしまった。最初は体力があるなと感心していたのだけれど、短くない時間を共有する間に気付いてしまう。きっと秋山は、こんな弱さをずっと知っていたのだろう。<br />
　ステージを降りて一人の部屋に帰った時の寂しさは、自分にも分かる。けれど、光一が抱えている寂しさはもっと根源的なものだった。大人数で仕事をして来た自分には、決して理解出来ない孤独。沢山の人間が立つステージと一人の部屋を比べているのではない。二人きりの道程と一人で立っている今の位置を比較しての事だった。多分絶対に分かる事のない光一の深層。<br />
　強いのか弱いのか分からない人だった。寂しさなんて目を背けてしまえば良いのに、真正面から向き合っている。精神面でさえ強く保とうとする光一に不安を覚えた。彼の事を知れば知る程怖くなる。生き急ぎ過ぎだった。もっとゆっくり歩けば良いのに。光一が目指す未来は、何処にあるのだろう。自分は其処に触れる事が出来るのだろうか。<br />
「さ、そろそろ終わりにしましょう」<br />
　最初に声を上げたのは、町田だった。リーダーの責任感と言うよりも、単純に光一を心配しての事だろう。赤い目を瞬いて、率先して片付けを始める。此処は秋山と町田の部屋だった。光一が真っ直ぐ彼らの部屋に来てしまうから、いつも秋山のベッドが犠牲になる。大らかな性格と光一への甘さから一度も文句を言った事はなかった。光一は眠そうに目を擦りながら、町田の手許を見詰めている。<br />
「町田さーん。ホントに終わっちゃうのー。もぉちょっとやろうやー」<br />
「駄目です！もう六時回ってるんですよ。今から寝たら丁度良いでしょ」<br />
「ちょーど良くなーい」<br />
　珍しく駄々を捏ねている。いつもなら町田の合図で素直に片付けを手伝う筈だった。光一の伸ばした手は結局米花に甘やかされて、何もせずベッドに座っている事の方が多いけれど。<br />
　子供みたいに頬を膨らませて、手近にあったトランプを握り締めて抵抗している。良い歳をした大人が、と以前の自分なら思ったかも知れない。両足を膝で折り曲げて座る光一がいたいけな少女に見えて、我ながら頭が悪いと思った。<br />
「光一君、駄目っすよ。ほら、トランプ返して」<br />
「いーや」<br />
「今日の公演終わったら、またやるじゃないですか」<br />
「それじゃ嫌やのー」<br />
　米花の説得空しく、此処で一番大人の年齢である先輩は、首を横に振るばかりだ。ちょっと怖い位の顔を歪めた米花は、諦めて秋山に助けを求めた。<br />
　賢明な判断だと、光一の横に座って見ているだけの自分は他人事のように見ている。普段は可哀相な位聞き分けの良い人が、どうして。<br />
「光ちゃん、あんまり我儘言わないの。まあ、俺らも出来るだけ貴方のそう言う素直なのは聞いてあげたいんですけどね」<br />
　苦笑して、秋山は光一の瞳を覗き込む。不意と逸らした黒目は、硝子玉のようだった。<br />
「でも、俺らは貴方の大切なもの大事にするのも使命だと思ってる。光ちゃんの大事なステージ成功させたいから。それが今一番の願い」<br />
「……秋山」<br />
「ずっと遊んでる訳、いかないでしょ。こんなツアーの合間だけ詰め込んで遊ばなくたって良いんだよ。此処で我儘全部言わないで、いつでも、地方にいる時じゃなくても、光ちゃんが寂しい時に呼んでくれたら良いんだから。ね、もう寝ましょう」<br />
　鮮やかに光一の手からカードを奪うのを見ている事しか出来なかった。やっぱり秋山は凄い。他の誰も出来ない事をあの優しい声で、何て事のない仕草を装って、しっかりこなしていた。<br />
　町田がトランプをしまって、「夜にまた勝負ですね」と屈託無く笑う。自己主張の弱いリーダーは、穏やかな表情を向けるだけでステージ以外の場所では何も言わなかった。酒の席やトランプで盛り上がっている時は嬉しそうに主張する事もあるけれど、自然体に一番近い時間はその瞳だけが雄弁だ。<br />
　何も言わなくなってしまった光一の頭を、秋山がくしゃりと撫でた。すっかり父親のポジションに納まった彼は、多分言葉の足りない先輩の心の内側を覗ける数少ない人間の一人だろう。指先だけで身体中に沁み渡るような優しさを与えるなんて、自分には出来ない。<br />
「じゃあ、また午後ですね。お休みなさい」<br />
「……おやすみ」<br />
　秋山に促されるまま部屋を出る。米花と自分の部屋はすぐ隣だけど、光一はフロアが違った。当たり前の差異すら彼にとっては苦痛でしかない。<br />
　高みに昇る為にこの世界で生きて来て、彼は間違いなく成功者である筈なのに。俯いた横顔には、絶対的な孤独があった。目指す先にいる彼を可哀相だと思うこの感情は、一体何なのか。<br />
　廊下に立ち止まっている訳にも行かず、米花が口を開いた。感情的には余り敏感でないと思っていたのに、優しくなったと言うか良く気が付くようになったと言うか。<br />
　これは、秋山に感化されているのだろう。そして確実に、目の前にいる小さな先輩の影響だった。良くも悪くも皆、変わって来ている。この人は、きっとそんな事意識していないだろうけれど。<br />
「光一君、部屋まで送りましょうか」<br />
「……大丈夫」<br />
「そうやって言うんなら、俺達部屋入っちゃいますけど」<br />
「うん、ええよ」<br />
　おっとりと頷く。米花は甘やかしている自覚がある分、必要以上に手を出してはいけないと戒めているようだった。優しく笑った光一の表情には、先刻の聞き分けのない子供の気配は見えない。いつも通りの、きちんと繕われた顔。他人を拒む温度のない微笑だった。<br />
　諦めた素振りで分かりましたと応える米花は、そのまま部屋に戻ろうと動く。踏み込み過ぎない事。これは暗黙のルールだった。<br />
　だって、ずっと一緒にいてあげられない。光一が望む時に必ず手を伸ばせないのなら、此処で渡す優しさは残酷なだけだった。俺達と離れている時に寂しい思いをさせる位なら、最初から何も与えない方がずっと幸福だ。<br />
　そんなの、分かってるけど。<br />
「お休みなさい。すぐ寝て下さいよ」<br />
「ん」<br />
　穏やかに笑った瞳の奥に、消えない孤独がある。多分それは俺達では埋められないものだった。彼はもう、その魂ごと明け渡してしまっている。踏み込めない領域だった。<br />
　けれど。俯いて歩き始めた光一の背中が。痛ましい印象で遠ざかって行くから。<br />
　一人にしてはいけないと、何の躊躇もなく走り出した。距離は三メートルちょっと。走る程の差でもなく、その指先を捕まえる。米花の舌打ちする音が聞こえた。<br />
　分かっている。知っている。俺達がどうこう出来るものじゃない。でも、泣きそうな気持ちを持て余して凍えている人を、どうして一人にしておける？<br />
「屋良？」<br />
　いきなり取られた左手に驚いて、けれど確かめるまでもなく屋良だと分かっていたから、光一はその指先を振り払おうとはしなかった。薄暗い廊下でもはっきりと分かる瞳の暗さに、屋良は追い掛けて良かったのだと心底思う。<br />
「光一君の部屋って、ベッド二つありますよね？」<br />
「うん。……あ、も一個は使わんからって荷物置いてある」<br />
「そんなの全然良いっすけど、じゃあ大丈夫か」<br />
「うん。……ん？何が、大丈夫なん？」<br />
　相変わらず脳味噌の小さそうな話し方をする人だった。さすがに明け方では、思考回路が上手く繋がっていないのかも知れない。<br />
「ヨネー。そう言う訳だから宜しくなー」<br />
　振り返れば今の会話できちんと事態を把握しただろう米花が、奥歯をぎりぎりと噛み締めているのが分かった。怒りと言うより憎しみすら込めた目に呪われそうな勢いで睨まれる。気持ちは分かるけど、それが同じグループの、しかも同室のメンバーに向ける顔か。<br />
　大体俺だから警戒されないだけで、米花が同じ事をしたら、確実にこの人は怯えると思う。事情は読めなくても、本能の警告で。だって、最近米花さんの態度洒落になってないもん。<br />
「よし、行きましょうか」<br />
「行くって、何処？」<br />
「光一君の部屋っすよ。俺が一緒に寝てあげますから」<br />
「えっ……ちょぉ。屋良！お前……っ」<br />
「じゃあなーヨネー。お休み」<br />
　焦る光一の手を引いて、振り返る事はせずに米花にひらりと手を振った。あんな、優しさばっかで臆病な奴に構っている暇はない。<br />
　すぐ後ろでわあわあ言葉にならない声で喚いている光一は、それでも繋いだ指先を解こうとはしなかった。他人の体温に飢えている事を身体が知っているのだ。<br />
　エレベーターに乗って、やっと横に並んだ。自分よりも高い目線。それでも、小さい事には変わりない。黒めがちの瞳は、戸惑ったようにじっと自分を見詰めていた。<br />
　剛君って、こんな気持ちなのかな。見下ろしている筈の目線は、何故か器用に上目遣いだ。潤んだその瞳を見ると、無条件に甘やかしたくなった。可愛い可愛いと抱き締めてあげたい。<br />
　自分の思いではなく、雄弁な目がそうして欲しいと望んでいるのだ。もしかしたら皆、こうやって落ちてんのかも。と言う事は、自分も既に光一の手中に落ちてしまったと言う事だ。一瞬困って、まあ良いかと開き直った。サポートすべき人をきちんと愛せるのは多分、そんなに悪い事じゃない。<br />
「……ホンマに、一緒に寝てくれるん？」<br />
「はい、そのつもりですけど。って、嫌でした？」<br />
「嫌って言うか……」<br />
　小さく呟いたのと同時に、エレベーターの扉が開いた。優柔不断な人ではないと知っているけれど、こんな箱の中で戸惑いのままぐずられても仕方ない。有無を言わさず、指先をもう一度きちんと握って廊下に出た。あ、と小さく叫んで足が縺れるのを視界の端で捉える。<br />
　反射的にその身体を抱き留めた。相変わらず何もない所で転ぶ人だ。自分がしっかりした人間だとも思っていないけれど、彼の方が危なっかしい。<br />
「ごめん……」<br />
　謝る声に笑って、何処も痛いとこないですか、と聞いた。同じ様なサイズの人間を支えているとは思えない程、光一の身体は軽い。冬の舞台の時期程ではないけれど、今だって充分筋肉質な肢体だった。それでも、空を飛べそうな位、現実味のない薄っぺらさだ。<br />
　さらりと自分の頬に触れた光一の細い髪にどきりとした。腕に抱えた身体を急に意識してしまう。繋いだ指の乾いた感触も微かに香るシャンプーの匂いも。<br />
　米花の事を笑えなかった。光一は無防備に、眠気でとろんとした瞳を向ける。腕の中にいるのだから、息遣いまで分かる程の至近距離だった。<br />
　この人は、言葉を持たない代わりに、残酷なまでに相手の目を覗き込む。それで傷付く人間もいるのだと言う事を知っているだろうか。<br />
　光一は、三日月のようだと思う。儚く頼りなげに夜空で揺れているのに、触れようと手を伸ばせば鋭利な感触で切り裂かれた。誰も容易には触れられない。この淀みない瞳に出会って平然としてられる人間等いるのだろうか。<br />
「屋良……？寝てんの？」<br />
「あっ、すいません！」<br />
「ううん、俺が我儘言うてるんやもんなあ。眠いよなあ」<br />
「そんな、他人事みたいに言わないで下さい。光一君も眠いでしょ」<br />
　身体を離して嗜める表情を作る。自分は、一人で寝られない光一の為に此処まで来たのだ。余計な動揺は必要なかった。自分の中に、彼ら三人と同じ気持ちがあった事に驚く。<br />
　もう一度手を繋いで、光一の部屋を目指した。ポケットから取り出したカードキーを取り上げると、代わりに扉を開ける。彼は、大体こう言った作業が苦手だった。何度も見た光景を覚えていたから、無駄な時間を省く為に自分が開けたのだけど。繋いだ手の先にいる人は、不服そうに頬を膨らませている。<br />
「何拗ねてるんですか」<br />
「別に、拗ねてへんけど……。屋良までこぉゆう扱いするんかい」<br />
　部屋に入って指先を解いた。振り返って向かい合わせになると、そっと視線を外される。むくれた子供の顔。傍にいればいる程、この人の可愛らしい一面を見る事が出来た。<br />
　さすがに本人に向かって可愛いとは言えないけれど。舞台の上で見るのと全く違う表情に引き込まれて行く自分をはっきり自覚する。<br />
　なるべく意識して笑って、優しい声で促した。<br />
「さ、寝ましょっか。俺、隣のベッド占領させて貰うんで」<br />
「うん。あ、荷物……」<br />
「ソファに置いちゃって良いっすか？」<br />
　ずかずかと踏み込んで、壁側に置かれたベッドの上にある荷物を片付ける。荷物と言っても、旅行用には小さ過ぎるバッグ一つだ。ベッドカバーも外して、遠慮なくシーツに滑り込んだ。強引に動いた方が良い事を、経験から既に知っている。<br />
「屋良、ホンマにええの？」<br />
「良いも悪いも、別に寝るだけっすから。入り時間もどうせ一緒だし」<br />
「ん、ありがと」<br />
　素直に頷いて、やっとベッドへ入る。一緒に横になって目線を合わせた。相変わらず真っ直ぐ見詰められる。目尻に眠気が滲んでいて、霞がかった月を思い出させた。<br />
「お休みなさい」<br />
「……屋良」<br />
　いつまでも見ていたい欲求を押さえ込んで視線を外したのに、小さな声で名前を呼ばれる。目を閉じて聞いたせいだろうか。泣き出してしまった迷子の心細さを感じた。<br />
「どうしました？」<br />
　片目だけを開けて、右隣で眠る人を見遣る。もう夢は其処まで迫っていて、現実を捉えるのも困難な程だった。それなのに。<br />
　ぼんやりと見詰めた視界に白い指先が差し出されている。薄闇に浮かぶ三日月。消えないイメージに一つ頭を振って、きちんと現実を映した。違う。此処にいるのは、寂しくて眠れない可哀相な大人だ。<br />
　上半身を起こして、頼りない指先に自分の右手を重ねた。体温を感じさせない肌はいつもの事で、今更驚いたりしない。呼ばれた声と無防備に伸ばされた腕。望んでいた行為は間違っていなかったようで、素直にきゅっと握り込まれた。<br />
「屋良」<br />
「はい」<br />
　吐息に近い呼び声。光一の数少ない望みは叶えてやりたい。俯せて目を閉じている彼が、胸の裡にある寂しさを持て余しているのが分かった。どんなに強い人間でも弱ってしまう時がある。この強気な人は、自身の弱さを認めたがらないけれど。<br />
「眠れそうですか？」<br />
「屋良は？」<br />
　手を繋がせておいて、何を言っているのだろう。思わず笑いかけて、途中で息を止める。伏せられた目許に、確かな怯えを見付けたからだった。<br />
「……俺、こうやって手繋いでたら眠れないんですけど」<br />
「え。あ、そか。ごめん、」<br />
「そのまんまで良いっすから」<br />
　躊躇わず離れようとするその手を確かに掴んで、右足を柔らかな絨毯の上に降ろした。目を閉じたままの光一は気付かない。これは、もしかしたら大ひんしゅくを買うかも知れないとこっそり思って、でもやめようとは少しも考えなかった。<br />
「一緒に、寝ましょう」<br />
　潔癖性な先輩の、限界値が何処にあるのか確かめたい。自分は、何処までを許されている？否、それ以上に体温に飢えているこの人を温めてあげたい。恋の熱情ではなく、他意のない愛情を渡せるのは自分だけだと思った。<br />
　指先を繋いだままシーツを捲り上げると、やっと驚いた表情で光一が瞳を上げる。吃驚した小動物の瞳。彼が愛おしい生き物であると思えるのは、こんな瞬間だった。<br />
「な、何っ？」<br />
「んー、遠くより近い方が良いでしょ」<br />
「や、よぉ分からんし！」<br />
「光一君が嫌ならやめます。どうします？」<br />
「どうしますって、お前……」<br />
「最初に駄々捏ねたのは光一君ですから。ちゃんと我儘聞きますよ」<br />
「屋良」<br />
「はい」<br />
「……もぉ、お前ら俺ん事絶対甘やかし過ぎや」<br />
　屋良はそんな奴ちゃうかった、とぶつぶつ言いながらも身体を端にずらしてくれた。素直に隣に身体を滑り込ませる。小さな男が二人並んでもベッドには充分な余裕があった。<br />
　ああ、もうこんな所まで許されているのだ。ほんの少し前までは拒絶の壁が綺麗に張り巡らされていた。誰をも侵入させない領域を蹂躙出来るのは、彼の唯一の人だけで。どれだけ心許した笑顔を向けても、彼の深層に辿り着く事は出来なかった。<br />
　短くはない自分達との年月を思って、屋良は満足げに笑う。必要以上に頑張り過ぎる彼の、支えになれたら良いと心から思った。寂しい時にこうして手を伸ばしてもらえる存在でありたい。<br />
　体温を直に感じて安心して眠ろうとする光一の目尻を見詰めた。其処に漂っていた寂寥が、少しでも和らげば良い。大事にしたい存在だった。<br />
　愛しさのまま俯せで眠りに落ちようとしている光一の髪をゆっくり梳く。撫でる仕草は、剛の指先を少しだけ真似した。彼自身が感情の揺れを感じるよりも先に、上手い遣りようで全て先回りする指先。あの柔軟な愛情は与えてあげられないけれど、今此処で自覚した感情を癒す事は出来る。<br />
「なあ、」<br />
「はい、何すか？」<br />
　眠りに引き込まれた声は、甘く響いた。繋いだ指先にきゅっと力を込められる。しがみ付くようだと思った感覚は、果たして間違いだっただろうか。<br />
「いつかは……」<br />
「はい」<br />
　躊躇する言葉に、優しい声を返す。一つのベッドの中、朝はもう外に広がっていた。なのに、光一は夜に沈みそうな深い沈黙を作る。<br />
「いつかは、お前らも俺から離れて行くんやもんな……」<br />
　語尾は曖昧に、夢の中へ消えて行った。自分達が感じていた不安を、誰よりも彼が感じていたのか。手を出し過ぎないように、好きになり過ぎないように、四人で制御して来た。これ以上踏み込んではいけない、と何度も何度も。<br />
　規則正しい呼吸に変わった光一を呆然と見詰める。寂しかった理由にやっと辿り着いた。彼の感情を左右するのはいつでも相方一人だから、きっと一緒にいられない今の時期を不安に思っているのだと。<br />
　けれど、今光一が抱えているのは、自分達との距離だった。それを自分がより深い悲しみで捉えたのか僅かな歓喜を覚えたのか、上手く判断出来ない。眠りに落ちた彼に問うても、もう言葉は返らないだろう。<br />
　髪を梳きながら、そっと囁き掛ける。光一の不安は、そのまま自分達の不安だ。共有出来る感情があるとは思わなかった。優しい人だと思う。俺達を、きちんと愛してくれている人だった。<br />
「……そうですね。いつか離れなきゃ駄目なんでしょうね。でも、俺もあいつらもずっと光一君が好きで、光一君が大切なのは変わりません。傍にはいられないかも知れないけど、ずっとずっと」<br />
　変わらない思いもあるのだと、刹那に生きているこの人には分からないだろうけど。一人のまま生きる事を願いながら、ずっと悲しみを身体の中に詰め込んでいた。悲しい悲しいと声には出さずに、涙を心臓の底に零す人。<br />
　彼の力になりたいと、どの瞬間よりも強く願いながらそっと傍らに体温を寄せた。繋いだ指先が自分の愛情で温かくなれば良い、なんて。きっと誰にも言えない。]]> 
    </content>
    <author>
            <name>爽</name>
        </author>
  </entry>
  <entry>
    <id>tomorrow02.blog.shinobi.jp://entry/249</id>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="https://tomorrow02.blog.shinobi.jp/%E5%B0%8F%E8%AA%AC/code" />
    <published>2009-02-21T20:11:03+09:00</published> 
    <updated>2009-02-21T20:11:03+09:00</updated> 
    <category term="小説" label="小説" />
    <title>code</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[自分の出ていた舞台を客席から見る事は、思い掛けず感情の動揺を引き起こした。<br />
　唯の観客として見るつもりだったのに。<br />
　自分にとって、どれだけこの舞台が特別なものだったのかを胸の痛みで気付かされる。<br />
　特別な舞台。<br />
　特別なカンパニー。<br />
<br />
　そして、特別な座長。<br />
<br />
　忘れる事など出来ない、冬の恋だった。<br />
　部屋の奥にしまった台本の間に挟んで終えた筈の感情がまた心をざわめかせる。<br />
　桜の花弁が彼に降り注ぐ。<br />
　幻想的な空気だった。<br />
　彼だからこそ、あの儚さとしたたかさを表現出来るのだろう。<br />
<br />
　死して尚、美しい人。<br />
　夢物語なのに説得力があるのはきっと、彼自身が夢とうつつの狭間で生きているからだった。<br />
　力強く、優しく、そして悲しい。<br />
　生き急ぎ過ぎた彼は、いつかゆっくりと眠れるのだろうか。<br />
　天国と言う、幻想の場所で。<br />
　誰にも身体を預ける事なく、孤高のまま。<br />
　独り眠るその場所が、幸福と程遠い事を、多分自分は彼と関わる誰よりも深く知っていた。<br />
<br />
　毎日毎日、この場所で彼は死んで行く。<br />
　哀しみの連鎖に、涙が溢れた。<br />
　その圧倒的な孤独に飲み込まれる。<br />
　魂ごと連れ去られるような、そんな舞台だった。<br />
　連れ去られたいと願う、愚かな自分は見ない振りをする。<br />
　だってもう、俺は此処の住人ではなかった。<br />
　離れた場所で泣く事しか出来ない。<br />
<br />
　貴方を思って。<br />
　貴方だけを愛して。<br />
<br />
　冬の恋は、今もまだ此処にある。<br />
<br />
＋＋＋＋＋<br />
<br />
「お疲れ様です」<br />
<br />
　錦戸は、遠慮がちに座長の楽屋へ声を掛ける。<br />
　少しだけ時間があるから挨拶して来たら良いよ、とマネージャーに言われるまま此処に来てしまった。<br />
　まだ心臓には先刻までの感情が渦巻いていて少し怖い。<br />
　早く、自分の生きる場所へと戻らなければと思った。<br />
　仲間のいる、あの空間へと。<br />
<br />
「おう、錦戸やん。入り」<br />
<br />
　シャワーを浴びたらしい光一は、定番のバスローブ姿で寛いでいた。<br />
　メイクを落とした表情は何も取り繕わずに向けられるから、少し怯んでしまう。<br />
　お邪魔します、と呟いて畳へ上がった。<br />
　真正面に見る久しぶりの光一は、疲労を色濃く見せてはいるけれど穏やかに笑う。<br />
<br />
　ああ、舞台を降りてもやっぱりこの人には現実味がない。<br />
　緊張して正座をすれば、小さく笑われた。<br />
　居心地悪く視線を下へ落とす。<br />
<br />
　光一の、シャンプーの匂い。<br />
　五感全てで惑わされそうで怖かった。<br />
<br />
「久しぶりやなあ」<br />
「……久しぶりなんかやないですよ。カウントダウンで会うてるやないですか」<br />
「そお？」<br />
「光一君が無視するくせに」<br />
<br />
　視線を向ければ、困ったように笑われた。<br />
　穏やかな空気。<br />
　二年前の光一より、ずっと落ち着いている。<br />
<br />
　でもこれは、前向きなものではなく諦めを積み重ねた気配だった。<br />
　スポットライトを一心に受けている人間の持つ空気ではない。<br />
<br />
「無視、してる訳やないんよ。錦戸、忙しそうやし、二つもグループ持っとるし、年男やし。……声、掛けれらんのやもん」<br />
「年男は関係ないんやないですか」<br />
<br />
　呆れた声で言えば、ふわと笑うから力を抜いて足を崩した。<br />
　そのついでに、ほんの少し距離を縮める。<br />
　真っ黒な瞳はあどけなさすら残しているのに。<br />
　先刻まで舞台の上にいたのと同じ人間だとは思えなかった。<br />
　柔らかくて、儚くて、抱き締めていてあげないと、生きられないんじゃないかと。<br />
<br />
　手を伸ばしたい衝動を必死に抑える。<br />
<br />
「錦戸」<br />
「はい」<br />
「お前、帝劇やと真っ直ぐ見てくれるんやな」<br />
「え？」<br />
「他のどこで会っても、絶対目ぇ合わさへんやろ。嫌われてるんかなあって思った」<br />
「嫌ってなんか！」<br />
「うん。今、分かった」<br />
<br />
　焦った自分に、相変わらず穏やかな笑みが向けられた。<br />
　こんな笑い方をする人だっただろうか。<br />
　何処にも感情を見つけられない。<br />
<br />
「……光一君」<br />
「ん？」<br />
「ちゃんと、……ちゃんと自分の事、大事にしてますか？」<br />
「錦戸？」<br />
「何か、今の光一君。何処触っても悲しいもんでいっぱいみたいに見えるから。……っすいません」<br />
<br />
　何を言っているんだろうと、目を伏せた。<br />
　こんな、接点の少ない後輩が言うべき言葉ではない。<br />
　どれだけ自分が光一を特別に思っていても。<br />
　今日は、挨拶をして帰るだけのつもりだった。<br />
　この劇場に入ると、蓋をした筈の感情が溢れ出してしまう。<br />
<br />
　愛したい。<br />
　この強い人を守りたい、と。<br />
<br />
「錦戸には、そう見えるん？」<br />
<br />
　何でもない事みたいな目をして問われる。<br />
　その瞳の奥にあるものを守りたいと思って、けれど同時に壊してしまいたいとも願った。<br />
　相反する衝動は、きっと自分が強欲なせいだ。<br />
<br />
「光一君……」<br />
「俺、悲しそう？」<br />
「……はい。悲しい目、してます」<br />
「そぉか」<br />
<br />
　感情を込めない顔で笑う。<br />
　手を伸ばして抱き締めてしまいたかった。<br />
　あの頃のような衝動は、今の自分の何処にも存在しない。<br />
　距離があり過ぎた。<br />
<br />
　もう、同じ光の中には立てない。<br />
　彼の背中を見て踊る事は二度とないだろう。<br />
　台本の間に仕舞われたままの恋情は、自分の手から離れてしまった。<br />
<br />
「錦戸は、よぉ俺の事知っとるな」<br />
「……え」<br />
「目も合わせてくれんのに」<br />
<br />
　柔らかな表情のまま、光一はす、と距離を縮める。<br />
　躊躇のない動作に怯んだ。<br />
　諦めを抱えた光一は怖い。<br />
　何もかもを投げ出してしまいそうな、危うい雰囲気を持っていた。<br />
　本当は、周囲の事を考えて逃げる事など出来ない強い人だとは知っている。<br />
　けれど、そんな予感を色濃く見せる光一の瞳は恐怖だった。<br />
<br />
「お前と、似てんのかな」<br />
「……似てませんよ」<br />
「じゃあ、何でそんなに俺ん事分かるん？」<br />
「……尊敬、してるからです」<br />
「尊敬？そんなんする奴ちゃうやろ、お前」<br />
「他に、貴方に向けられる感情はありませんから」<br />
<br />
　強く拒絶を示せば、傷付いた顔もせずに身体を引いた。<br />
　ふわ、とシャンプーの香りが鼻腔をくすぐる。<br />
　今すぐ抱き寄せて押し倒したかった。<br />
<br />
　こんな感情を、渡せる筈はない。<br />
　「尊敬する事務所の先輩」、それ以外にどんな言葉で表せると言うのか。<br />
　相変わらず残酷な人だった。<br />
<br />
「じゃあ、そろそろ行きます」<br />
「え、もう行くん？」<br />
「はい。挨拶に伺っただけですから」<br />
「……そっか」<br />
「そんな残念そうな顔しないで下さい。期待してまいますよ」<br />
「期待、してるんやもん」<br />
「馬鹿じゃないですか？」<br />
「あ！関西人に馬鹿はあかんやろ！」<br />
「分かってて言ってるんです」<br />
<br />
　惑わされる前に立ち上がった。<br />
　自分じゃない後輩ともこんなやり取りをするのだろうか。<br />
　誰でも良いから連れ出して欲しい、と思っているのだろうか。<br />
　引きずられるつもりは更々ないけれど、出来る事なら光一が訳の分からない甘えを見せるのは自分だけであって欲しいと願った。<br />
　誘惑と紙一重の臆病さは、きちんと自分が捨ててみせる。<br />
<br />
「光一君」<br />
「ん？」<br />
「プレゼント、何が良いですか？」<br />
「へ？」<br />
「誕生日やったでしょ。プレゼント、欲しい物教えて下さい。今度会った時、渡せるように準備しときますから」<br />
<br />
　今度がいつかなんて分かる筈もなかった。<br />
　けれど、約束をすれば避けなくても済む。<br />
　理由を作って、光一の世界に少しでも自分を残したかった。<br />
<br />
　忘れられない為に。<br />
<br />
「何が良いですか？何でもええですよ」<br />
「何でも？」<br />
「あ、車とかは駄目ですからね」<br />
「あんなあ、俺を何やと思っとんねん。……物じゃなくても、ええ？」<br />
「……はい」<br />
<br />
　見下ろす光一の瞳が、揺らめいた。<br />
　水分が膜を張って、彼を弱い生き物に見せる。<br />
　舞台の上の強さが嘘みたいないたいけな表情だった。<br />
<br />
「変わらんもの、がええ」<br />
「変わらない物？」<br />
「うん」<br />
「それって……」<br />
「錦戸が思う、変わらんもん。それでええ。それ、ちょうだい」<br />
「……難問ですね」<br />
「誕生日プレゼントやろ？俺が欲しいもん欲しいやん」<br />
<br />
　穏やかな表情は崩れないまま。<br />
　けれど、それが先輩として見せる繕ったものではないと言う事をちゃんと知っていた。<br />
　メイクを落とした光一は、容易く真実を晒す。<br />
　自分自身に頓着がないから、こんな恐ろしい事が出来るのだろう。<br />
　特別親しい訳でもない後輩の前で見せていい表情ではなかった。<br />
<br />
　寂しがりやで脆い、彼の心。<br />
　ふ、と息を吐いた後なるべく優しく笑った。<br />
<br />
　彼を不安にさせない為に。<br />
<br />
「変わらん物、ですね。分かりました。今度会う時、楽しみにしてて下さいね」<br />
「うん」<br />
「光一君、いつからなぞなぞなんて好きになったんですか？」<br />
「ええやろ。俺も人とコミュニケーション出来るようにならなあかんと思ったから。勉強中」<br />
「……勿体ないから、コミュニケーションなんかせんでええです」<br />
<br />
「錦戸は、俺が欲しい言葉、ほんまによぉ知ってんなあ」<br />
<br />
　勝手な独占欲は、光一のお気に召したらしい。<br />
　あんたを独り占め出来るような場所にはいないんですけどね。<br />
　それでも、本心からの言葉だと分かっていたから少しだけ手を伸ばして頬を撫でた。<br />
　体温を感じさせない肌でも、ほんのりと温かい。<br />
　生きているのだと実感出来て嬉しかった。<br />
<br />
　夢じゃない。<br />
　彼は、目の前で生きて苦しんでもがき続けていた。<br />
　綺麗なだけの存在ではないと知っている事が嬉しい。<br />
<br />
「じゃ、失礼します」<br />
「うん、気を付けてな。次は……またカウコンかな」<br />
「俺ん事、忘れないで下さいね」<br />
<br />
「……忘れられへんわ」<br />
<br />
　最後は小さな声で。<br />
　臆病な光一に笑みを返して、楽屋を後にした。<br />
　早く仲間のいる場所に戻ろう。<br />
　劇場を出ると、待機していた事務所の車へ乗り込んだ。<br />
　これからまた仕事だ。<br />
　現場で仲間が待っていた。<br />
　一人の仕事じゃなくて良かったと、心から思う。<br />
　あの場所に自分を置いて来てしまいそうで怖かった。<br />
<br />
　神聖な劇場に住む神様。<br />
<br />
　シートに凭れると、深く息を吐き出した。<br />
　神様に愛された演者は、きっとその手に小さな幸福を得る事が出来ないのだ。<br />
　神の愛こそが幸福だから。<br />
　うつつにはない幸せ。<br />
　舞台の上でだけ、彼は光り輝く。<br />
　光の中に幸福はあった。<br />
<br />
　見上げた黒い瞳が不安に揺らめくのを、しっかりと網膜は記憶している。<br />
　季節を隔てても尚、明確に残る彼の感触。<br />
<br />
　光一は決して縋らない。<br />
　どんなものにも頼らず、一人きりで生きていた。<br />
　その内部に入り込めるのは、世界でたった一人。<br />
　魂ごと明け渡した彼の存在に代わるものはない。<br />
<br />
　けれど、光一は囚われたまま願っていた。<br />
　居心地の良い籠の中で、飛び立つ事を夢見る鳥。<br />
　その羽根がもがれている事に気付きもしないで。<br />
<br />
　手に入らないから欲しいのか、唯彼が愛しいだけなのか、もう分からなかった。<br />
　唇を噛んで、先刻の言葉を反芻する。<br />
<br />
『変わらんものが欲しい』<br />
<br />
　多分、自分はその言葉の意味を正確に理解していた。<br />
　俺が思う変わらないもの。<br />
　何を差し出せば、彼は安心するのだろう。<br />
　切迫した日々に少しでも平穏を与えてあげたかった。<br />
　傍にいる事は出来ないから。<br />
<br />
　光一が言う「変わらないもの」とは、「永遠」だった。<br />
　刹那的な生き方をしながら、いつだって彼が願うのは「永遠」だ。<br />
　普遍的なものを得たいと手を伸ばしては、何も掴めずに掌を見詰めた。<br />
<br />
　「永遠の愛情」なんて、何処にもない。<br />
　ない事を分かっていながら、光一は何度も手を伸ばした。<br />
　臆病な人だと思う。<br />
　そして、自身の傷を恐れない強い人だとも。<br />
　籠の中から手を伸ばす度に、その腕は無惨に傷付くのに。<br />
　光一は尚、「永遠」を願った。<br />
<br />
　車の振動を心地良く感じながら目を閉じる。<br />
　触れた肌は、彼が有限の存在であると教えてくれた。<br />
　「永遠」なんて手に入れたところで、それを永遠に持ち続ける事も出来ないのに。<br />
<br />
　無限の生がないのなら、「永遠」は無意味だ。<br />
<br />
　あの人、変なところでロマンティストなんやな。<br />
　不安定な生と一緒に生きているからなのかも知れない。<br />
　沢山の事を諦めて納得して、この世界で生きる光一が最後に望んだもの。<br />
　あんなにはっきりと愛されているのに怖がるのは、自分の有限の命に無意識に怯えているせいだろうか。<br />
<br />
　一緒に生きる彼を永遠に愛せない事を恐れている。<br />
　それで、他の男に「永遠」を求める辺りが光一の迂闊な幼さなのだけど。<br />
<br />
「……変わらんもの、か」<br />
<br />
　自分は「永遠」なんて欲しくなかった。<br />
　永遠の存在なんて、きっとつまらない。<br />
　花弁の下に散ったコウイチは、有限の中を生きているから輝いていた。<br />
　限られた時間で必死に足掻く姿が美しいのだ。<br />
<br />
　俺が欲しいのは、永遠なんて生温いものじゃなかった。<br />
　傍にいられなくても良い。<br />
　けれど、一瞬だけ同じ光の中を生きたかった。<br />
<br />
　永遠より強い、刹那の鮮明さ。<br />
<br />
　鮮やかな色彩を思い浮かべて、永遠なんてつまらないと思った。<br />
　光一を愛している。<br />
　あの劇場に置いて来た感情は、既に自分の手を離れていた。<br />
　感情はもう揺るがない。<br />
　愛しいと思う自分の感情は、どろどろと醜いものだった。<br />
<br />
　傍にいたい。<br />
　愛したい。<br />
　守りたい。<br />
<br />
　優しい筈なのに、自分の手が与えるだろうそれらはきっと光一に苦痛となるだろう。<br />
　互いに、気付いていた。<br />
　決して触れてはならない存在だと。<br />
　知っていていたずらに手を伸ばそうとする光一は、本当にタチが悪かった。<br />
<br />
　抱き締めて、滅茶苦茶にしてしまいたい。<br />
<br />
　……そんな熱い男ちゃうわ。<br />
　芽生えた感情を嘲笑って、今度会えた時に渡すものを決めた。<br />
　光一の望み通りの、永遠を。<br />
　今頃一人でぼんやりしているだろう彼を思い浮かべると、そっと笑った。<br />
<br />
　「永遠」を願う悲しい王子様に。<br />
　手を伸ばさず笑ってやろうと思った。<br />
　永遠なんて、何処にもないよ、と。<br />
<br />
　そして、渡すのだ。<br />
　永遠に解けない暗号を……。<br />
<br />
]]> 
    </content>
    <author>
            <name>爽</name>
        </author>
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    <published>2009-01-16T21:20:18+09:00</published> 
    <updated>2009-01-16T21:20:18+09:00</updated> 
    <category term="小説" label="小説" />
    <title>1</title>
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      <![CDATA[■JUNE小説板に戻る■　最後のレスまで飛ぶ　レスを全部見る　最新レス50件を見る　記事1-50を見る <br />
   <br />
卍　馬と鹿の本能　卍　（仁亀 淳聖 竜雄）<br />
601　 卍寺　 2008/03/06(Thu) 00:59<br />
<br />
☆５８９さま　　Ｓ田口は一週間後の淳聖で発動する予定です（＾＾；）<br />
<br />
☆５９０さま　　今回は聖・・ドキドキですかもね？？（笑）<br />
<br />
☆５９１さま　　この二人が一番難しいですよ（＞＜）<br />
でも向き合ってきてると思います。<br />
<br />
☆さやさま　　田口・・押しの一手ですね（苦笑）<br />
<br />
☆Kirscheさま　　友情いいですよね～<br />
でもなんとか・・愛情にしたいですね～<br />
<br />
☆ののあさま　　いつもありがとうございます♪<br />
良かった～淳聖大丈夫そうでしたか？<br />
ホッとしました（笑）<br />
<br />
☆うーたさま　　Ｓも発動させますよｖｖ<br />
私もどっちかっていうと鬼畜の方が好き・・（笑）<br />
でもこの１週間では無いかな・・？って感じです<br />
<br />
☆５９６さま　　そうですか♪嬉しいですｖｖ<br />
頑張ります♪<br />
<br />
☆blueさま　　キンキいいですよね～～♪私も好きですよｖｖ<br />
田口・・頑張りますよ（＞＜）聖落とすために・・（苦笑）<br />
<br />
　　<br />
<br />
<br />
602　 卍寺　 2008/03/06(Thu) 01:03<br />
<br />
☆５９８さま　　田口・・執念の男です！！頑張ります（笑）<br />
<br />
☆ゆーさま　　ちょっとヘタレ田口さんですが・・<br />
今のとこホワイト田口さんなので・・（＾＾；）<br />
<br />
☆ＹＵＺＵＫＩさま　　わ・・感想すみません・・<br />
無理はしないでください・・何せ今淳聖編ですしね（苦笑）<br />
ＹＵＺＵＫＩさまの禁断ものめちゃ好物なのでついつい・・（＾＾）<br />
更新楽しみにしてますｖｖ<br />
<br />
<br />
<br />
603　 卍寺　 2008/03/06(Thu) 01:06<br />
<br />
<br />
●卍●<br />
<br />
<br />
更新させていただきます♪<br />
<br />
ここまで更新しなかったの初めてですよ～<br />
<br />
まだ終わって無いですが（ＹＹ）<br />
<br />
気晴らしに小説書くのも楽しいのでついつい・・<br />
<br />
３月はこんな感じの更新になりますがよろしくお願いしますｖｖ<br />
<br />
<br />
●卍●<br />
<br />
<br />
<br />
604　 卍寺　 2008/03/06(Thu) 01:20<br />
<br />
<br />
<br />
・・・・・３日目<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
605　 卍寺　 2008/03/06(Thu) 01:21<br />
<br />
<br />
朝・・熱は冷めたのに聖への想いは変わらなかった。<br />
<br />
この想いも一緒に冷めてくれば良かったのに・・・。<br />
<br />
そう熱に浮かされたような熱い溜息を溢す。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
606　 卍寺　 2008/03/06(Thu) 01:22<br />
<br />
<br />
「こ・・・き・・・」<br />
<br />
<br />
隣で眠る聖の頭をまるで恋人のように優しく触れた。<br />
<br />
<br />
「・・・ん・・・」<br />
<br />
<br />
聖は目を擦りながら目覚める。<br />
<br />
<br />
「・・・田口・・風邪は・・・？」<br />
<br />
<br />
「・・・うん・・ありがとう・・もう大丈夫だよ・・・」<br />
<br />
<br />
聖は嬉しそうに微笑みながら、田口の額へ手を伸ばす。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
607　 卍寺　 2008/03/06(Thu) 01:23<br />
<br />
<br />
「おお！！治った・・オレのおかげだな・・感謝しろよ？」<br />
<br />
<br />
「・・うん・・本当・・聖のおかげだね・・・」<br />
<br />
<br />
「・・・・・・・・・。」<br />
<br />
<br />
あまりに素直な田口に聖は苦笑いを浮べた。<br />
<br />
<br />
「お前さ・・ダジャレとか言わないの？」<br />
<br />
<br />
「・・・言って欲しい？」<br />
<br />
<br />
田口があまりに優しく微笑むから聖も言葉を詰まらす。<br />
<br />
<br />
「・・や・・・なんか・・違うから・・」<br />
<br />
<br />
<br />
608　 卍寺　 2008/03/06(Thu) 01:25<br />
<br />
<br />
「オレがダジャレを言うのはね・・聖に笑って欲しい時と・・・<br />
<br />
聖にオレを見て欲しい時・・・・まぁ・・場を和ませる為にも使うけどね・・」<br />
<br />
<br />
「・・・なんだよソレ・・・なんでオレ？意味わかんね・・」<br />
<br />
<br />
聖は気マズそうに頭を掻きながら、ベッドから下りようとした。<br />
<br />
すかさずその手を田口は掴む。<br />
<br />
聖が驚いて田口を睨みつけ、普段自分を見る時の聖の目つきに<br />
思わず苦笑いを浮べた。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
609　 卍寺　 2008/03/06(Thu) 01:25<br />
<br />
<br />
「わかんない？・・・・聖・・・・<br />
<br />
・・・・だって・・聖がオレの声聞いてくれるのって、<br />
オレがダジャレ言ってる時だけなんだよ・・？<br />
<br />
普段はほとんど無視するか声すら聖の耳に届いてない・・。<br />
<br />
でもオレがダジャレ言った時だけ、<br />
不機嫌だけどオレのコト見てくれるから・・っ。」<br />
<br />
<br />
泣きそうにその綺麗な顔を歪める田口に、<br />
聖は小さく溜息を洩らした。<br />
<br />
<br />
「・・・・・バカじゃね・・・・。」<br />
<br />
<br />
「・・うん・・・・・・バカだよね・・・」<br />
<br />
<br />
「手・・放せよ・・・」<br />
<br />
<br />
その言葉に田口は小さく頭を横に振る。<br />
<br />
<br />
<br />
610　 卍寺　 2008/03/06(Thu) 01:26<br />
<br />
<br />
聖が無理やり手を振り払おうとしても、ビクともしない。<br />
<br />
<br />
「・・チッ・・何だよ・・」<br />
<br />
<br />
田口は俯いていた顔をあげ、聖と視線を絡める。<br />
<br />
<br />
・・・・・・・・・・・。<br />
<br />
<br />
そして小さく息を吐き出した。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
611　 卍寺　 2008/03/06(Thu) 01:28<br />
<br />
<br />
「・・・・・・・・・ふ・・ぅ・・・・・っ。<br />
<br />
<br />
・・・・・・・・・・・。<br />
<br />
<br />
<br />
・・・アンタが好きだ・・・・聖・・・」<br />
<br />
<br />
<br />
今ままで見たことない田口の様子に、<br />
緊張が走った。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
612　 卍寺　 2008/03/06(Thu) 01:28<br />
<br />
<br />
目が逸らせない・・掴まれた手が痛い・・。<br />
<br />
心臓が張り裂けそうなほど速く動き出すのがわかった。<br />
<br />
<br />
「・・・・・・・・っ・・・・<br />
<br />
<br />
な・・・な・・何・・・言って・・・・<br />
<br />
・・っ・・く、くだらねぇ・・冗談やめろ・・笑えねぇ・・」<br />
<br />
<br />
聖は乾いた笑いを必死にする。<br />
<br />
<br />
<br />
613　 卍寺　 2008/03/06(Thu) 01:29<br />
<br />
<br />
「・・悪いけど・・・本気だから・・」<br />
<br />
<br />
そのとたん聖は手を振り解き、叫んだ。<br />
<br />
<br />
「ヤメローー！！何言ってんだよ！！・・<br />
<br />
頭おかしいんじゃねぇの？気色悪いんだよ！・・」<br />
<br />
<br />
聖は肩で荒く息を吐きながら、振りほどいた田口の手だけ見ていた。<br />
<br />
その指先が小さく振るえ、それからギュっと拳をつくる。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
614　 卍寺　 2008/03/06(Thu) 01:31<br />
<br />
<br />
「・・・それも知ってる・・・。<br />
<br />
・・・・ごめんね・・・・迷惑だってわかってたんだ・・・・。<br />
<br />
でも・・・気持ちが抑えられない。<br />
<br />
・・・・どうすればいい？・・聖・・」<br />
<br />
<br />
<br />
田口は力なくそう微笑み、堪えきれない涙を溢した。<br />
<br />
聖は自分の両手を握り締め<br />
何も言うコトが出来なかった。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
615　 卍寺　 2008/03/06(Thu) 01:32<br />
<br />
<br />
「好き・・・聖が好き・・<br />
<br />
・・・好きで・・好きで・・・どうしようもない。<br />
<br />
<br />
・・・・・・・・・・・・。<br />
<br />
<br />
それを気づかせたのは・・聖だよ・・？」<br />
<br />
<br />
その言葉に思わず聖は顔をあげ、田口を見つめる。<br />
<br />
<br />
「・・・か・・看病したからか・・？<br />
<br />
あんなこと・・お前じゃなくてもやってた。」<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
616　 卍寺　 2008/03/06(Thu) 01:33<br />
<br />
<br />
「・・・聖が・・オレなんか優しくするから・・・<br />
<br />
聖が・・オレなんかに優しく微笑むから・・・<br />
<br />
<br />
・・・・・・・・・・・・っ。<br />
<br />
<br />
聖・・・・ごめん・・・ごめんね・・・・。」<br />
<br />
<br />
田口は何度も謝りながら手で自分の顔を覆った。<br />
<br />
小さく震える肩が聖の目には痛々しく映る。<br />
<br />
聖は躊躇いがちに手を伸ばし、田口の頭を軽く叩いた。<br />
<br />
<br />
「・・・・オレに・・どうしろって言うの？・・・・<br />
<br />
お前のコト好きだけど、お前の言う好きとは違うよ？」<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
617　 卍寺　 2008/03/06(Thu) 01:34<br />
<br />
<br />
田口は紅くさせた目元を優しく微笑ませ、<br />
その目から再び涙をポロリポロリ溢し始める。<br />
<br />
懸命に笑おうとしてるのがわかるが、紅い田口の唇が小刻みに震え、<br />
涙で濡らしていた。<br />
<br />
<br />
・・・・・・・・・・・。<br />
<br />
<br />
・・・・・・ちゅ・・・・・<br />
<br />
<br />
<br />
それは本当に無意識だった、聖はその唇に自分の唇を重ねる。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
618　 卍寺　 2008/03/06(Thu) 01:35<br />
<br />
<br />
田口はモチロン驚いたが、何より驚いたのが聖自身だった。<br />
<br />
<br />
「・・・・オレを・・・・哀れんでるの？」<br />
<br />
<br />
「ち・・違っ・・・」<br />
<br />
<br />
聖は自分の口を覆ったまま黙りこんでしまう。<br />
<br />
<br />
「・・・・何やってんだろ・・・オレ・・・・<br />
<br />
・・・どうかしてるな・・・風呂入ってさっぱりしてこよ・・・」<br />
<br />
<br />
そのままフラフラとシャワールームへ聖は消えた。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
619　 卍寺　 2008/03/06(Thu) 01:37<br />
<br />
<br />
田口は自分の唇を押さえながら、強く思う。<br />
<br />
<br />
<br />
・・・・聖が・・欲しい・・・絶対に・・欲しいよ・・・<br />
<br />
<br />
<br />
聖は情に弱く優しいのを知ってるから、<br />
オレは直球勝負に出た。<br />
<br />
もちろん心臓は張り裂けそうなぐらい緊張したし、<br />
殴られるのも覚悟した。<br />
<br />
でも聖は困った顔をしながら、オレを傷つけないように<br />
言葉を選んでいるのがわかる。<br />
<br />
<br />
<br />
・・・・・オレは聖の弱さに付け込んだ。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
620　 卍寺　 2008/03/06(Thu) 01:38<br />
<br />
<br />
・・・・・・・・・・・・<br />
<br />
<br />
・・・・・・・・・・・・・・・。<br />
<br />
<br />
聖の風呂はカラスの行水のように早い。<br />
<br />
入って１０分もしないうちに出てきたが、頭に大判のタオルをかけ、<br />
視界からオレを消していた。<br />
<br />
無かったことにしたいのか、冷蔵庫からビールを取り出し、<br />
ソファに座り、朝食を食べ始める。<br />
<br />
田口は小さく溜息を洩らしながら、シャワールームへ向った。<br />
<br />
その時、不機嫌な聖が呟く。<br />
<br />
<br />
「・・・田口・・・お湯溜めておいたから、ちゃんと浸かってから出ろよ<br />
<br />
・・・風邪ぶり返さないようにな・・・。」<br />
<br />
<br />
聖は振り向きはしなかったが、そう静かに言った。<br />
<br />
<br />
<br />
621　 卍寺　 2008/03/06(Thu) 01:41<br />
<br />
<br />
たったそれだけで、飛び跳ねるほど嬉しい自分自身がいる。<br />
<br />
<br />
「・・うん・・ありがとう・・・・。」<br />
<br />
<br />
「・・・・・・・・・・・・・・。」<br />
<br />
<br />
聖は田口がシャワールームへ入ったのを耳で確認してから、<br />
深い溜息を洩らした。<br />
<br />
<br />
「・・・・どうしろって言うんだよ・・・・<br />
<br />
・・・田口のバカヤロー・・・」<br />
<br />
<br />
やり場の無い苛立ちに舌打ちをする。<br />
<br />
<br />
・・・・・・・・・。<br />
<br />
<br />
田口の風呂はやたら長い、普通に１時間は入ってる。<br />
<br />
聖は考えてもしかたないので、<br />
曲に使えるラップを考え始めた。<br />
<br />
<br />
<br />
622　 卍寺　 2008/03/06(Thu) 01:41<br />
<br />
<br />
静かな部屋で集中すること１時間、<br />
いきなり下手くそなボイパが聞こえてきて集中力が途切れる。<br />
<br />
<br />
「・・・やめろ・・下手くそ・・・」<br />
<br />
<br />
「・・・やっぱり・・・？」<br />
<br />
<br />
田口は・・へへ・・っと照れ笑いを浮べた。<br />
<br />
<br />
・・・・・・・・・・。<br />
<br />
<br />
言葉が続かない・・・。<br />
<br />
<br />
・・・重い沈黙の中、田口はグラスに冷たい水を注ぎ、<br />
聖と向かい合わせに座る。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
623　 卍寺　 2008/03/06(Thu) 01:43<br />
<br />
<br />
聖は田口と視線を合わせることなく、<br />
再びテーブルの上の紙にラップを口ずさみながら詩を書いていた。<br />
<br />
<br />
「・・・・聖・・・・どうしようか・・・・？」<br />
<br />
<br />
「・・・は・・・？・・何・・・が・・・？」<br />
<br />
<br />
田口はグラスを両手で握り締めながら、呟く。<br />
<br />
<br />
「・・ん・・？・・・ＳＥＸ・・・・」<br />
<br />
<br />
その言葉に机を叩きながらリズムを取っていた指が止まる。<br />
<br />
しかも田口から告られた後にそんなこと・・・<br />
よけい聖の頭を混乱させた。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
624　 卍寺　 2008/03/06(Thu) 01:44<br />
<br />
<br />
「・・・・・・・・か・・亀と・・・仁・・ヤったかな・・？」<br />
<br />
<br />
視線を逸らしながら、別の話題を振る。<br />
<br />
<br />
「・・・そんなに気になる？」<br />
<br />
<br />
「・・・ま・・な・・・」<br />
<br />
<br />
<br />
・・・・・・・・・・・。<br />
<br />
<br />
・・・・・ミシ・・・・<br />
<br />
<br />
<br />
田口の手の中のグラスにヒビが入り、<br />
絨毯の上に・・ぽた・・ぽた・・っと水が落ち始めた。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
625　 卍寺　 2008/03/06(Thu) 01:46<br />
<br />
<br />
それに気がつかない聖はソファから立ち上がると<br />
隣の亀梨達の部屋の壁に耳を押し当てる。<br />
<br />
<br />
「・・・何も聞こえねぇ・・・亀・・大丈夫かな・・？」<br />
<br />
<br />
田口はヒビの入ったグラスを机に置くと、聖に近づき<br />
腕を掴んだ。<br />
<br />
ギリッとした痛みに顔を顰めながら、田口を見ると<br />
人形のように無表情のまま聖を見つめている。<br />
<br />
<br />
「・・・な・・・なんだよ・・・<br />
<br />
・・・放せ・・・」<br />
<br />
<br />
より一層強くなる圧力に、聖の背筋に嫌な汗が流れ落ちた。<br />
<br />
<br />
<br />
626　 卍寺　 2008/03/06(Thu) 01:47<br />
<br />
<br />
「・・・なんでオレを見てくれないの・・？<br />
<br />
・・・オレのことだけ・・・考えてよ・・・<br />
<br />
今、ここにいるのはオレなんだよ・・・？」<br />
<br />
<br />
冷静にかつ単調に吐き出される田口の声に<br />
余計恐怖が襲う。<br />
<br />
<br />
「・・は・・・放せ・・・っ・・・」<br />
<br />
<br />
擦れた声を絞り出すように、何とか言葉を紡ぐ。<br />
<br />
それでも放そうとしない田口を聖は睨み付けた。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
627　 卍寺　 2008/03/06(Thu) 01:48<br />
<br />
<br />
「オレは・・お前がキラ・・・・むぐっ・・」<br />
<br />
<br />
・・・・嫌いなんだよ・・・・<br />
<br />
<br />
そう言う前に田口に強引にキスされ、<br />
薄い舌が口内を乱暴にかき回す。<br />
<br />
聖はとっさに舌先を噛み付いたにも関わらず、<br />
田口の舌は聖を貪り続けた。<br />
<br />
血の味がお互いの口に広まり、<br />
田口の唇から血が流れだす。<br />
<br />
<br />
「む・・うぅ・・んっ・・・っ・・・」<br />
<br />
<br />
聖は力いっぱい田口を突き飛ばした。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
628　 卍寺　 2008/03/06(Thu) 01:49<br />
<br />
<br />
田口は後ろへよろけながら、血で染まった自分の唇を拭い、<br />
荒い息を吐きながら睨む聖と視線を合わせた。<br />
<br />
<br />
「て・・てめぇ・・・・」<br />
<br />
<br />
「・・・・っ・・・嫌いなんて・・・言わないでよ・・・<br />
<br />
・・・・頼むから・・・っ・・・・」<br />
<br />
<br />
田口は床に座り込むと、<br />
能面のようだった顔を歪ませた。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
629　 卍寺　 2008/03/06(Thu) 01:51<br />
<br />
<br />
「・・・・・っ・・・・・<br />
<br />
どうしろって言うんだよ！！<br />
<br />
オレに・・・どうしろと・・・・？<br />
<br />
もう・・わかんねぇ・・・・・・・<br />
<br />
お前が変なコト言うから・・・・っ・・・・・」<br />
<br />
<br />
聖も顔を歪ませ自分の髪の毛を握りしめる。<br />
<br />
<br />
「・・・好き・・・<br />
<br />
・・・・好きだよ・・・聖・・・・・<br />
<br />
お願いだから・・オレを好きになって下さい。<br />
<br />
お願いします。・・・・」<br />
<br />
<br />
田口は溢れる涙を手の甲で擦りながら、そう頭を下げた。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
630　 卍寺　 2008/03/06(Thu) 01:52<br />
<br />
<br />
聖は静かに嗚咽を溢しながら、田口に背を向け<br />
呟く。<br />
<br />
<br />
「・・・・今日は・・・・・一人で考えさせて・・っ・・」<br />
<br />
<br />
・・・・・・・・・・・・・・。<br />
<br />
<br />
「・・・・・・・・う・・・ん・・。」<br />
<br />
<br />
聖はソファの上に横たわると<br />
腕で顔を覆いながら目を瞑る。<br />
<br />
田口も無言のままベッドへ寝転んだ。<br />
<br />
<br />
<br />
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    </content>
    <author>
            <name>爽</name>
        </author>
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    <id>tomorrow02.blog.shinobi.jp://entry/247</id>
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    <published>2009-01-16T21:19:22+09:00</published> 
    <updated>2009-01-16T21:19:22+09:00</updated> 
    <category term="小説" label="小説" />
    <title>1</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[■JUNE小説板に戻る■　最後のレスまで飛ぶ　レスを全部見る　最新レス50件を見る　記事1-50を見る <br />
   <br />
卍　馬と鹿の本能　卍　（仁亀 淳聖 竜雄）<br />
571　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 20:02<br />
<br />
<br />
<br />
暗い独占欲。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
572　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 20:02<br />
<br />
<br />
<br />
・・・・やっぱ・・聖じゃなければ良かった・・・<br />
<br />
<br />
・・そうすれば気づくはず無い思いだったのに・・・。<br />
<br />
<br />
<br />
・・・・・・・・・・・・・・<br />
<br />
<br />
<br />
・・・・・・・・・。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
573　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 20:07<br />
<br />
<br />
それから聖は何も無かったようなさっぱりした顔で、<br />
朝食をベッドに運んできた。<br />
<br />
<br />
「田口・・一人で食えるか？」<br />
<br />
<br />
田口はのそっと上半身を起こすと、<br />
小さく頷き朝食を口に運ぶ。<br />
<br />
<br />
「・・・ぷっ・・・田口・・まだヘコんでんのか？」<br />
<br />
<br />
聖は田口の髪の毛をクチャクチャにかき回しながら笑った。<br />
<br />
たったそれだけで、胸が張り裂けそうになる。<br />
<br />
<br />
嬉しくて・・・切なくて・・・・・。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
574　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 20:08<br />
<br />
<br />
「・・聖・・本当にありがと・・・<br />
<br />
だいぶ気分が良くなったよ・・・」<br />
<br />
<br />
そう言うと、聖は嬉しそうに自分の頬と田口の頬を重ねあわせた。<br />
<br />
<br />
「・・うん・・熱も冷めてきたな・・顔色も良くなってきたし・・<br />
<br />
朝食全部食べれば完璧治るぜ・・<br />
<br />
あと風邪クスリな・・」<br />
<br />
<br />
聖は二錠のクスリと水を用意する。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
575　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 20:10<br />
<br />
<br />
<br />
・・・・・・・・っ・・・。<br />
<br />
<br />
どっ・・どっ・・どっ・・・・・<br />
<br />
<br />
<br />
・・・心臓が痛い。<br />
<br />
<br />
<br />
顔が・・・熱い・・・・・・。<br />
<br />
<br />
<br />
田口は紅くなった顔を隠すように俯いた。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
576　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 20:11<br />
<br />
<br />
聖も同じベッドに腰掛ながら朝食をガツガツ口に放りこんでいる。<br />
<br />
その時、聖の口から咳きが数回洩れた。<br />
<br />
<br />
「聖・・大丈夫？・・<br />
<br />
オレのせいで・・ごめんね・・・。」<br />
<br />
<br />
田口は慌てて、自分の手のひらを聖の額に当てる。<br />
<br />
<br />
「・・・熱は無いみたいだけど・・薬のんで？」<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
577　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 20:13<br />
<br />
<br />
<br />
・・・ぷ・・・・ははは・・・<br />
<br />
<br />
聖が笑いだす。<br />
<br />
<br />
「・・・風邪じゃねぇよ・・<br />
<br />
急いで食べてたから喉につまりそうになっただけ・・<br />
<br />
オレの心配はいいから、自分の心配してろよ」<br />
<br />
<br />
田口はふわっと微笑むと、箸を置き、聖をみつめる。<br />
<br />
<br />
「・・・心配だよ・・オレは自分のコトより聖が心配・・<br />
<br />
・・・・・聖が・・・一番大事・・・・」<br />
<br />
<br />
いつものふざけた田口じゃなく、<br />
真剣な目と嘘の無い優しい笑顔に思わず心臓が鳴った。<br />
<br />
<br />
<br />
578　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 20:15<br />
<br />
<br />
「・・な、・・何バカなこと・・・<br />
<br />
い、いいからさっさと薬飲んで寝ろよ・・・・」<br />
<br />
<br />
聖は妙に緊張しながら、田口と自分の分の朝食を片付け、<br />
ソファに座る。<br />
<br />
<br />
そして一言・・・。<br />
<br />
<br />
「暇すぎるーーーー！！」<br />
<br />
<br />
それを聞いた田口が軽く笑いながら、ベッドに寝たまま声を出す。<br />
<br />
<br />
「聖・・・結構面白そうなＡＶいっぱいあるよ・・<br />
<br />
こういう時じゃないとじっくり見れないから見れば？」<br />
<br />
<br />
え～～～・・っ聖は不満そうに棚の中を覗く。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
579　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 20:16<br />
<br />
<br />
「オレさ・・あまりマニアックなの苦手なんだよね・・<br />
<br />
こうなんていうか、清純そうな子のとか・・<br />
<br />
ストーリーっぽく作られてるのがいいんだよ・・純愛系のね・・<br />
<br />
なんか普通の映画とかアニメねぇのかな・・」<br />
<br />
<br />
文句を言いながら棚を必死に漁る。<br />
<br />
<br />
「全然ねぇ！！・・・」<br />
<br />
<br />
その叫びに田口は笑う。<br />
<br />
<br />
「じゃぁ・・オレと話そうよ・・<br />
<br />
熱も下がってきたみたいだし・・<br />
<br />
オレも暇だし・・」<br />
<br />
<br />
<br />
580　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 20:17<br />
<br />
<br />
聖は不満そうに顔を覗かせた。<br />
<br />
<br />
「・・・・お前と？・・・・」<br />
<br />
<br />
田口は満面の笑みで上掛けを捲り、自分の横へ座れと叩く。<br />
<br />
<br />
「うん・・ココ来て話しようよ・・<br />
<br />
・・仕事の話でもいいし、恋愛の話でもいいよ・・<br />
<br />
聖の興味のある話聞かせて・・」<br />
<br />
<br />
聖はいやいやそうに頭を掻くと、<br />
軽く溜息をつきベッドへ座る。<br />
<br />
<br />
「・・・暇だから田口の戯言に付き合ってやっか・・」<br />
<br />
<br />
「・・・うん・・・♪」<br />
<br />
<br />
それから聖は色々な面白い話を聞かせてくれた。<br />
<br />
<br />
<br />
581　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 20:18<br />
<br />
<br />
ムカついたコトや嬉しかったコト・・共演した時小さな恋をした話など・・<br />
<br />
田口はただ頷きながら嬉しそうに聞いている。<br />
<br />
<br />
「・・・んで・・・そん時・・・・っ・・・」<br />
<br />
<br />
うっつらうっつらしながらも必死に話をする聖が可愛くて、<br />
ソッと聖の頬へ手を当てた。<br />
<br />
<br />
「聖・・・少し眠れば？」<br />
<br />
<br />
「・・・・・うん・・・だな・・・。」<br />
<br />
<br />
田口はスペースを空けると、<br />
聖が目を擦りながらそこに横たわり目を閉じた。<br />
<br />
それから間もなく規則正しい寝息が聞こえる。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
582　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 20:22<br />
<br />
<br />
「・・・聖・・・」<br />
<br />
<br />
そう何度か声を掛けるが答えない。<br />
<br />
田口はそのまま聖を後ろから包み込むように<br />
体をくっ付けながら、聖の首筋へ唇を落とした。<br />
<br />
サッパリした柑橘系の聖の香り・・・<br />
<br />
<br />
・・・一番大好きな香り・・・。<br />
<br />
<br />
こんな機会がなければ触れるコトの出来なかった距離に<br />
田口は嬉しいのか悲しいのかよくわからない感情に、涙を滲ませた。<br />
<br />
<br />
「・・・・聖・・・っ」<br />
<br />
<br />
・・・・聖・・・聖・・・・・こお・・・き・・・<br />
<br />
<br />
田口は少しずつ手に力を入れ、自分の体をより密着させた。<br />
<br />
<br />
・・・このまま聖がオレと溶け合えればいいのに・・・<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
583　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 20:24<br />
<br />
<br />
押さえられない感情が、田口の仮面を剥がそうとする。<br />
<br />
<br />
完璧作られた笑顔と天然うざキャラ・・・<br />
<br />
<br />
・・・その裏にあるのは酷い独占欲と嫉妬。<br />
<br />
<br />
<br />
・・・欲しいと思ったモノは何がなんでも手に入れようとする執着心。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
584　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 20:27<br />
<br />
<br />
<br />
・・・どうしよう・・・こんなオレ・・聖に見せたくない・・・。<br />
<br />
<br />
・・・・・・オレ自身でも嫌いなのに・・・・。<br />
<br />
<br />
・・・・・っ・・聖・・許して・・・止められないよ・・。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
585　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 20:29<br />
<br />
<br />
<br />
・・・・・・・・・・・<br />
<br />
<br />
・・・・・・・・・・・・・・。<br />
<br />
<br />
<br />
「んぁ？・・」<br />
<br />
<br />
<br />
１時間ほどで聖は目を覚ます。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
586　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 20:30<br />
<br />
<br />
身体に絡みついた田口の腕に驚きながら、<br />
風邪のせいで寒かったのか・・？と一人納得し、腕の中から抜け出した。<br />
<br />
端整な田口の顔を眺めながら、目尻に滲んだ涙が気になった。<br />
<br />
それを軽く指で押さえる。<br />
<br />
聖は首を傾げながら、田口のサラサラの髪の毛に触れ、額に手を当てる。<br />
<br />
<br />
「・・熱・・冷めたか・・良かった。<br />
<br />
・・・田口って黙ってるとやっぱ綺麗系だよな・・・・」<br />
<br />
<br />
一人でそう頷きながら、薄暗くなった部屋の電気をつけ夕飯を食べ始めた。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
587　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 20:31<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
聖はまだ気づいていない。<br />
<br />
<br />
<br />
田口の苦渋に滲むような想いを・・・・・。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
588　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 20:38<br />
<br />
<br />
卍●卍●卍●<br />
<br />
<br />
本日はこの辺で・・・。<br />
<br />
田口さんは恋心ですね・・<br />
<br />
聖は田口さんの別の一面にドキっとしましたが確信ではないっすね。<br />
<br />
それでは<br />
<br />
まだまだＭＡＸ状態なので、またボチボチ更新できそうな時<br />
させていただいます（＾＾；）<br />
<br />
<br />
卍　返信分　　>>544-545 >>551<br />
<br />
卍　更新分　　>>552-587<br />
<br />
<br />
●卍●卍●卍<br />
<br />
<br />
<br />
589　 名無しさん　 2008/03/01(Sat) 20:57<br />
<br />
田口さん！！意外！！<br />
もっとドＳで行くのかと思ってました。（笑）<br />
<br />
<br />
590　 名無しさん　 2008/03/01(Sat) 21:00<br />
<br />
お疲れ様でした～★<br />
じゅんの切ないっす……<br />
これからの展開に目が離せません！！<br />
聖はどんな風に惹かれていくのかなあ♪<br />
<br />
<br />
591　 名無しさん　 2008/03/01(Sat) 21:02<br />
<br />
聖の優しさにドキドキしました☆<br />
二人が上手くいくのを祈っています！！<br />
<br />
<br />
592　 さや　 2008/03/01(Sat) 21:13<br />
<br />
感動しました！<br />
こんな切ない想いをかかえて<br />
押し殺そうとする田口に<br />
きゅんきゅんします～<br />
そして聖も普段うぜぇとか良いながらも<br />
優しいし！今後の展開がますます<br />
気になる２人です！！お忙しい中の更新お疲れ様でした！<br />
<br />
<br />
593　 Kirsche　 2008/03/01(Sat) 21:47<br />
<br />
聖やさしい！これぞ男の友情＼(^o^)／<br />
友情じゃダメなんですよね。<br />
友情が愛に変わっていくことを願ってます☆<br />
聖～気づけ～(笑)<br />
<br />
<br />
594　 ののあ　 2008/03/01(Sat) 22:03<br />
<br />
忙しい中、更新していただいて嬉しいです！！<br />
今まで、淳聖はあまり読んだことなかったのですが<br />
やっぱり、卍様の書かれるキャラはすんなり入れるんです！！<br />
聖の男らしい優しさにキュンキュン来ましたvvv<br />
看病してもらいたいです（∩∀`＊)ｷｬｯ <br />
じゅんのは、これから辛い片思いが続くんですね…。<br />
とっても、楽しみですvvv<br />
<br />
<br />
<br />
595　 うーた　 2008/03/02(Sun) 10:56<br />
<br />
卍寺さま・・・(*´∀｀*) <br />
更新お疲れ様ですｖ<br />
やっぱりオンの田口さんはイイなあ～～・・・。<br />
でもオフも見てみたいと思っちゃうどＳなうーたですｖ<br />
うざいぐらいの笑顔の裏に隠された想い・・。<br />
聖は口悪いけどイイやつだしカッコイイですよねｖ<br />
卍寺さまのペースで更新頑張ってくださいねｖ<br />
応援してます！<br />
<br />
<br />
596　 名無しさん　 2008/03/02(Sun) 17:05<br />
<br />
仁亀信者のはずだったのに<br />
卍さまの淳聖にやられてしまいました！！<br />
更新ありがとうございます。<br />
<br />
<br />
597　 blue　 2008/03/02(Sun) 20:29<br />
<br />
お忙しい中の更新ありがとうございます。嬉しいです☆<br />
私の中のテーマソング、KinKiの『切ない恋に気づいて』で楽しませていただきました。<br />
聖優しい！<br />
田口さんが好きになっちゃうのも当然ですよね。<br />
田口さんと一緒に思わずほろり…しました(;_;)<br />
<br />
<br />
598　 名無しさん　 2008/03/04(Tue) 12:23<br />
<br />
じゅんの頑張れ°･(ノД`)･°･<br />
<br />
<br />
599　 ゆ-　 2008/03/04(Tue) 23:02<br />
<br />
や-<br />
田口さん可愛いﾍ!<br />
聖かっこいい～・BR>忙しい中ありがとうございますﾈ<br />
<br />
<br />
<br />
600　 yuzuki　 2008/03/05(Wed) 12:11<br />
<br />
卍寺さま、こんにちは！来ました。<br />
私の小説にコメントしていただけてびっくりしました。<br />
感想を書くっていうのがどうも苦手で今までどこの小説も読んでいただけだったんですけど・・<br />
すいません(^^;)でも前々から応援させていただいてました。<br />
仁亀しか読めないので二人のお話読ませていただきました。二人とも男らしくてリアルな感じですね。<br />
二人がどうなっていくのか楽しみにしながら読ませてもらいました(^^)<br />
亀ちゃんについがんばってと言いたくなりました。<br />
これからも応援してます！<br />
<br />
<br />
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<br />
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    </content>
    <author>
            <name>爽</name>
        </author>
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    <id>tomorrow02.blog.shinobi.jp://entry/246</id>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="https://tomorrow02.blog.shinobi.jp/%E5%B0%8F%E8%AA%AC/1_246" />
    <published>2009-01-16T21:18:30+09:00</published> 
    <updated>2009-01-16T21:18:30+09:00</updated> 
    <category term="小説" label="小説" />
    <title>1</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[■JUNE小説板に戻る■　最後のレスまで飛ぶ　レスを全部見る　最新レス50件を見る　記事1-50を見る <br />
   <br />
卍　馬と鹿の本能　卍　（仁亀 淳聖 竜雄）<br />
541　 名無しさん　 2008/02/27(Wed) 01:45<br />
<br />
age<br />
<br />
<br />
542　 ベンジン　 2008/02/27(Wed) 09:00<br />
<br />
田口のシャワーシーン、素敵♪<br />
<br />
<br />
543　 名無しさん　 2008/02/27(Wed) 15:28<br />
<br />
やっぱり手錠は使うんでしょうか。ドキドキ<br />
できれば使ってほしいです。<br />
<br />
<br />
544　 卍寺　 2008/02/27(Wed) 19:18<br />
<br />
☆ののあさま　　仁亀ではないのに・・引き続き温かいお言葉ありがとです♪<br />
田口はちょい腹黒系ですが、聖って絶対優しいと思うんですよ・・<br />
そんな感じで・・聖・・食います（笑）なんちって・・<br />
<br />
☆５３４さま　　アゲありがとうございます♪<br />
<br />
☆ｂｌｕｅさま　　淳聖まで読んでいただき本当にありがとうございます（ＹＹ）<br />
今回は多カプだったので、色んな不安もありますが頑張ります♪<br />
でもたぶんですが・・竜雄は暗いかも・・（＞＜）？<br />
<br />
☆うーたさま　　忙しいのにコメありがとうございます♪<br />
私は毎度うーたさまの仁亀に癒されております（ＹｖＹ）<br />
今のトコオフ田口ですが・・オン・・怖い・・<br />
でも聖以外だったら完璧オンでしたね・・<br />
<br />
☆５３７さま　　アゲありがとうございます♪<br />
<br />
☆Kirscheさま　　仁亀ではないのに、読んでいただきありがとうございますｖｖ<br />
聖は優しいですよ～♪田口も聖限定で優しいんです（笑）<br />
<br />
☆５３９さま　　嬉しいっす！！わかっていただけて（ＹｖＹ）<br />
なんせ淳聖初挑戦なので伝わるか不安だったんですよ・・<br />
はぁ～良かったｖｖ嬉しいなぁ・・<br />
<br />
　　<br />
<br />
<br />
545　 卍寺　 2008/02/27(Wed) 19:25<br />
<br />
☆舞さま　　始めまして♪読んでいただきありがとうございます！！<br />
これから少しずつデレ要素発揮できるようがんばります！！<br />
確定申告・・・死にそうです・・何もしてません（ＹロＹ）<br />
<br />
☆５４１さま　　アゲありがとうございます♪<br />
<br />
☆ベンジンさま　　田口のオナシーン・・聖に見られてるとも知らず・・<br />
不憫ですね（笑）でも綺麗なんだろうな～～～♪<br />
<br />
☆５４３さま　　も、もち・・使いますよ・・（＾ｖ＾；）<br />
今回はお道具も使うかもかも？？乱暴では無いですけどね・・ｖｖ<br />
へへへ～～～楽しみですよ・・書くの（笑）<br />
聖を泣かせよう・・かな？とか今回はイかせちゃおうかな？<br />
とか・・まだそこまで書いてませんが脳内妄想満載です。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
546　 卍寺　 2008/02/27(Wed) 19:33<br />
<br />
<br />
●卍●<br />
<br />
<br />
忙しさＭＡＸの為一週間以内には更新したいと思ってはいるのですが、<br />
ちこっと無理かもです（－－；）<br />
<br />
読んでいただいて本当にありがとうございます。<br />
<br />
更新は必ずします！頑張ります（＞＜）<br />
<br />
更新滞ってすみません。まず私情を片付けます（号泣）<br />
<br />
いーやーだー（ＴロＴ）<br />
<br />
それでは・・・<br />
<br />
<br />
●卍●<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
547　 キーチ　 2008/02/28(Thu) 14:15<br />
<br />
マイペースにやってください。<br />
卍寺さんの作品ですから（´∀｀）<br />
<br />
<br />
548　 名無しさん　 2008/02/29(Fri) 17:56<br />
<br />
agemasu<br />
<br />
<br />
549　 蓮　 2008/02/29(Fri) 21:24<br />
<br />
age!!!<br />
<br />
<br />
550　 blue　 2008/02/29(Fri) 21:28<br />
<br />
忙しさMAXですか!!<br />
お体に気をつけて頑張って下さい(´∀｀)<br />
<br />
<br />
551　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 19:29<br />
<br />
☆キーチさま　　ありがとうございます♪<br />
マイペースにやらせていただいてます（＾＾）ｖ<br />
<br />
☆５４８さま　　アゲありがとうございます♪<br />
<br />
☆蓮さま　　アゲありがとうございます♪<br />
<br />
☆ｂｌｕｅさま　　ＭＡＸ継続中（＞＜）<br />
でも区切りつきましたので更新してみます（苦笑）<br />
<br />
<br />
<br />
552　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 19:35<br />
<br />
<br />
●卍●<br />
<br />
<br />
更新させていただきます♪<br />
<br />
２日目の淳聖です！<br />
<br />
田口さん大好きに変化が起きます（笑）<br />
<br />
<br />
●卍●<br />
<br />
<br />
553　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 19:39<br />
<br />
<br />
<br />
・・・・・二日目<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
554　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 19:40<br />
<br />
<br />
<br />
ごほ・・ごほごほ・・・っ・・・<br />
<br />
<br />
<br />
・・・・・・・・・<br />
<br />
<br />
<br />
・・・・・・・っ。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
555　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 19:41<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
・・・・・・なんでこんなに熱い・・・・あっ・・・・<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
聖は慌てて目を覚ました。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
556　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 19:43<br />
<br />
<br />
隣でパジャマを寝汗で湿らせながら震えている田口・・。<br />
<br />
手で額の熱を測る。<br />
<br />
<br />
「・・熱っ・・マジかよ・・・田口・・？」<br />
<br />
<br />
身体を揺するが、田口は熱にうなされたまま目を覚まさなかった。<br />
<br />
聖は軽く溜息を洩らすと、熱いお湯を汲みにバスルームへ向う。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
557　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 19:44<br />
<br />
<br />
<br />
・・ピチャ・・・ジャー・・ッ・・<br />
<br />
<br />
・・・・・・・・・・・。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
・・・・・・・気持ち・・・い・・・・。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
558　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 19:45<br />
<br />
<br />
田口が薄っすら目を開けると、タバコを口に咥えながら<br />
聖が温かいタオルで自分の体を拭いているとこだった。<br />
<br />
<br />
「こ・・・き・・・」<br />
<br />
<br />
「お・・目・・覚めたか？・・今汗拭いてやってっから、<br />
コレ終わったら朝飯食って薬飲めよ・・」<br />
<br />
<br />
「・・・ありがと・・・」<br />
<br />
<br />
田口は嬉しかった。<br />
聖が自分に優しくしてくれることが、そして触れてくれることが・・<br />
<br />
そんなコトをふっと考えていると、<br />
朝の生理現象なのか、自分の股間が痛いほど膨らむのが分かる。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
559　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 19:46<br />
<br />
<br />
<br />
・・・わ・・ヤバイ・・・こんなのバレたら、嫌われちゃうよ・・<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
560　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 19:47<br />
<br />
<br />
田口はソレを隠すように身を捩ると、<br />
タオルを持った聖が不機嫌に顔を顰める。<br />
<br />
<br />
「おい・・拭いてる途中で動くんじゃねぇよ・・」<br />
<br />
<br />
「・・あ・・オレ・・自分で拭くから貸して・・・」<br />
<br />
<br />
聖は・・そうか・・といいながら、<br />
もう一度絞り直して田口に手渡す。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
561　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 19:47<br />
<br />
<br />
<br />
・・・・・・・・・。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
ポトッ・・・<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
562　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 19:49<br />
<br />
<br />
熱で力が入らないせいで、タオルすらまともに握れない。<br />
<br />
<br />
「ほら・・いいから黙って寝てろよ・・<br />
<br />
パジャマの下脱げや・・拭いてやっから・・」<br />
<br />
<br />
田口は必死にパジャマの下を握り締め、顔を横にふる。<br />
<br />
<br />
<br />
・・・・だめ・・だめだめ・・全然治まって無いもん・・・<br />
<br />
<br />
<br />
「はぁ？男同士なんだから気にすんなよ・・<br />
<br />
つうかきちんと汗拭かないと、風邪治らねぇんだよ・・」<br />
<br />
<br />
聖は強引に田口のパジャマを引きずり下ろした。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
563　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 19:51<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
みょ～んっ・・<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
564　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 19:53<br />
<br />
<br />
<br />
・・・・・・・・・・・・・。<br />
<br />
<br />
<br />
「わぁ～～・・っっ！！」 <br />
<br />
<br />
聖の目の前に飛び出してきた田口のモノに思わず叫ぶ<br />
<br />
間近で見たソレは自分のモノより長く、エラが張り、<br />
血管が浮き出ていた。<br />
<br />
田口は片手で顔を覆い、もう片手でソレを隠しながら、<br />
首から上を羞恥で真っ赤に染める。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
565　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 19:54<br />
<br />
<br />
「ごめん・・聖・・・気分悪くさせてごめんね・・・ごほっ・・ごほっ・・<br />
<br />
・・・・ほっとけば落ち着くから・・ごめん・・・」<br />
<br />
<br />
田口の声が震えているのがわかり、<br />
とても怒る気にはなれなかった。<br />
<br />
<br />
「田口・・男なんだから朝勃ち上等でしょ・・<br />
<br />
・・つうかこういう時こそギャグ言えよ・・・」<br />
<br />
<br />
「・・・い、入り口・・・出口・・・っ・・・<br />
<br />
・・・かっこ悪ぃ・・・<br />
<br />
・・・こんなとこ・・聖に見られたくなかった・・っ・・」<br />
<br />
<br />
自分の顔を覆っていた田口の手の隙間から、涙が見え<br />
気まずさに聖は頭を掻いた。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
566　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 19:56<br />
<br />
<br />
赤西に殴られて涙を滲ませることはあっても、<br />
たいがいはヘラヘラ笑ってるだけだったから、<br />
こういう時もふざけるのかな・・って思ったけど・・。<br />
<br />
<br />
「田口・・そのまま顔隠してろよ・・<br />
<br />
仕方ねぇからオレも恥かいてやんよ・・<br />
<br />
そうすりゃ羞恥も二分されるだろ？」<br />
<br />
<br />
<br />
・・・・？・・・・・<br />
<br />
<br />
<br />
最初田口は何のコトだかわからなかったが、<br />
聖が自分のチャックを下ろし始めたので、すばやく理解する。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
567　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 19:57<br />
<br />
<br />
男気の強い聖にこんなことさせられるわけがなかった。<br />
<br />
<br />
「やめろ！！聖・・」<br />
<br />
<br />
聖はジーンズのチャックを下ろすと自分のモノを握りしめ、<br />
空いた手で田口のモノも握り扱く。<br />
<br />
<br />
「・・・っ・・・聖・・・そんなコトしないで・・・・っあ・・」<br />
<br />
<br />
田口は震える手で、聖を止めようとするが、<br />
そのとたん、聖の手が田口のソレをきつく握りしめた。<br />
<br />
<br />
「いた・・っ・・・」<br />
<br />
<br />
「黙ってろ・・集中出来ねぇだろ・・<br />
<br />
つうかオレを見るんじゃねぇ・・」<br />
<br />
<br />
そう言われたにも関わらず、指の隙間から<br />
その様子を見てしまう。<br />
<br />
<br />
<br />
568　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 19:58<br />
<br />
<br />
聖は目を閉じたままノドを反らせ、<br />
額から汗を滲ませながら唇を噛締めていた。<br />
<br />
心臓の音が異常に早くなり、先に聖の手の中に射精してしまう。<br />
<br />
それからしばらくして、聖もイった。<br />
<br />
聖は黙ったまま肩で荒く息を繰り返し、<br />
タオルで残滓を拭いチャックをあげる。<br />
<br />
それからテキパキと新しいタオルで田口の身体を一通り拭くと、<br />
新しい下着とパジャマに着替えさせ額に新しい冷えピタを貼った。<br />
<br />
<br />
「・・・こ、聖・・・ごめんね・・・」<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
569　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 19:59<br />
<br />
<br />
「・・・・・もう黙ってろ・・オレ風呂入ってくっから、<br />
朝飯、その後で食べよう・・。」<br />
<br />
<br />
「・・・・うん・・・・」<br />
<br />
<br />
<br />
・・・・・本当にごめんね・・・・・<br />
<br />
<br />
<br />
聖はそのままシャワールームへ向う、<br />
田口はソレを確認してから頭まで上掛けを被せた。<br />
<br />
心臓がドキドキして苦しかった、<br />
そしてベッドの中が微かに聖の匂いがして胸がじわ～っと熱くなる。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
570　 卍寺　 2008/03/01(Sat) 20:01<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
・・・・どうしよう・・・オレ・・聖が『好き』だ・・・・<br />
<br />
<br />
・・・・・聖・・・聖・・・・っ・・・<br />
<br />
<br />
・・・・・・・聖・・・・ごめんね・・・・っ<br />
<br />
<br />
・・・好きになってごめん・・・<br />
<br />
<br />
<br />
一度気づけば、奈落へ転がるように気持ちは止まらない。<br />
<br />
もっと自分を知って欲しくて、欲深くなる。<br />
<br />
<br />
 削除スレッド移転スレッド削除  <br />
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<br />
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<br />
   <br />
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<br />
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    </content>
    <author>
            <name>爽</name>
        </author>
  </entry>
  <entry>
    <id>tomorrow02.blog.shinobi.jp://entry/245</id>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="https://tomorrow02.blog.shinobi.jp/%E5%B0%8F%E8%AA%AC/1_245" />
    <published>2009-01-16T21:17:46+09:00</published> 
    <updated>2009-01-16T21:17:46+09:00</updated> 
    <category term="小説" label="小説" />
    <title>1</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[■JUNE小説板に戻る■　最後のレスまで飛ぶ　レスを全部見る　最新レス50件を見る　記事1-50を見る <br />
   <br />
卍　馬と鹿の本能　卍　（仁亀 淳聖 竜雄）<br />
511　 卍寺　 2008/02/25(Mon) 21:31<br />
<br />
<br />
聖はそう思いながらソファへ行くと、テーブルには二人分の夕飯が置いてあった。<br />
<br />
<br />
<br />
「おぉ！！肉じゃん！！美味そう～～♪<br />
<br />
<br />
・・・・・・・・・・・。<br />
<br />
<br />
・・・・・・・あれ・・・・？<br />
<br />
・・・・・・・・まさかコレみて？・・・田口の奴・・」<br />
<br />
<br />
<br />
聖の顔が一瞬引きつる。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
512　 卍寺　 2008/02/25(Mon) 21:33<br />
<br />
<br />
一時停止されたＡＶ・・しかも超熟女もの・・<br />
自分の祖母と同じくらいの女性とお坊さん？が絡んでる所だった。<br />
<br />
<br />
「ハハ・・・さすがマニア・・恐れいった・・。」<br />
<br />
<br />
さっきの違和感の正体も同時に理解する。<br />
<br />
<br />
<br />
・・・コレで勃起したら・・・ショックだわな・・はぁ～ありえね・・<br />
<br />
<br />
<br />
田口ネタがもう一つ増え、この部屋を出たら亀梨に話してやろうと<br />
今からワクワクした。<br />
<br />
<br />
<br />
513　 卍寺　 2008/02/25(Mon) 21:35<br />
<br />
<br />
一人ガツガツ夕飯を食べていると、深刻そうな顔で田口が出てくる。<br />
<br />
腰にタオルを巻き、頭をタオルでターバンのように包んでいて、<br />
ちょっと女の子みたいだった。<br />
<br />
<br />
「田口・・先食ってるから・・・」<br />
<br />
<br />
両頬を食べ物で膨らませながら、聖が言った。<br />
<br />
<br />
「くす・・見ればわかるよ・・・美味しい？」<br />
<br />
<br />
「おう！！食えなかったらオレ食ってやるから言え！！」<br />
<br />
<br />
聖はそう言いながら勇ましいくらいの勢いで、<br />
夕飯を食べていた。<br />
<br />
田口は聖の機嫌が戻ってるコトにホッとしながら、<br />
自分も向き合うようにソファに腰を下ろし、食べ始める。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
514　 卍寺　 2008/02/25(Mon) 21:37<br />
<br />
<br />
「ぷは・・・ごっそさん！！」<br />
<br />
<br />
「聖・・・半分食べる？」<br />
<br />
<br />
「ん・・・腹パンパンだからいいや・・<br />
<br />
つうかさ・・アレ何？アレでよく抜・・・・っ・・・・・」<br />
<br />
<br />
はっ・・として聖は慌てて口を閉じる。<br />
<br />
<br />
・・・わ・・ヤベ・・オナシーン見てたってバレちゃうじゃん・・・<br />
<br />
<br />
「・・・？・・・あぁ・・ＡＶね・・<br />
<br />
結構笑えるよ・・・なんか人間って不思議だね～」<br />
<br />
<br />
そうヘラヘラ笑いながら答える田口に、<br />
聖も内心・・<br />
<br />
・・・それで抜けるお前が不思議だよ・・・と突っ込んでいた。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
515　 卍寺　 2008/02/25(Mon) 21:47<br />
<br />
<br />
「しかしさ～亀と赤西上手くやってんかな？<br />
<br />
すげ～ケンカしてそう・・・」<br />
<br />
<br />
そう言いながら聖は笑った。<br />
<br />
<br />
「そうだね・・すごい険悪だもんね・・どうすんのかな・・・」<br />
<br />
<br />
「つうかさ・・田口と赤西だったら良かったんじゃね？」<br />
<br />
<br />
田口はしばらく黙ったまま、無表情で答えた。<br />
<br />
<br />
「オレは・・・聖で良かったよ・・・・」<br />
<br />
<br />
「キモッ！！・・・オレは亀が良かった・・話も合うし、<br />
メンバーの中で一番仲良いしね・・」<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
516　 卍寺　 2008/02/25(Mon) 21:49<br />
<br />
<br />
<br />
・・・・・・・・・・・・。<br />
<br />
<br />
<br />
・・・・・ガン！！！<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
田口は怖い顔で聖を睨みながら、机を叩く。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
517　 卍寺　 2008/02/25(Mon) 21:50<br />
<br />
<br />
「・・・こんな時くらい・・亀の話し止めろよ・・・<br />
<br />
・・・もっと・・・・オレを知ってよ！！」<br />
<br />
<br />
いきなりキレだした田口に聖も逆切れする。<br />
<br />
<br />
「お前のコトなんか知りたくもねぇ・・<br />
<br />
・・・マジ・・一週間耐えらんねーわ！！」<br />
<br />
<br />
田口は一瞬酷く苦しそうに顔を歪め、箸を置いた。<br />
<br />
そして小さく呟く。<br />
<br />
<br />
「・・・・・ごめん・・・聖・・っ」<br />
<br />
<br />
そのまま夕飯のほとんどを残し、洗面所で髪の毛を乾かしはじめた。<br />
<br />
<br />
<br />
518　 卍寺　 2008/02/25(Mon) 21:52<br />
<br />
<br />
「・・・・・・・・っ・・・・・。」<br />
<br />
<br />
聖も思わず手で口を覆う。<br />
<br />
田口を傷つけてしまったのは明らかだったから・・・<br />
いつもならヘラヘラ笑ってるだけなのに、<br />
あんなに苦しそうな顔にさせたのは初めてだった。<br />
<br />
<br />
<br />
・・・・た、田口があんなコト・・言うから・・・クソッたれ・・。<br />
<br />
<br />
<br />
田口は今までどんな暴言も笑って許してくれてたから、<br />
別に大丈夫かと思った・・・。<br />
<br />
<br />
・・・だから心が余計痛い。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
519　 卍寺　 2008/02/25(Mon) 21:53<br />
<br />
<br />
聖は居ても経ってもいられなくて、洗面所に向う。<br />
<br />
<br />
「田口・・・その・・・ごめん・・言いすぎた・・。」<br />
<br />
<br />
田口はドライヤーを止めると、いつもの笑顔で微笑む。<br />
<br />
<br />
「気にしなくていいよ・・聖は悪くない・・・<br />
<br />
聖がオレのコト嫌いなのも十分わかってるよ・・・<br />
<br />
でも・・オレは聖が誰よりも優しいってコト知ってるから好きなんだ・・」<br />
<br />
<br />
そのとたん聖は思いっきり、壁を殴った。<br />
<br />
田口の目も一瞬大きく見開く。<br />
<br />
<br />
<br />
520　 卍寺　 2008/02/25(Mon) 21:55<br />
<br />
<br />
「・・・そうやって・・・本音見せねぇ野郎の何を知れっつんだよ！！」<br />
<br />
<br />
田口は一瞬目を泳がせると、視線を床に落とした。<br />
<br />
<br />
「・・・今、言ったことは本当のことだよ・・・<br />
<br />
<br />
・・・・・・・・・・・・っ。<br />
<br />
<br />
ただ・・・傷ついた・・辛かった・・・だって・・オレは・・・<br />
<br />
・・聖が好きだから・・嫌われてるのって実は切なかったりするよ・・」<br />
<br />
<br />
黙って壁に寄りかかって聞いていた聖は、<br />
田口の髪の毛をグシャグシャとかき回した。<br />
<br />
<br />
「・・・今のお前・・嫌いじゃねぇよ・・普段はうぜぇけどな。<br />
<br />
・・・さっきは悪かった・・言葉がすぎた・・。」<br />
<br />
<br />
そう言って優しく微笑む。<br />
<br />
<br />
<br />
521　 卍寺　 2008/02/25(Mon) 21:56<br />
<br />
<br />
田口はいきなり立ち上がると、聖に抱きついた。<br />
<br />
<br />
「やっぱ好きだよ・・聖ぃ～～～・・・！！<br />
<br />
・・・・ぐはっ・・・い・・痛い・・っ。」<br />
<br />
<br />
「それが嫌い・・ウザイ・・わかれ！！」<br />
<br />
<br />
聖は田口のわき腹に拳をめり込ませている。<br />
<br />
ずるずる・・っとわき腹を押さえ、床に蹲っているにも関わらず、<br />
なぜか田口は嬉しそうだった。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
522　 卍寺　 2008/02/25(Mon) 21:58<br />
<br />
<br />
「今夜は飲むか・・幸い飲み物や食い物はいっぱいあるしな・・」<br />
<br />
<br />
「・・う・・うん・・」<br />
<br />
<br />
聖は殴った拳をプラプラさせながら、<br />
キッチンへ行った。<br />
<br />
それからパジャマに着替えた田口も<br />
グラスを用意したりしながら手伝う。<br />
<br />
<br />
「おぇ・・田口・・見ろよ！ドンペリあるやんけ！！<br />
<br />
飲もうぜ・・」<br />
<br />
<br />
「うわ・・すごいね～・・」<br />
<br />
<br />
嬉しそうにテーブルに用意し、グラスにドンペリを注ぐ。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
523　 卍寺　 2008/02/25(Mon) 21:58<br />
<br />
<br />
<br />
「「乾杯！！」」<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
524　 卍寺　 2008/02/25(Mon) 21:59<br />
<br />
<br />
聖は一気に飲みほし、嬉しそうに空いたグラスを机に置く。<br />
<br />
<br />
「・・うま～い♪・・田口・・注いで・・」<br />
<br />
<br />
言われるままに注いでいると、あっという間にドンペリ１本空になった。<br />
<br />
<br />
「ちょ・・飲みすぎじゃない？」<br />
<br />
<br />
「全然大丈夫・・まだ棚にあったから、持ってきてよ・・」<br />
<br />
<br />
田口は溜息をつきながら、棚へ持ちにいった。<br />
<br />
すでに真っ赤な湯でタコのような顔をしながら<br />
ソファに寄りかかっている。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
525　 卍寺　 2008/02/25(Mon) 22:01<br />
<br />
<br />
田口が新しいドンペリを持って行くと、ソファに丸まって眠っていた。<br />
<br />
<br />
「・・・やっぱり・・・聖弱いんだから・・・・」<br />
<br />
<br />
田口は溜息をつきながらベッドから掛け布団を持ち出し、<br />
聖にかけてあげながら、ざっと机の上も片付ける。<br />
<br />
<br />
「なんで聖も亀も赤西も散らかしっぱなしにするかなぁ・・・・」<br />
<br />
<br />
そうブツブツ呟きながら、電気を消し、ベッドへ向う。<br />
<br />
<br />
「あ・・どうしよう・・・オレの布団・・・・」<br />
<br />
<br />
田口は仕方無いので、大きめのバスタオルを風呂場から持ってきて、<br />
それをかけて眠った。<br />
<br />
<br />
<br />
526　 卍寺　 2008/02/25(Mon) 22:02<br />
<br />
<br />
<br />
・・・・・・・・・・・<br />
<br />
<br />
<br />
・・・・・・・・・・・・・・<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・くしゅん・・<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
527　 卍寺　 2008/02/25(Mon) 22:03<br />
<br />
<br />
「・・・・・ん・・・・っ・・・？・・」<br />
<br />
<br />
聖は酔いから冷め目が覚める。<br />
<br />
ソファから起き上がり、時計を見ればＡＭ３時・・<br />
<br />
<br />
「ヤベ・・・風呂も入ってね・・・」<br />
<br />
<br />
上掛け布団を捲り、シャワールームへ行こうとして、<br />
ベッドで丸まって眠る田口が目に入った。<br />
<br />
<br />
・・・・ごほ・・・ごほっ・・・けほ・・・・<br />
<br />
<br />
薄いタオル一枚で風邪をひき始めているのか、たまに震えている。<br />
<br />
<br />
「・・・ばか・・・」<br />
<br />
<br />
聖はソファから上掛けを持ってきて、田口に掛けた。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
528　 卍寺　 2008/02/25(Mon) 22:06<br />
<br />
<br />
あまりにせきをするので、<br />
田口の額に手を当てると熱が出てる。<br />
<br />
<br />
「・・・チッ・・・マジかよ・・・」<br />
<br />
<br />
慌ててクスリ箱から風邪薬と冷えピタを用意し、<br />
田口の頬を叩きながら起す。<br />
<br />
<br />
「田口・・田口・・・起きろ・・田口・・・」<br />
<br />
<br />
よほど熟睡してるのか、目を覚ます様子が無い。<br />
<br />
聖は水を口に含むと、薬を二錠田口の口に突っ込み、<br />
口移しで流し込んだ。<br />
<br />
<br />
<br />
529　 卍寺　 2008/02/25(Mon) 22:07<br />
<br />
<br />
「ゴホッ・・ゲホッ・・あ・・聖？・・・っ・・ゲホッ・・」<br />
<br />
<br />
器官に水が入ったのか少しむせながら、目を覚ます。<br />
<br />
<br />
「お前・・熱あるよ・・バカ・・・」<br />
<br />
<br />
聖は溜息をつきながら、冷えピタを貼ってやった。<br />
<br />
<br />
「ありがと・・・聖・・でも風邪移っちゃうよ・・」<br />
<br />
<br />
「あ？いいよ・・オレ風邪めったにひかねぇから・・<br />
<br />
お前後ろ向け・・・」<br />
<br />
<br />
田口は言われるままに、聖に背を向ける。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
530　 卍寺　 2008/02/25(Mon) 22:09<br />
<br />
<br />
「寒いんだろ？オレの背中かしてやっから・・<br />
<br />
さっさと寝ろ・・」<br />
<br />
<br />
「・・・・うん・・・ありがとう・・・っ」<br />
<br />
<br />
熱のせいもあるのだろう、こんな時優しくされると、<br />
人は弱くなるっていうけど本当だ。<br />
<br />
心の奥がジワジワ熱くなって、<br />
田口の目にも涙が滲むのがわかる。<br />
<br />
そして背中から伝わる聖の体温が心地よくて、<br />
再び睡魔が襲ってきた。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
531　 卍寺　 2008/02/25(Mon) 22:10<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
・・・・やっぱ・・聖が・・・大好きだよ・・・・<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
532　 卍寺　 2008/02/25(Mon) 22:17<br />
<br />
<br />
卍●卍●卍●<br />
<br />
<br />
今回の更新はこの辺で・・<br />
やっと１日目終了です・・（＾＾；）<br />
ちょっとは向き合えてきたかな・・？と・・<br />
自分的には思ってます。<br />
<br />
次回は風邪っぴきの田口さんですね<br />
<br />
あとこれから３月下旬くらいまで確定申告やらなんやらで、<br />
非常に忙しくて更新が滞り気味になりそうです・・。<br />
さすがに１週間まではあけないと思いますが、<br />
長引きそうな時は言いますので<br />
よろしくお願いいたします。<br />
<br />
嫌な時期がきたーーーー（笑）！！<br />
<br />
卍　返信分　　>>500-501<br />
<br />
卍　更新分　　>>502-531<br />
<br />
<br />
●卍●卍●卍<br />
　　<br />
<br />
<br />
<br />
533　 ののあ　 2008/02/25(Mon) 23:51<br />
<br />
忙しいのに、更新ありがとうございます！！<br />
卍様のペースで書いてください。<br />
待ってますvvv<br />
まだまだ、歩み寄れない2人ですね(´∀｀;A <br />
でも、看病きっかけってなんだか萌えvvv<br />
やさしい2人ですからね～♪<br />
この2人のHがどんな風になるのか楽しみです！！<br />
<br />
<br />
534　 名無しさん　 2008/02/26(Tue) 00:40<br />
<br />
age<br />
<br />
<br />
535　 blue　 2008/02/26(Tue) 11:23<br />
<br />
お忙しい中の更新ありがとうございまーす☆<br />
こんなとこまで来てもギャグに走る田口…嫌いじゃないです(笑)<br />
淳聖の心がどう接近して行くのか楽しみです♪<br />
<br />
<br />
536　 うーた　 2008/02/26(Tue) 13:40<br />
<br />
やっぱりじゅんじゅん優しい・・・＾＾<br />
にしても真っ黒な部屋のバスルームにはそんな仕掛けが！！<br />
すけすけバスルーム・・・ステキです！！！<br />
スイッチオフの田口も大好きです（オンもｖ）<br />
素直じゃないコキたんもかわいいなあｖ<br />
続きも楽しみにしてますねｖ<br />
<br />
<br />
537　 名無しさん　 2008/02/26(Tue) 13:53<br />
<br />
age<br />
<br />
<br />
538　 Kirsche　 2008/02/26(Tue) 20:53<br />
<br />
わぁ…聖やさしい(^^)<br />
背中合わせて寝るなんていいですね☆<br />
田口お大事に！<br />
それと卍寺様もお体に気をつけて３月を乗り切ってください!(^^)!<br />
<br />
<br />
539　 名無しさん　 2008/02/26(Tue) 23:51<br />
<br />
あーわかるわかる！の連続です。<br />
＞田口は今までどんな暴言も笑って許してくれてたから、<br />
　別に大丈夫かと思った・・・。<br />
って聖がいうとことかほんとに思いそうだなって。<br />
聖の田口への暴言や乱暴な行動は笑って許して？くれる（鈍感なのか？）<br />
田口あってこそなんですよね。<br />
逆に傷ついちゃうそぶりを見せられたらほんとうに<br />
根は優しい聖はできないだろうし・・。<br />
険悪なふたりがじょじょに近寄ってく過程がほんと自然でリアルです。<br />
続きも楽しみにしてます～。<br />
<br />
<br />
540　 舞(⌒ー⌒)　 2008/02/27(Wed) 01:30<br />
<br />
初書き込みです。<br />
淳聖いいですねー！田口の好き好き攻撃に聖のﾂﾝﾃﾞﾚ！(今の段階ではﾃﾞﾚ要素ｾﾞﾛですが)<br />
薬を飲ませるための水口移しは萌えすぎて燃え尽きそうでした(;;´;ё;｀;;)ﾝﾌｰ<br />
<br />
聖の隣でｽｹｽｹﾊﾞｽﾙｰﾑの田口を覗きたいと思った私は<br />
変態以外の何者でもないですね(笑)<br />
<br />
更新楽しみにしてます！確定申告も頑張ってください！笑<br />
<br />
 削除スレッド移転スレッド削除  <br />
 sage　 pre　等幅 書き込み後もこのスレッドに留まる <br />
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<br />
私書箱ＩＤ：<br />
<br />
   <br />
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<br />
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            <name>爽</name>
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